インフレとデフレ 06F1221 12月14日 東海林 悠策 はじめに 政府が先月、日本は徐々にデフレ傾向にあると宣 言したのは記憶に新しいと思う。 デフレとインフレは私たちに身近な問題の一つ であることが分かる。 今回は少し詳しく調べてみたいと思う。 目次 インフレーション インフレ要因 ジンバブエ・インフレ デフレーション デフレ・スパイラル 日本のデフレ インフレーション インフレーション (inflation) は、物価が持続的に上 昇する経済現象。 典型的なインフレは、好景気で経済やサービスに 対する需要が増加し、経済全体で見た需要と供給 のバランス(均衡)が崩れて、総需要が総供給を 上回った場合に、これが物価の上昇によって調整 されることで発生する。物価の上昇は貨幣の価値 の低下を同時に意味する。同じ貨幣で買える物が 少なくなるからである。 世界のインフレ率 紫色:デフレ状態 紺色:0-2% 水色:2-5% 緑色:5-10% 黄緑色:10-15% 橙色:15-25% 赤色:25% インフレ要因1 ディマンド・プル・インフレーション 需要(通貨量)が過度に増えることで引き起こ されるインフレのことで、需要インフレーション ともいいます。 通貨量は、景気が好調であるときに拡大します。 好景気で需要が拡大して物価が上昇すると、企業 収益が増えます。すると賃金(所得)が増えて需 要が拡大するという好循環を生み出します。需要 型のインフレは、経済の好循環がもたらすところ に大きな特徴があります インフレ要因2 コスト・プッシュ・インフレーション 供給側の原因(原材料費や賃金の上昇など)で 引き起こされるインフレのこと。 インフレ要因3 輸出インフレ 輸出の増大により発生する。企業が製品を輸出 に振り向けたことにより、国内市場向けの供給量 が結果的に減って発生する。 輸入インフレ 他国の輸入を通じて海外のインフレが国内に影 響し発生する。穀物を輸入していた国が、輸出元 の国の内需が増加したり、輸出元が他の需要国へ 輸出を振り分けたりした場合に、穀物の輸入が減 少し穀物価格が上昇する。 インフレ要因4 構造インフレ 産業によって成長に格差がある場合に、生産性 の低い産業の物価が高くなり発生する。 例えば効率の良い製造業で生産性が上がり賃金 が上昇したとする。これに影響を受けてサービス 業で生産性向上以上に賃金が上昇するとサービス 料を上げざるを得なくなるため、インフレを招く。 インフレ要因5 財政インフレ 政府の財政支出拡大を原因として、国内の需給 逼迫や政府公債の中央銀行引受による貨幣供給拡 大により発生するインフレ。 信用インフレ 銀行が過度な貸付や信用保証を行うことにより 発生する。金融部門の信用創造機能が過剰に働く ことにより、貨幣の流通量が増大する。 インフレの速度別分類 クリーピング・ インフレ 緩やかに進むインフレ。 インフレ率 好況期に見られる。 年数% ギャロッピング・ インフレ 足早に進むインフレ。 馬の速足「ギャロッ プ」から。 インフレ率 年数十% ハイパー・イン フレ 猛烈な勢いで進行する インフレ。 通貨の信用が失われた 状態。 インフレ率 月率50%程度から タイムリーなお話 ジンバブエのインフレ 2008年3月のインフレ率 355,000% 1年前の物の値段が 約355,000倍 ジンバブエのインフレ原因 ディマンド・プル 2000年以降、農産物の生産が激減 主要輸入品目である燃料(ガソリン)や電力(全体使 用料の40%が輸入)が不足 コスト・プッシュ 賃金(賃上げを要求した結果)や原材料(原油などの輸 入品)の価格が上昇し、それらが製品価格に転化され 製品価格が値上りするため ジンバブエのインフレ原因 外貨不足からくるインフレ 外貨の獲得手段である、観光業の減衰や輸出が 減少している 1998年~2002年のコンゴ内戦参加での外貨使用や IMF(国際通貨基金)へ債務返済での外貨使用などで、 国内の外貨が不足しているため 食糧不足により、ミリミル(トウモロコシの粉)や 小麦粉もかなりの量を輸入し、それらの購入に使われ る多額の外貨を流出しているため デフレーション デフレーション(deflation)とは、物価が持続的に下 落していく経済現象を指す。 