(PDF文書)

豊岡市教育委員会
2016(H28)7.6
No.5
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コミュニケーション教育の授業
コミュニケーション教育の演劇的手法を取り入れた授業は,昨年からお伝えしている通り,小学
校6年生と中学校1年生で学期に1回ずつ行う計画を立てています。今回は,その1学期分をモデ
ル校(城崎小・豊岡小・三方小・弘道小・城崎中)で実施しました。授業者はプロ講師の田野邦彦
さん(NPO 法人 PAVLIC)です。
コミュニケーション教育は,ご承知の通り,小中一貫教育のローカル&グローバル学習の時間の
柱の一つとして位置づけられていますが,共通理解しておきたいことは,小学校6年生と中学校1
年生で行う演劇的手法を取り入れた授業だけがコミュニケーション教育ではないということです。
コミュニケーション教育の視点で子どもたちが見せる姿を意味づけたり,教科等の授業に演劇的手
法による構造を持っている活動が行われたりすることによって,この教育は子どもたちの成長にと
ってなくてはならないものになるのだと考えています。そのために,全領域等で使える4つの視点
を盛り込んだ【めざすコミュニケーション能力の視点とその留意点一覧表】もワーキンググループ
によって作成して頂いています。また,演劇的手法を取り入れた授業は,アクティブ・ラーニングと
しての学習活動というだけでなく,アクティブ・ラーニングそのものを考える際にも大変意味のあ
る教材になり得ると思っています。子どもたちの力を確実に高める教師は,ずっとずっと以前から
表現活動を巧みに取り入れていたことを思い出します。
コミュニケーション教育は,豊岡市の教育の質的向上を図るカギとなる大きな可能性を秘めてい
ることを再確認した1学期のモデル校授業でした。
演劇的手法による授業とアクティブ・ラーニング
160706-31
コミュニケーション教育の演劇的手法を取り入れた授業を見ていて“協働する”ということの
意味をいつも考えます。平田オリザさんは,ある雑誌の対談で,演劇が教育の中に位置づく必要
性として,演劇には情操や感受性,表現力を育む機能と,「合意形成能力」
「協働性」
「多様性へ
の理解」を育む機能があるということを指摘しておられます。平田さんのこの指摘は,授業にお
ける子どもたちの姿で実証されていると私には思えます。授業における子どもたちの変容は,提
示された課題に対して協働で解決していく話し合いや活動の積み重ねによってもたらされます。
子どもたちは話し合いを通して,自己の主張や解放を行いながら他者への理解や信頼を深め,合
意形成を図っていきます。その際に見せる,主体性や自信に満ちた誇らしげな表情や言葉に,私
は子どもたちの変容を確信することになります。演劇的手法を取り入れた授業の可能性を強く感
じます。
次期学習指導要領のキーワードにアクティブ・ラーニングがあります。次期学習指導要領で
は,学びの量とともに,質や深まりが重要であり,子どもたちが「どのように学ぶか」について
も光を当てる必要があるとの認識のもと,
「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び
(いわゆる「アクティブ・ラーニング」
)
」が重視されるようです。前段で紹介した子どもたちの
姿から演劇的手法を取り入れた授業は,アクティブ・ラーニングの一つとして有効な実践ができ
るのだと考えています。しかし,演劇の要素を入れることが目的ではないということ,また,活
動することが目的ではないということ…このことを肝に銘じておく必要があります。アクティ
ブ・ラーニングとしての演劇的手法は子どもたちの深い学びをもたらす一つの方法として有効で
あるように思えます。演劇的手法を様々な教科等の授業場面に位置づけることで授業の充実に深
みや広がりが生まれればと願います。