株式会社東海東京調査センター 「改定日本経済見通し ~“外部依存型”の

Press Release
6-2, NIHONBASHI 3-CHOME, CHUO-KU, TOKYO
103-0027
JAPAN
平成 29 年 3 月 8 日
各
位
東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社
東京都中央区日本橋三丁目 6 番 2 号
証券コード
8616
東証・名証第一部
株式会社東海東京調査センター
「改定日本経済見通し ~“外部依存型”の景気回復~ 」に関するお知らせ
当社の子会社である株式会社東海東京調査センターが「改定日本経済見通し ~“外部依存
型”の景気回復~ 」を発表いたしましたので、別紙のとおりお知らせいたします。
以
本件に関するお問い合わせは、広報・IR部
03-3517-8618 までお願いします。
上
2017 年 3 月 8 日
改定日本経済見通し
~“外部依存型”の景気回復~
【当社予想及び前提条件】
実質 GDP 成長率(前年度比)
16 年度+1.3%、17 年度+1.4%、18 年度+1.0%
チーフエコノミスト
武藤弘明
03-3517-8374
CPI コア上昇率(前年度比)
16 年度▲0.2%、17 年度+0.8%、18 年度+1.0%
[email protected]
日銀金融政策
現状維持を継続(追加緩和、長期金利目標引上げ無し)
★実質 GDP 成長率の予測値は、16 年度が前年度比+1.3%(前回 12
月 8 日時点の予測と同じ)
、17 年度が同+1.4%(前回予測と同じ)
、
18 年度は同+1.0%(前回予測と同じ)とした。
★CPI コアの前年度比伸び率の見通しは、16 年度が前年度比▲
0.2%(前回予測と同じ)
、17 年度が同+0.8%(前回予測と同じ)
、
18 年度が同+1.0%(前回予測と同じ)とした。
★日銀金融政策に関しては、政策金利残高に対する付利(▲0.1%)
や長期金利の誘導目標(0%近傍)について黒田総裁の退任まで現
状を維持すると予想(長期国債の買入れペースは 17 年後半に減額
するか買入れ目標自体の明示を停止)
。
(以上)
1/14
このレポートは、投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を意図とするものではありません。投資の決定は、ご自身の判断と責任でなされますようお願い申し上げます。
このレポートのご利用に関しては、末尾の開示事項の記載もご覧ください。
日本経済予測一覧表(3/8現在)
予測
<年度予測>
FY13
FY15
FY16
実績
項目
実質GDP
FY14
FY17
FY18
FY16
今回予測
FY17
FY18
前回12月8日予測
2.6%
-0.4%
1.3%
1.3%
1.4%
1.0%
1.3%
1.4%
1.0%
2.7%
-2.7%
0.5%
0.6%
0.7%
0.7%
0.7%
0.8%
0.7%
8.3%
-9.9%
2.7%
6.4%
1.5%
0.6%
6.8%
1.8%
0.6%
民間企業設備投資
7.0%
2.4%
0.6%
2.5%
3.1%
1.9%
1.4%
2.1%
1.9%
在庫投資(寄与度)
-0.5%
0.5%
0.3%
-0.3%
-0.2%
0.0%
-0.2%
-0.1%
0.0%
公的固定資本形成
8.6%
-2.1%
-2.0%
-2.2%
3.6%
-1.6%
0.2%
5.2%
-1.6%
-0.5%
0.6%
0.2%
0.6%
0.3%
0.2%
0.4%
0.1%
0.2%
財サ輸出
4.4%
8.8%
0.8%
2.7%
4.7%
2.6%
1.1%
3.5%
2.6%
財サ輸入
7.1%
4.2%
-0.2%
-1.0%
2.9%
1.4%
-1.5%
2.4%
1.4%
3.1%
-0.5%
-1.3%
1.5%
3.4%
2.2%
0.9%
3.4%
2.2%
完全失業率(末値)
3.6%
3.4%
3.2%
3.0%
2.9%
2.8%
3.0%
2.9%
2.8%
消費者物価指数(コア)
0.8%
2.8%
0.0%
-0.2%
0.8%
1.0%
-0.2%
0.8%
1.0%
0.0%
2.5%
1.4%
0.0%
0.4%
0.6%
0.1%
0.4%
0.6%
民間最終消費支出
民間住宅投資
純輸出
鉱工業生産指数
GDPデフレータ
<四半期予測>
2016
項目
2017
2018
4-6月
7-9月
10-12月
1-3月
4-6月
7-9月
10-12月
1-3月
2.2%
1.2%
1.2%
1.5%
1.6%
1.5%
