SURE: Shizuoka University REpository

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学習評価を軸とした中学校国語科の授業改善 : 学びの成
果を実感するための目標-指導(活動)-評価の一体化の工夫
山崎, 艶子
教育実践高度化専攻成果報告書抄録集. 6, p. 73-78
2016-03
http://doi.org/10.14945/00009559
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学習評価を軸とした中学校国語科の授業改善
―学びの成果を実感するための目標-指導(活動)-評価の一体化の工夫―
山崎 艶子
Improvement of Junior High School Language Arts Classes Based on Learning Evaluations:
Integrating Objectives, Guidance, and Evaluation to Help Students Realize Learning Outcomes
Tsuyako YAMAZAKI
1 問題の所在
大学院入学前、
「指導に生きる評価とは」という疑問をもっていた。また、
「国語の授業は、何が正解か
わからないから嫌い」という生徒の声もあり、ゴールの姿が見えにくい授業を改善したいと思っていた。
大学院入学後、学習評価に関する様々な実践や先行研究に触れ、目標と指導と評価を三位一体とする単元
展開が、ゴールの姿を明確にする糸口になると感じた。そして、目標・評価を共有することで、生徒が学
び方をメタ認知し、
「こうすればできる、わかる」を実感できる授業になるのではないかと考えるように
なった。更に、身に付けた学び方を別の場面で活用する学びの必要性も痛感した。生徒が身に付けた学び
方を別の場面で活用し、
「できた」
「わかった」と実感できる単元展開・授業作りを目指した。
2 学習評価を軸とした単元展開・授業作りについて
従来の授業では、評価規準は設定されていたが、生徒の具体の姿が明文化されることはあまりなかっ
た。今回は、評価規準だけでなく生徒の具体の姿を明文化する。それを、
「評価指標」とした。評価指標
を作る際は、まず、評価規準のB評価から考える。次に、
「生徒の具体の姿」として、振り返りで生徒に
書かせたい内容を文章化する。これにより、ゴールの姿(目標達成の姿)がより明確になる。
今回の単元展開作りでは、まず、単元目標を設定し、次に最終次の評価指標(表 1)を作る。そして、
表 1 最終次の評価指標
最終次の「生徒の具体の姿」を目指して、単元展開を
評価規準
「起承転結」の文章
構成、具体例や問
題提起に答える形
などの表現の工夫
について、主張を
より分かりやすくし
ようとする筆者の
意図を踏まえて説
明する。
生徒の具体の姿
○「起」で話題を出し、「承」で更に循
環型社会について説明し、転で循環
型社会の実現する方法について説
明して、結で筆者の主張をするとい
う文章構成にしている。
○私たちが身近でできることや企業
等で取り組むことの具体例を出すこ
とで、主張を理解しやすくしている。
〇まず循環型社会について、そして
それを実現する方法について問題
提起に答える形にして、内容を少し
ずつ詳しくして読者にわかりやすく説
明しようとしている。
B
「起承転結」の文章
構成、具体例や問
題提起に答える形
などの表現の工夫
について、どのよう
にしてわかりやすく
つたえようとしてい
るか筆者の意図を
踏まえて説明す
る。
○起承転結で内容を整理して分か
りやすくしようとしている。
○具体例を出すことで、身近な方法
で実現できることを分かってもらおう
としている。
〇問題提起に答える形にして、何に
ついて説明しているかを分かりやす
くしたり、興味をもたせたりして内容を
理解してもらおうとしている。
C
問いかけや具体例
などをあげることが
できるが、筆者の
意図を考えるのが
困難である
〇起承転結が分かった
〇具体例でわかりやすくしている。
〇問題提起に答える形にしている。
考える。更に、毎時間の目標を基に各次の評価指標を
作り、その評価指標を基に指導や活動を考える。この
ように、
「目標」
「評価指標」を軸に指導や活動を考え
る「目標と指導(活動)と評価が一体化」した単元作
りをする。評価指標が授業前にあれば、目標達成の姿
A
やそれを目指す指導や活動も明確になり、学び方を身
に付ける指導がしやすくなる。また、学習目標や評価
