肝動脈化学塞栓療法と 手術支援画像

治療支援としての画像診断
肝動脈化学塞栓療法と
手術支援画像
はじめに
宮
山
士
朗
最新の血管撮影装置
C アームにフラットパネルデテクタを搭載
肝動脈化学塞栓療法︵ transcatheter arterial che- した血管撮影装置の登場により、画質と機動性
moembolizationT AC E ︶は 手 術 不 能 な 肝
細胞癌に対する効果的な治療法として世界中で
が格段に向上した。近年ではインターベンショ
向上してきている。本稿では最新の血管撮影装
手術支援画像の進歩に伴い、治療精度と成績は
広く行われており、デバイスや血管撮影装置と
カーも被曝量の低減に力を注いでいる。現在わ
を要する手技が安全に行えるように、どのメー
ン自体が高度で複雑化する傾向にあり、長時間
では、X線出力系、受信系、画像
Clarity FD20
処理システムを一新し、それらを効果的に組み
Allura-
れわれが使用しているフィリップス社製
る。
置 と コ ー ン ビ ー ムC T︵ cone-beam CTC B
CT︶によるTACE支援画像について概説す
合わせることで、従来の装置とほぼ同等の画質
を維持しながら、大幅な被曝線量の低減が可能
72
CLINICIAN Ê16 NO. 651
(878)
−
となった。TACEの際も被曝量は %程度に
本邦ではCTと血管撮影装置を組み合わせた
が様々な手技に使用さ
interventional-CT system
れ、治療精度や成績の向上に大きく貢献してき
CBCT技術
り鮮明な透視像が得られている。
低減されているものの、従来の装置と比べてよ
50
自体が小さいなどの利点がある。
TACE中のCBCT画像
現在われわれは、TACEの際に経動脈性門脈
造影下CBCT︵ CBCT during arterioportography
CBCTAP︶と肝動脈造影下CBCT︵ CBCT
during hepatic arteriographyCBCTHA︶ある
いは肝外側副路などからの動脈造影下CBCT
た。しかし、装置自体が大きく高価であるため、 ︵ CBCT during arteriographyCBCTA︶をほ
ぼ全例で施行している。抗癌剤とヨード化ケシ油
の画質が飛躍的に向上し、主にTACEの支援
C アームを回転させながら撮影するCBCT
フトウエアの導入後は必要時にのみ施行している。
ョン動注後CBCTは、後述するTACE支援ソ
脂肪酸エチルエステル︵リピオドール︶のエマルジ
広く普及するには至っていない。その一方で、
画像として広く用いられるようになってきてい
®
3)
4)
5)
∼
であるコロナ濃染が高率に描出でき、多血性偽
社製
マ3トリックスでの画像再構成時間は約3秒
382
である。CBCTには通常のCTと比較して画
病変との鑑別や治療安全域の設定に役立つ。T
4)
相を撮影することで、肝細胞癌に特徴的な所見
質がやや不良で撮像範囲が小さいなどの欠点が
30
ACE手技にCBCTを導入することで、血管
は、スキャン時間は5・2秒で、
XperCT
る。現在われわれが使用しているフィリップス
また現在の装置では2相撮影も可能であり、
CBCTHAやCBCTAの撮影 秒後に第2
2)
あるものの、被曝が少なく、撮影が簡便で装置
2)
(879)
CLINICIAN Ê16 NO. 651
73
1)
−
9)
造影で描出されない腫瘍が治療可能となるだけ
である。作成した仮想ターゲットはCBCTH
Aの第2相、MRIなどの他の画像も利用可能
管像に自動的に投影される。
AやCBCTAの第1相から作成された3D血
でなく、局所効果や予後の向上が得られる。
6)
7)
支援ソフトウエアが市販されているが、使い勝
いる。現在、複数の装置メーカーからTACE
発され、腫瘍栄養血管の自動解析に応用されて
こともでき、CBCTあるいは3D血管像上で
度解析を行う。また栄養血管は手動で追加する
場合には、ターゲットを少し大きくした後に再
ラー表示される。もし栄養血管が検出されない
10
操作は簡単で、まずCBCTHAあるいはC
BCTA上で腫瘍を同定し、それに治療安全域
C アームの回転や視野サイズの変更にも追従
D血管像は3Dロードマップとしても使用でき、
CBCTAPやCBCTHAあるいはCBCT
ーゲットを作成する。なお、腫瘍の同定には、
㎜ とするが状況により調節︶を加えた仮想タ
25
する。
−
度である。また栄養血管がカラー表示された3
︵ ㎜ 未満の腫瘍で5㎜ 、 ㎜ 以上のものでは
TA撮影開始から解析終了までの時間は2分程
腫瘍に向かう血管を指定すると3D血管像上に
が使用しているフィリップス社製
EmboGuide
では、最大 個までの腫瘍の栄養血管を同時に
追加表示される。CBCTHAあるいはCBC
手や性能は装置によって異なる。現在われわれ
3D︶デ
CBCTの三次元︵ 3-dimensional
次に3D血管像上で血管の追跡開始位置を決
め解析ボタンを押すと、すべての栄養血管がカ
ータから血管の連続性を自動追跡する手法が開
TACE支援ソフトウエア
5)
解析可能である。
8)
74
CLINICIAN Ê16 NO. 651
(880)
10 25
CBCT、TACE支援ソフトウエアの性能
図に超選択的TACE手技と手術支援画像を
示す。われわれの以前の検討では、術前のCT
できる可能性がある。
TACE支援ソフトウエアの導入効果
TACE支援ソフトウエアの導入により、被
やMRIで指摘されたが血管造影で描出できな
曝量や造影剤使用量の減少と手技時間の短縮が
い小病変が、CBCTを組み合わせて施行する
病変が検出されることもしばしば経験する。
中のCBCTで、術前には指摘されていない小
ことですべて同定可能であった。またTACE
入に時間を割くことが可能となる。特に選択の
ータに任せることで、術者はTACE手技のな
要とする栄養血管の同定という作業をコンピュ
得られるだけでなく、多くの時間と集中力を必
8)
75
かで最も重要な栄養血管の選択と塞栓物質の注
5㎝ 以下の小肝癌︵平均腫瘍径1・7㎝ ︶に
おける亜々区域枝レベルでの栄養血管の検出率
必要なすべての血管が一度に把握できることで、
5)
は %で、新病変では %、再発病変では %
90
不明瞭な腫瘍の %で栄養血管の同定が可能で
Eの際にも有用であり、血管造影で栄養血管が
E支援ソフトウエアは肝外側副路からのTAC
ーゲットを設定することで、非標的塞栓を回避
される腫瘍では、治療安全域を含めずに仮想タ
あった。特に胃、大腸、胆嚢動脈などから栄養
96
滑なチーム医療の実践に大いに役立つ。
の進行状況やエンドポイントが明確となり、円
