早稲田大学 教育学部 日本史 講評 出題形式 マーク・記述併用 試験時間 60分 特徴・その他 大問数5題、小問数38問は例年通り。記述問題が12問、選択問題26問(内訳は正誤14 問・語句選択10問・年代配列1問・組合せ1問)。選択問題はすべて選ぶ形式が2問・2 つ選ぶ形式が1問の計3問であり、2016年度の計6問に比べ減少した。時代別では古 代・中世・近世・近代・近現代の計5題で、前近代史が約7割を占める。戦後は2問。分 野別では政治史6割を中心に文化史・社会経済史から出ている。また5題中、3題が 史料問題である。全体的なレベルは標準~やや難だが、2016年度よりは易化している よう。試験時間60分にさほど余裕はないが、時間が不足することはないであろう。 〔大問別講評〕 番号 Ⅰ 出題内容 コメント 難易度 平家物語 『平家物語』の史料を題材として、平安時代の政治について問 標準 <史料> うている。問1:平将門の乱・藤原純友の乱を合わせて承平・ 天慶の乱という。Aには「承平」(問われていない)、Bには「天 慶」が入る。問2:平氏政権のことを六波羅政権ともいう。問 3:ウ.前九年合戦を描いた軍記物語。ア.慈円の歴史書。イ. 虎関師錬によって書かれた日本最初の仏教通史。エ.歴史物語 で四鏡の3番目。オ.藤原明衡の漢詩文集。問4:オ.信頼は清 盛によって滅ぼされた。ア・ウは保元の乱の説明。イ.平忠常 の乱の説明。エ.義経ではなく頼朝。問5:ウ.俊寛は平氏打倒 をはかり失敗した(鹿ヶ谷の陰謀)。問6:ア.長岡京ではなく 平安京。イ.菅野真道ではなく藤原緒嗣。ウ.醍醐天皇の説明。 オ.嵯峨天皇の説明。問7:ア.高望王が平の姓を賜る。系図を 確認。問8:ア.受領は令外官ではない。イ.官物と臨時雑役を 課すようになった。ウ.小野好古ではなく藤原元命。オ.中下 級貴族が摂関家に取り入って受領になることを求めた。 Ⅱ 室町・戦国時代の関東 問3:享徳の乱(1454~77)が正解。問4:エ.伊豆国堀越ではな く下総国古河。なお5代鎌倉公方とは足利成氏(持氏の子)のこ と。問5:やや難。ア.一国平均役の説明。段銭・棟別銭が一国 平均役の代表例。イ.御料所は奉公衆が管理した。ウ.土倉役 の賦課はおもに京都である。エ.段銭は守護が徴収した。問6: 難問。イ.姉ではなく妹、また早雲は駿河国を乗っ取ってはい ない。他の選択肢の正誤判断は困難である。問7:やや難。エ. 武田氏は足利学校を保護していない。イ・オの正誤判断が難し い。問8:やや難。アが万里集九の著作。イ.初等教科書で作 者は未詳。ウ.宗祇らが詠んだ連歌集。エ.一条兼良の有職故 実書。オ.南北朝期頃に成立した書簡形式の教科書で玄恵作と もいわれる。 1/3 やや難 番号 Ⅲ 出題内容 コメント 難易度 江戸時代の身分制 問1:二宮尊徳(金次郎)による勤労・倹約を中心とする事業法 標準 <史料> のことを報徳仕法という。問2:問題文の「東北地方」「平等」 から八戸の医者である安藤昌益を想起しよう。著書には『自 然真営道』がある。問3:問9がヒントとなる。金光教は川手 文治郎が開いた民衆宗教。問4:イが正解。「士農工商」という 呼び方がある。ア.かわたは農業や皮革製造・わら細工などの 手工業に従事した。オ.戸主の権限は強かった。ウ・エの正誤 判断は難しい。問5:オ.1641~42年で17世紀である。ア.1782 ~87年、イ.1783年、ウ.1732年、エ.1707年。問6:ウ.天長節 は明治天皇誕生日の11月3日。明治初期に祝日と定められた。 問7:やや難。ア(1841年)、イ(1840年)が答えとなる。ウ.南 鐐二朱銀で1772年、エ.1790年、オ.1789~93年。カ.学問吟味 とは幕府が旗本・御家人とその子弟に対して行った学術試験 で、1792年から昌平坂学問所で実施された。寛政改革の頃と いう類推ができれば答えから排除できる。問8:エ.史料1の 「是政道ノ道具ニシテ」が読み取れれば、「政治上、作為された もの」が選べるだろう。問9:ア.黒住教を開いた黒住宗忠であ る。 Ⅳ 近代の弾圧法規 問1:1-内務省は言論思想を取り締まり、労働運動を弾圧し やや難 た省庁。2・3-「法律」「緊急勅令」は明治憲法条文の中でも重 要度の高いものである。問2:オ.治安警察法は戦後の1945年 に廃止された。問3:やや難。ア.滝川幸辰は1933年、京大教 授の職を追われた。オ.河合栄治郎は1939年、東大教授の職を 追われ起訴された。問4:エ.日本最初の社会主義政党。問5: ア1898年→エ1901年→オ1906年→イ1920年→ウ1922年。問6: 難問。ア.死刑が適用されるのは「国体変革」の方で、「私有財 産制度の否認」は該当しないので誤り。オ.保護観察法は1936 年に制定されているので誤り。 Ⅴ 近現代の政治と外交 問1:史料Cの社説「青島は断じて領有すべからず」から『東洋 <史料> 経済新報』で論陣をはった石橋湛山と分かる。問2:昭和 21(1946)年の総選挙で第一党になった日本自由党の総裁鳩山 一郎である。史料 A 中の「公職追放を受けた」から特定できる。 問3:エ.岸信介は戦後、A 級戦犯になっているため誤り。問 4:エ.シベリア出兵は1918~1922年まで続いた。問5:ウ.史 料B中の「済南」「首相田中」「支那出兵」から、1928年、第2次 山東出兵中、北伐途上の国民革命軍と日本軍が衝突した済南 事件と分かる。史料C中の「我が軍の手に帰せる青島」から、 1914年、第一次世界大戦に参戦した日本軍による青島占領だ と分かる。 2/3 標準 〔総合コメント〕 例年、全体的に難度高めの問題であったが、今年度は易化している。複数選ぶ形式の問題が減少した のも易化の一因であろう。史料問題は昨年度に続き、大問3題に出され、1問史料内容の読解問題が あった。また図版を使った問題は、荘園絵図(2011年度)、日本地図(2008年度)など時折出ているので 注意しておいた方がよい。今年度は解きやすかったが、来年度以降も継続するとは限らないので、過 去問で少し難しめの問題を解き実践力をつけておこう。なお、同年度の他学部の問題の類題が出るこ とも早稲田大学ではしばしばみられるので、余裕があれば確認しておきたい。 3/3
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