化石エネルギーの価格決定要因 450132A 野村和史 エネルギーと経済活動 エネルギー消費の規模 →生活や経済活動の水準によって決まる 生活や経済活動 →エネルギーにより支えられ、あるいは制約を受け る つまりエネルギーと経済活動には相互関係にある 経済活動ではコスト(価格)という概念が重要 ではエネルギーの価格を決定する要因は? モノの値段は需要と供給で決まる ↓ 基本的にはエネルギーにおいても同じ ただし各エネルギー特有の要因もある ここからは化石エネルギーの代表として主に 原油の価格決定要因について見ていく なぜ原油価格か 1. 原油は世界のエネルギー消費の約4割、 日本においては約6割を占める主要エネ ルギー 2. 原油価格は他の化石エネルギーの価格 を決定する上で重要な指標になる 3. 資料が豊富であり話題性に富む 原油の主な価格変動要因 • 右図のように様々な 要因が絡み合って価 格が決まっていく 原油価格と油田 ・新規油田の開発 →原油価格の下落要因 ・既存の油田の枯渇 →原油価格の上昇要因 ※近年では人工衛星で地表の様子を探り、音波探 査を行って地層の様子を調べ分析するなど、一 層の技術革新が行われている 原油価格と原油生産動向 原油は、何か画期的な代替商品が出ない限り消 費自体がそれほど大幅に減少するとは考えづら い商品 ↓ 需給バランスが崩れると価格が大幅に変化する可 能性あり それを防ぐために原油の生産量を調整している 特に重要なのがOPEC(石油輸出国機構)の動向 OPEC(石油輸出国機構)とは • 11の石油輸出国で構成される生産と価 格の調整機関 • 石油価格の相場に合わせて、加盟国の 生産量を調整し、輸出を保護すること を目的とし、原油生産量は世界の約4 0%を占める OPEC加盟11カ国 中東 アフリカ サウジアラビア、クウェート、イラン、 イラク、 カタール、アラブ首長国連邦 アルジェリア、ナイジェリア、リビ ア ラテンアメリカ ベネズエラ アジア インドネシア 世界の地域別原油供給見通し OPECの原油供給量は 2030年にかけて著 しく増大していくと見ら れている 連産品とは ・原油はそのまま燃料として使われる訳ではない →製油所の常圧蒸留装置により、ガス、ガソリン、 灯油、軽油、A重油、C重油などに分離 ・このように同時に各種製品が生産されるものを『連 産品』と呼ぶ。 ・この石油製品の連産品としての特徴が、製品の需要 構成や価格の形成に重要な影響を与えている。 原油価格と連産品 ・連産品の特定製品の不足 →原油価格の上昇要因 ・連産品の余剰製品の発生 →原油価格の下落要因 例 厳冬での灯油需要急増 灯油の不足により原油の需要が増加 ↓ ただし灯油を原油から精製するときにはガソ リン、重油、軽油などもできる ↓ 原油価格は上昇するがガソリン価格は下落 するといった一見おかしな事態に 原油価格と為替(日本の場合) 円安の進展 ↓ 輸入コスト増、国内価格上昇 円高の進展 ↓ 輸入コスト減、国内価格下落 原油価格と景気動向 景気動向が上昇 ↓ 需要が増大、原油価格上昇 景気動向が失速 ↓ 需要の減少、原油価格下落 *近年は中国を始めアジア地域の需要が大きく増 加、原油価格高騰の一因となっている 国際情勢と原油価格 原油生産国の近辺もしくは生産国で戦争 勃発、治安悪化 ↓ 供給不安が生じ原油価格は高騰(図参照) 例:中東戦争・イラク戦争など 原油価格の推移と国際情勢 投資資金の流入 上記の上昇要因に着目した個人投資家や ファンドなどによる原油への投資の増加 ↓ 資金が大量に市場に流れ込んで原油価格 を需給バランスの実態以上に押し上げた 石炭・天然ガスの価格決定要因 • 基本的な要素(景気・国際情勢・為替 etc…)は原油と同じ • 原油価格と強い関連性をもつ 石炭価格の特徴 • 原油価格よりも常に低廉、変動幅の面で は安定的に推移 • 原油価格は石炭価格の天井として作用 (理由) 埋蔵量は豊富であるが輸送生に乏しく環境 負荷が大きいため価格低廉性という長所 がなければ利用価値が薄れる 天然ガス価格の特徴 • 原油と天然ガスの価格はかなりの連動性 をもっている (理由) 天然ガスには原油との代替性があるため *発電施設の中には石油と天然ガスの双方 が使用できるものもある 今後価格に影響を与えうる要因 2005年2月京都議定書発効 これにより今後化石エネルギー価格に影響 を与えうる要因として以下のものがある 1. 環境税(炭素税・エネルギー税) 2. CO2排出権取引 環境税(炭素税・エネルギー税)とは • 炭素を含む各種燃料の消費に対して税負 担を義務づける制度。税負担の対象が燃 料提供側になる場合と燃料消費側になる 場合の大きく2通りある 環境税・排出権取引による影響 • 燃料提供側に課税・排出権割当てする場合 →化石エネルギー価格の上昇要因に *エネルギー種ごとの炭素含有率によって価格上 昇幅は異なる • 燃料消費側に課税・排出権割当てする場合 →炭素含有率の多いエネルギーの需要は減少し、 価格下落要因となる CO2排出権取引とは CO2など地球温暖化の原因とされるガスを 排出する権利を国家、あるいは企業間で 売買などで取引をすること。国際的には 2008年から有効となるがすでに欧州では 排出権取引制度が成立し、取引も始まっ ている。
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