ビーニャ ファレルニア

ビーニャ ファレルニア
来日テイスティングセミナー レポート
今回は、チリ最北端のワイン生産地エルキ
るジョルジオ
ヴァレーより、ビーニャ
ファレルニアのオーナーであり、ワインメーカーを務め
フレサッティ氏をお招き致しました。セミナーでは、これまで誰もワイン生産地として手を付けなかったエルキ
ヴァレーが、いかにユニークな土地であるか、6 種類のテイスティングを交えて詳しく紹介して頂きました。祖国イタリアを離れ、
エルキ
ヴァレーという過酷な環境でのワイン造りに情熱を注ぐフレッサティ氏の想いを、皆様にもお伝え出来れば幸いです。
●はじめに
本日は、皆様とお会い出来る事を大変嬉しく思います。稲葉社長からもあ
りましたように、2015 年に襲ったチリ地震の影響は非常に大きいものでし
た。幸いにも、ビーニャ
ファレルニアのスタッフは誰も怪我をすることは
ありませんでしたが、醸造設備には大きなダメージを受けました。私達は設
備を元通りにするため、懸命に働き、完全復旧までに 1 年間を費やしたこと
で、現在は 100%ワイン造りに専念する事が出来ております。
チリと日本は共に地震国であると共に、ワインに対する情熱があることも
共通していると思います。ワインへの情熱があるからこそ、こうして今回多
くの方々からご支援をいただくことが出来たのではないでしょうか。ご支援
いただきました日本のお客様には、心より感謝申し上げます。
それでは早速、皆様をエルキ
ヴァレーへの旅へとお連れ致しましょう。
ビーニャ ファレルニア オーナー・醸造家
ジョルジオ フレッサティ氏
●エルキ ヴァレーとの出会い ~ワイナリーの設立まで~
ビーニャ
ファレルニアはまだまだ若いワイナリーです。1998 年に私の従
兄弟であり、ワイン造りのパートナーでもあるアルド
オリヴィエ
グラモ
ラと共に設立しました。現在のワイナリーの建物が完成したのは 2003 年の
事です。
なぜ、私がこの土地でワイン造りをはじめようと思ったかと言いますと、
アルドがエルキ
ヴァレーでチリの蒸留酒である「ピスコ」のための葡萄栽
培を行っていた事がきっかけです。もともと彼がピスコ用の葡萄を植えてい
たところに、さまざまな品種のワイン用葡萄を植えたのが始まりです。
2003 年に完成したワイナリー
では、イタリア人である私達が、なぜチリでワイン造りをしているかと言いますと、話は第 2
次世界大戦後にまでさかのぼります。
イタリアは敗戦後、
たいへんな不況に陥り、
仕事も無ければ、
資源も無く、多くのイタリア人が移住の地を探しておりました。アルドもまた同様で、1951 年に
家族と共にイタリアからチリへと移り住みました。
当時は船で 36 日間かかる長旅だったそうです。
左:アルド オリヴィエ グラモラ氏、右:ジョルジオ フレッサティ
アルドの家族はチリに着いた当初、ジャガイモなどの野菜を育てて生計を立てていましたが、1972 年にアルドはエルキ
ヴァ
レーに移り住み、ピスコ用の葡萄栽培を始めました。
それから数十年経ち、1995 年に私が初めてアルドのもとへ観光で訪ねた際、彼が栽培するピスコ用の葡萄を畑で食べたのですが、
その葡萄はとても複雑で味わい深く、「こんなに素晴らしい葡萄ができるのなら、ワインを造ればきっと面白いだろう。」と考え、
アルドにワイン造りの話を持ちかけました。観光で訪れたエルキ
ヴァレーでしたが、私は、わずか 2 時間の間でこの地でのワイ
ン造りを決意し、さっそく気候や土壌の調査を開始しました。
●何もないけれど、ワイン造りへの情熱が突き動かされる場所
私達がワイン造りをしているエルキ
ヴァレーがどのような所かと言いますと、チ
リの首都サンティアゴから北へ 550km 離れた場所に位置し、人口は少なく、レスト
エルキ ヴァレー
ランも無ければ、近所付き合いも無い、まさに何も無い所です。しかし、土壌や気候
条件はとてもユニークで、ワイン造りに非常に適した土地です。
私がこの地でワイン造りを決心したのは、このような葡萄のための栽培条件がそ
ろっていたことが大きな理由ではありますが、何よりも“フィーリング”が先でした。
ビジネスが成功するかどうかを考えるより前に、「どうしてもこの土地でワイン造り