指標が生徒と共有できれば、生徒が目標達成を目指
し、学び方を実感できるのではないかと考えた。
更に、従来の単元作りとは異なる点として、学び方
を別の課題で活用させる場を作る。それにより、生徒
が学びの成果を実感しやすくなるのではないかと考え
ている。目標と指導(活動)と評価の一体化により、
生徒が学び方を身に付け、その学び方を活用する場の
設定により、生徒が学びの成果を実感する。そんな姿
― 73 ―
を目指した単元展開・授業作りを実践し、分析したいと考えた。
3 研究の目的と方法
<研究の目的>
【研究目的1】目標と指導(活動)と評価が一体化した単元展開作りによって、生徒が目標達成の姿をイ
メージし、学び方を身に付ける
【研究目的2】学び方を別課題で活用する場の設定によって、生徒が学びの成果を実感する
<研究の方法>
研究協力校において、6 月と 10 月に中学 2 年生 2 学級で国語科の授業を2単元行う。
【研究目的1】
【研究目的2】をもって授業実践1を行い、そこで明らかになった課題を踏まえて、授業実践2を行う。
分析は、授業終盤に生徒が書く振り返りの記述を基に行う。
4 授業実践
(1) 授業実践1
① 単元展開・授業作り
【研究目的1】目標と指導(活動)と評価が一体化した単元展開作りによって、生徒が目標達成の姿を
イメージし、学び方を身に付ける
次のⅠ~Ⅵの手順で単元目標や評価指標を作り、それを基に単元展開・授業を構想した。
Ⅰ 指導事項(付けるべき力)を決定する
文章構成や表現の仕方に着目させることで、今後の読解の助けになると考え、指導事項「C読むこと
ウ 文章の構成や展開、表現の仕方について、根拠を明確にして自分の考えをまとめること」を取り扱う
ことを決定した。
Ⅱ 学習指導要領解説を参考に、単元目標を考える
「C読むこと ウ」の解説の中の、
「そのような表現をした書き手の目的や意図を考えたり、その効果
について考えたりすることを指導する」から、単元目標を「文章の構成や展開、表現の仕方とそのような
表現をする筆者の意図を説明する」とした。
Ⅲ 単元目標を達成しやすい教材を選定する
大段落の役割や表現の工夫が明確な教材が適するという考えから、
『循環型社会』とは何か」
(片谷教孝
著、三省堂中学2年教科書)を教材とした。
Ⅳ 最終次の姿として、教材でおさえたいポイントを入れて最終次の評価指標(表 1)を作成する
おさえたいポイントを、この教材の構成や表現の工夫である「問題提起に答える形」
「具体例」
「起承転
結の構成」
、そういう表現をする筆者の意図(表現の効果)と考えた。そして、その2点を入れて説明す
る姿を文章化した。
Ⅴ 最終次の評価指標から、できるようにしたいこと・指導・活動を考えて、単元展開案(表 2)を作
成する
特に、第1次において、
「なぜ筆者の意図を説明するのか」という目標の意義を、生徒が理解すること
が必要だと考えた。そして、その構成や表現の仕方からどんな意図が感じられるかを出し合う活動を行
った。授業終盤に単元目標と目標達成した姿を確認する授業を計画した。
Ⅵ 毎時間の目標を別に設定し、それらを基に各次の評価指標を作成する
― 74 ―
【研究目的2】学び方を別課題で活用する場の設定によって、生徒が学びの成果を実感する
最終次(第6次)において、
「天気を予報する」
(出典:光村図書小学5年教科書)という別教材を使
い、
「文章の構成や展開、表現の仕方とそのような表現をする筆者の意図を説明する」活動を導入した。
表2 「
『循環型社会』とは何か」単元展開案
次
学習課題・学習活動
評価規準
1 ○文章を読み比べよう
・文章の構成や表現と、筆者
・同じ内容でも構成・表現 の意図が関係あることに気づ
の違う文章を読む
くことができる【ワークシート】
・筆者の意図によって構成
や表現が違ってくることを
知る
2 ○筆者の主張を説明しよ ・筆者の主張を、「循環型社
う
会」「一人一人」「社会全体」
・主張がどこにあるかおさ という言葉を使って表現でき
え、キーワードを使って説 る【ワークシート】
明する
3 ○「循環型社会」とは何 ・「循環型社会」について、言
か、説明しよう
い換えた言葉を使って説明
・循環型社会について説 することができる【ノート】
明している位置をおさえ、
分かりやすく説明し直す
4 ○問題提起に答える形式 ・「内容を明確に」「興味をも
をとる筆者の意図を考 たせる」というような言葉を使
えよう
って、問題形式に答える形式
・グループごとに3つの視 をとる筆者の意図を説明する
点から、そう表現する筆者 ことができる【ワークシート】
の意図を考える
5 ○具体例を提示する筆者 ・「身近」のような言葉を使っ
