ハローワーク民間委託論 権丈善一研究会12期 牧坂 亮佑 モラル

ハローワーク民間委託論
権丈善一研究会12期
牧坂 亮佑
モラルハザードは起きるのか?
• 民間事業者に任せても平気なのか。無料の
サービス供給を需要者に平等に提供できる
のか。
• 平等とは・・・個々人の属性・能力にかかわら
ず等しくサービスを享受できる状態⇔等しい
コストを割かれている状態。
個人の就職可能性とは?
• 小尾モデルの賃金格差モデル↓↓
(OHPにて)
個人の就職可能性とは?
~労働力の質とは~
• 個人の属性ベクトル
(x1 , x2 , ・・・、xl , y1 , y2 , ・・・, ym )
n=l+m
X;外的情報:性、年齢、学歴、職歴、資格etc..
Y;内的情報:性格、話し方、ものの考え方、顔
の造形、声、バックグラウンドetc..
企業による識別関数:f=f(x,y)
政府の識別
イギリスの図
(OHPにて)
政府の識別
• つまり・・・
政府の識別関数:g=g(x)
(外的情報のみによる判断)
現場の識別
• 政府による個人調査票と共に、長期間、実際
にカウンセリングしながら個人の属性を見極
めていく。
• つまり・・・
エージェントの識別関数:h(x,y)
• h(x,y)≠g(x)
•
𝑔(𝑥)
ℎ(𝑥,𝑦)
=𝜀>0
0<ε<1ならば政府は相対的に過小評価
Ε>1ならば政府は相対的に過大評価
プロセス
• 求職者→政府→民間事業者→エージェントに
よるサービスの供給→就職
予測される現象例
• Aさん:明治大卒、34歳、女性,職歴14年
• Bさん:法政大卒、37歳、男性,職歴9年
• 政府による認定:𝑔𝐴 𝑥 = 𝑔𝐵 (𝑥)
よってサービス価格は同一
・エージェントの認定:ℎ𝐴 (𝑥, 𝑦) < ℎ𝐵 (𝑥, 𝑦)
・・・エージェントは同一価格にして異なる費用を持
つサービスの生産問題に直面することになる。
この時、エージェントはどんな行動をとるだろう
か?
設定
エージェントの設定
•
•
•
•
•
労働時間Tを所与として、求職者A,Bに就職あっせんサービスを提供する。
𝑡𝐴 : 求職者𝐴へのサービス供給時間
𝑡𝐵 : 求職者Bへのサービス供給時間
𝑡𝐴 + 𝑡𝐵 = 𝑇
u: エージェントの効用関数
• 𝑢′ > 0, 𝑢′′ < 0, lim 𝑢′ (𝑥) = ∞, lim 𝑢′ (𝑥) = 0
𝑥→0
𝑥→∞
• d T : エージェントの費用関数
• 𝑑 ′ > 0, 𝑑 ′′ > 0, lim 𝑑 ′ 𝑥 = 0, lim 𝑢′ 𝑥 = ∞
•
𝑥→0
𝑥→∞
エージェントはカウンセリングを通して、求職者の就職成功確率曲線を
知っていると仮定する。
• 就職斡旋成功報酬:b
求職者の設定
• ある期における求職者の就職成功確率Pはt
の増加関数で𝑃′ > 0, 𝑃′′ < 0, 0 < 𝑃 < 1
とする。すなわち
1
2
0<𝑃𝑖 =∝𝑖 𝑡 + 𝛽𝑖 <1 (i=A,B)
と、特定化する。
(求職者の能力に対する就職成功確率密度関
数は分散0の関数であると仮定する。)
公平とは
• エージェントが総労働時間Tを求職者A,Bに等
