ラジャン氏の路線が継続へ (PDF/325KB)

グローバル・マクロ・
トピックス
2016/
8/23
投資情報部
シニアエコノミスト
折原 豊水
インドは中銀新総裁を決定、ラジャン氏の路線が継続へ
 インド政府は8/20、ラジャン総裁の後任にパテル現副総裁を起用することを発表した
 パテル氏はラジャン総裁のもとで金融政策を担当し、物価安定に寄与した。また、インフレター
ゲット導入等、金融政策の改革を主導した(パテル委員会)。1月にはモディ首相に再任される
等、政府の信認も厚い人物。ラジャン総裁の金融政策スタンスは継続されるとみている
 インドルピーはパテル氏就任で金融政策に対する不透明感が払しょくされ、モディ首相による
物品サービス税の導入等、改革が続いていることで、海外投資家の証券投資が再び下支えさ
れる可能性も。米利上げ観測の再燃や在外インド人の外貨預金の満期には留意
ラジャン総裁の後任
はパテル副総裁に、
物価安定や 金融制
度改革に貢献した
インド政府は8/20、9月で退任予定だったインド準備銀行(以下、中銀)のラジャン
総裁の後任に、ウルジット・パテル現副総裁を起用することを発表した。9/4より3年
間の任期となる。パテル氏は2013年1月より副総裁として金融政策を担当し、16年1
月にはモディ首相より再任されていた。同氏は、90年にイエール大学で経済学博士
号取得後、国際通貨基金(IMF)に勤務し、IMF代表としてインド中銀に派遣され金
融制度改革を指導したほか、インド財務省のコンサルタントの経験がある。シン前政
権時代には政府の諮問委員会の委員として、経済政策に関与し、またインフレター
ゲット導入等の金融政策の改革に関する委員会を主導した(パテル委員会)。ラ
ジャン総裁のもとで物価が安定したのは金融政策を担当した同氏の功績が大き
かったと言われている。
金融政策は当面、様
子見姿勢が続く見込
み、銀行の不良債権
問題の対応も注目
今後の金融政策は、公務員の約10年ぶりの給与引き上げや、財政支出の拡大に
より、インフレ圧力に留意が必要となっており、しばらく様子見姿勢が続くとみられ
る。市場の一部ではラジャン総裁の退任により、政府からの利下げ圧力が強まると
の懸念があったが、パテル氏の昇格で懸念は和らごう。加えて、インフレターゲット
の導入や金融政策委員会の創設により、物価安定に向けた中銀の姿勢がより明確
となり、政策決定の透明性が向上しよう。他方、国営銀行を中心とした不良債権問
題についても、ラジャン総裁同様に不良資産の厳格な査定や引き当ての積み増し
を求める姿勢が続くのか、次回10/4の中銀会合にかけてパテル氏の発言が注目さ
れる。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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2016/8/23
グローバル・マクロ・トピックス
インドの政策金利と実質金利
(%)
(%)
(月次:2011/1~2016/8)
6
5
4
3
2
1
0
▲1
▲2
▲3
▲4
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
11
12
13
14
実質金利(右目盛)
15
16
(年)
政策金利(レポ、左目盛)
消費者物価前年比(左目盛)
(注)実質金利=政策金利-消費者物価前年比。政策金利は8/9まで、消費者物価、
実質金利は6月まで
出所:CEICデータよりみずほ証券作成
ルピーは8月前半は
新総裁の決定待ちで
小動き
インドルピーは8月前半に1ドル=66.6~67.0ルピー台での小動きとなった。米景気
の回復期待による投資家のリスク姿勢の改善が下支えした。8/3には長年の課題で
あった物品サービス税(GST)が少数与党である上院で可決され、今後下院や州政
府の承認を経て成立する可能性が高まった。ただ、ラジャン総裁の後任人事の発
表が遅れていたことで市場の反応は限定的だった。
今後は 金融政策に
対する不透明感の払
しょくやモディ政権の
改革が下支え
今後については、GSTの成立によりモディ政権の改革姿勢の継続が確認されたこ
と、また、パテル氏によりラジャン総裁の金融政策のスタンスが継続し、政府による
利下げ圧力が強まるとの懸念が和らぐとみられることから、海外投資家による証券投
資の増加がルピーを下支えしよう。ただ、在外インド人の外貨預金は2013年のル
ピー安時に導入された優遇策により増加したが、今後満期を迎えることや、米利上
げ観測の再燃等のリスクには留意したい。
海外機関投資家の証券投資とインドルピー
(月次:2009/1~2016/8)
(10億ドル)
8
6
4
2
0
▲2
▲4
▲6
▲8
(1ドル=ルピー)
モディ政権発足
米利上げ
↓ルピー安
↓資金流出
09
10
11
12
13
株式投資(左目盛)
14
15
(年)
3.2
3.0
2.8
2.6
2.4
2.2
2.0
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
↑ルピー高
↓ルピー安
ドル・インドルピー(左逆目盛)
ルピー円(右目盛)
04
インドルピー相場(右逆目盛)
(1ルピー=円)
(週次:2004/1/2~2016/8/19)
32
36
40
44
48
52
56
60
64
68
72
40
44
48
52
56
60
64
68
72
16
債券投資(左目盛)
ルピー相場の推移
(1ドル=ルピー)
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(注)投資はネット・ベースで2016年7月まで、インドルピー相場は8/19まで
出所:CEICデータよりみずほ証券作成
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
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2016/8/23
金融商品取引法に係る重要事項
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