1.0%
1.3%
0.2%
0.3%
0.0%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
3.3%
2.4%
0.1%
0.5%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
民間企業設備投資
1.4%
-0.1%
2.0%
0.4%
0.7%
0.7%
0.7%
0.8%
在庫投資(寄与度)
0.3%
-0.4%
-0.2%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
公的固定資本形成
1.0%
-0.9%
-2.5%
2.3%
2.4%
1.8%
-0.5%
-0.5%
0.0%
0.4%
0.2%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
財サ輸出
-1.2%
2.1%
2.6%
0.7%
0.8%
0.9%
1.0%
1.1%
財サ輸入
-1.0%
-0.3%
1.3%
0.6%
0.7%
0.7%
0.8%
0.8%
鉱工業生産指数
0.2%
1.3%
2.0%
1.1%
0.5%
0.5%
0.5%
0.6%
完全失業率(末値)
3.1%
3.1%
3.0%
3.0%
3.0%
2.9%
2.9%
2.9%
-0.4%
-0.5%
-0.4%
0.5%
0.9%
0.7%
1.1%
0.8%
0.4%
-0.1%
-0.1%
-0.1%
0.3%
0.4%
0.4%
0.4%
実質GDP(年率)
民間最終消費支出
民間住宅投資
純輸出
消費者物価指数(コア)
GDPデフレータ
(注)鉱工業生産指数の年度値は季節調整値をもとにしたもの、消費者物価指数(コア)は前年比
(注)実質GDP成長率以外の需要項目は単純前期比(在庫投資と純輸出は寄与度)、GDPデフレータは前年比
(出所) 内閣府、総務省、経済産業省、予測は東海東京調査センター
2/14
グローバル経済の概観と日本経済の見方
<米国経済>
16 年 10-12 月の米国の成長率は前期比年率+1.9%、前期の同+3.5%から減速している(図表 1)。しかし中身をみると最大の
需要項目である個人消費は同+3.0%と前期(同+3.0%)、前々期(同+4.3%)に続けてかなり高い伸びを維持した。成長率の減
速は輸出が前期比年率▲4.0%と大きく減少したこと等によるもので、これは前期(大豆輸出の増加で輸出が前期比年率
+10.0%と上振れ)の反動としての面が大きい。設備投資は前期比年率+1.3%、住宅投資も同+9.6%とそれぞれ堅調で、トランプ
政権は経済的には 16 年からの非常に強い地合いを引き継いでのスタートとなる。ISM 指数は製造業・非製造業ともに 17 年には
いってからもかなり順調な改善を続けている。トランプ政権における財政政策への期待もあって、企業センチメントも引き続き良好
に推移している。トランプ財政が本格的に成長率の押し上げに寄与するのは 18 年以降と想定されるが、17 年も+2.2%程度の
GDP 成長は達成できるだろう(うち財政政策による押し上げ効果が+0.1%ポイント程度)。
FRB(米連邦準備制度理事会)はトランプ政権のもとでの拡張的な財政政策の影響も考慮に入れた上で、3 月も含めて年 3 回
程度の利上げを実施する公算が高いと考えられる。利上げサイクルの進展は、緩やかなものとはいえ長期金利の上昇やドル高
圧力をもたらすため、18 年以降の米国景気にとっては追加的な減速要因となろう。「拡張的な財政政策」と「金融政策の引き締め
(FRB による政策金利の引上げ)」の組み合わせは、IS 曲線と LM 曲線を同時に上方シフトさせることであり(図表 2)、マンデルフ
レミングモデルで考えるとそれによってもたらされる金利上昇や通貨高(=ドル高)が経済にマイナスのショックを与えるという組み
合わせになる。
ただし一方で短期的には財政政策の拡張による成長率の押し上げ効果も無視できない。トランプ財政の効果が本格的に出て
くるのは 18 年以降と想定され、同年の成長率は+0.3%ポイント程度押し上げらえると予想する。結果として 18 年の米国成長率
は+2.3%と 17 年よりも若干加速しよう。つまり 18 年の成長率は財政政策を考慮しなければ小幅減速となるところ、財政政策によ
る短期的な押上げ効果で逆に小幅な加速になるという見方だ(図表 3 参照)。
(図表 1)
(前期比年率)
米国のGDP成長率と要因分解
4.0%
3.0%
2.0%
1.0%
0.0%
-1.0%
-2.0%
-3.0%
純輸出
政府
在庫
設備投資
住宅
1