の意図を考えよう
て、具体例を提示する筆者
・グループごとに3つの視 の意図を説明することができ
点から、そう表現する筆者 る【ワークシート】
の意図を考える
6 〇起承転結の文章構成に ・構成や表現の工夫とそう表
(
ついて知ろう
現する筆者の意図を説明す
最 ・起承転結の文章構成を ることができる【ワークシート】
終 知り、他の文章でも構成を
次
) 確認する。
A
B
C
D
1
0
1
4
11
2
2
28
22
未記入
0
2
2
0
欠席
その他
0
1
0
6
6
9
13
10
33
31
29
0
1
2
8
14
0
3
1
9
10
16
5
6
第1次
第2次
(1組のみ)
14
15
9
4
第3次
補足
第4次
第5次
第6次
図 1 「循環型社会」とは何か 目標達成の状況
② 結果と考察
【研究目的1】目標と指導(活動)と評価が一体化した単元展開作りによって、生徒が目標達成の姿をイ
メージし、学び方を身に付ける
成果は、各次の授業において、目標達成の姿をイメージして活動する授業形態にできたことである。単
元展開作りの段階で、目標達成の姿(評価指標)を基に指導や活動を構築することは有効であった。
課題は、1時間1時間の積み重ねを、最終次の単元目標の達成につなげられなかったことである(図
1)。主な原因は二つある。一つ目は、第1次で単元目標の共有化ができなかったこと。そのために、生徒
が単元目標達成の姿がイメージできなかった。二つ目は、単元のまとめを「分かったこと」という曖昧な
問いでのまとめにしてしまったことである。学び方を習得できたかどうか、明確に分析することもできな
かった。どのような学習課題によって、身に付けた学び方を可視化するかが大きな問題である。授業実践
2に向けて、第1次での単元目標の共有化、学び方が可視化できる振り返りや単元のまとめの必要性が明
らかになった。
【研究目的2】学び方を別課題で活用する場の設定によって、生徒が学びの成果を実感する
筆者の意図と共に説明できた生徒は1割を切った。しかし、1年次の学びである「ナンバリング」
「写
真やグラフ」の効果などを記述した生徒もいた。意見交流の場を設定すれば、既習の学びを新たな学びと
結びつけることができる。課題は、学習課題とワークシートである。
【研究目的1】と同様に、生徒が身
に付けた学びを、どのような問いによってどのように表現させるか、工夫の必要性が明らかになった。
― 75 ―
(2) 授業実践2
① 単元展開・授業作り
【研究目的1】目標と指導(活動)と評価が一体化した単元作りによって、生徒が目標達成の姿をイメー
ジし、学び方を身に付ける
授業実践1でできなかった「評価指標の共有化」をするために、自己評価を導入し、学びの成果を実感
できる授業作りを目指した。
Ⅰ 指導事項(付けるべき力)を決定する
指導事項「C読むこと エ 文章に表れているものの見方や考え方について、知識や経験と関連付けて
自分の考えをもつこと」に決定した。
Ⅱ 学習指導要領解説を参考に、単元目標を考える
解説の中の「これまでに身に付けてきた知識や様々な体験と関連付けて」から、学習目標を「筆者の意
見に対して根拠をもって考えをまとめよう」とした。
Ⅲ 単元目標を達成しやすい教材を選定する
筆者の意見がユニークで賛否が分かれやすく、生徒が経験と絡めて考えをもちやすいであろうと考
え、
「学ぶ力」
(内田樹著、教育出版2年教科書)を教材とすることに決定した。
Ⅳ 最終次の姿として、教材でおさえたいポイントを入れて最終次の評価指標(表 3)を作成する
表 3 「学ぶ力」最終次の評価指標
A
B
C
D
評価指標
筆者の意見を受け止
め、共感できるかでき
ないか、根拠として知
識や経験を入れて書
いている。そして、
「学ぶ力のある人」に
ついて、筆者の考え
とは違う視点を見つ
けて、自分の意見を
広げたり深めたりして
書いている。
筆者の意見を受け止
め、共感できるかでき
ないか、根拠として知
識や経験を入れて書
き、自分の意見を書
いている。
筆者の意見に対し
て、共感できるかでき
ないかを書くことがで
きるが、根拠として知
識や経験を入れて書
くことができない。
手紙の具体例
筆者の意見には共感できる部分と共感できない部分がある。部活動でも「学びたいのです、教えてください」
ということを、先生だけでなく、先輩に向けることで、うまくなることがあるからだ。私にはあこがれの先輩がい
て、まねをしてシュート練習…
しかし、「教えてください」という姿勢でなくても、学べる事があることも知った。この学習の中で、「反面教師」
