null

熱学・統計力学要論
8/1/2016
[試験問題]
担当:大橋 琢磨
1. (a) 摂氏 15 度の水 1kg が入った容器に向かって,1kg の物体を 10m の高さから落とすと水の温度は何
度上昇するか.ただし,熱の仕事当量は 4.2J/cal である.
(b) 1mol の理想気体を 300K の熱源と平衡に保ちながら準静的に体積を 2 倍にするとき,その過程で気体
が外部にする仕事と気体が吸収する熱量を求めよ.ただし,気体定数を R = 8.3J/mol·K, ln 2 = 0.7
とする.
(c) 100 度の水蒸気と 0 度の氷を熱源とする熱機関の最大効率を求めよ.この効率を 1.5 倍にするには
水蒸気の温度を何度に上げればよいか.
2. 1mol の理想気体が P -V 平面内において,下図の準静的な循環過程を行う.図で a-b, c-d 間は断熱過程
であり,b-c, d-a 間は等積過程である.また,定積モル比熱 CV ,定圧モル比熱 CP は定数とする.以下
の手順に従って,サイクルの効率を求めよ.
S
F
G
E
D
9
9
9
(a) 1 サイクルの間に気体が外部にした仕事の総量 W̄tot ,気体が熱源から吸収した熱量 Q1 ,放出した
熱量 Q2 をそれぞれ求め,点 a, b, c, d における温度 Ta , Tb , Tc , Td 及び CV を用いて表せ.
(b) サイクルの効率 η を求め,Ta , Tb , Tc , Td を用いて表せ.
(c) 効率 η を点 a, d の体積 V1 , 点 b, c の体積 V2 及び γ を用いて表せ.ここで,γ = CP /CV である.
3. 以下の手順に従って,1mol の理想気体のエントロピー S を温度 T と圧力 P の関数 S(T, P ) として求め
よ.但し,温度 T0 ,圧力 P0 におけるエントロピーを S(T0 , P0 ) = S0 とする.
(a) ギブスの自由エネルギーに対応するマクスウェルの関係式 (∂S/∂P )T = −(∂V /∂T )P が成り立つを
こと示せ.
(b) 定圧比熱は,CP = T (∂S/∂T )P と表すことができる.この式を積分することにより,S(T, P ) を計
算せよ.但し,S(T0 , P ) は残って良い.
(c) 上問のマクスウェルの関係式を用いて S(T0 , P ) を決定し,S(T, P ) を求めよ.
4. 1 モルの理想気体を作業物質として,熱平衡状態 A,B,C を回る準静的な循環過程を考える.A→B は温
度 T の等温膨張過程,B→C は圧力一定の圧縮過程,C→A は体積一定の過程である.A の体積と圧力
を VA と PA ,B の体積を VB とする.但し,理想気体の内部エネルギーは温度だけで定まり,また,定
積モル比熱 CV と定圧モル比熱 CP は定数とする.
(a) 状態 B の圧力 PB と状態 C の温度 TC を求めよ.
(b) 過程 A→B で作業物質が受ける仕事と吸収する熱を求めよ.
(c) 過程 B→C で作業物質が受ける仕事と吸収する熱を求めよ.但し,熱は CP を使って表せ.
(d) 過程 C→A で作業物質が受ける仕事と吸収する熱を求めよ.但し,熱は CV を使って表せ.
(e) 以上の結果と循環過程に対する熱力学第一法則から,マイヤーの関係式 CP = CV + R を導け.
[解答]
1. (a) 2.3 × 10−2 ◦ C
(b) (気体が外部にした仕事)=(気体が吸収した熱量)= 1.7 × 102 K
(c) 最大の効率は 0.27.効率を 1.5 倍にする為に必要な熱源の温度は 4.6 × 102 K, 1.8 × 102 ◦ C
2. (a)
W̄tot = CV (Ta − Tb + Tc − Td ),
Q1 = CV (Tc − Tb ),
Q2 = CV (Td − Ta )
(b)
η=
W̄tot
Ta − Tb + Tc − Td
=
Q1
Tc − Tb
(c)
η = 1 − (V2 /V1 )γ−1
3. (a) ギブスの自由エネルギーは G = U − T S + P V で表され,その微分は dG = dU − T dS − SdT +
P dV + V dP = −SdT + V dP と書けることから,S = −(∂G/∂T )P , V = (∂G/∂P )T を得る.2 式
を更に P 及び T で微分することにより,(∂S/∂P )T = ∂ 2 G/∂T ∂P = −(∂V /∂T )P が成り立つこと
が分かる.
(b) CP = T (∂S/∂T )P を T0 から T まで積分すると
S(T, P ) = CP ln(T /T0 ) + S(T0 , P )
(c) マクスウェルの関係式を用いて
)
(
)
∂V
∂S
=−
∂P T
∂T P
dS(T0 , P )
R
=−
dP
P
∫ S(T0 ,P )
∫ P
dP
dS = −R
S0
P0 P
(
S(T0 , P ) = −R ln(P/P0 ) + S0
を得る.よって
S(T, P ) = CP ln(T /T0 ) − R ln(P/P0 ) + S0
4. (a) PB = RT /VB , TC = (VA /VB )T
(b) (仕事) = −RT ln(VB /VA ), (熱) = RT ln(VB /VA )
(c) (仕事) = RT (1 − VA /VB ), (熱) = −CP T (1 − VA /VB )
(d) (仕事) = 0, (熱) = CV T (1 − VA /VB )
(e) 第 1 法則より (仕事の変化量) + (熱の変化量) = (内部エネルギーの変化量) = 0 であるため,
[−RT ln(VB /VA ) + RT (1 − VA /VB )]
+ [RT ln(VB /VA ) − CP T (1 − VA /VB ) + CV T (1 − VA /VB )] = 0
(−CP + CV + R)T (1 − VA /VB ) = 0
∴ CP = CV + R
となりマイヤーの関係式が導かれる.
http://wwwacty.phys.sci.osaka-u.ac.jp/~ohashi/teaching/td/index.html