2
3
4
1
2015
2
3
4
GDP
2016
(年・四半期)
(出所)米国商務省より東海東京調査センター作成
3/14
消費
(図表 2)
IS曲線、LM曲線の同時上方シフトの結果、将来の景気を圧迫
LM曲線(利上げ局面)
IS曲線(トランプ財政)
金利上昇、通貨高
r
(利子率)
y
(出所)東海東京調査センター作成
(国民所得)
(図表 3)
トランプ氏の財政政策の米GDP成長率への影響について
(単位 10億ドル)
原案
(トランプ氏原案)
実現
GDPへの影響(真水)
GDP対比(%)
現在の予想
財政考慮なし
トランプ氏財政政策による変化
減税
インフラ投資
合計
減税
インフラ投資
合計
減税(限界支出性向 0.3)
インフラ投資(乗数 1)
合計
実質GDP
同上伸び率(%)
実質GDP
同上伸び率(%)
GDP成長率への影響(%)
2016年
2017年
2018年
2019年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
16,660
1.6
16,660
1.6
-
200
0
200
50
0
50
15
0
15
0.1
17,024.7
2.2
17,009.7
2.1
0.1
600
100
700
150
25
175
45
25
70
0.4
17,419.8
2.3
17,349.8
2.0
0.3
600
100
700
150
25
175
45
25
70
0.4
-
⇒
以後毎年
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
-
2026年
600
100
700
150
25
175
45
25
70
0.4
-
(注)予想は3月10日時点のもの。減税案を10年間で6兆ドル、インフラ投資を10年間で1兆ドル、そのうちの4分の1が予算化されるとした。
(出所)各種資料をもとに東海東京調査センター作成、GDP成長率の予測も東海東京調査センターによる
4/14
<欧州経済>
16 年 10-12 月期のユーロ圏の GDP 成長率は前期比年率+1.6%と 7-9 月期の同+1.8%から若干の減速となった(図表 4)。
16 年通期の成長率は前年比+1.7%となった。ちなみにユーロ圏における 10~15 年までの平均成長率は前年比+0.7%であり、
潜在成長率も同程度と考えられる。南欧の財政問題、英国の EU 離脱決定による今後の影響、ポピュリズム政権の誕生が懸念さ
れる国政選挙等、懸念材料は目白押しだが、足元の GDP 成長率自体は潜在成長率をダブルスコアで上回っており、今のところ
経済活動が萎縮しているようには見えない。代表的なソフトデータである PMI 総合指数はこれまでも上昇基調にあったが 2 月は
一段と上昇ペースが加速しており、ドイツの Ifo 企業景況感総合指数も高水準を維持している(図表 5)。
このように足元に関しては堅調を維持しているユーロ圏の成長率だが、17 年は前年比+1.4%、18 年は同+1.3%と小幅に減速
していくと予想される。英国のメイ首相は 3 月末までに EU 側に離脱を通告し、正式交渉を開始する方針を明らかにしており、これ
まで EU 向け輸出に対する無関税、金融機関の単一パスポート制度といったこれまでの“メリット”はいずれかの時点で確実に失
われるか、少なくともこれまで以上に制限されることになろう。 EU 離脱というアクションの英国経済に与える直接的な影響がマイ
ナスであることは間違いなく、合理的に考えればそれが近接するユーロ圏経済に対してもマイナスのインパクトを及ぼすということ
ができよう。英国の PMI 総合指数の動きをみると、EU 離脱決定の後は急ピッチで改善してきているが、1 月、2 月は一転して低
下しはじめている(図表 6)。離脱決定以降の PMI の急回復については、“ポンド安”に加えて世界経済のモメンタム自体も 16 年
後半以降に急激に改善したことが影響していると思われる。しかし一本調子のポンド安が永久に続くわけではなく、英国はいずれ、
EU 離脱決定の負の影響に直面することになるだろう。ちなみに英国の GDP 成長率に関しては 16 年の前年比+1.8%に対し 17
年を同+1.4%、18 年を同+1.2%とユーロ圏よりもやや大きめの減速を見込んでいる。基本的には英国経済の減速パターンがユ
ーロ圏経済に相当程度投影される展開を想定している。
ユーロ圏の HICP(消費者物価)総合指数は 1 月に前年同月比+1.8%まで上昇しているが、これはエネルギー価格の上昇が主