という言葉もあることを知ったのだ。「この人のようになりたくない」という人も師ということになり、学ぶことができ
ると言うことに気づくことができた。
学習後、学ぶ力のある人とは、いつでも学ぼうとする人、師と思えない人からも何でも吸収しようと人というこ
とに加えて、あきらめずに学び続ける人だと思うようになった。あこがれの先輩のまねをしてシュート練習をし
ていた時、ちょっとした失敗やなかなかうまくならないことであきらめかけてしまうことがあったことを思い出し
た。しかし、あきらめずに…ちょっとした失敗や分からないことでつまずいても、「もう一回がんばろう」「先生や
先輩にわかるまで聞いてみよう」とあきらめずに学ぼうする人が学ぶ力のある人だと思う。
「学び足りないという自覚があること」という意見に、共感できる。例えば、英語の授業で「俺は、英語は必要
がないから」と思ったら、何もやろうとせず英語はできない。「英語ができたら、外国の人ともっと話せるようにな
る、だから、ALTの先生にいっぱい話しかけよう」という意識でやると、上達が早くなるようだ。私の友達で、…
学習後、学ぶ力がある人とは、自分から学ぶ場をどんどん見つけて、たくさん質問したりして勉強する人だと
思った。
筆者の意見を正しく
受け入れることができ
ていない。もしくは、
共感できるかできな
いかの意見が書けな
い。
「師をその気にさせる」と思うというのには共感できる。なぜならあいさつをしっかりしないと教えてもらえない
からだ。
「学び足りないという自覚があること」という意見に共感できる。なぜなら、自分から学びたいと言える人はや
る気のある人で、やる気がないと何にも考えることも覚えることもできないからです。学び足りないという自覚か
あれば、もっともっととどんどん伸びていくと思います。
学ぶ力がある人とは、やっぱり、やる気のある人だと思った。
Ⅴ 最終次の評価指標から、できるようにしたいこと・指導・活動を考えて、単元展開案(表 4)を作
成する
改善点1は、第1次で生徒と単元目標を共有することである。そこで、筆者の意見に対して考えをもつ
ために必要なことを話し合い、
「筆者の意見を受け入れる」
「根拠に経験や知識を入れる」という二つのポ
イントにまとめた。改善点2は、毎時間の振り返りと単元のまとめを、生徒の学び方が可視化できるもの
― 76 ―
にすることである。毎時間、筆者の意見を理解してから、振り返りとして上記の二つのポイントを踏まえ
て自分の考えを書かせ、二つのポイントが踏まえられているかを自己評価させるようにした。単元のまと
めとして生徒が学び方を意識できるように、二つのポイントを使って筆者に手紙を書くという活動を取り
入れた。
Ⅵ 毎時間の目標を別に設定し、それらを基に各次の評価指標を作成する
表 4 「学ぶ力」 単元展開案
次
学習課題・学習活動
1 ○「筆者の意見に対して考える」上で
重要なポイントを知ろう
・例文から重要なポイントとは何か考え
る
2
○単元の目標を理解し、「学ぶ力」の
文章構成を理解しよう
・単元の最後に書く手紙の例を見て、
単元の目標を確認する
・「学ぶ力がある人」についての自分の
考えを書く
・「学ぶ力」を読み、各大段落の問題
提起を抜き出す
3 ○筆者の考える「学力」ついて理解
し、自分の意見をもとう
・「学力」について一般的な考えと筆者
の考え方の違いを考える
・筆者の考えと一般的な考えと、どちら
が自分にとって役立つ力だと思うか
を、根拠を入れて書く。
4 ○筆者の考える「学ぶ力が伸びる条
件」を理解し、自分の考えと比べよ
う
・分からない部分を質問して、分かり
やすい言葉に言い換え
・共感できるかできないか、根拠を入
れて付箋に書く
5 ○筆者の手紙を書こう
( ・「筆者の意見に共感できるかできな
最 いか→根拠→学習後の自分の意見」
終 で文章(手紙)を書く
次
)
評価規準
・二つのポイント「筆者
の意見を受け入れる」
「根拠に経験や知識
を入れて」を踏まえて
説明することができる
【知識・技能】
・自分の「学ぶ力があ
る人」の考えを、根拠
に経験や知識を入れ
て説明している【読む
こと】
A
1
2
21
B
1
1
20
21
D
欠席
3
0
0
3
3
20
28
・筆者の「学力」に対
する意見について共
感できるかどうか、二
つのポイントを入れて
書いている【読むこと】
21
27
27
・筆者の「学び力が伸
びる条件」に対する意
見に共感できるかどう
か、根拠に経験や知
識を入れて書いてい
る【読むこと】
・二つのポイント「筆者
の意見を受け入れる」
「根拠に経験や知識
を入れて」を踏まえて
自分の考えを書いて
いる【読むこと】
