2016年6月~2016年8月 - 三井住友トラスト・アセットマネジメント

2016年9月27日
アジアREIT市場の動向と今後の⾒通し
(2016年6⽉〜2016年8⽉)
足もとのアジアREIT市場 ~英国EU(欧州連合)離脱決定による影響~
英国⺠投票におけるEU離脱派の勝利を
受け、⾹港・シンガポールで上昇
(図1)各国・地域のREIT指数の推移
(2015年8月31日~2016年8月31日、日次)
150
アジアREIT市場は、今年に入り、世界的な金利低下
が進むなか、相対的に高い配当利回りが評価された 140
ことなどから堅調に推移してきました。
⾹港
140
⽶国
130
6月23日から8月31日にかけての各国REIT指数の騰
落率を見ると、英国が▲6.4%となった一方、その他の
REIT市場は上昇しており、特に香港やシンガポールの
上昇が目立っています(図2参照)。投資家による高利
回り追求の動きが強まるなか、アジアREITの利回りが
相対的に高いことに加え、アジアREITによる欧州の不
動産の保有割合が限定的であることなどが、アジア
REITが選好されている要因と見られます。
今後、英国のEU離脱に向けたプロセスがどのように
実施されるかにもよりますが、欧州不動産市場へ振り
向けられていた投資資金がグローバルにシフトする可
能性が出てきたものと考えられます。
126
シンガポール
116
シンガポール
日本
116
80
15/8
6月23日の英国民投票におけるEU離脱派の勝利を
受け、各国のREIT指数の動きには顕著な違いが見ら
れました。
米国
⽇本
また、6月下旬には英国の国民投票で、EU離脱派
120
が予想外に勝利したことを受け、景気見通しへの不
透明感の強まりから世界的な低金利環境が長期化す 110
るとの見方が広がるなか、投資家による高利回り追
100
求の動きからアジアREIT市場への資金流入が加速
し、シンガポール、香港市場ともに大きく上昇する展
90
開となりました(図1参照)。
各国REIT指数にも⼤きな動き
香港
15/10
15/12
16/2
16/4
16/6
16/8 (年/月)
※S&PグローバルREIT指数(現地通貨ベース、配当込み)の各国・地域
のデータを2015年8月31日を100として指数化
(出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのデータを基に三井住友トラス
ト・アセットマネジメント作成
(図2)英国EU離脱決定後のREIT指数の動き
20
15
(%)
14.3
7.9
10
4.2
5
1.3
0
-5
-6.4
-10
香港
シンガ
ポール
米国
日本
英国
(ご参考)
※2016年6月23日~2016年8月31日の騰落率
※S&PグローバルREIT指数の各国・地域インデックス(現地通貨ベー
ス、配当込み)のデータ
(出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのデータを基に三井住友トラス
ト・アセットマネジメント作成
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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ご参考資料
堅調な不動産ファンダメンタルズと業績 ~賃料と配当金動向~
<香港> 商業施設は、引き続き中国からの旅行客減少による影響から宝飾品など高級品を中心に小売売
上高が伸び悩んでおり、全体的な賃料はやや頭打ちとなっています。一方、REITが保有する商業施設物件の
取扱商品は日用品の割合が多いことから、これらの影響は軽微でREIT各社の業績は概ね堅調です。オフィス
は、金融ビジネスの中心である中環地区の空室率が過去最低水準にあり、需給逼迫の状況から賃料は高水準
で推移しています(図3参照)。
<シンガポール> 商業施設は、日用品を扱う優良ショッピングモールを保有するREITなどを中心に高稼働
率を維持し、賃料は底堅く推移しています。一方、オフィスは2016年後半以降、大型物件の供給が見込まれる
なか、賃料が下落しています。市場全体では当面賃料下落が続く見通しですが、主要なREIT各社は供給増を
見据え、2016年~2017年に更新期限を迎える大半の契約について前倒しで契約を終えており、賃料下落によ
る業績への影響は限定的と見られます(図4参照)。
(図3)香港賃料の推移
300
(図4)シンガポール賃料の推移
(2000年10-12月期~2016年4-6月期、四半期)
オフィス
商業施設
250
(2000年10-12月期~2016年4-6月期、四半期)
オフィス
商業施設
200
200
150
150
100
100
50
50
0
00/12
250
03/12
06/12
09/12
12/12
15/12
0
00/12
03/12
06/12
09/12
