Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
地味に内生インフレ
2017年2月16日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・1月米鉱工業生産は前月比▲0.3%と2ヶ月ぶりの減産。もっとも主因は公益(▲5.7%)の大幅な落ち込
みで、鉱業(+2.8)と製造業(+0.2%)は増産であった。製造業生産はサーベイ指標で示唆されていた
ほどの増産は実現していないが方向感は一致している。各種サーベイの堅調さを踏まえると、こうした強
さは当面続く見込み。
・1月米小売売上高は前月比+0.4%と市場予想(+0.1%)を上回った。自動車(▲1.4%)が減少した反面、
ガソリン(+2.3%)が全体を押し上げた。自動車とガソリンを除いたベースでは+0.7%と堅調。最重要
項目のコア小売売上高は前月比+0.4%と市場予想(+0.3%pt)を上回り、3ヶ月前比年率では+3.7%と
まずまずのモメンタムを維持。1Qは順調な滑り出しと言えるだろう。
・2月NY連銀製造業景況指数は+18.7と市場予想(+7.0)を大幅に上回り、1月(+6.5)から改善。I
SM換算では54.4と1月から3.5pt改善。出荷(+7.3→+18.2)、新規受注(+3.1→+13.5)が大きく伸
びたほか、週平均労働時間(▲4.2→+4.1)、受注残(▲1.2→+8.2)が好転。同地区の製造業企業の業
況は改善している。
・1月米CPIは前年比+2.5%となり、12月から0.4%pt伸びを高めた。前月比では+0.6%と急加速。エネ
ルギー(前年比+5.4%→+10.8%)が急激に伸びを高めことが主因だが、コア物価も前年比+2.3%へと
0.1%pt上昇しており、全体的な強さが窺える。内生的インフレを反映するサービス物価が前年比+3.1%
と加速傾向にあることを踏まえると、基調的なインフレ率は上昇していると判断される。
・1月NAHB住宅市場指数は65と市場予想(+67)を下回り、12月から2pt悪化。モーゲージ金利上昇が
逆風になったと思われるが、水準そのものは高く、悲観は不要。このところ住宅指標は一部に弱さがみら
れるものの、消費者の住宅購入意欲は依然として旺盛と判断される。
・12月英失業率(ILO基準、3ヶ月平均)は4.8%と11月時点から不変。就業者数が+3.8万人と3ヶ月ぶ
りに増加し、失業者は▲0.7万人と4ヶ月連続で減少した。失業保険基準の失業率は1月に2.1%へと低下
し、失業保険受給件数は4.24万件の減少。平均賃金(3ヶ月平均)は前年比+2.6%、除く賞与ベースでも
+2.6%となり、共に横ばい圏内での推移となっている。
(3m/3mar %)
10
米製造業生産・サーベイ指標
70
(3m/3mar、%)
コア小売売上高
12
10
ISM・PMI平均(右)
5
(右)
8
60
6
4
0
50
2
0
-2
製造業生産
-5
40
10
11
12
13
14
15
16
17
(備考)Thomson Reutersにより作成 生産は3ヶ月前比年率
-4
10
11
12
13
14
15
16
17
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
NY連銀指数
40
30
70
NY連銀指数
ISM(右)
20
(前年比、%)
5
米
CPI
4
60
コア
3
10
0
50
-10
2
1
-20
ISM換算(右) 40
0
-30
総合
-40
30
07
09
11
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
15
17
住宅販売件数
(千件)
6500
40
5500
NAHB
30
購入見込み客指数(右)
5000
4500
4000
12
13
14
15
(備考)Thomson Reutersにより作成、3ヶ月平均
16
16
英 雇用統計
17
(千人)
200
150
7
ILO基準
6
失業率
5
20
4
10
3
50
0
-50
失業保険受給件数(前月差、右)
05
07
09
11
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
17
100
失業保険基準
2
0
11
15
8
50
6000
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reutersにより作成
