公共経済分析 I 第1回宿題解答 問 1(15 点各 5 点) :ある財貨市場xにおける消費者の限界便益(効用・ニーズ)と生産に 係る限界費用が下記のように与えられているとする。 (1.1) MB = α − βx MC = γx ただし、α、β、γは外生的に与えられたパラメータとする。 (1) x財に係る社会的余剰(=便益マイナス費用)を最大にしているxの水準を求めよ x 財の価格をpとおく。市場の需要関数、供給関数を求めよ (2) 市場均衡(部分均衡)を導出せよ。xの均衡水準を(1)の解と比較せよ (3) 市場で実現する「消費者余剰」、 「生産者余剰」を計算せよ。 解答: MB = α − βx = γx = MC ⇒ x * = (1) MB = α − βx = p ⇒ D( p ) = (2) MC = γx = p ⇒ S ( p ) = (3) (4) D( p) = α β +γ α−p β p γ α − pe pe αγ = = S ( p) ⇒ p e = , β γ β +γ xe = αγ 1 e 1 α e 消費者余剰= x × α − p = α − β +γ 2 2 β +γ ( ) 1 e γ α e 生産者余剰= x × p = 2 2β +γ α β +γ β α = 2 β +γ 2 2 問 2(10 点各 5 点) :問 1 の(1.1)式にある財貨xに対する消費者の限界便益と生産者の 限界費用を想定する。このx財の消費に伴い次のような「限界的外部コスト」が生じてい るとする (2.1) MEC = φ (>0) 1 (1) 社会的余剰を最大化する効率的なx財の生産量と最大化された社会的余剰を計算せ 。 よ(ヒント:社会的限界費用= PMC + MEC ) (2) 外部コストの総額を計算せよ (3) 外部コストがあるときの効率性のロスを計算せよ 解答 α −φ β +γ α − βx ** = γx ** + φ ⇒ x ** = (1) (2) φx ** = φ α −φ β +γ もしくは φx e = φ α β +γ 1 e 1 φ2 ( x − x ** )φ = 2 2 β + γ + µ (3) 問 3(10 点各 5 点) :問1の(1.1)式にある財貨xに対する消費者の限界便益と生産者の 限界費用を想定する。このx財の消費に伴い次のような「限界的外部コスト」が生じてい るとする: (3.1) MEC = φ + µx (>0) (1) 社会的余剰を最大化する効率的なx財の生産量と最大化された社会的余剰を計算せ 。 よ(ヒント:社会的限界費用= PMC + MEC ) (2) 外部コストの総額を計算せよ (3) 外部コストがあるときの効率性のロスを計算せよ 解答 (1) (2) (3) α − βx ** = γx ** + (φ + µx * ) ⇒ x ** = α −φ β +γ + µ µ α −φ α −φ 1 (φ + µx ** + φ ) x ** = φ + 2 2 β + γ + µ β + γ + µ µ α α 1 (φ + µx e + φ ) x e = φ + 2 2 β + γ β + γ 1 e 1 α α − φ αµ φ + − ( x − x ** )(φ + µx e ) = 2 2 β + γ β + γ + µ β +γ 2 もしくは 問 4(15 点各 5 点) :ある財貨市場xにおける私的限界便益と私的限界費用が下記のように 与えられているとする。 PMC = γx PMB = α − βx (4.1) ただし、α、β、γは外生的に与えられた正のパラメータとする。このx財の消費に伴い 次のような「限界的外部コスト」が生じているとする: (4.2) MEC = φ (>0) (1) (4.2)式で与えられた外部費用を内部化するよう政府は「ピグー税」を課すとする。 効率的な資源配分を実現するために必要な税率(財一単位あたり)を求めよ (2)ピグー税を課した後の消費者余剰、生産者余剰、外部コスト、政府の税収の変化額 を求めよ。 (3)パレート改善が必要な所得補償額を説明せよ 解答: (1) t = φ (財一単位あたりの税額) (2) 消費者余剰の変化= − =− 生産者余剰の変化= − =− 1 β α − βx ** − α − βx e × ( x ** + x e ) = − ( x e − x ** )( x e + x ** ) 2 2 ( ( β φ 2 (β + γ ) 2 ( )) (2α − φ ) ) 1 γ x e − x ** × ( x ** + x e ) 2 γ φ 2 (β + γ ) 2 政府税収の変化= tx ** = φ (β + γ ) (2α − φ ) (α − φ ) α α −φ φ2 = − − β +γ β +γ β +γ 外部コストの変化= − φ ( x e − x ** ) = −φ 問 5(15 点各 5 点) :ある共有地(例:漁場)について考える。その共有地を利用する人数 (投入される労働量)を N, 産出量(例:漁獲高)を Y とする。アウトプットの価格は1 に基準化しておく。利用者各々の利得は Y/N に等しい。この経済全体の労働量は N で与え られる。 3 Y = AN α (5.1) (A>0, 0<α<1) 共有地に代えて市場で労働を提供したときの賃金率=労働の生産性は W で一定と仮定する。 (1) 共有地と市場との間で労働配分を効率的にする利用人数 N * を求めよ。 (2) 個人が自由に共有地に入れるときに実現する均衡利用人数 N e を求めよ。 (3) N * と N e を比較せよ。 解答: (1) d αA Y = αAN α −1 = W ⇒ N * = dN W Y A = AN α −1 = W ⇒ N e = N W (2) (3) A Ne = W 1 /(1−α ) αA > N* = W 1 /(1−α ) 1 /(1−α ) 1 /(1−α ) 問 6:公害を出す企業と近隣住民との間での外部コストの内部化のための自発的交渉(「コ ースの定理」について考える。xを公害排出量としよう。この企業が得る利益は (6.1) Π = ax − b 2 x 2 一方、被害を受ける住民の損失(外部コスト)は (6.2) C= c 2 x 2 に等しい。25 点 各 5 点 (1) 「効率的」な公害排出量 x * を求めよ。 a − bx * = cx * (解答) x* = ⇒ a b+c (2) (ケース A)周辺環境の所有権が企業に帰属しているときの排出量、企業の利益、外 部コストを計算せよ。 a − bx A = 0 (解答) ⇒ xA = a b (3) (ケース B)周辺環境の所有権が住民に帰属しているときの排出量、企業の利益、外 部コストを計算せよ。 (解答) cx B = 0 ⇒ xB = 0 (4)企業と住民が取引費用ゼロで排出量について交渉を行うならば、彼等の選ぶ排出量 は幾らになるか? 4 a − bx * = cx * (解答) ⇒ x* = a b+c (5)両者が合意に至るためにケース A,B 各々の下で必要な補償額、補償の方向(誰から 誰に対する補償か)を計算せよ。 (解答) 効率水準における企業の利潤、住民の損失は各々 2 a2 b a a2 b 1 a2 (b + 2c) − Π = = 1 − = b + c 2 b + c 2(b + c) 2 b+c 2b+c * c a C = 2b+c 2 * ケース A:周辺住民から企業への移転 T は Π* + T ≥ Π A = a2 ac ;C* + T ≤ C A = 2b b a2 ac − Π* ≤ T ≤ − C* 2b b ⇒ ケース2:企業から住民への移転は Π * − T ≥ Π B = 0 ; T − C * ≥ −C B = 0 ⇒ C* ≤ T ≤ Π* 5
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