がしたい!」という強い気持ちから、エルキ
とはいうものの、エルキ
ヴァレーでのワイン造りを始めました。
首都サンティアゴ
ヴァレーでのワイン造りを決心した時、アルド 60 歳。
私は 43 歳で北イタリアのトレンティーノのワイナリーでジェネラル
マネージャー
として働いていました。当時、私はまだイタリアに住んでいたので、毎月 1 回、イタ
リアからチリを訪れ、1 週間だけ滞在する、という生活を約 8 年間続けていました。
しかし 2009 年にトレンティーノのワイナリーを辞め、エルキ
ました。これはとても大変なことでした。中でもエルキ
ヴァレーに移り住み
ヴァレーが“何もない所”と
いうのも苦労をした要因の一つです。
例えば、現地でワイナリーの従業員を雇っても、どの分野のプロフェッショナルは
いません。私達以外、エルキ
ヴァレーでワイン造りをする生産者はいませんから、
ワイン造りの知識を持った人材はいるはずもありません。またオフィスワークに関し
ても同様です。そのため、ワイン造りの経験、知識を持つ私が、従業員にすべてをゼ
ロから教えなくてはなりませんでした。このようにファレルニアを設立してからの数
年間はとても大変な思いをしました。
●唯一無二の葡萄栽培地、エルキ ヴァレー
それでは、なぜ私が“何もない”エルキ
ヴァレーにこだわ
るのか皆さんにお伝えするために、この土地についてもう
少し、詳しくご説明します。
エルキ
ヴァレーは非常にクリーンなエリアです。車の渋
滞はもちろんありませんし、日本の様に新幹線や、地下鉄
も通っていません。しかし、そのため空気中の二酸化炭素
量が少なく空気がきれいです。野生の馬やアルパカなど、
様々な野生動物が生息している場所です。
<気候条件>
気候条件も特殊です。年に 1~2 回しか雨の降らない上に、
よく風が吹くため非常に乾燥しています。年間降水量は僅
か 50mm ほど。灌漑をしない限り植物は育たず、山には木
ワイナリーのすぐ裏に広がるプクラロ湖(人口貯水池)
写真上:現在も使用されるインカ帝国時代に造られた水路
も草も生えていません。
そのため、大昔からこの土地ではアンデス山脈からの雪解け水が欠かせません。約 800 年前のインカ帝国時代に造られた水路を
今でも灌漑用水路として利用しています。また、ワイナリーの裏には雪解け水を溜めておく為の人口貯水池があります。2015 年は
雪解け水が少なく、すっかり干上がってしまったのですが、現在は元通りに水が溜まっています。
また、私達は葡萄の品質に関わる要因として以下のものを重要視しています。
■「日照量」
■「日中気温が 25-28℃になる日数の合計」
■「夜間気温が 10℃になる日数の合計」
これら 3 つの要素のコンビネーションによって、収穫する際の葡萄の品質が異
なります。この 3 つの要因のバランスが非常に理想的であることから、エルキ
ヴァレーは世界で最も葡萄栽培に適した場所だと考えています。
日照量に関して言いますと、例えばヨーロッパのどこのワイン産地よりも日照
が強いことが分かっています。日照が強いということは、葡萄の葉の光合成が促
進され、葡萄がより良く成長します。
エルキ
ヴァレーの気候に大きな影響を及ぼしているのが、フンボルト海流で
す。南極から北上してくる海流のため、海水温が非常に冷たくなります。そして
アンデス山脈からは、海側より吹く風よりも暖かい風が畑へと吹き込みます。こ
の海からの冷たい風と、山からの暖かい風がぶつかり合い、私達の所有する畑の
中でも、一番海に近い「ティトン(Titon)」の畑(標高 350m)では毎朝、霧が
発生します。この霧が、時に強すぎる日差しを、程よくさえぎる役目をしてくれ
ティトン(Titon)の畑に霧が発生している様子
るのです。
●畑と土壌
ビーニャ
ファレルニアは、ワイナリーの半径 50km 圏内に 4 つの葡萄畑を所有。それぞれの標高、土壌や気候条件は異なりま
す。自社畑の面積は合計 320ha、その他に 100ha の契約農家からの葡萄も使用しています。
場所
標高
ティトン
350m
プクラロ
515m
ペドリスカル
560m
ワイナリーから近く、ビーニャ ファレルニアにとって非常に重要な畑。もともと畑の中央