9 (%)
60
住宅販売件数
(新築+中古)
-1
15
-100
17
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は続伸。NYダウは5日続伸となり主要3指数は揃って最高値更新。イエレン議長の議会証
言が14日に比べてややハト派傾斜したことを株式市場は好感。また、この日発表された米指標が好調で景
気回復期待をサポート。広範な銘柄に買いが入った。WTI原油は53.11㌦(▲0.09㌦)で引け。
・前日のG10 通貨はNZD、NOK、AUDといった資源国通貨が堅調だった反面、JPYや欧州通貨が小幅高ないしは
横ばい。USD/JPYは好調な米指標を受けて一時115に迫ったものの、米金利低下に足並みを揃える形で下落
に転じ、日本時間早朝には114割れを試す展開に。EUR/USDは1.06を回復。
・前日の米10年金利は2.493%(+2.3bp)で引け。インフレ指標を中心に米指標が総じて堅調で金利上昇と
なった後、イエレン議長の発言が14日に比べてハト派傾斜したことから上昇幅の過半を失った。欧州債市
場(10年)は総じて軟調。米債市場の下落に追随する格好でドイツ(0.373%、+0.7bp)、フランス
(1.053%、+0.2bp)、イタリア(2.242%、+0.9bp)、スペイン(1.683%、+1.6bp)が小幅ながら金
利上昇。周縁国の対独スプレッドは僅かに横ばい。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は前日の反動に加えて、USD/JPY下落が重荷となり、小幅安でスタート。その後はもみ合いとなって
いる(10:00)。
<#米平均時給・自発的離職率が先行
#日本の自発的離職率は横ばい #それでも賃金上昇の兆候>
・米国では労働市場が完全雇用に近づく中、FEDが重視する平均時給が上昇傾向にあり、利上げを正当化
する一つの根拠となっている。その先行指標的な意味合いもあり、イエレン議長は自発的離職率を注視し
ている。これは労働者が待遇改善を求めて転職活動を活発化すれば、そのことが賃金上昇圧力として認識
されるためだ。実際、最近の賃金上昇に先立ち自発的離職率は上昇に転じていた。
・他方、日本の自発的離職率(筆者試算)に目を向けると、労働市場が完全雇用に近づきつつあるにも拘ら
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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ず、ここ数年は1.5%近傍で横ばいないしは若干の下落傾向となっている。これは転職を必ずしも是としな
い日本独特の雇用慣行が影響しているとみられるが、非自発的離職数(≒会社都合)の変化割合を踏まえ
れば、相対的な転職活動は活発化していると考えられ、賃金上昇要因の一つとして認識される。現状では
非自発的離職者数の約3倍の自発的離職者が存在するため、待遇改善を求めた労働者の希望が通り易いだ
ろう。転職市場では労働者側が優位と言ってもいいかもしれない。
・こうしたデータは飽くまで労働市場の一部を映し出しているに過ぎず、これを持って賃金上昇シナリオを
語ることはできない。しかしながら、労働市場が逼迫していることに疑いはなく、このままの状態が続け
ば賃金が上昇傾向を強める確度は高い。
(%)
自発的離職率(米国)
3
(%)
2.5
自発的離職率
4
2.5
2
離職率 3
2
1.5
2
1.5
平均時給(右)
1
1
01
03
05
07
09
(備考)Thomson Reutersにより作成
3.5
11
13
15
1
17
02
04
06
08
10
(備考)Thomson Reutersにより作成
14
16
平均時給18ヶ月先行
自発的離職÷非自発的離職
(万人)
140
3
120
2.5
100
2
80
1.5
60
1
40
0.5
20
自発的離職数・非自発的離職数
自発的離職
非自発的離職
(≒会社都合)
0
0
02
04
06
08
10
(備考)Thomson Reutersにより作成
12
12
14
02
04
06
08
10
(備考)Thomson Reutersにより作成
16
12
14
16
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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