因である。コア指数は同+0.9%と依然としてマイルドな伸びに止まっている。上述の英国の EU 離脱交渉の影響や各国の国政選
挙の結果次第で不確実性が高まるリスクがあることも考慮すると、ECB(欧州中央銀行)は 4 月に量的緩和を一旦縮小した後(月
額 800 億ユーロの国債購入額を同 600 億ユーロに縮小)、基本的には金融政策の現状維持をキープする展開を予想する。
(図表 4)
ユーロ圏のGDP成長率の推移
(前期比年率 %)
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
1
2
3
13
4
1
2
3
4
14
1
2
3
15
(出所)データストリームより東海東京調査センター作成
5/14
4
1
2
3
4
16
(年・四半期)
(図表 5)
ユーロ圏のPMI、Ifo企業景況感総合指数の推移
(2005年=100)
58
112
Ifo 企業景況感総合指数(右軸)
110
56
108
54
106
52
104
50
102
48
46
ユーロ圏PMI総合指数(左軸)
100
98
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1
13
14
15
16
17
(年・月)
(出所)データストリームより東海東京調査センター作成
(図表 6)
英国のPMI総合指数とポンド・ドルレートの推移
(ドル/ポンド)
62.0
1.800
PMI (左軸)
60.0
1.700
58.0
1.600
56.0
54.0
1.500
52.0
1.400
50.0
1.300
ポンド・ドルレート(右軸)
48.0
46.0
1.200
1
3
5
7
14
9 11 1
3
5
7
9 11 1
3
15
(出所)データストリームより東海東京調査センター作成
6/14
5
7
16
9 11 1
17
(年・月)
<中国経済>
16 年の中国の GDP 成長率は前年比+6.7%と前年の同+6.9%からは減速した(図表 7)。ちなみに 14 年の成長率は前年の
7.8%から 7.3%に減速(減速幅は▲0.5%ポイント)、15 年は 6.9%にまで減速(減速幅は▲0.4%ポイント)、それに対して今回の
前年からの減速幅は▲0.2%なので、減速ペース自体はかなり落ち着いてきている。グローバル景気自体の好調と当局の財政
政策による下支えがかなり影響したものと考えられる。足元の経済指標も良好だ。製造業の PMI は政府発表値、財新/MARKIT
社による民間発表値ともに昨年 10 月に大きく上昇し、それ以降は 17 年 2 月時点でも高水準を維持している(図表 8)。GDP 統
計の結果を裏付けるべく、12 月までの月次経済指標も堅調に推移しているため、景気そのものは極めてしっかりした動きをして
いると言って良いだろう。3 月の全国人民代表大会では 17 年の GDP 成長率の目標が 6.5%と前年の目標 6.5~7.0%から引き
下げられた。上述のとおり成長率に関しては政府によるコントロールがうまくワークしていると考えられ、6.5%という目標数値は
十分に達成可能と思われる。
中国に関しては、実体経済よりも金融面における下振れリスクに注意が必要だ。上述のとおり景気減速ペースは落ち着きつつ
あるが、景気減速をテーマとした資本流出の動きはリアルタイムで続いている。国際収支統計をみると「その他投資」は 14 年から、
「証券投資」と「直接投資」が 15 年から流出超に転じており、これに対応すべく外貨準備の取り崩しが続いている(図表 9)。トラン
プ米大統領は、中国を為替操作国に認定したがっているようだが、人民元の減価は介入の結果ではなく、資本流出の結果であり、
人民銀行が介入を停止すれば人民元安は今まで以上に進展してしまうことに注意が必要だ。少なくとも当局はこれ以上の人民元
安を指向しているわけでなく、金融政策はどちらかというと引き締め方向だ。16 年末に開催された中央経済工作会議では金融政
策はこれまでの「穏健」から「穏健中立」へと変更されている。“資本規制”というストッパーはあるものの、15 年 8 月や 16 年 1 月
のように「景気減速」と「資金流出」のリンケージが一旦テーマとなってしまうと国際金融市場の混乱につながりやすく、金利の急
上昇が中国景気を想定以上に圧迫する可能性がある。
(図表 7)
中国のGDP成長率の推移
(年初来累計 前年比 %)
10.5
10.0
9.5
9.0
8.5
8.0
7.5
7.0
6.5
6.0
1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4
11
12
13
14
(出所)データストリームより東海東京調査センター作成
