グローバル・マクロ・ トピックス 2016/ 6/8 投資情報部 シニアエコノミスト 折原 豊水 インド中銀は金融緩和姿勢を維持 インド中銀は市場予想通り金利据え置きも、物価について原油等、アップサイドのリスクを指摘 2015年度実質GDP成長率は堅調な結果に。中銀は消費主導で景気回復を見込む ルピーは外国人の株式投資がいくぶん下支え、改革期待が続き相対的な底堅さ見込む 中銀は予想通り据え 置き、物価について アップサイドのリスク を指摘 インド準備銀行(以下、中銀)は6/7の定例会合で政策金利(レポレート)を6.50%で 据え置いた。事前の市場予想通りの結果となった。 中銀は声明文において、物価については緩やかに鈍化し、2017年3月時点で前 年比+5.0%前後に抑制するという目標に沿って推移しているものの、4月時点に比べ てアップサイドのリスクがあるとした。モンスーン期(6月~9月)の降水量が平年をや や上回る予想となっており、食料品価格の伸びの鈍化が物価の伸び抑制につなが るものの、アップサイドリスクとしては、原油価格の上昇や公務員の給与引き上げ等 を挙げている。前々から指摘されてきたものだが、今回はやや強調する形となった。 景気については、2016年度の実質経済成長率(粗付加価値:GVAベース)は前年 比+7.6%(15年度は同+7.2%)の見通しを維持したが、農業生産の回復や公務員の給 与引き上げが個人消費を下支えするほか、総固定資本形成については銀行の不 良債権が民間総固定資本形成投資の重しとなるものの、インフラ等、政府による公 的固定資本形成の増加が見込まれるとする等、前回4月時点よりも表現がやや前向 きな内容となっている。 金融政策についてラジャン中銀総裁は、金融緩和的なスタンスを維持するとしたう えで、追加的な対応が必要かどうか今後の経済・金融市場の動向を見極めるとして いる。 秋口以降、原油価格 や賃上げ等の影響を 見極めて利下げの必 要性を判断か みずほ証券では、物価について中銀がやや警戒姿勢を示していることから、しば らく様子見姿勢を維持すると引き続きみている。秋口以降、食料品価格の鈍化に加 えて、原油価格の動向や公務員の給与引き上げの実施ペースが物価に与える影 響を確認したうえで、追加利下げの余地があるのか判断するとみている(次回会合 は8/9)。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 2016/6/8 グローバル・マクロ・トピックス インドの政策金利と実質金利 (%) (%) (月次:2011/1~2016/6) 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 6 5 4 3 2 1 0 ▲1 ▲2 ▲3 ▲4 11 12 13 14 実質金利(右目盛) 15 16 (年) 政策金利(レポ、左目盛) 消費者物価(左目盛) (注)実質金利=政策金利-消費者物価・前年比。政策金利は6/7まで、消費者物価、 実質金利は4月まで 出所:CEICデータよりみずほ証券作成 1-3月期実質GDP成 長率は 底堅い 結果 も、基礎指標とやや ギャップも 2015年度実質GDP成長率は前年比+7.6%と14年度の同+7.2%から伸びが拡大し た。個人消費が同+7.4%と14年度の同+6.2%から伸びが拡大したこと等が寄与した。 14年半ば以降の原油価格の下落によるエネルギー価格の伸び鈍化やラジャン中 銀総裁の金融政策に対する信認向上により物価が安定し、家計の実質所得を下支 えしたことが大きいとみられる。一方、輸出は同▲5.2%と弱含んだほか、総固定資本 形成も同+3.9%と14年度の同+4.9%から鈍化した。銀行の不良債権問題や輸出の低 迷が企業の投資マインドの重しになったとみられる。 また、2016年1-3月期実質GDP成長率は前年同期比+7.9%と15年10-12月期の同 +7.2%から伸びが拡大した。個人消費が同+8.3%と堅調だった一方、輸出や総固定 資本形成は弱含みとなっている。 2016年1-3月期の経済成長率は中国を上回り、主要な新興国のなかでもインド経 済の堅調さが確認されたが、例えば15年度の鉱工業生産は前年比+2.4%、銀行貸 出(食料品除く)は実質ベースで前年比+4.0%等、基礎指標をみるとGDPほど強さは みられない。GDPの統計上の精度の問題が指摘されている。今後も消費主導の回 復が期待されるが輸出や民間設備投資の動向には留意したい。 (%) インドの実質GDP成長率の推移 インドの貸出残高(食料品除く、前年比) (%) (四半期:2012/6~2016/3) 9.0 (月次:2006/1~2016/3) 40 35 30 25 20 15 10 5 0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 12/06 銀行貸出残高(食料品除く) 実質貸出残高(食料品除く) ▲5 12/12 13/06 13/12 14/06 (注)市場価格ベース、11/12年基準 出所:CEICデータよりみずほ証券作成 14/12 15/06 06 15/12 (年/月) 07 08 09 10 11 12 (注)実質貸出=貸出-インフレ率(CPI) 出所:CEICデータよりみずほ証券作成 13 14 15 16 (年) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2016/6/8 グローバル・マクロ・トピックス インドルピーは、5月下旬には米追加利上げ時期の前倒し観測等を受け、一時1ド ルピーは米追加利 上げ時期に左右さ れる展開、株価は堅 調 ル=67.7ルピー程度まで下落したものの、6/3の米5月雇用統計の市場予想より弱い 結果を受けて米利上げの開始時期が夏場以降に後ずれするのではないかとの観 測から、66ルピー台まで上昇した。 海外投資家の5月証券投資をみると、米利上げ前倒し観測を受け債券投資を中 心に小幅売り越しとなったことがこの間のルピー安につながったようだ。ただ、株式 投資は買い越し額が前月比で減少したものの3ヵ月連続で買い越しとなっている。こ こで代表的な株価指数であるSENSEX30をみると、2月末に22494ポイントまで下落し たものの、2月末発表の2016年度予算において財政規律が維持され、利下げ観測 が高まったことで、景気や企業業績の持ち直し期待により、5月末にかけて26700ポ イント台まで上昇しており、海外投資家の株式の買い越しが株高に寄与したとみて いる。6/7の中銀会合直後の市場の反応は中銀が景気回復に対する見方を強めた ことによりいくぶん株高、通貨高となっている。 ルピーは緩やかな 改革や不良債権問 題の進展期待で相 対的に底堅いか 今後のインドルピーは、新興国通貨のなかで相対的に底堅く推移するとみてい る。背景には、①政府がリーダーシップをもって投資促進に向けた法整備の動きが 続いている。また、遅れている物品サービス税の審議については夏場のモンスーン 国会での成立に期待がかかる、②銀行の不良債権問題は利下げや公的資金の注 入、倒産・破産法の成立により中期的に改善に向かう、③州レベルでは与党インド 人民党が政権を担う州政府を中心に投資誘致が積極的に行われ、インドに対する 直接投資は2015年に過去最高を更新している、等が挙げられる。 ただ、外部環境としては、米利上げ時期の後ずれは短期的にインドを初め新興国 通貨にポジティブに寄与するものの、堅調な原油価格がさらに上昇する場合には原 油輸入国のインドにとってはリスクと言え、留意したい。 (10億ドル) SENSEX30と海外投資家(FII)の株式投資 (月次:2006/1~2016/6) 海外機関投資家(FII)の証券投資とインドルピー相場 (ポイント) 8 30000 6 25000 4 20000 15000 10000 ▲2 ▲4 06 07 08 09 10 株式投資(左目盛) 11 12 13 14 15 (1ドル=ルピー) 8 6 4 2 0 ▲2 ▲4 ▲6 ▲8 2 0 (月次:2009/1~2016/6) (10億ドル) 5000 16 (年) 40 44 48 52 56 60 64 68 72 09 10 11 12 13 株式投資(左目盛) SENSEX30(右目盛) 14 15 16 債券投資(左目盛) (年) インドルピー相場(右逆目盛) (注)SENSEX30は6/6まで、株式投資は5月まで 出所:CEICデータよりみずほ証券作成 (注)投資はネット・ベース、投資は5月まで、ルピーは6/6まで 出所:CEICデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2016/6/8 金融商品取引法に係る重要事項 グローバル・マクロ・トピックス ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料を ご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込 み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-160608-02 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4
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