を流れていた川を、長い時間をかけて川の流れを変え、山の麓に移動して、中心部分を畑に
した。やせた土壌で、ミネラルが多く含まれる。
ホワンタ
1,700m~
2,070m
世界でも最も標高の高い葡萄栽培地のひとつ。ワイナリー設立前から、ピスコ用の葡萄が植
えてあった場所。そのため葡萄は樹齢が古いものが多い。
ティトン
特徴
海岸から内陸へ約 18km と比較的海岸に近く、海からの冷たい風が吹き、毎朝霧が発生す
る冷涼なエリア。ワイナリー設立後に初めて葡萄を植えた畑で、4 つの畑の中で一番面積が
広い。石が多く、花崗岩が多く含まれる。
ワイナリー周辺の畑。プクラロ湖(人口貯水池)から近く、ワイナリーのすぐ裏に面してい
る。ティトンよりも内陸にあるため、霧はほとんど発生せず、さらに乾燥している。
プクラロ
ペドリスカル
ホワンタ
このように標高が異なる、様々なエリアの畑を所有しているため、たとえ同じ葡萄品種であっても、全く異なる味わいの葡萄を
作ることができるのです。
「標高が異なる」ということは、ビーニャ
ファレルニアとって非常に重要なポイントです。例えば、ヨー
ロッパのワイン生産地域では普通、標高が高くなればなるほど冷涼な気候になるため葡萄の成熟が遅く、収穫時期も遅くなります。
しかし、私達のエルキ
ヴァレーでは全く逆で、標高が高ければ高いほど葡萄の成熟が早く、低ければ低いほど成熟が遅れます。
なぜなら、標高が低い海岸近くのエリアではフンボルト海流の影響で、海から冷涼な風が吹くため気温が低くなり、標高が高いエ
リアの方が日照が強くなり、暖かいからです。
●徹底した調査から得た、最適なテロワールへの理解
私達は、ソーヴィニヨン
ブラン、ペドロ
ヒメネス、カルムネール、シラー、ピノ
ノワール、マルベックと 6 つの異なる品
種を使用したワインで、世界的な賞を獲得しています。半径 50km のエリア内で栽培する 6 つの異なる葡萄品種がすべて賞を獲得
するということは、とても珍しいことです。なぜこのようなことが可能だったかと言いますと、ワイナリーを設立してから 15 年
間、多種多様な土壌をくまなく調査し、それぞれの土壌に適した葡萄を植えたからです。これは、時々ワイナリーに来るだけのワ
インメーカー(コンサルタント)では決して実現することは出来ないでしょう。
ビーニャ
ファレルニアでは、160 個のタンクと 1,000 個の樽を所有しており、ワイナリー設立当初からすべての区画ごとにタ
ンクを分けて醸造しています。土壌調査と、区画ごとに醸造することを 15 年間続けることによって、エルキ
ヴァレーのことを
深く知ることができました。
「ヴィンテージによるばらつきが少ない区画はどこである」とか、
「冷涼なエリアだからピノ
ノワー
ルに適している」といったことは、これらの長年の調査なくして決して知ることはできなかったでしょう。
●ワイナリーについて
ワイナリーの建物はとてもシンプルです。ですが、ステンレスタンクや
オーク樽、研究室(ラボ)などワイン造りに必要なものはすべてそろってい
ます。逆に言えば、エルキ
ヴァレーは街から遠く離れているため、ワイン
の分析なども全て自分たちで行わなければなりません。
「ファレルニア」というワイナリーの名前の由来は、約 2000 年前の古代
ローマ時代に造られていたワイン、「ファレルノ(Falerno)」に因んでいま
す。アルドと私がイタリア出身なので、祖国に関係した名前を付けました。
またワインのラベルに描かれているシンボルマークは、インカ帝国時代より
前にエルキ
充実したワイナリーの設備/研究室(ラボ)の様子
ヴァレーに住みついていた”ディアギータ(Diaguitas)”と言う
民族が陶器に印していたものを採用しました。
●他にはないワイン造りを目指して
ビーニャ
ファレルニアが他のワイン生産者と異なる点は、エルキ
ヴァ
レーの環境がユニークだという点だけではありません。他のチリの生産者た
ちがしないような、全く独自の事にチャレンジしているのです。チリには約
350 軒もの生産者がいますが、彼らとは違う方法を使い、異なる品種を育て、
異なるスタイルのワインを造りたいと考えていました。ですから他の生産者
