第５４回中学生作文コンクール優秀賞徳島県徳島市南部中学校両親がかけた魔法一学年満村　大慎僕の両親はケチだ。「お金がない。」が口癖で旅行も行かない。誕生日以外で物を買ってくれたこともない。友達は長期休暇を利用して、旅行やキャンプに行っているのに、我が家はめったに行かない。携帯電話だって持っている友達が多いのに、買ってくれない。友達がうらやましくて、しかたなかったが、『うちにはお金がないのだ。』と思って諦めていた。ある休日、いつものようにどこにも行かずに、家族でハリー・ポッターのＤＶＤを観ていた。ハリーの額には傷がある。その傷はハリーを守るために、母親が命と引き換えにかけた最強の魔法の印だった。僕は「ハリーの両親はすごいな、自分が死んでも子どもを守る魔法を残すなんて。僕にも大きな傷があるけど、親に守ってもらった印じゃないし。」と、少し嫌味を込めて言った。すると母は一瞬きょとんとし、「お父さんもお母さんも、ハリーの両親に負けない魔法を、子どもにかけとるよ。」と笑った。そして、「大慎が生まれたお祝いに、学資準備も兼ねた保険に入っているからね。もしも私たちに何かあっても大丈夫。子どもをずっと守りたいっていう気持ちは消えない。保険という名の魔法だから。」と教えてくれたのだ。父も「保険料は安くない。でも夫婦で共稼ぎして頑張っている。旅行には行かなくても、お前が将来、大学に行きたいって言っても困らないぞ。もしも親が死んでも心配するな。」と笑った。僕が手術をしたときのことを思い出した。難しい手術で県外のこども病院で手術をしたのだ。かなりお金が必要だったはずなのに、ケチな両親が今まで一言もお金のことを言ったことがなかった。疑問に思い、「ひょっとして手術のお金も保険で払ったん？」と聞くと、「うん。先天性疾患だったから、全額ではなかったけどね。子ども三人とも学資準備を兼ねた保険に入っていて、本当に助かったって思ってる。保険料が高いからってやめなくて良かった。」と母が言った。僕は難病指定された病気だったので、国からの補助と保険の（公財）生命保険文化センター第５４回中学生作文コンクール給付金で手術を受け、今こうして生きている。本当にありがたいと改めて思った。手術のあとが大きく残っていることを、今でもずっと気にしている。あのハリー・ポッターも愛情という魔法に守られ、悪に打ち勝つことができた。僕だって同じだ。病気という悪に、両親の愛の魔法で勝ったんだから。実は祖母も母が小さいときに、保険という名の魔法をかけていたそうだ。こうして愛の魔法は受け継がれていくんだな。僕も両親の魔法の力に感謝し、一生懸命に生きていこう。そしていつの日か、僕も子どもに愛の魔法がかけられるようになりたい。（公財）生命保険文化センター