7/14
15
16
(年・四半期)
(図表 8)
中国製造業PMIの推移
53
政府発表
52
財新/MARKIT社
51
50
49
48
47
46
1
3
5
7
9
11
1
3
14
5
7
9
11
1
15
3
5
7
9
11
16
1
17
(年・月)
(出所)データストリームより東海東京調査センター作成
(図表 9)
中国の外貨準備、人民元レートの推移
(10億ドル)
4,200
(元/ドル)
5.60
外貨準備(左軸)
4,000
5.80
人民元レート(右逆軸)
3,800
6.00
6.20
3,600
6.40
3,400
6.60
3,200
6.80
3,000
7.00
2,800
7.20
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1
13
14
15
16
(出所)データストリーム、日経クイックより東海東京調査センター作成
8/14
17
(年・月)
<グローバル経済と日本経済へのフィードバック>
グローバル経済と日本の景気循環
16 年 10-12 月期の GDP 統計(2 次速報)によると日本の GDP 成長率は前期比年率+1.2%と 1 次速報の同+1.0%から上方
修正された。消費を中心に内需は勢いを欠く状況だが、これまで述べてきたように海外経済は全般的に堅調に推移しており、当
面は良好な外需環境が日本の景気をサポートするであろう。世界の GDP 成長率は 17 年に前年比+3.3%と 16 年の同+3.1%か
ら加速し、18 年も同+3.3%で横這いになると予想する(図表 10)。18 年は米国における利上げサイクルの進展が新興国経済を
巻き込む形で相応の景気抑制要因となる一方で、トランプ財政の本格化がその抑制効果をある程度相殺するような展開となろ
う。
日本の循環的な景気回復は基本的に輸出や鉱工業生産指数の上昇サイクルによって支えられる面が大きい。そして今回の景
気回復サイクルの中でとくに着目されるのが、電子部品・デバイスの在庫循環の動きだ。これは景気に対してある程度の先行性
を有すると考えられる。電子部品・デバイスの在庫の前年比伸び率と出荷の前年比伸び率を対比した在庫循環図をみると、出荷
の前年比が増加するとともに在庫の前年比レベルは低下傾向にある。そして直近では在庫が前年比マイナス、出荷が前年比プ
ラスという景気にとってはもっともモメンタムの強い局面に差し掛かっている(図表 11)。これは在庫循環としてはまだ若く、今後本
格的な在庫積み増し局面に入っていくことを示唆しており、1-3 月以降の日本の景気回復局面の持続をある程度担保していると
いえよう。
(図表 10)
世界経済の見通し
(前年比 %)
東海東京調査センター予測
(参考)IMF予測 17年1月時点
2016年
2017年
2018年
2016年
2017年
2018年
予測
予測
予測
予測
予測
予測
3.1
3.3
3.3
3.1
3.4
3.6
米国
1.6
2.2
2.3
1.6
2.3
2.5
ユーロ圏
1.7
1.4
1.3
1.7
1.6
1.6
日本
1.0
1.4
1.2
0.9
0.8
0.5
中国
6.7
6.5
6.0
6.7
6.5
6.0
世界経済
(出所)IMF、東海東京調査センター
9/14
(図表 11)
電子部品・デバイスの在庫循環図(3ヵ月移動平均)
(% 在庫前年比)
25.0
15.0
5.0
-5.0
-15.0
-25.0
17年1月
-35.0
-25.0
-15.0
-5.0
5.0
15.0
(出所)経済産業省より東海東京調査センター作成
25.0
(% 出荷前年比)
個人消費は下方に関しては、“底堅く”、上方に関しては “勢いを欠く”
16 年 10-12 月期の個人消費は前期比 0.0%(1 次速報と不変)と弱い動きとなっている。野菜価格の上昇により家計の購買力
が毀損したことが主因だが、ここにきて賃金上昇ペースにもブレーキがかかってきていることも少なからず影響している。象徴的
な動きとして、10-12 月に実質雇用者報酬の伸びが急減速しており、もともと消費活動に対して慎重だった消費者が一段と財布
の紐を引き締めた可能性が高い。
しかし一方で円安や株価の持ち直しを背景として消費者のセンチメント自体は比較的堅調に推移している。実質個人消費は 17
年度も前年度比+0.7%と潜在成長率に見合う程度の伸びは期待できるだろう(前期比で 0.2%程度の伸びが続くイメージ)。16 年
度の企業収益の大幅な減益の影響で、17 年度の雇用者報酬の伸びについては期待はずれのものとなる可能性が高いと思われ
