ニッケル触媒を用いた不飽和カルボン酸 及びフェニル酢酸の選択的合成

第 25 回記念福岡シンポジウム Poster 発表応募用紙
ニッケル触媒を用いた不飽和カルボン酸
及びフェニル酢酸の選択的合成
Ni-Catalyzed Selective Formation of Unsaturated Carboxylic Acids
and Phenylacetic Acids
二ノ方亮、森崇理、小野寺玄、木村正成(長崎大院工)
当研究室では、ニッケル触媒及び有機金属試薬を用いた不飽和炭化水素類の活性化を鍵とし
た多成分連結反応について研究を行っている 1)2)。
本研究では、ニッケル触媒存在下ジケテンとアルキンとの反応において、配位子の有無及び
有機金属試薬の選択により、4 種類の異なる生成物(3-メチレン-4-ヘキセン酸 1、置換フェニ
ル酢酸 2、
3,5-へキサジエン酸 3、
対称置換フェニル酢酸 4)
の選択的な合成に成功した
(Scheme
1)3)。生成物 1 及び 2 を与える反応は、ジケテンの炭素-酸素結合の切断を伴って進行して
いると想定される。一方、生成物 4 を与える反応では、さらにジケテンの炭素−炭素二重結合
の切断を伴って進行していると考えている。また、生成物 3 は生成物 1 の異性体であるが、互
いに異性化しないことを確認している。つまり、生成物 3 は生成物 4 を生成する場合と同様に
炭素−炭素二重結合の切断を伴って進行していると考えている。本反応では、アルキンに対し
て syn 付加するため立体選択的に進行し、立体的な嵩高さに大きな差のある非対称内部アルキ
ンや末端アルキンを用いた場合には、アルキンへの付加の位置選択性も制御可能である。本反
応では、同じ基質を用いながら、2 種類の不飽和カルボン酸と 2 種類の置換フェニル酢酸を全
て選択的に作り分けることが可能であり、有機合成的に極めて興味深い。
本ポスター発表では、詳細な反応条件、基質一般性及び想定している反応機構について報告
する。
Scheme 1
Me
CO2H
R1
R2
Ni(acac)2
Me2Zn
R1
"
O
O
1
Me
CO2H
R1
R2
+
Ni(cod)2 / PPh3
Me2Al(OMe)
3
+
O
R2
R1
R2
CO2H
R1
R2
R1
"O
Ni(cod)2
Et2Al(OEt)
2
R2
R2
Ni(cod)2 / PPh3
Et2Al(OEt)
R1
CO2H
R1
R2
4
<参考文献>
1)T. Mori, T. Nakamura, M. Kimura, Org. Lett., 2011, 9, 2266.
2)T. Mori, T. Nakamura, G. Onodera, M. Kimura, Synthesis, 2012, 44, 2333.
3) T. Mori, Y. Akioka, H. Kawahara, R. Ninokata, G. Onodera, M. Kimura, Angew. Chem. Int.
Ed., 2014, 53, 10434.
発表者紹介
氏名
二ノ方亮(にのかたりょう)
所属
長崎大学大学院工学研究科
グリーンシステム創成科学専攻
学年
M2
研究室
生物有機化学研究室