物価の下落は同時に貨幣価値の上昇も意味する。 同じ金額の貨幣でより多くのものを買えるように なるからである。なお、株式や債券、不動産など 資産価格の下落は通常デフレーションの概念に含 まない。 生活への影響 好影響 物価下落により実質金利(実質利回り)が上昇する。 デフレの局面では物価下落を織り込んだ金利が形成されるため、 市中金利は低下する。そのため国債などの債券保有者は、すで に保有している(高利回り)債券の価格が上昇し名目資産・実質資 産とも増大する。 制度次第であるが、名目額が固定された収入(年金など)がある場 合、物価の下落により実質的な生活水準が向上する。 悪影響 住宅ローンなどで債務を抱える家計は、物価の下落によって実 質的な債務が増大する。 名目金利の低下により、市中変動型の債権(普通預金など)の利子 収入は減少する。 名目金利の低下する速度以上の物価の下落が発生している局面 では、実質金利が上昇し投資活動が低下する。 デフレスパイラル 物価下落 個人消費など の最終需要の 滅少 企業行動の 慎重化 企業の売上 の減少 企業収益 の滅少 デフレ対策 政策金利や公定歩合の引き下げ 低所得者への所得保障や最低賃金の引き上げ 政府保証や政府買い取り制度(金融資産、穀物・ 原油など基幹資源など) 累進課税制度など税制による所得の再分配(ビル ト・イン・スタビライザー) 財政出動による総需給ギャップの改善 etc…… バブル崩壊後の日本のデフレ 急激な利上げと総量規制による貸出の制限でマ ネーサプライの伸びがマイナスになるほどの引締 め政策でバブル経済が崩壊した1992年以降、ディ スインフレ(物価上昇率の低下)の傾向を示すよ うになり、1997年の消費税等の増税・歳出削減な どの緊縮財政により消費者物価上昇率がマイナス になり、デフレの様相を呈するようになった。 1997年に発生したアジア通貨危機やこれに続いた 日本の金融危機も原因として挙げられている。日 銀による2000年のゼロ金利政策解除や2001年の国 債30兆円枠による緊縮財政などの経済政策の失敗 により、デフレ不況がさらに激しくなった。 バブル崩壊後のデフレ デフレ期待を解消し停滞を打破するために量的金 融緩和が開始された。この政策には、ゼロ金利の 長期化が予想されることで中長期の金利を低下さ せる時間軸効果があるとされる。名目金利は0% までしか下げられず、デフレ下ではそれ以上の金 融緩和ができない 2006年では、2002年からの緩やかな景気回復によ り消費者物価指数ベースでのデフレ終了が見込ま れているが、量的緩和解除が時期尚早でデフレが 終わらない可能性を指摘する人もいる。 そして2008年の世界金融危機とそれに伴う不況に より、デフレスパイラルは日本のみならず世界規 模での再来が懸念されている タイムリーなお話 政府は20日に発表した11月の月例経済報告で、 日本経済は「緩やかなデフレ状況にある」と認定 した。 政府による「デフレ宣言」は、2006年6月 以来、3年5カ月ぶり。 先行きの景気下押しリスクに「デフレ」を新た に加え、政府として、持続的な物価下落が景気に 悪影響を与えかねないとして警戒感を強めた。 デフレ宣言 原因 1)物価の基調判断として重視しているコアコアC PIが6カ月連続で前月比マイナスになったこと 2)名目国内総生産(GDP)成長率が実質GDP成 長率を2四半期連続して下回ったこと 3)需給ギャップの大幅なマイナスが続いていると見 込まれること おわりに 「インフレとデフレ」といっても、原因は様々あ ることが分かった。 なぜデフレになったのか? なぜインフレになったのか? この疑問を解決するだけでも、その国の経済が みえてきてとてもタメになった。 参考文献 経済のニュースがよく分かる本 著:細野真宏 WEB ALL ABOUT 2008年9月6日出版
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