る。このため、前年度比で 1%を超えるような消費の伸びは想定し難いところだ。数量ベースの景気回復期待が持続するので、消
費が大崩れすることはないが(いわゆる「底堅い推移」)、景気回復の主役は民間部門の内需ではなく輸出や公共投資(公的固定
資本形成)といった外的な力であり、17 年度の景気回復は典型的な“外部依存型”のものとなろう。
成長率の見通し: 17 年度はコンセンサス対比でやや強めの見方
日本の実質 GDP 成長率については 17 年度を前年度比+1.4%、18 年度を同+1.0%と予想する(12 月 8 日時点の予測数字
から変更なし)。基本的に潜在成長率(日銀の試算で 0%台半、内閣府の試算で 0.8%程度)を上回る成長が続くと見ている。17
年度のメインドライバーは純輸出(外需)と公共投資(=公的固定資本形成)であり、18 年度はグローバル景気の回復モメンタム
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の鈍化や公共投資の反動減が多少の抑制要因となろう(図表 12)。日本経済研究センターによる ESP フォーキャスト調査(2 月)
では GDP 成長率のコンセンサス予想は 17 年度が+1.2%、18 年度が同+1.1%となっているので、弊社では 17 年度については
コンセンサス対比で相当程度の上振れを見込んでいることになる。需要項目では実質輸出を 17 年度は前年度比+4.7%(コンセ
ンサス予想は同+3.1%)、実質設備投資を同+3.1%(コンセンサス予想は同+1.8 %)、実質公的固定資本形成を同+3.6%(コン
センサス予想は同+3.0%)、鉱工業生産指数を前年度比+3.4%(コンセンサス予想は同+2.4%)と主に外需から派生する製造業
の循環や官公需といった「外生変数」について市場予想よりやや強めに見ている。個人消費については 17 年度のコンセンサス予
想が前年度比+0.8%だから、同+0.7%とする弊社予想は若干慎重だ。
(図表 12)
GDP成長率の予測(16~18年度)
(前年度比 %)
予測
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
2015
2016
2017
2018 (年度)
その他寄与度
公的固定資本形成寄与度
純輸出寄与度
GDP成長率(前年度比)
(出所)内閣府、予測は東海東京調査センター
物価見通しと日銀金融政策
コア CPI については、17 年度の上昇率を前年度比+0.8%、18 年度を同+1.0%と予想する(従来と見方に変更無し)。 17 年 1
月のコア CPI は前年同月比+0.1%と 13 ヵ月ぶりのプラス転換となったが、エネルギー価格の上昇によるところが大きい。当面は
このエネルギー価格の前年同月の上昇が続くため、今後数か月でコア CPI は急速に上昇、4 月頃には前年同月比で+1%程度と
なることが予想される。ただし、その後はエネルギー価格の前年比効果は減衰していくと考えられ、最終的には 18 年度にかけて
前年比で+1%強程度の伸びに収斂していくと予想される(図表 13)。
基調としての物価動向を示す「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコア CPI)」も 17 年 1 月は前年同月比+0.2%とプ
ラス幅は前月から 0.1%ポイント拡大している。景気回復局面と労働市場のタイト化が続いているため、フィリップスカーブに沿っ
て基調としての物価についても緩やかに上昇していくと考えること自体は問題ないであろう。ただし問題はそのペースだ。2 月の
東京都区部の「生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数」は前年同月比 0.0%と前月の同+0.1%から伸び率は低下しており、
少なくとも基調としての物価上昇のペースが従来の見方に比べて格段加速しているようには見えない。
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(図表 13)
(前年同月比 %)
コアCPIの予想と要因分解
1.5
予測
1.0
0.5
0.0
-0.5
17年度+0.8%、18年度+1.0%
-1.0
-1.5
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3
15
16
17
コア・コア(食料・エネルギー除く)
食料
18
エネルギー
19
(年・月)
コアCPI
(出所)総務省より東海東京調査センター作成、予測
