解答例

2016 年度前期 有機化学演習 第11回 エノール・エノラートの反応
1. 以下の反応の機構を示しなさい。
O
O
OEt
O
O
–OEt
O
OEt
EtOH
O
O
–OEt
OEt
+
OEt
H
OEt O
O
O
OEt
OEt
+
EtO–H
OEt
O
+
OEt
H
–OEt
2. シクロヘキサノンのα炭素をメチル化するため、一当量の LDA でエノラート
を生成させ、その後 CH3I を加えて反応させた。ところが、生成物には二つの
メチル基が結合した下のような副生成物が混入していた。これらの副生成物
が生成した理由を説明しなさい。
(1) LDA
(2) CH3I
O
O
O
+
+
O
H
O
Base
O
CH3–I
O
H
O +
O
O
CH3–I
+
O
O
H
H
H
O +
O
O
+
CH3–I
O
O
一つ目のメチル基が結合して得られたケトンのα水素は、元のケトンのα水素
と同程度の酸性度を持っている。従って、反応系中にまだ残っている原料のエ
ノラートとこのケトンが酸塩基平衡になり、メチル基が結合したケトンのエノ
ラートが生成する。このエノラートがメチル化されて、二つメチル基が導入さ
れた副生成物が得られる。 3. 下のエナミンを CH3I と反応させ、得られた生成物を酸性の水で加水分解す
ると、2-メチルシクロヘキサノンが得られる。(1) 反応機構を示しなさい。(2)
2. とは異なり、この場合はメチル基が二つ以上結合した副生成物はほとんど
生成しない。理由を説明しなさい。
N
H
(1)
CH3–I
N
OH
N
H
OH
N
H2O
N
– HN
– H+
O
OH
N
– H+
H+
O
H
(2) エナミンが CH3I と反応して生成したイミニウムカチオンは、元のエナミン
との間で酸塩基平衡を起こさず、最後の加水分解までそのままの状態で保たれ
るため。
4. アジピン酸から 2-メチルシクロペンタノンを合成する方法を提案しなさい。
O
O
HO
OH
O
EtOH
H+
O
HO
O
EtO
OH
O
O
NaOEt
OEt
O
O
OEt
(1) NaOEt
(2) CH3I
O
O
O
–OH
OEt
!
5. 下の反応は、生物の「呼吸」における生化学反応の一つである。この反応は、
アルドール付加の逆反応 (retro-aldol reaction)と見なすことができる。反応機
構を示しなさい。
OH OH
P
OH
P
P
OH O
Base
P
O
O
H
+
P
HO
O
OH OH
P
H
O
OH OH
P
O
OH
OH
P
O
P
O
P O–
O
O–
=
P
+
O
P
O
H+
OH
P
O