C
1
1
31
21
12
5
4
第1次
第2次
第3次
1
第4次
補足
第5次
図 2 「学ぶ力」目標達成の状況
【研究目的2】学び方を別課題で活用する場の設定によって、生徒が学びの成果を実感する
授業実践1では、どのような学習課題によってどのように表現させるかが課題として挙がった。そこで
考えた改善点は学び方を活用しやすい学習課題を設定することである。単元終了一ヶ月後に、課題作文と
いう形で、授業者が作成した意見に対して二つのポイントを踏まえて文章を書くという学習課題を導入し
た。授業実践2の最終次の学習課題と同じ形式の学習課題なので、授業実践2の学び方が活用しやすいの
ではないかと考えた。さらに、目標の達成度を生徒にアンケート方式で回答させ、学びの成果が実感でき
たかを調査した。
② 結果と考察
【研究目的1】目標と指導(活動)と評価が一体化した単元作りによって、生徒が目標達成の姿をイメー
ジし、学び方を身に付ける
成果は、第1次から6割前後の安定した目標達成の状況が続き、最終次では約9割の生徒が目標を達成
できたことである(図 2)
。第1次で、単元目標達成のためのポイントを二つに整理して提示したことに
より、目標達成の姿がイメージしやすくなったと考えられる。また、毎時間ポイントを踏まえて書く学習
課題を繰り返したことも効果的であった。更に、今回は自己評価を導入した。授業を重ねるごとに、自己
― 77 ―
評価が適切にでき、目標達成できる生徒も増えていった。自己評価の繰り返しにより、
「どんな内容をど
のように表現していればいいのか」という学び方を実感できるようになったと考えられる。
課題は、毎時間の学習目標と学習課題(活動)のあり方である。
「筆者の意見を受け入れる」では漠然
としており、
「筆者の意見を本文中の言葉で言い換える」
「自分の言葉で言い換える」
「身近な具体例を挙
げて言い換える」など、段階的な目標と学習課題(活動)が必要であった。更に、自己評価を具体化する
方法やタイミングも大きな課題である。国語科の特に「読むこと」の自己評価を具体化しすぎると、ヒン
トを与えすぎることになってしまう。評価の方法やタイミングは更に検討が必要である。
【研究目的2】学び方を別課題で活用する場の設定によって、生徒が学びの成果を実感する
課題作文では、9割弱の生徒が「授業実践2」で学習した二つのポイントを踏まえて書くことができ、
目標を達成することができた。生徒が学び方を身に付けた上で、他の場面で学び方を意図的に活用する。
そのような場の設定が、
「学びの成果の実感」につながることが明らかになった。
5 本研究のまとめ
目標と指導(活動)と評価が一体化した単元
展開を、主体的で成果を実感する学びに確実
につなげるためには、以下の4点の工夫が有
効であった。
第1に、単元目標を生徒と共有することで
ある。単元目標を共有するためには、第1次
に生徒が意識しやすい形で提示することが必
要である。今回は、単元目標を達成するため
に必要なことを話し合い、二つのポイントと
してまとめた。このように、生徒が単元を通
図 3 目標と指導(活動)と評価が一体化した単元展開モデル
して意識しやすい形にしたのが効果的であった。
第2に、毎時間の振り返りや単元のまとめの中で、学び方を可視化できるものにすることである。今回
は、二つのポイントを踏まえて振り返りや単元のまとめとして考えを書くという活動を行った。この活動
により、毎時間生徒が単元目標達成を意識して活動し、学び方を意識することにつながった。
第3に、評価を生徒と共有することである。今回は、評価指標を自己評価という形で提示し、学び方を
確認した。毎時間の学びを自己評価することを繰り返し、それにより自己評価力が向上し、学び方を身に
付けたことを認識することにつながった。
第4に、単元の中で身に付けた学び方を、別課題で活用する場を設定することである。そのような場の
設定により、生徒が学びの成果を実感できることが明らかになった。
毎時間、単元目標達成を意識して学習課題に取り組み、学びを可視化してそれを自己評価する。そのよ
うな螺旋的な単元展開にすることによって、生徒が学び方を身に付け、それを認識できることが分かった
(図 3)
。更に、その学び方を他の課題で活用する。そのような場の設定により、生徒が学びの成果を実
感できることも分かった。目標と指導(活動)と評価の一体化した螺旋的な単元展開の推進が、国語科の
授業改善につながっていくと考えている。今後も、教師同士での情報交換を大切にし、生徒が学びの成果
を実感できるような国語科の授業を共に創造していきたい。
― 78 ―