達は、私達がワインを造り始めた時に「あの二人のイタリア人たちはクレイ
ジーだ。
」と言いました。確かに私達はクレイジーですし、今でもそうです。
なぜなら、私達が造りたいワインは、彼らが造っているワインとは全く異な
るからです。だからこそ私達は、誰もが栽培しているような品種とは異なる、
ペドロ
ヒメネスを育て、サンジョヴェーゼを育て、独自の挑戦をしている
ディアギータ族のマークをモチーフにしたラベル
のです。
●運命を変えたシラー レセルバ
ワイナリーを設立した当初 はとても大変でした。ワイ ン
ジャーナリストたちは、誰一人として私達に目もくれませんで
した。なぜなら、そもそも私達のワイナリーはサンティアゴか
ら 550km も離れた何もない土地にあるのですから。
状況が変わったのは、2005 年 8 月のことです。私達が造る
シラー
レセルバ(W-033)が、ワインズ
ドという品評会で、
「ベスト
ワイン
オブ
オブ
チリ
アワー
チリ」に選ばれた
のです。その時から、我々の運命は大きく変わり、注目を浴び
るようになり、世界各国にワインを輸出するようになりました。
実際のところ、私は、ジャーナリストや批評家の評価や、コン
クールのトロフィーにあまり興味がありません。私にとっては、
消費者である皆様の評価が一番大切だからです。だからこそ、品質は高く、価格は多くの方の手が届きやすいワインを目指したい
と思っています。しかし、こうして高い評価を頂けるということは、ワインメーカーとして嬉しいことでもあります。
デカンター ワールド ワインアワードにてインターナショナル トロフィー受賞!
エルキ ヴァレー独自の土壌と、イタリアで培った
ワイン造りのノウハウが詰め込まれたピノ ノワール
ピノ
ノワール レセルバ
2013
Pinot Noir Reserva
品番:W-050/JAN:4935919080507/容量:750ml
¥2,700(本体価格¥2,500)
【赤・フルボディ】国・地域等:チリ・エルキ ヴァレー
葡萄品種:ピノ ノワール
こちらは比較的新しいワインで、2013 年ヴィンテージが 2 年目です。広いエルキ
ヴァレーの畑の中で、ピノ ノ
ワールに最も適した条件の区画を見つけました。ティトンの畑の気候が、冷涼な気候を好むピノ
ノワールの栽培
には最適です。このピノ ノワールは、いわゆる伝統的なニューワールドのスタイルとは異なります。エルキ ヴァ
レー独自の土壌の特徴と、私がイタリアで培ったワイン造りのノウハウが詰め込まれているからです。
熟成はフレンチオークです。新樽を使わず、2~3年樽を使うことで樽のニュアンスが強すぎず、葡萄の個性を
残しています。そしてフィルターをかけずにボトリング。これも葡萄の個性を尊重し、自然な味わいにするためで
す。味わいには、品種の個性であるクリーンな印象を引き出しました。ブラックチェリーのきれいな香り。樽を使っ
て熟成させていますが、樽香が強すぎることはありません。
なぜなら、お客様に感じていただきたいのはテロワールの個
性であり、オークの香りではないからです。
ピノ
ノワールの樹齢はまだ若く、栽培量も少ないのです
が、今後期待していただけるキュヴェです。大変嬉しいこと
にまだ 2 年目である 2013 年が、
「デカンター ワールド
インアワード」でインターナショナル
ゴールド メダルを獲得。
「ワインズ
ワ
トロフィーおよび
オブ
チリ アワード」
ではトロフィーとゴールド メダルを獲得しました。
イタリアからチリに移住し、今日まで強き母として
一家を支えた「ドンナ マリア」に捧げたワイン
ドンナ マリア シラー 2013
Donna Maria Syrah Appassimento
品番:W-066/JAN:4935919080668/容量:750ml
¥1,836(本体価格¥1,700)
【赤・フルボディ】国・地域等:チリ・エルキ ヴァレー
葡萄品種:シラー
「ドンナ マリア」とは、私の従兄弟アルドの母親の名前で、このワインは彼女に捧げたワインです。彼女は 1951
年に、アルド達、兄弟を連れてイタリアからチリに移住しました。それから今日まで強き母として、また家族の柱
となる存在として一家を支えてきました。