診療放射線技師が情報を共有することで、手技
襲度が調節可能となる。さらに、医師、看護師、
ゲットのサイズを変更することで、根治度と侵
2 ︶
。 栄養血管の塞栓順序を含めた治療計画が容易と
と、新病変で有意に高かった︵
p=0.0016,
χ
test
一方、偽陽性は8%に認められた。またTAC
なる。また患者背景や腫瘍の状況に応じてター
85
(881)
CLINICIAN Ê16 NO. 651
75
9)
超選択的 TACE と手術支援画像
A
B
C
D
A. CBCTAP。右葉と左葉の境界部に 4 cm 大の腫瘍を認める。
B. CBCTHA 第 1 相。明瞭な腫瘍濃染を認める。
C. CBCTHA 第 2 相。明瞭なコロナ濃染を認める。
D.総肝動脈造影。明瞭な腫瘍濃染を認めるが、血管の重なりのためにすべての栄養血管を
同定することは困難である。
(882)
CLINICIAN Ê16 NO. 651
76
E
F
G
H
E. EmboGuide 画像。 4 本の栄養血管が同定された(図 D の矢頭)
。まず選択が難しそうな
尾状葉枝を最初に塞栓した後に、遠位より分岐するものから順に塞栓する方針とした。
F.尾状葉枝 TACE 時のスポット撮影(図 E の赤色の血管)
。
G. A 8 の 1 枝の TACE 時のスポット撮影(図 E の青色の血管)
。
H.別の A 8 の 1 枝の TACE 時のスポット撮影(右前斜位、図 E の黄緑の血管)。
77
CLINICIAN Ê16 NO. 651
(883)
I
J
K
I . A 4 の TACE 時のスポット撮影(図 E
の緑色の血管)
。
J . 1 週間後の単純 CT。腫瘍は良好に塞
栓されている。
K. 1 年10カ月後の動脈優位相 CT。腫瘍
は縮小し、明らかな再発を認めない。
(筆者提供画像)
(884)
CLINICIAN Ê16 NO. 651
78
おわりに
血管撮影装置とCBCT技術の進歩は、TA
CE治療の精度や成績の向上のみならず、TA
CEの適応やワークフロー自体も変革させつつ
ある。現在さらに多機能なTACE支援ソフト
ウエアの開発も進んでおり、今後の発展に大い
に期待したい。
︵福井県済生会病院 画像診断センター
中央放射線診断部
部長・
放射線科
主任部長︶
の開発とその
Interventional-CT system
有用性、映像情報、 、 ∼ ︵1994︶
文献
荒井保明ら
61
Hirota S, et al : Cone-beam CT with flat-panel-detector
digital angiography system : early experience in
57
abdominal interventional procedures. Cardiovasc
Intervent Radiol, 29, 1034-1038 (2006)
Miyayama S, et al : Efficacy of cone-beam computed
tomography during transcatheter arterial
chemoembolization for hepatocellular carcinoma. Jpn
J Radiol, 29, 371-377 (2011)
Miyayama S, et al : Detection of corona enhancement
of hypervascular hepatocellular carcinoma by C-arm
dual-phase cone-beam CT during hepatic
arteriography. Cardiovasc Intervent Radiol, 34, 81-86
(2011)
Miyayama S, et al : Usefulness of cone-beam computed
tomography during ultraselective transcatheter arterial
chemoembolization for small hepatocellular
carcinomas that cannot be demonstrated on
angiography. Cardiovasc Intervent Radiol, 32, 255-264
(2009)
Miyayama S, et al : Comparison of local control in
transcatheter arterial chemoembolization of
hepatocellular carcinoma ≤6 cm with or without
intraprocedural monitoring of the embolized area using
cone-beam computed tomography. Cardiovasc
Intervent Radiol, 37, 388-395 (2014)
4)
Iwazawa J, et al : Survival after C-arm CT-assisted
chemoembolization of unresectable hepatocellular
carcinoma. Eur J Radiol, 81, 3985-3992 (2012)
Miyayama S, et al : Ultraselective transcatheter arterial
chemoembolization for small hepatocellular carcinoma
(885)
CLINICIAN Ê16 NO. 651
79
26
5)
6)
7)
8)
1)
2)
3)
80
CLINICIAN Ê16 NO. 651
(886)
guided by automated tumor-feeders detection
software : technical success and short-term tumor
response. Abdom Imaging, 39, 645-656 (2014)
Miyayama S, et al : Efficacy of automated tumor-feeder
detection software using cone-beam computed
tomography technology in transarterial embolization
through extrahepatic collateral vessels for malignant
hepatic tumors. Hepatol Res, 46, 166-173 (2016)
9)