OPECによる減産合意は、その実効性が焦点に

No.2016-029
2016年10月4日
http://www.jri.co.jp
OPECによる減産合意は、その実効性が焦点に
~ 原油価格の上昇ペースは緩やかにとどまる見通し ~
(1)OPECは9月28日に開催した臨時総会で、加盟国全体の原油生産量を日量3,250~3,300万バレル
とすることで暫定合意(図表1)。OPEC加盟国の原油生産量については、推計機関によって幅が
あるものの(8月の生産量は、OPEC推計で日量3,324万バレル、IEA推計で同3,347万バレ
ル)、概ね日量50万バレル前後の減産となる見込み。
(2)IEAは9月の月報で、需要見通しを大きく下方修正。世界の原油需給バランスは2017年半ばにか
けて再び供給超過幅が拡大する見通しとなっていたものの、今回合意した減産が実現すれば、17年入
り以降、需給バランスは大きく改善する格好に(図表2)。これまで生産調整に消極的な態度を示し
ていたOPECが約8年ぶりに減産で合意したことを受け、原油価格は需給改善期待から上昇に向か
う見込み。
(3)もっとも、OPECの減産の実効性には、以下2つの懸念が残存。
①OPECは、11月30日に開催される次回総会をめどに国別の生産枠を決定する方針ながら、増産意
欲の強いイランやリビア、ナイジェリアなどの生産枠の調整が課題に。これら3ヵ国は合計日量
170万バレル程度の増産余地を主張する可能性もあり、この場合、減産目標を達成するためには、
その他の国で同200万バレルを超える減産を行う必要(図表3)。
②2011年末から15年末には生産枠が設けられていたにも関わらず、同水準を上回る生産が常態化して
おり(前掲図表1)、生産枠自体の実効性に疑念が拭えず。
(4)以上のように、OPECの減産合意の実効性に警戒感が残るなか、2017年末にかけての原油価格の
上昇幅は、10ドル前後の小幅にとどまる見通し(図表4)。
(図表1)OPECの原油生産量
(万バレル/日)
(図表2)世界の原油需給バランス
今回合意された生産枠水準
(3,250~3,300万バレル/日)
3,400
OPEC推計
3,300
IEA推計
3,200
3,100
3,000
2011年12月~15年12月の
生産枠水準(3,000万バレル/日)
2,900
2,800
2011
12
13
14
15
16
(百万バレル/日)
1.5
1.0
0.5
0.0
▲0.5
▲1.0
▲1.5
▲2.0
▲2.5
↑需要超過
↓供給超過
見通し
2013
(万バレル/日)
(ドル/バレル)
400
110
17
予測
90
250
80
ナイジェリア
200
30万バレル/日
150
100
リビア
50
0
2011
16
100
イラン
300
15
(図表4)WTI原油先物価格見通し
(図表3)主な政情不安国の原油生産量と増産目途
30万バレル/日
14
(年/期)
(資料)IEA "Oil Market Report"をもとに日本総研作成
(注)見通しは、IEAによる世界の原油需要、非OPEC加盟国の
原油生産量見通しをベースとし、OPEC加盟国の生産量が
3,347万バレル(2016年8月実績)で推移すると想定。
17
(年/月)
(資料)IEA "Oil Market Report"、OPEC "Monthly Oil
Market Report"をもとに日本総研作成
(注)2015年12月にインドネシア、16年6月にガボンが再加盟。
350
OPECが日量50万バレル
減産した場合
110万バレル/日
70
60
50
40
12
13
14
15
16
30
(年/月)
(資料)IEA "Oil Market Report"
(注)図中の点線は、イランは政府の増産目標、リビア・
ナイジェリアは大幅な減産を強いられる前の水準を図示。
20
2014
15
16
17
(資料)Bloomberg L.P.
【ご照会先】調査部 副主任研究員 藤山光雄(03-6833-2453、[email protected])
(年/月)