このワインは、ヴァルポリチェッラで使われている「アパッシメント」という技術を活かして造られています。
使用する葡萄の 40%を乾燥させることによって、複雑味が出て、タンニンは非常にソフトになり、凝縮感が生まれ
ます。ただし、収穫した葡萄を湿度や温度がコントロールされた部屋の中で乾燥
させるというヴァルポリチェッラで行われているアパッシメントの方法と異な
り、私達は葡萄を樹にぶら下げたまま乾燥させます。いわゆる、遅摘みの状態に
します。エルキ ヴァレーは、乾燥していて風が吹く、という葡萄を畑で自然に
乾燥させるために最適な環境が整っているため、このようなユニークな方法を用
いることが出来るのです。このように乾燥させた葡萄を使ったワインを造ってい
る生産者は、チリでは他にいないのではないでしょうか。
フルボディですが、重すぎることはありません。味わいには、干し葡萄のよう
な印象があり、しなやかです。少し「甘い」と感じるかもしれませんが、残糖量
は 5~6g/ℓ ほどしかありません。この「ドンナ マリア」は質の良いタンニン
が、“甘く”感じられるのです。とても親しみやすく、飲みすすみやすいワインの
ため、幅広い料理とあわせることができるでしょう。
チリの伝統品種カルムネールをアパッシメントして
世の中を驚かした革新的ワイン
カルムネール レセルバ 2014
Carmenere Reserva
品番:W-032/JAN:4935919080323/容量:750ml
¥1,944(本体価格¥1,800)
【赤・フルボディ】国・地域等:チリ・エルキ ヴァレー
葡萄品種:カルムネール
こちらのワインにもアパッシメントの手法が取り入れられています。60%は乾燥させた葡萄を、40%は通常の時
期に収穫した葡萄を使用します。乾燥させる葡萄の収穫は 6 月中旬に行います。これは北半球で言うと 12 月頃に
あたり、通常より約 2 ヶ月から 2.5 ヶ月遅い収穫となります。こうして乾燥させることで、葡萄の重量は 35~40%
程少なくなります。
チリのカルムネールには親しみがある方も多いかと思いますが、時として青っぽさや荒々しいタンニンが感じら
れるのではないでしょうか。多くの生産者はこれを、樽を使って隠そうとします。しかし、私達の造ったこのカル
ムネールは全く異なっており、そのような荒々しさや青っぽい要素は感じられません。凝縮した果実味、しっかり
とした酸。ヴェルヴェットのようななめらかで熟したタンニン。複雑さもあります。また全体のバランスが優れて
いるため、アルコール度数は 15 度あるにもかかわらず、口の中が燃えるような感覚はありません。これが私達の
ベストセラーワインです。アメリカンオーク 100%で熟成しています。
私達は、樽にもこだわりを持っており、カルムネール レセルバに限
らず、熟成にはすべてフランスのタランソー社が製造する樽を使用して
います。時にアメリカ製のアメリカンオークは若く、青っぽさがあり、
ビターな味わいが出てしまい、タンニンも荒々しくなってしまうことが
あります。一方、私達が使用しているフランスの樽メーカーが造るアメ
リカンオークの樽は、他の樽に比べて値段は高いのですが、その分満足
できる味わいに仕上げることが出来ます。非常に品質の良い樽です。
フレッサティの新しい挑戦シングルヴィンヤード
北部ローヌを意識した美しい味わい
シラー レセルバ ティトン
シングル ヴィンヤード 2012
Syrah Reserva Titon
品番:W-067/JAN:4935919080675/容量:750ml
【赤・フルボディ】国・地域等:チリ・エルキ ヴァレー
葡萄品種:シラー
シングル ヴィンヤード(単一畑)のシラーです。これはティ
トンの畑の中から、最も優れた区画を選び出し、その区画の葡
萄だけを使用しています。また収量も制限しているため、素晴
らしい集約感があります。この区画のテロワールが持っている
個性は、ワインに色濃く表れています。
まず、色がとても濃いです。これはエルキ
ヴァレーが十分
な日照量を持っていることを反映しています。香りにはフロー
ラルな要素や、ブラックペッパーやブラックオリーブのスパイ
シーな要素が感じられます。このスパイシーな要素は、土壌か
