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国際経済学
(10)時間を通じた選択と利子率
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2011年1月17日
今日学ぶこと
1.
2.
3.
4.
5.
6.
異時点間の選択
貯蓄
単利と複利
割引現在価値
インフレーション
実質利子率
2011/1/17
国際経済学10
2
異時点間の選択
真央はアルバイトで5000円を得た
 明後日アルバイトするが明日は何もしない

明日のために今得た所得の一部を取ってお
くだろう
 明日4000円の買い物をする予定ならば今日
の買い物を諦めなければならない
5000-4000=1000
 今日使えるのは1000円だけ

2011/1/17
国際経済学10
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貯蓄
今得たお金を将来のために取っておく行為
を貯蓄という
 貯蓄をすれば現在の消費は減る
 しかし,将来の消費は増える


つまり,現在の消費と将来の消費はトレー
ドオフの関係にある

予算制約線や時間制約線と同様にトレード
オフを図解できる
2011/1/17
国際経済学10
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明日の消費(円)
5000
4000円貯蓄して
C 今日1000円消費
B
-1は今日の1円を増や
すには明日の1円を犠牲
にしなければならない
4000
傾き=
(5000-0) / (0-5000)
=-1
A
1000
2011/1/17
所得を今日
すべて使う
今日の消費(円)
5000
国際経済学10
5
明日の消費(円)
5000
今日の所得はゼロで
明日の所得は5000円
の場合の点はどこか
今日と明日の消費
C
B
4000
貯蓄
=4000
=50001000
今日と明日の所得
A
1000
2011/1/17
今日の消費(円)
5000
国際経済学10
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単利と複利
ゆうちょ銀行や普通の銀行の口座
 預けたお金を元本という
 元本に対して銀行は利子を支払う

1. 100万円預けて利子が100円
2. 100万円預けて利子が2万円
最初に預けたお金は保障されるので元本と
利子の合計(元利合計)は増える
 預ける人にとっては利子が多いほどよい

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国際経済学10
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単利と複利2
貯蓄の有利さは利子率(%)で測る
利子
利子率=
×100
元本
1. 100/1,000,000 × 100=0.01 (%)
2. 20,000/1,000,000 × 100=2 (%)
 現在(2010年)は低金利で0.03%
 1990年頃は7%
 預金者は金利が高い方が有利
 金利は普通変動する

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国際経済学10
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単利と複利3



利子の付き方には二通りある
単利~預けた元本に毎期利子が付く
例:単利で年利3%で1万円を預けた
 1年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,000+300=10,300
 2年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,300+300=10,600
2011/1/17
国際経済学10
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単利と複利4


複利~前の期の元利合計に利子が付く
例:複利で年利3%で1万円を預けた
 1年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,000+300=10,300
1年目は単利も複利も同じ元利合計
 2年目:元本 10000
利子 10,300×0.03=309
元利合計 10,300+309=10,609

複利の方が有利 10609>10600
2011/1/17
国際経済学10
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単利と複利5

100万円を年利3%で10年預金:
 複利は134.39万円,単利は130万円

一般に複利の預け入れの方が単利よりも有
利
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国際経済学10
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単利と複利6





利子率を英語で interest rate. rと略す
複利計算
1年目の元利合計=10,300=10,000(1+r)
2年目の元利合計
=10,300+309=10,000(1+r)+10,000(1+r)r
=10000(1+r)(1+r)
=10000(1+r)^2
(^2は2乗の意味)
m 円を預けた時のn年目の元利合計
n
m(1+r)
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国際経済学10
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今年の所得100万円で利子率r%
今年の所得100万円,来年の所得0円,利子
率r%
 今年消費を全くしなければ来年は
100×(1+r)万円
消費できる
 予算線はどう変わるだろうか?

2011/1/17
国際経済学10
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来年の消費(万円)
100(1+r)
100
C
今年と来年の所得と貯蓄
今年の所得を
すべて貯蓄
B
傾き=
(100(1+r)-0) / (0-100)
= 100(1+r)/ (-100)
=- (1+r)
A
今年の消費(万円)
100
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国際経済学10
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利子がある場合の異時点間の消費

予算線の傾き: –(1+r)

今年すべて消費は変わらない
所得すべて貯蓄の時に来年の消費は100(1+r)
 利子率rが上がれば消費可能な領域は増える
 今年の消費と来年の消費のトレードオフは

1+r

1円の現在消費を増やすには 1+r 円の来年消費
を減らさなければならない
2011/1/17
国際経済学10
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利子がある場合の異時点間の消費

利子率の上昇は来年の消費に比べ今年の消費は
不利になる
ここまでの理解では今は低金利なので現在の消
費の方が有利
 この後に修正される

利子率は現在と将来の消費
のトレードオフを示す
2011/1/17
国際経済学10
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割引現在価値
みなさんは今100万円をもらえるのと1年後
に100万円をもらえるのはどちらが嬉しい?
 普通今の100万円を選ぶ
 安全なゆうちょ銀行に預ければ利子が付く
 1000 円を0.1% の利子率で預け入れした
1000+1000*0.001=1000+1=1001
 来年には1001円になる
 現在の1000円は来年の1001円に等しい
 差1円が一年間我慢した報酬

