高级日语Ⅰ 第2课 田中正造 上 笙一郎 1 2 田中正造 (1841~1913) 日本の政治家、社会運動家。 栃木県佐野市小中町の名主の家に生まれ、17歳で名 主となり、領主であった六角家の改革運動に先頭に立っ て活動しましたが、捕らえられ11か月の投獄生活を送り ました。明治7年(1874)に郷里の小中村へ帰り、明治11 年(1878)に栃木県第4大区3小区区会議員に選ばれ、 政治家としての第一歩を踏み出しました。明治13年 (1880)には栃木県会議員に当選し、自由民権運動家と して当時の県令に対抗しました。 3 4 その後、明治23年(1890)の第1回衆議院議員選挙に 当選し、以後6回連続当選しています。鉱毒被害に関す る質問書の提出を始めとし、足尾銅山の鉱毒問題に取 り組みました。明治34年(1901)には、鉱毒被害の惨状 を訴えるため明治天皇に直訴しようと試みましたが、果 たせませんでした。 議員を辞職後は、渡良瀬川の遊水池計画の反対運動 に尽力し、住民と共に村を守るために闘いました。しかし 政府による土地収用法の適用や谷中村残留民家の強 制破壊により谷中村は消滅します。 正造は、この後も残留民と共に谷中村復興を図り、ま た政府の治水政策の誤りを指摘するために、関東地方 の河川調査を続けましたが、その途中で病に倒れ、大 正2年(1913)9月4日、73歳の生涯を終えました。 一八九一年(明治二十四年)の十二月二十五 日、日本に国会が開設されて第二回目の議会で のことである。年齢は五十歳ぐらい、がっしりとし た体つきの男が演壇に立ち、政府への質問演説 に熱弁をふるっていた。満場、きちんと洋服を着 た議員ばかりなのに、その男の身に着けている のは、粗末な木綿の着物と袴。しかも、髪は乱れ 放題で、気にかける様子は全くない。 5 6 ふるう 【振るう・揮う】 〔動詞「振る」に接尾語「ふ」の付いたもの〕 (他動詞) (1)大きく振り動かす。 「拳を振るう」「木刀を振るう」 (2)振り動かして中の物を出す。 「財布を振るっても何も出ない」 (3)思うままに使いこなして,そのものの持つ能力を十 分に表す。 「熱弁を振るう」 「暴力を振るう」「健筆を振るう」「台風が 猛威を振るう」 (自動詞) (1)勢いが盛んになる。気力が充実する。 「商業が大いに振るう」 「成績が振るわない」 7 (2)奇抜である。とっぴである。 「振るった話だ」 「理由が振るっている」 [慣用] 8 腕を振るう. 久しぶりに料理の腕を振るう。 大鉈を振るう(=切るべきものは切って、思い切った整 理をする) 予算案に大鉈を振るって、 怖気を振るう すっかり怖気をふるってしまった 袴 和装で着物の上から着けて腰から脚をおお うゆったりした衣服。上部に付けたひもを結ん で着用し、普通、ズボンのように両脚の部分 に分かれるが、スカート状のものもある。 9 10 11 ~放題 動詞の連用形や助動詞「たい」、またはある種の形容動 詞の語幹などに添えて、自由に存分に行う意を表す。 「食べ放題」 「言いたい放題」 「勝手放題」 「わがまま放題」 12 13 各事業者によるサービス改善への取組みが行われている。 たとえば,フリ区間一日乗り放題の乗車券なども数多く発売 されている。 平日はほとんどお金を使わないものの、週末に好き放題散 財しています。 道路の状況は非常にいいです。ただし、スピードは出し放題 ということになるので覚悟がいりますよ! 「なんとかならないか」との声が警察などに寄せられていた。 暴走族のやりたい放題を、これ以上放置できない。 14 ~つくす 「尽くす」は「ある限りのものや力を全て出す」とい う意味の動詞で、「全力を尽くす/手段を尽くす/ 国に尽くす」のように単独でも使われます。 1.八方手を尽くして探しましたが、ついに彼を見 つけだすことはできませんでした。 2.それは筆舌(ひつぜつ)に尽くし難い美しさだっ た。 3.もう意見は出尽くしたようだ。そろそろ結論を出 そうじゃないか。 15 そこから補助動詞として「残らず全部~してしまう」という 意味を表すようになります。 言いつくすことのできない複雑な気持ちだった。 類義文型に動作の完了を表す「~終わる」「~切る」があ りますが、そこには以下のような違いがあります。 料理を 食べ切った。 <完全に~した> 食べ尽くした。 <残らず全部~した> 目標の完遂を強調したいときは「~切る」、残らず全部( 数量)を強調したければ「~尽くす」が基本的使い分けとな ります。 16 4.あり金全部を使い尽くして、今夜の飯代もない 始末だ。 5.当時の苦労は、ちょっと一言では語り尽くせま せん。 