らの影響であり典型的なニューワールドのシラーには見られな
いものです。
実は北部ローヌのシラーのスタイルを目指して造っています。
ただ濃いだけでない、美しい味わいがあります。この選び抜か
れたティトンの土壌はとても素晴らしいので、ワインメーカー
である私の力量がほとんど重要とされないほどです。この先 10
年から 20 年、熟成可能なポテンシャルがあります。
¥2,592(本体価格¥2,400)
川の流れを変えてまで造った、独自のカルムネール
「第12回ワインズ オブ チリ アワード」でトロフィーおよびゴールドメダル獲得」
カルムネール レセルバ ペドリスカル シングル
ヴィンヤード 2013
Carmenere Reserva Pedriscal
品番:W-068/JAN:4935919080682/容量:750ml
¥2,808(本体価格¥2,600)
【赤・フルボディ】国・地域等:チリ・エルキ ヴァレー
葡萄品種:カルムネール
ティトン
シングル
ヴィンヤード(W-067)と同じく、このワインのためにペドリスカルの畑の中から最も条
件の良い区画を選び出しました。ペドリスカルとは「石のある場所」と言う意味で、その名の通りもともと川底に
あり、石ころだらけの場所でした。もともと畑の中央にあった川を、山沿いへと移動させました。
その後、この土地を葡萄栽培が可能な土地にするため、石だらけの土地の上に 27cm もの土を盛ったことは、エル
キ
ヴァレーで葡萄栽培をする中で、一番苦労した点のひとつです。2013 年がファーストヴィンテージです。
先に試飲していただいたカルムネール
レセルバ(W-032)とは全く
違ったキャラクターを持ったワインとなっています。伝統的な造り方を
採用し、葡萄の収穫時期を遅らせることもありません。このワインから
も、カルムネールに多い青っぽいニュアンスや、荒々しいタンニンは感
じられないと思います。ほかのビーニャ ファレルニアのワインと比べ
て樽香がしっかりと感じられますが、このワインは初めからオークの要
素を引き出すことを目的として造られています。しなやかな口当たりで、
しっかりとした果実味が感じられます。グラスの残り香は、とても心地
よく感じられます。
このカルムネール
シングルヴィンヤードもベスト
ワイン
オブ
チリに選ばれております。カルムネールを作るということは、私達に
とって大きなチャレンジでした。多くのチリの生産者がカルムネールを
使ったワインを造っており、それらのワインとは違ったスタイルの味わ
いを造りたかったからです。私達が造った 2 つの異なるスタイルのカル
ムネールが市場で大変良い評価をいただいているということは、私達の
ペドリスカルの畑(上)と、
川の流れを変えた時の様子(下)
目的が達せられたといってもよいでしょう。
親子三世代の絆を意識した、
3種の葡萄のブレンドして造るファレルニアのトップキュヴェ
ナンバーワン 2012
Number One
品番:W-040/JAN:4935919080408/容量:750ml
¥3,240(本体価格¥3,000)
【赤・フルボディ】国・地域等:チリ・エルキ ヴァレー
葡萄品種:カベルネ ソーヴィニヨン 30%、シラー25%、カルムネール 25% アルコール度数:15%
名前の由来は単純です。ビーニャ ファレルニアが樽を 100%使用した、一番目のワインだからです。なぜ 3 種
類の葡萄を使っているかというと、アルドの家族が戦後チリに渡ってから、アルドの母親、アルド、そしてアルド
の息子と、
3 世代目になったという事に因んでいます。本日皆様にテイスティングしていただいているワインの中で、
唯一カベルネ
ソーヴィニヨンを使用しています。それぞれ最も良い区画の葡萄を使用しており、カベルネ
ソー
ヴィニヨンとシラーはフレンチオークで熟成し、カルムネールはアパッシメントせずにアメリカンオークで熟成し
ております。フルボディで、熟したタンニンと、とても心地よい果実味を感じていただけると思います。
本日、6 種類のワインを試飲していただいて、私たちのワインに一貫するスタイルである“クリーンな”味わいを感
じていただけたでしょうか。クリーンな味わいは、葡萄品種の個性やテロワールの特徴を、ワインに表現し、その