2011/1/17
国際経済学10
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割引現在価値/2

反対に来年1001円は現在の1000円に等しい

将来の価値は現在でどのくらいの価値があ
るのか?
割引現在価値とは将来の金額を現在の金額
で評価した場合の金額
 差の1円を割り引いた
1000(1+0.001)=1001
 上式を変形すると
1001
1000=
1+0.001

2011/1/17
国際経済学10
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割引現在価値/3
例:年利 10%の時に来年の一万円は現在の
価値でいくらになるだろうか?
10,000 =9090.9
1+0.1
 現在の貨幣価値で9,090円になる


割り引く利子率が高いほど将来の金額は現
在の価値で小さく評価される
2011/1/17
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割引現在価値/4
利子率rのときパーセント表示では 100*r %
 年利r (=100*r%)であるとき来年のx円の割引現在
価値
x
1+r
 貯金では1+rを掛けたが,割引現在価値では1+r
で割った
 年利 0.1 %で来年の1000 円は今年の999 円に等
しい
1000
=999
1+0.001

2011/1/17
国際経済学10
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今年の所得0で来年100万円の所得
今年全く所得がないが来年100万円の所得を
得られる
 借り入れ利子率を預け入れ利子率と同じr%

今年消費をするには借り入れをして元利合
計を来年支払わなければならない
 来年全く消費しなければ今年は
100
万円
1+r

消費できる.
2011/1/17
国際経済学10
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今年の所得0で来年100万円の所得/2

今年は
100
万円
1+r
借り入れたとする.
 来年の返済額は
100
×(1+r) =100 万円
1+r
となり来年の所得に等しい.これが今年の
最大の消費額.予算線はどう変わるか?
2011/1/17
国際経済学10
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来年の消費(万円)
今年の負債と来年の所得
来年の所得を
すべて消費
100
B
傾き=
(100-0) / (0-100/(1+r))
= 100(1+r)/ (-100)
=- (1+r)
A
D
100
1+r
2011/1/17
国際経済学10
今年の消費(万円)
100
23
今年と来年に所得がある場合
今年50万円,来年50万円の所得がある場合
の予算線を描いてみて下さい.
 預金利子率と貸し出し利子率は同じで r とす
る

2011/1/17
国際経済学10
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来年の消費(万円)
E
50+50(1+r)
100
今年と来年の所得と貯蓄
今年と来年の所得を
すべて消費
B
傾き=
(50+50(1+r)-0) / (0-(50+50/(1+r))
= 100(1+r)/ (-100)
=- (1+r)
50
D
50
2011/1/17
A
今年の消費(万円)
50 100
50+
1+r
国際経済学10
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貯金と借金の異時点間の消費

予算線の傾き: –(1+r)
すべて来年の消費: 50+50(1+r)
 すべて今年の消費:
50
50+

1+r

所得の点(50,50)で利子のない予算線と交わる
利子率が上昇すると借り入れによる消費はし辛
くなる.
 貯蓄による消費の領域は拡大

2011/1/17
国際経済学10
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インフレーション
異時点間の消費では利子率が重要
 物価も重要
 同じ100万円でも値段が異なると消費も変化
 1000円のフリースは1000枚
 2000円のフリースは500枚
 物価水準の違いで消費量は異なる

2011/1/17
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インフレーション
先生が小学校の時の遠足のおやつは100円
でした.皆さんの予算は幾ら?
 世の中の財・サービスの物価の動向
 インフレーション
Inflation
複数の財の全般的な上昇.
 反対に諸価格の全般的な下落
デフレーション deflation

2011/1/17
国際経済学10
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インフレーションの測定

デフレ
○物価の下落
×物価の下落+不景気

全ての財の価格が5%上昇すれば無問題

今川焼き価格が5%,カラムーチョが10%上昇
した場合にインフレ率はいくら?
複数の財の価格の平均を取る
財の重要度によってウエートを変える
鉛筆価格の小さいウエート,住宅価格は大



2011/1/17
国際経済学10
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消費者物価指数


日本では様々な財が取引されている
消費者は新幹線や下水道管は買わない
消費者物価指数~家計にとって重要な物価の
動向を見るための指数
 平均的な家計が購入する財の組合せ
4月の消費者物価,1.5%下落…14か月連
続減 (2010年5月28日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20100528-OYT8T00752.htm
全国消費者物価指数(2005年=100)は,値
99・2と前年同月比1・5%下落し…
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国際経済学10
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消費者物価指数変化率
%
2.0
1.4
日 本
1.5
1.0
0.3
0.5
0.0
0.0
-0.3
2003
2004
0.0
-0.3
2005
年
2006
2007
2008
2009
-0.5
-1.0
-1.4
-1.5
-2.0
2011/1/17
国際経済学10
31
インフレ率
上がっているか下がっているか動きが大切
 今年の物価がP,来年の物価がP’とする
 インフレ率とは物価の上昇率を表す:
P’ - P
× 100
P
 変化率のパーセント表示
 マイナスだとデフレ
◆問い 去年の物価指数100で今年は98ではイ
ンフレ率はいくらか