そのため例文4~5のような例には「~切る」が使 えません。 広まる 全体に広く行きわたって知られるようになる。 (うわさ、話、知らせ、ニュース、名声、評判、名前、理解 、教え、考え、思想、学問、知識、宗教、信仰、制度、風 習、治療法、新製品、・・・・・・)が広まる 17 町長の汚職のうわさがあっという間に町中に広まった 新薬開発の成功のニュースはインターネットを通じてた ちまち全世界に広まった 評判のよい店は口コミで名前が広まる 仏教はさまざまなルートでアジアに広まっていった 企業内研修制度が広まりつつある 迫る 18 〔他動詞〕強い態度で要求する。 返事を迫る 辞職を迫る 仕事の必要に迫られて ・ 車を買う必要に迫られる 事実の公表を議員に迫る 。 〔自動詞〕 1((近づく))[時・場所など が]. 締切りが迫る .真に迫る 谷が迫っている ¶目前に迫った危険 その地方は冬が迫ってい た 19 2((狭くなる))[幅が];[長さ が]. 道幅が迫っていて車が通 れない。 3((困る))[生活などが]. ¶貧に迫って盗みをはた らく 4((胸や息が)). 万感胸に迫る 20 ~に終わる (ものごとが終了する意と、不本意の結果、期待に反し た結果しか得られなかったという意味を表す。) 怪我をして試合出場は夢に終わった 会談は物別れに終わった 販売が空振りに終わる (=不成功に終わる) 企てが不発に終わる (=実行されないまま終わる) 胸を撫で下ろす (心配や危険がなくなり、また気がかりだったことが無事にす んで、ほっとする、安心するという意味を表す。) ①検査して肝臓炎の感染はないと分かって、やっと胸を撫で 下ろした。 ②待ちに待った志望校の合格通知書を見て、胸を撫で下ろし た。 21 あくまで(も) (飽くまで) 22 「あくまで(も)」は、自分の主張を貫徹する強い意志を表わす。 したがって、初志を曲げずある目的に向かって突き進む行為と 結びつく。 あくまでもがんばろうと覚悟して 戦うくらいならあくまで戦え その計画にはあくまで反対だ 自己の夢をあくまで守れ あくまでも平和解決への努力を続けるつもりです. 23 一日はだれにとっても二十四時間で、あくまでも平等なも のだ。 また、「一日はだれにとっても二十四時間で、あくまでも 平等なものだ」というように、どんなに否定しようがやはり の意で用いられることもあり、この用法も話者の主張の 強さを表わすものと考えられる。 あくまでも現実的な人生観 彼はあくまで日本人だ 空はあくまでも青い 上記の例は、あくまで例です。 羽織 着物の上に着るみじかい衣服。前は合わせない、ひもで結ぶ。 24 25 ~果てる 動詞の連用形に付いて,すっかり…する,限界まで…する ,などの意を表す。 「疲れ果てる」 「荒れ果てた故郷の村」 「変わり果てた姿」 田中正造の葬儀には4~5万人の人が参列し たといわれています。また、正造の遺骨は彼を 慕う人々の要望で、佐野市小中町、雲龍寺、春 日岡山惣宗寺、田中霊祠、北川辺霊場の5か 所に分骨されました。 26 27 田中正造を理解するには、正造が生きて活動していた 時代背景を理解しないと、彼の偉大さが伝わってこない から、時代背景に目を向けよう。 この時代、日本は長い江戸幕府による封建制を脱却し、 殖産興国を旗じるしとして世界の列強という国々に肩を 並べようとしていた。 列強と肩を並べるには、当時世界的に流行した領土拡 大と他国を植民地化するという政策を国策として推し進 める必要があった。 この当時、銅は絹とともに外貨を稼ぐための最大の商品 価値を有していた。そのため国は、これら増産のために 大口生産者に相当な肩入れをした。 28 足尾銅山は、この当時国内において40~50%の銅生産 率で、国内第1位を誇っていた。 当時の日本政府は「銅と絹を売って、軍艦と兵隊を手に 入れ、アジアの隣国へ侵略し、領土拡大を画策した。」 のである。 こうした政治背景の中で、正造は「足尾銅山の操業をや めさせろ!」「戦争は犯罪である。世界の軍備を全廃す るよう日本から進言すべきだ!」と明治政府に迫る。 正造の行動でのクライマックスの一つは「天皇への直訴 」であるが、直訴に関する当時の最高刑は「死刑」であり 、正造は真に命を賭けて行動したのである。 田中 正造の名言 真の文明は 山を荒らさず 川を荒らさず 村を破らず 人を殺さざるべし 29 30 朗読の工夫をする 登場人物の会話や表情に着目し、心情を読みとること。 会話部分を実感を込めて朗読することで理解を深める。 本文の中、印象に残った部分が何かについて、ご感想 を聞かせてください。
© Copyright 2024 ExpyDoc