ような個性や特徴と言うのは簡単にまねできるものではないと思っております。ビーニャ
ファレルニアの一貫し
たスタイルを感じ取っていただけたのではないでしょうか。私達は常に、実際にワインを飲んでいただく、消費者
の方のためにワインを造っております。高い評価や賞を獲得するために、ワインジャーナリストたちに向けてワイ
ンを造っているのではありません。そして、幅広い方々に私達のワインを楽しんでいただきたいという思いがある
からこそ、価格が高くなりすぎないように心掛けております。
●終わりに
私がこのワイナリーを始めた原動力というのは、ワイン造りへの情熱です。しかし、本
日皆様にお伝えした様に、このエルキ
ヴァレーという非常にユニークな土地でワインを
造るということは、決して簡単なことではありませんでした。だからこそ、今現在もこの
土地でワイン造りをする人は、私達以外にはいないのです。
●何事にも代えることが出来ないワインへの情熱
セミナーを終えるにあたり、皆様にあるエピソードをお話ししたいと思います。数年前
のある日、一人の男性が、ビーニャ
ファレルニアへとやってきて 1 時間ほど試飲をしま
した。彼は終始つまらなそうな顔をしていたため、私はてっきり私達のワインには興味が
無いのだな、と思っておりました。しかし、彼は一通りテイスティングを終えると、
「私は
このワイナリーを買収するためにやってきた。」と言いました。私はとても驚きましたが、
「あなたは、このワイナリーを買えるほどのお金を持っていません。
」と、はっきりと答え
ました。すると男性は顔色を変え「君は私がどれほどの金を持っているか知らないだろう!」
と言い放ちました。それでも私は「いや、あなたは私のワイナリーを買えるほどのお金を
持っていませんよ。
」と言いました。彼は烈火のごとく怒って「私は君ごと、このワイナリー
を買いたいのだ。」と言うのです。「よく聞いてください。おそらく、あなたは大金持ちなのでしょう。欲しい物は何だって買うこ
とができるのでしょう。しかし、世の中の物すべてをお金で買えるわけではありませんよ。私のワイン造りに対する情熱だけは、
決して買うことはできません。このワイナリーは金稼ぎのために造ったわけではないし、売り物ではないのです。
」私がそう言うと、
男性は帰っていきました。
最後になりますが、昨年は地震の影響で我々にとっては大変な年となりました。しかし、日本のお客様や、稲葉からの支援もあ
り、そのおかげで私達は今でもワイン造りを続けることが出来、こうして皆様の元へとワインを届けることができています。今日
のプレゼンテーションを通して、皆様に私のワインへの情熱が少しでも伝わったのであれば幸いです。本日は来場いただき、本当
にありがとうございました。
●ビーニャ ファレルニアの共同オーナーであるアルド『オリヴィエ グラモラより、お手紙が届きました。
母の健康状態の悪化により今回の日本への旅をあきらめな
ければならなかったことを大変残念に思っております。
しかし私にとって、家族は人生において最も大切なものな
のです。どうかご理解ください。
今回、日本を訪問しようと思ったのは、チリ地震の義援金
を下さった皆様に直接お礼を言うためでした。ビジネスを超
えた関係からお互いを尊敬、信頼し合い、友情関係を築くこ
とは、今の世の中ではたいへん稀なことです。よくあること
ですが、ビジネスの世界では、たとえそれが正しくなくても
まかりと通ってしまうことがありますから。
今回、私は、チリ政府の援助を一切受けずに我々のワイナ
リーを再建出来た事を誇りを持ってお伝えしたいと思います。
我々はワイナリーの再建にむけて必死に働きました。そのために非常に多くの困難に直面しましたが、現在は 100%元通りにな
り、ワインの生産を再開できるようになりました。昨年 9 月の地震の被害をうけてからの 1 年間はたいへんつらい日々でした。し
かし、それも今は過去のことです。これからも末永く、良い関係を保っていきたいと願っております。
また近いうちに、我々の真の友人の一人として、皆様にお会いできる日を楽しみにしております。
ビーニャ
アルド
ファレルニア
オリヴィエ
グラモラ