電化厨房機器の連続調理時に発生する顕熱と潜 熱

電力中央研究所報告
電 気 利 用
電化厨房機器の連続調理時に発生する顕熱と潜
熱
キーワード:業務用厨房,顕熱,潜熱,調理
報告書番号:R15017
背 景
電化厨房では,放熱が少なく燃焼排ガスもないため,換気量低減による省エネルギー
化が期待されている。しかし,換気量が少なくなりすぎると,排気フードで取り切れな
かった潜熱1)が厨房内に溜まり,食品衛生上問題となる結露が発生する恐れがある。こ
れまで,食材を用いない状態の沸騰時に発生する潜熱のデータが蓄積されているが,連
続調理時のデータは少ない。換気量の下限値を把握するため,電化厨房機器の連続調理
時に発生する顕熱と潜熱のデータ整備が求められている。
目 的
電化厨房機器での連続的な調理試験を行い,試験による測定値を基に,連続調理時に
発生する顕熱と潜熱を算定する。
主な成果
調理面を開放して使用する厨房機器(以下,開放型機器)である茹で麺器,焼き物器,
コンロ,鉄板焼き器および揚げ物器,ならびに,調理面を密閉して使用する厨房機器(以
下,密閉型機器)である炊飯器およびスチームコンベクションオーブンを対象として,
連続的に調理試験を行い,以下の知見を得た。
(1)連続調理時の顕熱と潜熱の算定方法
顕熱は,調理食材を投入しない基準条件での顕熱2)を基準値とし,厨房機器上部での
幅 0.8m,奥行き 0.6m の温度分布(0.1m 刻みで 63 点)と代表点の風速を測定し(図 1)
,
基準条件での測定値との差から求めた熱量を基準値に加算して求めた。潜熱は,油煙が
発生する調理時の水分蒸発量の測定が難しいため,食材などすべての重量の変化を測定
し,重量減少量を水分蒸発量とみなし,気化熱をかけて求めた。食材吸熱は,食材など3)
に吸熱され室内に放出されない熱量として,「消費電力量-顕熱-潜熱」で求めた。
(2)連続調理時に発生する顕熱と潜熱
連続調理時における消費電力量,顕熱,潜熱および食材吸熱を表 1 に示す。茹で麺器
および焼き物器は,食材の投入量が少なくても食材吸熱がそれぞれ 38%,25%あり,顕
熱と潜熱の和が定格消費電力よりも顕著に少なくなる。コンロ,鉄板焼き器および揚げ
物器は,食材の投入量に応じて消費電力量が増えるが,顕熱の増加は少なく,消費電力
量の増加の半分が潜熱の増加4)になっている。スチームコンベクションオーブンは,調
理状況により扉開閉回数が変わるため,顕熱と潜熱が変化すると考えられる。顕熱と潜
熱に及ぼす扉開閉回数の影響を図 2 に示す。扉開閉回数の増加による潜熱の増加は,顕
熱よりも顕著である。これは,潜熱が扉開放とともに一斉に拡散するのに対し,顕熱は
オーブン内に蓄熱されて拡散が遅いからである。
注 1)湯気や水蒸気のことで,その水分を気化させるために必要な熱量として表す。
2)基準条件の試験での重量減少量から算定した潜熱を用い,「消費電力量-潜熱」で求めた。
3)茹で麺器の洗浄水やスチームコンベクションオーブンの排水も含まれる。
4)コンロのポトフ調理の場合,煮込み基準条件と同一値となっているため,この関係が成り立たない。
表1 試験対象機器の連続調理時の顕熱と潜熱(定格消費電力に対する比率)
*1
分類
機種
開放型
機器
茹で麺器
(9.6kW)
調理条件
*2
基準条件
冷凍うどん少量
冷凍うどん多量
焼き物器
基準条件
(10.2kW)
鮭焼き少量
鮭焼き多量
コンロ
(5.0kW)
消費電力量
顕熱
潜熱
食材吸熱
16%
100%
100%
5%
27%
11%
35%
0%
38%
83%
53%
17%
22%
0%
25%
100%
100%
100%
10%
30%
炒め基準条件
煮込み基準条件
31%
ポトフ
38%
47%
炒飯
野菜炒め
鉄板焼き器
(6.2kW)
基準条件
ハンバーグ少量
揚げ物器
ハンバーグ多量
基準条件
(6.0kW)
15%
30%
39%
14%
54%
コロッケ
69%
50%
ポテトフライ
炊飯
密閉型
炊飯器(2.7kW)
機器
スチームコンベクション
オーブン * 3 (17.5kW)
20%
39%
熱風モード
蒸気モード
21%
16%
45%
10%
63%
23%
0%
10%
32%
0%
20%
12%
7%
0%
19%
10%
5%
15%
0%
21%
17%
0%
19%
21%
25%
0%
5%
10%
14%
6%
8%
0%
19%
21%
0%
20%
24%
9%
20%
15%
24%
12%
0%
14%
29%
0%
19%
6%
備考
湯温を 90 ℃に維持
一玉/二分
四玉/二分
底面過熱防止水の蒸発がある
焼き網面に載る最大量の半分
焼き網面に載る最大量
フライパン面を 180 ℃に維持
湯温を 98 ℃に維持
煮込み安定時のみの平均
三人前
三人前
鉄板表面を 180 ℃に維持
鉄板面に載る最大量の半分
鉄板面に載る最大量
油温を 180 ℃に維持
揚げ時間が四分
揚げ時間が二分半
二升
五分に一回の扉開閉
五分に一回の扉開閉
温度測定
風速測定
重量
測定
定格消費電力に対する比率 [%]
*1 機種欄の括弧内の数値は,試験対象機器の定格消費電力である。
*2 同一機種内の調理条件は,食材吸熱が小さい順に並んでいる。
*3 オーブン内温湿度が制御され,食材の有無が顕熱と潜熱に影響しないため,「消費電力量-潜熱-排水熱」で顕熱を求めた。
50
潜熱
顕熱
排水熱
40
30
20
10
0
0
図1 試験での測定状況
6
10
12
一時間あたりの扉開閉回数 [回/ h ]
図 2 スチームコンベクションオーブンの
蒸気モード運転時の顕熱と潜熱
研究担当者
占部 亘(システム技術研究所 需要家システム領域)
問い合わせ先
電力中央研究所 システム技術研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 03-3480-2111(代) E-mail : [email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。
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© 2016
CRIEPI
平成28年7月発行
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