7. Martingales and Tight Concentration 7.1: Definitions 7.2: Large Deviations 7.1 Definitions マルチンゲールとは 、ランダムな変数列 X1,…,Xm であって、 E[Xi+1 | Xi,Xi–1,…,X0] = Xi を満たすものを言う。 ★ X0,…,Xi までがわかったとき、Xi+1の条件 付期待値が Xi と等しくなるようなもの。 公平なギャンブル 公平なギャンブルとは、1 ゲームの収支 の期待値が 0 になるようなものを言う。 次のゲームをした後の所持金の期待値 は、過去の履歴 (X0,…,Xi–1) によらず、現 在の所持金 (Xi) に等しい。 ↓ 所持金の推移はマルチンゲールになる。 例:コイン投げ 裏表を当てると所持金 +1、外すと –1 1 ゲームごとの収支期待値は当然 0 ゲーム後の所持金の期待値はゲーム前 の所持金の期待値に等しい →マルチンゲール 所持金は二項分布に従う 枝公開マルチンゲール グラフ G の枝を隠す(頂点は見える)。 すべての頂点の組について、順番に枝が あるかどうかの情報を公開していく。 それまでに公開された i 個の枝情報を含 むグラフを H で表す。 グラフに関する任意の特徴量 Xi(H) は、 公開された情報の数 i についてマルチン ゲールになる。 Xi は未公開枝についての期待値をとる。 例:特徴量 f(H) = 彩色数 ? ② ③ ? ? ① ? 有 X1(H) = 2.25 ? ? ? X0(H) = 2 平均 無 X1(H) = 1.75 有 ? 有 X2(H) = 2.5 無 有 X2(H) =2 無 有 有 X3(H) =2 ? 無 無 有 X3(H) =2 例:特徴量 f(H) = 彩色数 2.5 3 2.25 2 2 2 2 2 2 2 2 1.75 X0 X1 2 1.5 X2 1 X3 頂点公開マルチンゲール グラフ G の枝を隠す(頂点は見える)。 各頂点について、それまでに公開された 頂点との間に枝があるか公開していく。 それまでに公開された i 個の頂点情報を 含むグラフを H で表す。 グラフに関する任意の特徴量 Xi(H) は、 公開された情報の数 i についてマルチン ゲールになる。 Xi は未公開頂点についての期待値をとる。 例:特徴量 f(H) = 彩色数 3 2.25 2 2 2 2 2 2 2 1.75 2 1 X0 X1 X2 X3 7.2 Large Deviations 定理 7.2.1 系 7.2.2 定理 7.2.3 定理 7.2.4 A.1.1 X0,…,Xn を独立とし、 Pr[Xi = +1] = 1/2, Pr[Xi = –1] = 1/2, Sn = X0+…+Xn a 2 2n とするとき、 PrS n a e (証明略) A.1.16 X0,…,Xn を独立とし、 E[Xi] = 0, |Xi| ≦ 1, Sn = X0+…+Xn とするとき、 a n とおくと PrS n a cosh e (証明略) 2 2 定理 7.2.1 X0,…,Xm をマルチンゲール、X0 = 0 とし、 |Xi+1–Xi| ≦ 1 が 0 ≦ i < m について成り立つとする。 l > 0 を任意に選ぶとき、次が成り立つ。 Pr X m l m e (Azumaの不等式) l2 2 定理 7.2.1 証明: l m とおく。 Yi = Xi – Xi–1 とする と、仮定より |Yi| ≦ 1 であり、 E[Yi | Xi–1,Xi–2,…,X0] = 0 が成り立つ。 e e max E e | X i 1 , X i 2 ,, X 0 cosh Yiの分布 2 (確率 0.5 で Yi = ±1 の分布で最大) なので、 Yi Yi Ee | X i 1 , X i 2 ,, X 0 cosh e 2 2 定理 7.2.1 Ee Ym Ym1 Y1 X m より、 E e E e Ee | X , X E e e e E m 1 Y i Ym i 1 m 1 Y i 従って、 m 1 2 2 e Ee i 1 m2 Yi e , , X 0 2m 2 i 1 Pr X m l m Pr eX m el X m m l m 2 m 2 l m e m e l l2 2 l2 m e l2 2 ■ Markov Bound X > 0 のとき EX PrX t t 系 7.2.2 X0,…,Xm をマルチンゲール、X0 = c とし、 |Xi+1–Xi| ≦ 1 が 0 ≦ i < m について成り立つとする。 このとき、次が成り立つ。 Pr X m c l m 2e l2 2 ※初期値が 0 でない場合に拡張しただけ。 グラフ特徴量のリプシッツ条件 グラフ上の特徴量 f について、枝 1 本だけ 異なる 2 つのグラフ H,H’ において | f(H)–f(H’)| ≦ 1 が成り立つとき、f は枝リプシッツ条件を満 たすという。同様に、頂点 1 個だけ異なる 2 つのグラフ H,H’ において上式が成り立つと き、頂点リプシッツ条件を満たすという。 定理 7.2.3 f が枝リプシッツ条件を満たすとき、これに 対応する枝公開マルチンゲールは |Xi+1–Xi| ≦ 1 を満たす。 f が頂点リプシッツ条件を満たすとき、これ に対応する頂点公開マルチンゲールは |Xi+1–Xi| ≦ 1 を満たす。 証明:のちのセクションで。 定理 7.2.3 直感的には、1 本の枝あるいは 1 個の頂点 の存在が、グラフの特徴量 f に ±1 以上影 響しないとすると、枝・頂点をひとつ「公開」 したとしても、前後の f の期待値は ±1 以 上変化しない、ということが言えそうである。 次は定理 7.2.1, 7.2.3 の応用例↓ 定理 7.2.4 n,p を任意にとり、c = E[c(G)] とする。 ただし、G ~ G(n,p) は頂点数 n、各頂点間 に確率 p で枝を張ったランダムグラフであり、 c(G) は G の彩色数を表す。 このとき、 l2 2 Pr c G c l n 1 2e が成り立つ。 定理 7.2.4 証明:頂点公開マルチンゲール X1,…,Xn を 考え、f(G) = c(G) とする。c(G) は、頂点を 1 個追加するたびに高々 1 色増やせば彩色 可能なので、頂点リプシッツ条件を満たす。 Azumaの不等式を系 7.2.2 の形で適用すれ ば、直ちに証明が完了する。■ 定理 7.2.4 l と任意にゆっくりと発散させるとき、こ の結果は c(G) が期待値付近に固まってい る (tightly concerned) ことを示す。しかし、上 記の証明は期待値がどこにあるかというこ とについて一切ふれていない。
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