謙譲語

第23課 待遇表現ー敬語
碩日研一甲
M97E0302
王思淳

ねらい:
聞き手との関係や話題の人物などに配慮し
て使う待遇表現には、話し手の会話の場に
対する評価が反映します。そのうち、話し手
の敬意を表す敬語の体系を考えます。

キーワード:
待遇表現、敬語、相対敬語、絶対敬語、対者
敬語、素材敬語、文体、普通体、丁寧体、丁寧
語、距離感、上下関係、ウチとソトの概念、文
体の切り替え、尊敬語、謙譲語1、謙譲語2、
丁重語、美化語
はじめ
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

1 対者敬語と素材敬語ー普通体と丁寧体
2 尊敬語・謙譲語・美化語
3 恩恵の授受の敬語形
1 対者敬語と素材敬語ー普通体と丁寧体
絶対敬語:
年齢や社会的距離でどの敬語を使うかが決まってい
る場合である。
例えば:韓国語・・・など。

相対敬語:
話し手が、聞き手、話題に登場する人物、第三者の有
無、場の改まり度などに基づいて相対的に自身を位
置づけて選択するものである。

両方の違いは次の図により、説明する。

絶対敬語と相対敬語の違い
話題の人物
話し手
話題の人物
聞き手
絶対敬語
話し手
聞き手
相対敬語
注1
対者敬語:
話し手と聞き手との人間関係に基づくもの。

素材敬語:
話し手と話題に登場する人物との関係に基づ
くもの。

普通体:
上下関係にもウチ・ソトの関係にも距離がないと判断
したときの文体。
例えば:来る・行く・食べる・・・など。

丁寧体:
聞き手に対する敬意を表すために文末に使う語。
例えば:来ます・行きます・食べます・・・など。

2 尊敬語・謙譲語・美化語
尊敬語:
1)相手の行為を高める尊敬語
特別な尊敬動詞:いらっしゃる、召し上がる、
おっしゃるなど。
お/ご+動詞語幹+になる:お書きになる、
ご覧になるなど。
不規則動詞:来られる、されるなど。
子音動詞+are-ru/母音動詞+rare-ru:
書かれる、教えられるなど。

2)相手の属性や状態を高める尊敬語
名詞: お/ご+名詞:お名前、ご住所、など;
~さま、どなた、そちらなど。
形容詞: お+形容詞:お忙しい、お若いなど。
謙譲語:
特別な謙譲動詞:伺う、参る、おるなど。

お+動詞語幹+する:お待ちする、お持ちする
など。
ご+スル動詞:ご相談する、ご案内する。
1)謙譲語1:誰かに対する自身の動作を低め
ることで相対的にその相手を高める表現で
すから、動作の向かう相手がいることが前
提条件である。
2)謙譲語2(丁重語):話し手自身の行為だけ
でなく、話し手のウチの関係の者の行為に
ついても使われる。(対者敬語)

美化語:お/ご+名詞
例:お酒、ご飯、お電話、お菓子、お土産など。
また、美化語は「お菓子が食べたいなあ」「お
土産買わなくちゃ」のように独り言でも使われ
るので、対者敬語でもありません。

まとめてみると次の表1になります。
表1 敬語の分類
素材敬語
狭義の敬語
広義の敬語
対者敬語
尊敬語
謙譲語1
謙譲語2(丁重語)
丁寧語
美化語

話題の人物と聞き手が一致する場合は、聞
き手との距離によって、二つ組み合わせが
よく使われる。
1)尊敬語+丁寧語
2)尊敬語+普通語
1)尊敬語+丁寧語
話し手が、聞き手或いは話題の人物と一定の
距離を保ちつつ、行為を高めて敬意を表す。
例:
「何時ごろいらっしゃいますか」
「昨日お宅にいらっしゃいましたか」
「何を召し上がりますか」
2)尊敬語+普通語
注意すべき点:聞き手に対する社会的上下関係
の意識を明示することに繋がるのを注意すべき。
例:
「何時ごろいらっしゃる?」
「昨日お宅にいらした?」
「何を召し上がる?」
3 恩恵の授受の敬語形

授受動詞の敬語表現について、表2で示す。
表2 授受動詞の敬語表現
授受動詞
授受動詞の敬語形
あげる
さしあげる(謙譲語)
くれる
くださる(尊敬語)
もらう
いただく(謙譲語)
※授受動詞の使い分けには、話し手の視点が関与する。
ウチとソトの概念図
私の家族(ウチ)
相手の家族(ソト)
私の会社(ウチ)
相手の
家族
A
A
社外(ソト)
敬語
敬語
敬語
私
敬語
相手
私
敬語
会話
会話
図1
図2
※ Aは話題になっている人
相手
注2

敬語は先に述べたように、ウチとソトの概念
が関係する。
1)姉が大学の先輩にお礼の品をさしあげた。
2)兄が父の知人に就職先を紹介していただいた。
3)先生が推薦書を書いてくださった。

1)姉が大学の先輩にお礼の品をさしあげた。
「さしあげる」はアゲルの敬語形であり、モノ
や恩恵の移動先への話し手の敬意を表す
表現。

2)兄が父の知人に就職先を紹介していただ
いた。
「いただいた」はモラウの敬語形であり、移
動元への話し手の敬意を表す表現。

3)先生が推薦書を書いてくださった。
「くださる」はクレルの尊敬形であり、与え手
で、受け手(話し手のウチ)に視点があり、話
し手のソトからウチへのモノの移動や恩恵
の方向性を表す。

敬語の使用には、以下の3点を配慮しなが
ら、瞬時的にウチとソトを判断することが要
求されている。
1)発話の場の改まり度
2)聞き手との相対的な関係
3)話題の性質
2007年文化審議会答申により新たな敬
語の仕組みは次のようである。
5種類
3種類
「いらっしゃる・おっしゃる」型
尊敬語
相手側または第三者の行為・物事・状態などについて、
その人物を立てて述べるもの。
尊敬語
「伺う・申し上げる」型
謙譲語Ⅰ
自分側から相手側又は第三者に向かう行為・物事など
について、その向かう先の人物を立てて述べるもの。
謙譲語Ⅱ
(丁重語)
「参る・申す」型
丁寧語
美化語
謙譲語
自分側の行為・物事などを、話や文章の相手に対して
丁重に述べるもの。
「です・ます」型
話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの。
「お酒・お料理」型
物事を、美化して述べるもの。
丁寧語
注3
参考文献

(注1)
白同善(1999):「絶対敬語と相対敬語 日韓敬語法の比較」
『世界の日本語教育3』;1999,03

(注2)
鈴木暁子(2007):「日本語敬語トレーニング」;アスク2007,11

(注3)
文化審議会答申(2007):「敬語の指針」;2007,02

近藤安月子(2008):「日本語学」;研究社2008,10