心臓 CT の最新技術

最新技術の応用
心臓CTの最新技術
はじめに
近年のCT機器の多列化・高速化により、循
環器領域のCT画像診断は広く臨床に活用され
城
戸
輝
仁
造影剤量の制限、高度石灰化や高心拍症例、息
止め不良例における検査不成功などが、心臓C
Tが克服すべき問題として残っている。今回、わ
社製の最新2管球CT
Siemens
︵
︶\ SOMATOM Force
︶
︵
Dual
Source
CT
DSCT
が導入され︵写真①︶
、これらの問題点を改善
れわれの施設には
心臓カテーテル検査に代わる非侵襲的な検査法
することができたので、初期経験例を通じて紹
てきた。特にガントリ回転速度の向上は、拍動す
として、心臓CT検査が冠動脈狭窄検出のスクリ
介する。
る心臓のイメージング化に大きな貢献を果たし、
ーニング・ゲートキーパーに用いられるまでに普
及してきた。その診断能は 列CT時代に行わ
の登場
れた多施設研究でも感度 ∼ %、特異度 ∼
SOMATOM Force
これまでも心臓CT検査による冠動脈狭窄評
%、陽性的中率 ∼ %、陰性的中率 ∼
価はとても有用な技術であったが、被ばくおよ
93
97
82
83
%と高い精度を示している。一方で、被ばく量や
63
40
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64
85
91
1)
2)
90
①当院に導入された Siemens 社製 Dual Source CT SOMATOM Force
び造影剤による侵襲性、 motion artifact
などに
よる検査成功率が問題とされてきた。今回、わ
は
れわれの施設に導入された SOMATOM Force
最新技術を導入することによりこれらの問題点
に対する解決がなされてきた。
管球と
1. VECTRON
間隔で設定可
80 mA
kVp
∼150 まで
れまで以上に自由度の高い管電圧設定が可能と
なった︵
kVp
10
kVp
能になったことで、積極的に
、
を用
電圧撮影では造影剤コントラストが上昇︵
撮影時には120 撮影時に比して造影効果は
70
kVp
いた低電圧撮影が実施できるようになった。低
70
kVp
能︶
。特に高電流出力︵最大1、
300 ︶が可
70
変更できるため、患者体型に応じた至適撮影条
可能となる。また、体型に応じて電圧を細かく
約2倍︶するため、積極的な造影剤低減撮影が
kVp
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逐次近似画像再構成法 ADMIRE
には新開発された VECTRON
SOMATOM Force
管球が搭載され、低電圧側から高電圧側までこ
第 3 世代 Dual Source CT になって、①高い時間分解能(0.25s/rot、ハーフ再構成66ms)、②
VECTRON 管球(70∼150kVp)、③逐次近似画像再構成法 ADMIRE、④ Stellar Infinity Detector
(筆者提供画像)
(96列、 6 cm)が搭載された。
②高心拍症例(80歳代女性、肥大型心筋症・胸痛)
件を設定することで被ばく低減も可能である。
これらの最新管球技術に組み合わせて、逐次近
を用いて低電圧撮影
似画像再構成法 ADMIRE
で生じやすいノイズ除去を行うことで、診断能
を維持したまま、低被ばく・低造影剤量での撮
2.
2管球搭載と管球回転速度高速化
影が可能となる。
でも威力を発
これまでの第1、2世代 DSCT
揮してきた2管球搭載システムは、第3世代の
になってより高速のガントリ
SOMATOM Force
︶を搭載することで、
回転速度︵ 0.25s/rot
という時間分解能に到達した。これは高心拍症
囲撮影ができ、心臓全体を0・ 秒程度で撮影
と呼ばれる高速二重
また、 Turbo Flash Spiral
スパイラルスキャンにより秒間737㎜ の広範
って心臓を撮影できる時間分解能である︵図②︶
。
例においても収縮末期の心静止時間で余裕をも
66
ms
することが可能となっている。これによりこれ
まで大幅な被ばく低減撮影が可能ではあったが、
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17
LCX
LAD
RCA
撮影時心拍は平均101bpm(51∼150bpm)と高心拍であったが、収縮期画像において心基部
から心尖部まで静止した心臓画像が得られた。冠動脈狭窄評価においても問題となる
motion artifact はなく、有意狭窄病変なしと診断できた。
(筆者提供画像)
RCA:右冠動脈、LAD:左冠動脈前下行枝、LCX:左冠動脈回旋枝
③息止め困難例(生後8カ月女児、心房中隔欠損症・左上大静脈遺残)
撮影時心拍132bpm。頸部から上腹部までの約20cm を撮影時間約0.3秒で撮影。心房中隔欠損
孔(赤矢印)や冠静脈洞に流入する左上大静脈遺残(青血管)が motion artifact なく描出さ
(筆者提供画像)
れている。
前後まで適応とすることが可能とな
撮影時心拍数の上限に制約があった本撮影法が
心拍
った。また、息止め困難な症例︵小児や高齢者
など︶においても、短時間で撮影することで息
Perfusion CT
の影響を最小限
止め不良による
motion
artifact
にとどめた評価が可能となる︵図③︶
。
3.
ダイナミック負荷心筋
に搭載された新しい検出器 SteDSCT Force
は検出器幅 ㎜ を有しており、
llar Infinity Detector
シャトル撮影︵頭尾方向に往復しながらの反復
Perfusion
組み合わせにより高い造影剤コントラストとイ
てしまう問題があるが、前述した VECTRON
管球による低電圧撮影とフルデジタル検出器の
の撮影を行っている︵ 図④ ︶
。シ ャ ト ル 撮
CT
影にはテーブル移動時間分だけ撮影間隔が開い
P 負荷を併用したダイナミック心筋
をカバーできる撮影範囲であり、当院でもAT
ック撮影が可能となっている。これは心筋全体
撮影︶を行うことで110㎜ の範囲でダイナミ
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75
bpm
④ダイナミック負荷心筋 Perfusion CT(50歳代男性、労作時胸痛)
冠動脈 CTA(左)では、左前下行枝領域に Positive Remodeling を有する高度狭窄病変が認
められる。Perfusion CT(右)では、左前下行枝灌流域の前壁中隔を主体に内膜下優位の心
筋血流低下が描出されている。LAD 領域の治療適応のある心筋虚血と診断された。
(筆者提供画像)
LAD:左冠動脈前下行枝
メージクオリティが得られることで心筋血流計
測の定量性を保つことができており、高度冠動
脈石灰化による冠動脈内腔評価不能例などにお
いてとても有用なオプション検査となっている。
最後に
社製 DSCT SOMA
当院に導入された Siemens
について紹介させていただいた。
TOM Force
循環器領域のCT画像診断には時間分解能が重
のガントリ回転速度と2管
要であり、 0.25s/rot
Dual
は 現 時 点 で の 心 臓C
球を組み合わせた DSCT
T検査による冠動脈狭窄評価におけるツールと
して最も優れた選択肢といえる。今後は
撮影を用いたプラーク性状評価や冠動
Energy
脈石灰化除去、心筋性状評価などにも大きな期
待がされており、さらなるCT機器の発展が望
まれている。
︵愛媛大学大学院医学系研究科
放射線医学
講師︶
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文献
Miller JM, et al : Diagnostic performance of coronary
angiography by 64-row CT. N Engl J Med, 359, 23242336 (2008)
Meijboom WB, et al : Diagnostic accuracy of 64-slice
computed tomography coronary angiography : a
prospective, multicenter, multivendor study. J Am Coll
Cardiol, 52, 2135-2144 (2008)
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