12/12
15/12
(年/月)
(年/月)
※オフィス・商業は中央地区の全エリア、2000年10-12月期を100として
※オフィスは上環地区~中環地区、商業は公表元の選定基準に基づく
指数化
エリア、2000年10-12月期を100として指数化
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント
作成
作成
アジアREITの業績は今後も安定的に推
移する⾒込み
香港は業績が堅調なことから、1口当たり配当金は安
定的に推移しています(図5参照)。今後も商業施設は
日用品を中心に概ね底堅い売上が見込まれるほか、
オフィス市場も良好な需給環境が続く見通しです。
一方、シンガポールは1口当たり配当金にやや頭打
ち感が見られます(図5参照)。引き続き海外景気の減
速やオフィスや物流・産業用施設などにおける需給緩
和などが懸念材料である一方、立地や設備状況など
保有物件のクオリティの高さや、国内外での高利回り
物件の取得などが見込まれることから、全体としては
概ね安定した業績が続く見通しです。
(図5)1口当たり配当金の推移
130
(2012年11月末~2016年8月末、月次)
⾹港
120
110
100
シンガポール
90
80
12/11 13/5 13/11 14/5 14/11 15/5 15/11 16/5
(年/月)
※1口当たり配当金は1口当たり実績配当金の直近12ヵ月合計、
2012年11月末を100として指数化
※香港はハンセンREIT指数、シンガポールはFTSE ST REIT指数
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント
作成
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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ご参考資料
魅力的な配当利回りと株価純資産倍率 ~良好なバリュエーション水準~
⾼⽔準が続く配当利回り
REITの価格水準の割安・割高評価を行う際の尺度
の1つに「国債との利回り差=リスクプレミアム」があ
ります。
2016年8月末現在のアジアREITの配当利回りは、ア
ジアREIT市場への資金流入の動きを受けてやや低
下傾向にあるものの、シンガポールで6.2%、香港で
4.1%とグローバルREIT市場において相対的に高水
準となっています。また、シンガポールや香港では、
REITの配当利回りと同様に10年国債利回りも低下基
調で推移していることからリスクプレミアムはシンガ
ポールで4.4%、香港で3.1%と依然として高い水準を
維持しています(図6参照)。
PBR(株価純資産倍率)*もシンガポールが0.97倍、
香港が0.89倍と1倍割れとなり、過去の平均と比べて
も割安な水準で推移しています(図7参照)。
(図6)各国・地域のREITと10年国債利回り比較
(%)
8
(2016年8月末現在)
REIT配当利回り
6.2
10年国債利回り
6
4.1
4
3.6
3.1
1.8
2
1.6
0.9
利回り差
3.1%
利回り差
4.4%
0
利回り差
3.2%
利回り差
2.1%
-0.1
-2
シンガポール
香港
日本
米国
※REITの配当利回りはS&PグローバルREIT指数の各国・地域の実績
配当利回り。データは小数点以下第2位を四捨五入しています。
(図7)香港・シンガポールREITのPBRの推移
(倍)
割高
(2010年1月末~2016年8月末、月次)
1.8
1.6
*PBR(株価純資産倍率):株価(REIT価格)が1株当たり純資
産の何倍かを示す指標で、相対的に値が低いほど割安と判
断されます。一般にPBRが1倍であるとき、株価が解散価値
(株主資本)と等しいとされ、それ以下だと割安として扱われ
ます。
※香港とシンガポールのPBRは時価評価を用いて算出される
為、NAV(Net Asset Value = 純資産価値)と同様の割安判
断指標として掲載しています。
シンガポール
2010年1⽉末からの平均値1.06倍
1.4
2016年8⽉末
1.2
シンガポ-ル
0.97倍
1.0
0.8
割安
香港0.89倍
⾹港
2010年1⽉末からの平均値0.95倍
0.6
10/1 11/1 12/1 13/1 14/1 15/1 16/1 (年/月)
※S&PグローバルREIT指数の香港・シンガポールのデータ
各国で投資資産に⼤きな特徴
用途別構成比率では、シンガポールでは商業施
設や物流・産業用施設の比率が高く、香港では
ショッピングモールなどの商業施設が8割強を占め
るなど市場ごとで投資資産に特徴があります(図8
参照)。また、シンガポールや香港のREITは、他の
アジア諸国(日本、中国、インドネシアなど)にも物
件を保有しているほか、近年では一部のシンガ
ポールREITにおいてオーストラリアなどにも物件を