日銀は物価上昇ペースの緩慢さに対しては、本音部分では民間のエコノミスト以上に失望していると思われる。1 月の展望レ
ポートで成長率見通しを上方修正しておきながら、物価見通しに関しては 17 年度、18 年度ともに据え置いたのはそうした“自信
のなさ”を如実に示している。需給ギャップの縮小を地道に待って、賃金上昇を経由する形での物価上昇を目指すのが王道だが、
その経路での物価上昇ペースはあまりにも緩慢、時には効果が全く出ていないようにも見える。日銀としては、内心ではこの“王
道”の方ではなく、為替レートの「円安」の進展という手っ取り早い“バイパス”に期待しているのではないかと思われる。 例えば
黒田日銀総裁は 12 月の金融政策決定会合後の会見で、図らずも為替レートの水準に関し言及してしまっており(通常は言及し
ないところ)、このあたりに日銀としての隠しきれない本音が出てしまっているようだ。
それだけに日銀は市場とのミスコミュニケーションによる「円高」の進展を何よりも恐れていると考えられ、自ら好んでマーケット
に「金融引き締め」を連想させるようなメッセージを送るような愚はおかさないだろう。米国金利に連動する形で日本の長期金利に
上昇圧力がかかる局面においては、日銀は”力技”でそれを抑制してくるであろう。2 月 9 日の高知における講演・会見でも中曽副
総裁は、「市場の一部には金利上昇に伴って日銀が長期金利の誘導目標を引き上げるとの観測が出ているが、2%物価目標に
は距離があり、現在の強力な金融緩和を推進するのが適当」と明言している。また 2 月 28 日に日銀は 3 月分の長期国債買い入
れについて、実施日を事前に公表する等、運営方法を変更しており、これも日銀の強い長期金利の抑制スタンスの現れではない
かと考えられる(事実、これにより日本の長期金利は安定化している)。7 月以降はこれまで日銀執行部に対して批判的であった
佐藤、木内両審議委員が退任し、後任には従来よりも執行部の方針に対してより融和的な委員が選ばれる可能性が高いと思わ
れる。市場に緩和政策の出口を意識させるような、枠組み変更が議論される可能性は当面考え難く、少なくとも黒田総裁の在任
期間中は現行金融政策が維持される可能性が高いと思われる。なお現在年間 80 兆円ペースで行っている長期国債の買入れペ
ースに関しては、日銀執行部ももはや金額自体にこだわりは有していないと考えられ、17 年後半には買入れペースを減額するか
買入れ金額自体を明示しない方式に変更してくると見ている。
(以上)
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※上記金額が2,700円(税込)に満たない場合には、2,700円(税込)になります。
※信用取引には、委託手数料の他に、委託保証金を差し入れていただきます。対面取引における信用取引の委託
保証金は、売買代金の30%以上で、かつ500万円以上、ダイレクト信用取引の委託保証金は、売買代金の33%
以上で、かつ30万円以上が事前に必要です。加えて、買付の場合は金利、売りつけの場合は貸株料及び品貸料
等をいただきます。金利、貸株料、品貸料等の額は、その時々の金利情勢等に基づき決定されますので、金額等
をあらかじめ記載することはできません。
Ⅱ 外国金融商品市場等に上場されている株券等
外国株券等(外国の預託証券、投資信託等を含みます)の取引には、国内の取引所金融商品市場における外国株券
等の売買等のほか、外国金融商品市場等における委託取引と国内店頭取引の2通りの方法があります。
(1) 外国金融商品市場等における委託取引
①国内取次ぎ手数料
国内取次ぎ手数料(上限:約定代金の1.404%(税込))が掛ります。
②外国金融商品市場等における委託手数料等
外国株券等の外国取引にあたっては、外国金融商品市場等における委託手数料及び公租公課その他の諸費用
が発生します。当該諸費用は、その時々の市場状況、現地情勢等に応じて決定されますので、本書面上その金額
等をあらかじめ記載することはできません。
(2) 国内店頭取引
お客様に提示する売り・買い参考価格は、直近の外国金融商品市場等における取引価格等を基準に合理的かつ
適正な方法で算出した社内価格を仲値として、仲値と売り・買い参考価格との差がそれぞれ原則として2.75%(手
数料相当額)となるように設定したものです。当該参考価格には手数料相当額が含まれているため、別途手数料
は頂戴いたしません。
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Ⅲ その他
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