第 14 章 光の波動性と粒子性 14–1 光の干渉とヤングの二重スリット実験 干渉で強め合う点が起こる条件は光 路差 ∆r が波長 λ の整数倍となること. すなわち ∆r = mλ(m は整数).ス リットの間隔 d に比べてスクリーンが 遠いとき角度 θ の点での光路差は ∆r = d sin θ と表せるから,m 番目の明点は sin θm = m λ d 角度が十分小さいとき tan θ = y ≈ sin θ L よって m 番目の明点の位置 ym は ym = mλL d ( ) 重ね合わせの振幅は k∆r B = 2A cos 2 = 2A cos π∆r λ 角度が小さいとき ∆r = d sin θ ≈ d tan θ = よって振幅は ( πd B = 2A cos y λL dy L ) 14–2 干渉縞の光の強度 干渉縞の光の強度は ( 2 2 2 I = CB = 4CA cos 14–1 πd y λL ) y = 0 のときの光の強度は I0 = 4CA2 .よって ( 2 I = I0 cos πd y λL ) 14–3 回折格子 等間隔に並んだ多数のスリットを持つ機器.スリットの数 を N とすると N 個の波の重ね合わせにより,明点の起こる 条件は二重スリットと同じ. d sin θm = mλ, m : 整数 明点での強度は I1 を単スリットの強度として I = N 2 I1 14–5 ホイヘンスの原理 波面の各点を波の発生源として球面波が発生し,これらの重ね合わせで次の波 が作られる. 14–6 単スリットによる干渉 幅 d が波長程度の単スリットでは打ち消しあう条件は d λ sin θ = 2 2 一般に暗点が現れる条件は d sin θm = mλ, m : 整数 14–8 円形スリットによる回折 波長 λ の光を直径 D の穴に通したとき暗点が現れる角度は θ= 1.22λ D スクリーンまでの距離 L が十分遠いと暗線の方向角 θ と中心からの距離 y には θ = y/L の関係がある.よって中央の明るい領域(暗線の内側)の直径は w = 2y ≈ 2Lθ = 14–2 2.44λL D 14–9 工学機器の解像度 円形スリットによる回折と同様のことがレンズでも生じる.レンズの焦点距離 を f とすると円形スリットの場合と同様に干渉による明るい領域が発生し,その 直径 w は 2.44λf w= D これが遠方にある点状の光源が結ぶ像の大きさ. • 望遠鏡の場合 · · · 角度 θ だけ離れた二つの点の像の距離は f θ.これが明るい 領域の半径 w/2 より小さいと識別できない.よって区別できる限界は 1.22λf D = 1.22λ/D を望遠鏡の角度解像度と呼ぶ. fθ = θmini • 顕微鏡の場合 · · · スライドガラス上の距離 d が明るい部分の半径 w/2 より小 さいと識別できない.区別できる限界は 1.22λf dmini = f θ = D これを顕微鏡の解像度と呼ぶ.実際に用いられるレンズの焦点距離 f はレン ズの半径 D/2 と同程度.したがって dmini ∼ λ となる. 14–10 エックス線回折 原子が規則正しく並んだ結晶などにエックス線を当てると原子によって反射さ れ干渉する.光が干渉によって強め合う条件は ∆r = 2d cos θm = mλ, m : 整数 これをブラッグの条件という. 14–11 光子 光の粒子 • 光子は光のスピードで進む. • 光子は振動数に比例したエネルギーを持つ. Ephoton = hf h: プランク定数 (= 6.63 × 10−34 Js). • 多数の粒子の重ね合わせは古典的な波としての性質を持つ. 14–3 14–12 物質波 物質はすべて粒子と波動の二重の側面がある.質量が m で運動量 p を持った粒 子は波長 λ = h/p の波の性質を持つ. 14–13 エネルギーの量子化 • 両端が固定された長さ L の弦に生じる定常波の波長は λn = 2L/n, n = 1, 2, 3, · · ·.電子の波長は λ = h/p なので運動量は次のような飛び飛びの値を とる. ( ) h , n = 1, 2, 3, · · · pn = n 2L 粒子のエネルギーは 1 1 2 1 En = mv 2 = p = 2 2m 2m ( hn 2L )2 h2 2 = n 8mL2 束縛された粒子のエネルギーは離散的な値をとる(エネルギーの量子化). • ミクロの世界では束縛された粒子は最低 p1 = h/2L の運動量,E1 = h2 /8mL2 のエネルギーを持つ.静止した状態では存在できない. • マクロな物体では大きさや質量が大きいため最小運動量や最小エネルギーは 非常に小さく,運動量やエネルギーはほぼ連続的に変化すると考えてよい. Ex. 14–1 二重スリットによる干渉実験においてスリットの間隔 1.0 mm,スリットからス クリーンまでの距離 2.0 m,光の波長 590 nm (1 nm は 10−9 m) のとき隣り合った 明線の間隔はいくらか. Ex. 14–2 二重スリット実験で,スリットの間隔 0.3 mm,スクリーンまでの距離 2.4 m の とき,明線の間隔が 4.0 × 10−3 m であった.光の波長を求めよ. Ex. 14–3 直径 8 cm のレンズを使った天体望遠鏡で観測が可能な月の上の最小距離はどの くらいか.月までの距離を 380,000 km,光の波長を 590 nm として計算せよ. 14–4
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