保有する動きが活発化しています(4ページ参照)。
(図8)各国・地域REITの用途別構成比率
(2016年8月末現在)
100%
その他
倉庫
80%
住居用施設
ヘルスケア
60%
ホテル&リゾート
オフィス
40%
分散型
物流・産業用施設
20%
商業施設
0%
シンガ
ポール
香港
オーストラリア 日本
(ご参考) (ご参考)
※S&PグローバルREIT指数の各国・地域インデックスのデータ
(出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックおよびBloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
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ご参考資料
<コラム> 香港・シンガポールREITの国際化への取り組みが活発
世界的な低金利環境が続くなか、香港・シンガポールREITでは国際化への取り組みが進められています。
⾹港市場と深セン市場の相互取引認可と
中国本⼟での物件取得が活発
8月16日、中国国務院は、香港市場と深セン市場間
において株式相互取引を認可すると発表しました。現
在準備に着手しており、稼動は11月半ば~下旬頃の
予定です。同時に2014年11月に導入された香港市場
と上海市場の相互株式取引に関する累積取引枠上限
を撤廃することも合わせて発表されました。今後導入さ
れる香港市場と深セン市場の相互取引においては1日
当たりの投資枠上限が設定されるものの、中国本土
の投資資金が香港市場に流入することで双方の市場
活性化が期待されます。
中国国内ではREIT制度の整備は道半ばであり、市
場整備が先行した香港REITは中国本土投資家の選好
対象になるものとみられます。なかでも、香港市場を代
表するブルーチップ(大型優良株)で、中国本土にも物
件を保有するリンクREITは、1口当たり配当金が2桁の
伸び率を維持しており、今後も動向が注目されます。
(ご参考)海外不動産の投資物件事例
物件名:ECモール
延べ床⾯積
概要
既存REITの国内外での物件取得および
新規REITの上場が活発
シンガポールREITの各投資法人は主要資産(オフィ
ス、商業施設、産業用施設)を国内に多く保有してい
ますが、近年ではさらなる成長機会を求めて、シンガ
ポール以外の国での物件取得が進められています。
この背景として、負債水準が他国と比べ低めであり
投資余力が認められること、また投資効率改善のた
めに利回りの高い物件への入替・既存物件の大規模
改修投資に積極的であることが挙げられます。物件
取得資金として、銀行借入れに加え新株発行も実施
していますが、対象物件の収益性が高いことから1口
当たり配当金がプラスになるケースが多く、健全な
REIT市場の拡大につながっています。
また、大手不動産企業や海外の保険会社等の金融
機関がスポンサーとなるREITの新規上場が相次いで
います。シンガポール当局は積極的な市場拡大に向
けて市場整備、上場誘致を進めており、今後の国際
化を目指したさらなる取り組みが注目されます。
70,946平⽅メートル(地上7階建て)
リンクREITが保有する北京の商業施設で2015年4⽉
取得。中国のシリコンバレーとも呼ばれるエリアに位置し、
同物件の周辺には最先端のテクノロジー企業や中国トッ
プクラスの⼤学が集まる。2016年3⽉期は通年で
38.7%と⾼⽔準の賃料改定率を達成。
物件名:ONE@チャンギ・シティ
延べ床⾯積
概要
リンクREIT
アセンダスREIT
71,158平⽅メートル(地上9階建て)
シンガポール空港に隣接するチャンギビジネスパーク内にあ
る⼤型物件。2016年3⽉取得。9階建てのガラス張りの
ビルで⼤⼿投資銀⾏のバックオフィスが⼊居。
(ご参考)新規シンガポールREIT上場投資法人概要
フレイザーズ・ロジスティクス&インダストリアル・トラスト
2016年6⽉上場。主にオーストラリアの物流・産業⽤施設を保有。シンガ
ポールの⼤⼿不動産企業のフレイザーズ・センターポイント・グループの傘下
で51物件を保有。資産評価額は約16億豪ドル(約1,400億円)
マニュライフ・US・リアルエステイト・インベストメント・トラスト
2016年5⽉上場。主に⽶国のオフィスを保有。⼤⼿保険会社のマニュラ
イフがスポンサー。3物件(ロサンゼルス、アトランタ等)を保有し、資産評価
額は約7.8億⽶ドル(約938億円)
※概要は上場時点での情報に基づきます。為替は2015年12月末の
データを基に三井住友トラスト・アセットマネジメントが円換算してい
ます。
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ご参考資料
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