しく分配している状態
• 𝑡𝐴 =𝑡𝐵 = 1/2𝑇
• 以後、この状態の達成を目標に分析を行う。
ベンチマーク
(求職者がまったく同質なケース)
1
2
1
2
• 𝑃𝐴 (𝑡) =∝𝐴 𝑡 + 𝛽𝐴 = ∝𝐵 𝑡 + 𝛽𝐵 = 𝑃𝐵 (t)
• ∝𝐴 = ∝𝐵 , 𝛽𝐴 = 𝛽𝐵
• Max. u{ 𝑏𝑃𝐴 (𝑡) +b𝑃𝐵 (t)}ーd T
↓
• max 𝑃𝐴 𝑡𝐴 + 𝑃𝐵 (𝑡𝐵 )
𝑡𝐴 ,𝑡𝐵
• subject to 𝑡𝐴 + 𝑡𝐵 = 𝑇
(uやdを特定化させることなく利潤極大化問題に単
純化できる。)
ベンチマーク
(求職者がまったく同質なケース)
• Q(𝑡𝐴 , 𝑡𝐵 )=𝑃𝐴 𝑡𝐴 + 𝑃𝐵 (𝑡𝐵 )
1
2
1
2
= ∝𝐴 𝑡𝐴 + 𝛽𝐴 + ∝𝐵 𝑡𝐵 + 𝛽𝐵
1
2
1
2
Q(𝑡𝐴 )= ∝𝐴 𝑡𝐴 + 𝛽𝐴 + ∝𝐵 (𝑇 − 𝑡𝐴 ) +𝛽𝐵
𝜕Q(𝑡𝐴 )
= 𝑄 ′ 𝑡𝐴
𝜕𝑡𝐴
1
1
1
1
−
−
= ∝𝐴 𝑡𝐴 2 − ∝𝐵 𝑇 − 𝑡𝐴 2 = 0
2
2
ベンチマーク
(求職者がまったく同質なケース)
•
−2
𝑇𝛼
𝑡𝐴∗ = −2 𝐵 −2
𝛼𝐴 +𝛼𝐵
•
−2
𝑇𝛼
𝑡𝐵∗ = −2 𝐴 −2
𝛼𝐴 +𝛼𝐵
•
∗
𝑡𝐵
∗
𝑡𝐴
•
𝑡𝐴∗
=
∝𝐵
∝𝐴
=
𝑡𝐵∗
=1
=
1
𝑇
2
• ・・・αが決定的に重要
分析
(求職者の労働者としての質が異なる
ケース)
• 前提: ∝𝐴 > ∝𝐵
•
∗
𝑡𝐵
∗
𝑡𝐴
=
∝𝐵
∝𝐴
≠1
• この場合、𝑡𝐴∗ >1/2T
①成果報酬による調整
• 𝑏𝐴 :Aを就職させたときの成果報酬
• 𝑏𝐵 :Bを就職させたときの成果報酬
• (省略…)
•
∗
𝑡𝐵
∗
𝑡𝐴
=
𝑏𝐵 ∝𝐵
𝑏𝐴 ∝𝐴
=1
• を達成するような成功報酬により調整可能
②努力報酬による調整
• 𝑏𝐴 :Aに対しての時間投入1単位当たりの報酬
• 𝑏𝐵 :Bに対しての時間投入1単位当たりの報酬
(・・・省略)
2𝑇
𝛼𝐴 − 𝛼𝐵 = 𝑏𝐵 − 𝑏𝐴
𝑇
を達成するような努力報酬により調整可能
しかしながら・・・
• 政府が外的情報xにより接近できる値はその
時点での求職者の質、つまり初期点Bであり
それ以降の属性の変化率を決めるαではない。
• αとβが独立であると仮定する以上、政府は最
適なインセンティブ設計を行うことは困難であ
る。
結論
• エージェントのサービス供給比率はαに依存
するので、政府はαを審査する必要がある。
• ・・・政府が外的情報により示唆できるのはB
点のみである(しかもεの誤差を含む)から、
適切なインセンティブ設計は不可能である。
実証可能性
• ハローワークに来た個人の外的属性を調整
したうえで、求職期間、入職後賃金などの分
散を測定することなどが考えられる。
設定への疑問
• 職員の労働時間を所与と扱ったが、これが変
動すると考えるならば、総サービス供給量が
社会的最適サービス供給量を下回ることが
考えられる。(OHPによる図)
例
• 長期失業者対象の市場化テストのあのグラフ
出す。