赤阪正純 (http://inupri.web.fc2.com) 3 次方程式の解の個数 ( 1) 3 次方程式の解の個数について 例えば,2 次方程式の場合,実数解の個数は判別式 D の符号を調べればわかりますし,解の公式用いて 実際に解を求めることも可能です.しかし,3 次方程式の場合は,判別式や解の公式はないので (本当はあ るんだけど ÝÝ),実数解の個数は 2 次方程式のように簡単にはわかりません.では,どうすれば良いので しょうか. 次の Yes=No マップにしたがって考えよう. .Point/ 3 次方程式の実数解の個数の調べ方 (Yes=No マップ) Yes 因数分解が f(x) = (1 次式) £ (2 次式) の形になるので, (2 次式) の部分がどのような解をもつのか考えればよく, 実質的に 2 次方程式の解の問題と同じになります. できますか? No 定数分離が Yes できますか? No f(x) = 0 を g(x) = a という形に変形して, y = g(x) のグラフと y = a のグラフの 交点を調べることになります. y = f(x) のグラフを直接に調べるしかありません. Y 「定数分離」とは,変数 x と定数 a(など) を左辺と右辺に分離することを言います. Y 実数係数の 3 次方程式は実数解を少なくとも 1 個必ずもちます.このことは,3 次関数のグラフが x 軸と少なくとも 1 回必ず交わることからもわかります.これは 2 次方程式、2 次関数とは決定的に違うと ころです.よって,3 次方程式の実数解の個数は 1 個,2 個,3 個のいずれかになります. L 1. 3 次方程式 x3 + (a + 1)x2 ¡ a = 0 の実数解の個数を調べよ. N 上の Yes=No マップに従います.この方程式は因数分解できます. A x3 + (a + 1)x2 ¡ a = 0 より (x + 1)(x2 + ax ¡ a) = 0. したがって,a の値に関わらず,実数解 x = ¡1 を必ず持っている. 2 次方程式 x2 + ax ¡ a = 0 がどのような解を持つのか考える. この 2 次方程式が x = ¡1 を解にもつとき,1 ¡ a ¡ a = 0 より,a = 1 2 1 のとき 2 1 1 1 2 次方程式 x2 + ax ¡ a = 0 は,x2 + x ¡ = 0 より,(x + 1) #x ¡ ; = 0. 2 2 2 1 1 つまり,x = ¡1 と x = を解にもつので,もとの 3 次方程式も,x = ¡1 と x = の 2 つの解を 2 2 (i) a = もつ. 1 のとき 2 2 2 次方程式 x + ax ¡ a = 0 の判別式 D は,D = a2 + 4a = a(a + 4) なので, 1 1 D > 0 すなわち,a < ¡4,0 < a < , < a のとき,x = ¡1 以外の異なる 2 つの実数解をもつ. 2 2 D = 0 すなわち,a = ¡4,0 のとき,x = ¡1 以外の重解をもつ. (ii) a Ë D < 0 すなわち,¡4 < a < 0 のとき,実数解をもたない. 赤阪正純 (http://inupri.web.fc2.com) 3 次方程式の解の個数 ( 2) したがって,もとの 3 次方程式の解の個数は, 1 1 , < a のとき実数解 3 個. 2 2 a = ¡4,0 のとき,x = ¡1 と重解 1 個で合わせて 2 個. a < ¡4,0 < a < ¡4 < a < 0 のとき,x = ¡1 のみで 1 個. 以上,(i)(ii) より, 1 1 a < ¡4,0 < a < , < a のとき実数解 3 個. 2 2 Za = ¡4,0,1 のとき 2 個. 2 ¡4 < a < 0 のとき,1 個. ■ このように,3 次方程式が因数分解できる場合は,単なる 2 次方程式の問題になり,微分などの知識は全 く不要です. L 2. 3 次方程式 x3 + x2 ¡ x + a = 0 の実数解の個数を調べよ. N 上の Yes=No マップに従うと,因数分解できませんが,定数分離できるので,2 つのグラフの 交点を調べることになります. A x3 + x2 ¡ x + a = 0 より, y = ¡x3 ¡ x2 + x a = ¡x3 ¡ x2 + x () U y=a よって,もとの方程式の実数解は 2 つのグラフ y = g(x) = ¡x3 ¡ x2 + x と y = a との交点の x 座標に 等しい. g0 (x) = ¡3x2 ¡ 2x + 1 = ¡(3x ¡ 1)(x + 1). 1 g0 (x) = 0 より,x = ¡1; 3 x y0 Ý ¡1 Ý ¡ 0 + 1 3 0 y & 極小 % 極大 g(¡1) = 1 ¡ 1 ¡ 1 = ¡1 5 1 g# ; = 3 27 y Ý y=a ¡ & ¡1 5 27 O 1 3 x よって,グラフより実数解の個数は, y=a 5 a < ¡1, < a のとき 1 個 27 5 ]a = ¡1, のとき 2 個 27 5 ¡1 < a < のとき 3 個 27 ¡1 ■ 赤阪正純 (http://inupri.web.fc2.com) L 3. 