2011/1/17
国際経済学10
32
インフレ率
◆解答
98 - 100
× 100= -2 (%)
100
 物価が下がれば消費者は得をする.
 今年100万円の所得を得るが来年は0.
 貯蓄しても利子は付かない
 今年の価格はP円,来年の価格はP’円.
 予算制約線はどうなるだろうか?
2011/1/17
国際経済学10
33
来年の消費(個)
100
P’’
100
P’
今年と来年の所得と貯蓄
C
デフレになった.来年の価格が
下落 P’’<P’
B
傾き=
(100/P’-0) / (0-100/P)
= 100/P’/ (-100/P)
=- P/P’
今年の所得を
すべて貯蓄
2011/1/17
A
国際経済学10
100
P
今年の消費(個)
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価格変化がある異時点間の消費

予算線の傾き: –P/P’

今年すべて消費 100/P
所得すべて貯蓄の時に来年の消費 100/P’
 今年の消費と来年の消費のトレードオフは

P
P’
今年の1単位の財を得るには P/P’ 単位の来年の
財を諦めなければならない.
 デフレが起こったとする.来年の価格が下落.


P’’<P’.このとき消費可能領域が拡大.
2011/1/17
国際経済学10
35
実質利子率
将来の消費を考えるには将来の価格と利子
率の両方を考えねばならない.
 利子率の上昇と物価の下落がお得
 両方を考慮に入れた概念が実質利子率

今まで学んできた利子率は正確に言うと名
目利子率 nominal interest rate と言う
 それは今年100 円を貯蓄したら来年何円もら
えるかを意味

2011/1/17
国際経済学10
36
実質利子率/2

価格が変化する世界では修正が必要
実質利子率は今年の消費を控えて貯蓄した
ら来年どれだけ消費が増えるかを表す
 実質利子率 real interest rateの定義

実質利子率=名目利子率-インフレ率

例:名目利子率が 0.03 (%). インフレ率が 1.4(%)の時の実質利子率は
0.03-(-1.4)=1.43 (%)
2011/1/17
国際経済学10
37
実質利子率/3
例:名目利子率が 1 (%). インフレ率が 1(%)の
時の実質利子率:1-1=0 (%)
 今年の物価指数は 100 ,今一万円所有
 今年の消費量 10,000/100=100 (個)
 貯金すると来年の元利合計
10,000(1+0.01)=10,100
 インフレで来年の物価指数 100*1.01=101
 来年の消費量 10,100/101=100 (個)
 今年の消費量と変化無し=実質利子率 0%

2011/1/17
国際経済学10
38
実質利子率/4
日本は現在利子率が低いがデフレなので実
質利子率は他の先進国と比べ高い.
 国名
政策金利 - 物価上昇率 = 実質金利
日本
0.10 - (-1.30)
= + 1.40
アメリカ 0.12 2.60
= - 2.48
イギリス 0.50 3.50
= - 3.00
欧州
0.34 0.90
= - 0.56
 主要国の実質利子率はマイナス

白川日銀総裁の国会答弁より,衆議院財務金融委員会 議事録 ,開催日:
平成22年3月1日 http://www.yamamotokozo.com/report20100627.htm
2011/1/17
国際経済学10
39
実質利子率/5
◆問い 名目利子率が2(%), インフレ率が0(%)の
時に実質利子率はいくらになるか
◆問い 名目利子率が2(%), インフレ率が-1(%)の
時に実質利子率はいくらになるか
2011/1/17
国際経済学10
40
復習1
 今得たお金を将来のために取っておく
行為を貯蓄という
 単利は預けた元本に毎期利子が付く
 複利は前の期の元利合計に利子が付く
 割引現在価値とは将来の金額を現在の
金額で評価した場合の金額
2011/1/17
国際経済学10
41
復習2
 利子率の上昇は来年の消費に比べ今年
の消費は不利になる
 利子率が上昇すると借り入れによる消
費はし辛くなる.
インフレーションとは複数の財の全般的
な上昇.
 インフレ率とは物価の上昇率を表す

2011/1/17
国際経済学10
42
復習3
 将来の消費を考えるには将来の価格と
利子率の両方を考えねばならない.
 実質利子率は今年の消費を控えて貯蓄
したら来年どれだけ消費が増えるかを
表す
 日本は現在利子率が低いがデフレなの
で実質利子率は他の先進国と比べ高い
2011/1/17
国際経済学10
43