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日本遺産ものがたり
(栃木県足利市)
11
年 月1日号 第1393号
平成
『救民妙薬』
(市立博物館所蔵)
第8話
栄える読書文化
要事業に位置づけていたことから、藩直営の出版施設
特に水戸藩は、歴史書
『大日本史』
の編さんを藩政の主
遺産ものがたり」。今回のキーワードは「読書」です。
(現在のドイツ)
の
1860年に来日したプロイセン
外交官・オイレンブルクは、近世日本人の読書熱を次
りゅうしけん
を持つだけでなく、民間出版社とも交流が深かった。
の学者が執筆した書物の出版・販売を一手に引受けて
江戸時代前期には、京都の柳枝軒という有名な出版
社が、大日本史編さん所である彰考館と提携し、水戸藩
『救民妙薬』
も、ここ柳枝軒から出版された。
『救民妙薬』
る所にあり、本は
(本国に比べ)
信じられないほど安く、
江戸時代、身分や性別を超えて、多くの人が読み書
きを習得した。その結果、人々は儒学の高度な解説か
えたベストセラー本となった。
は、多くの家に備えられ、江戸時代の人々の健康を支
きゅうみんみょうやく
いた。水戸発の家庭の医学ハンドブックとして著名な
ら、日常生活の基礎知識に至るまで、さまざまな知識
戸時代の足利学校は、学校としての機能はほとんど失
こうした江戸の読書文化の殿堂ともいえる施設が、
中世の名門学校・足利学校
(栃木県足利市)
である。江
く、刷るほどに売れたという。水戸藩の尊王攘夷思想
徳川斉昭、会沢正志斎、藤田東湖らの著作は人気が高
彰考館や藩校・弘道館と提携し、全国展開した。特に
なく、地方にも出版社
江戸時代後期には三都だけかで
んしょうどう
とうへきろうすはらや
が誕生する。中でも水戸の咸章堂や東壁楼須原屋は、
われたが、その一方で、入手困難な中国の貴重書
(漢籍)
が幕末維新期に大きな影響を与えたことは有名だが、
と う こ
が 多 数 所 蔵 さ れ ているこ とで 有 名 で あった。 そ の た
その媒介となったのが、本と民間出版社であった。
【編集】
みとの魅力発信課 ☎029・232・9107
029・224・5188 [email protected]
水戸市 歴史文化財課 関口慶久
知的基盤となっていったのである。
せいしさい
め、全国の学者が蔵書を読むため、足利学校を訪れた
かんせき
のである。現在、これらの漢籍は国宝に指定され、日
【発行】水戸市 ☎029・224・1111(代表)
〒310~8610 水戸市中央1~4~1
( 京 都・
さて、江 戸の読 書 文 化 を 支 えたのは、三都
本遺産構成文化財ともなっている。
こうして江戸時代の読書文化は、当時の人々の知的
水準を引上げる原動力となり、やがて来る明治維新の
外国人が驚くほどの読書文化が花開いたのである。
や情報を本によって得るようになった。ここに、来日
いかに多くの本が読まれているか分かるのである」
「日本人はどんな身分の者でも読書欲があり、子ど
もや女性たちも熱心に読書にふけっている。本屋はいた
のように記している。
大坂・江戸)
を中心とする民間出版社
(書肆)
であった。
し ょ し
日本遺産に認定された「近世日本の教育遺産群―学ぶ心・礼節の本源―」の歴史的魅力を語る「日本
―近世日本の教育遺産群―
広報みと
日本遺産構成文化財 国宝漢籍
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水戸市の人口 人口…271,087人(男132,895人、女138,192人) 世帯数…118,927世帯 -平成28年10月1日現在(平成27年国勢調査速報値基準)-