3 次方程式の解の個数 ( 3) 3 次方程式 x3 ¡ 3ax + a = 0 の実数解の個数を調べよ. N 上の Yes=No マップに従うと,因数分解できませんし,定数分離もできません.したがって, この場合は,y = x3 ¡ 3ax + a のグラフを直接に調べることになります. x3 x3 = a となり,y = のグラフを考えることになります 3x ¡ 1 3x ¡ 1 が,このグラフを図示するには数学 c の知識が必要なので今のところできません (個人的にはこの問題は Y 無理やりに定数分離すると, 定数分離し数学 c を使うべきだと思います). しかし,y = x3 ¡ 3ax + a のグラフが a によって形が変わってくるので,その場合分けから始めねばな りません.つまり,y0 = 3x2 ¡ 3a = 3(x2 ¡ a) なので,次のように形が分類されます. a = 0 のとき a < 0 のとき a > 0 のとき a = 0 と a < 0,すなわち合わせて a ≦ 0 のときは,グラフは単調増加なので,x 軸と 1 回だけ交わるか ら,実数解の個数は 1 個になります. しかし,a > 0 の場合 (極値をもつ場合) は解の個数が 1 個,2 個,3 個の場合があるので,この分類を考 えねばなりません. 実数解 1 個 実数解 2 個 実数解 3 個 この違いはどこにあるのでしょうか.それは,極値の符号の違いにあります.すなわち, ² 実数解が 1 個の場合,極大値と極小値が同符号 (共に正または負) ² 実数解が 2 個の場合,極大値と極小値のどちらか一方が 0 ² 実数解が 3 個の場合,極大値と極小値が異符号 になっています.これがポイントです. つまり,y = f(x) が x = ® で極大,x = ¯ で極小となるとすると, ² 実数解が 1 個 () f(®)f(¯) > 0 ² 実数解が 2 個 () f(®)f(¯) = 0 ² 実数解が 3 個 () f(®)f(¯) < 0 このように,実数解の個数が分類されます. 定数分離できない方程式の場合は,このような手法で分類するしか方法がありません. 赤阪正純 (http://inupri.web.fc2.com) 3 次方程式の解の個数 ( 4) A f(x) = x3 ¡ 3ax + a とおくと,f0 (x) = 3x2 ¡ 3a = 3(x2 ¡ a) a = 0 のとき (i) a ≦ 0 のとき f0 (x) ≧ 0 なので,y = f(x) のグラフは単調増 a < 0 のとき y y 加.よって,y = f(x) のグラフは x 軸とただ 1 回 だけ交わるから,f(x) = 0 の実数解の個数は 1 個 x O O x である (ii) a > 0 のとき f0 (x) = 3x2 ¡ 3a = 3(x2 ¡ a). B f0 (x) = 0 より, x = § Ba B x Ý ¡ a Ý a Ý y0 ¡ 0 + 0 x = 0 で 3 重解 x > 0 で実数解 1 個 a > 0 のとき ¡ & 極大 % 極小 & B B B B f(¡ a) = ¡a a + 3a a + a = a + 2a a B B B B f( a) = a a ¡ 3a a + a = a ¡ 2a a y B ¡ a B a よって,増減表より f(x) は極値をもつので,実数解の個数はグラフより以下のように分類される. 実数解 1 個 実数解 2 個 実数解 3 個 極大値と極小値が同符号 極大値と極小値のどちらかが 0 極大値と極小値が異符号 B B f(¡ a)f( a) > 0 B B f(¡ a)f( a) = 0 B B f(¡ a)f( a) < 0 B B B B f(¡ a)f( a) = (a + 2a a)(a ¡ 2a a) = a2 ¡ 4a3 = a2 (1 ¡ 4a).よって, B B f(¡ a)f( a) > 0 B B f(¡ a)f( a) = 0 B B f(¡ a)f( a) < 0 () a2 (1 ¡ 4a) > 0 () 1 ¡ 4a > 0 () a2 (1 ¡ 4a) = 0 () 1 ¡ 4a = 0 () a2 (1 ¡ 4a) < 0 () 1 ¡ 4a < 0 ∴ 0<a< 1 4 1 4 1 ∴ a> 4 ∴ a= (i)(ii) より,f(x) = 0 の実数解の個数は, a< 1 1 1 のとき 1 個, a = のとき 2 個, a > のとき 3 個 4 4 4 ■ 3 次方程式の解の個数の分類問題は,他のさまざまな問題にも応用される重要なテーマです.しっかりと 理解しておこう.
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