制御 ― 技術の生み出した科学

制御 - 技術が生み出した科学
木村 英紀
独立行政法人理化学研究所
バイオ・ミメティックコントロール研究センター
知の統合ワークショップ「 横断型科学技術と数学」
2006年10月17日 東京
「応用数理」
Vol.1, No.1, pp.2-16
科学と技術の関係
社会・人間
技術の誕生
(道具の使用?)
産業革命
第2の
科学革命
第3の
科学革命
新しい科学
現代科学技術
科学的探究の
はじまり
(神話創造?)
第1の
科学革命
• 第1の科学革命 ・・・ 近代科学の誕生
17c 中葉
• 第2の科学革命 ・・・ 科学と技術の結びつき 19c前半
• 第3の科学革命 ・・・ 技術が科学を生み出す 20c中葉
現代科学
第3の科学革命が生み出した科学
◎ 最適化(オペレーションズ・リサーチ、データ解析)
◎
◎
◎
◎
通信とネットワーク(技術の社会化に伴って必ず生まれる)
制御(オートメーション、省力)
計算(技術の大規模化、人工物の機能化)
システム工学(システムの概念化、論理探求)
サイバネティックス
第3の科学革命の思想的表現
情報科学、設計学、経営科学、認知科学、
人間機械インターフェイス、医用工学 etc
自然科学ではない科学
技術が生み出した科学が依拠するもの
論 理
= 数学・数理
(科学が駆動した技術が依拠するものは唯一絶対の「自然」)
20世紀前半は量子物理学の時代であると共に
論理の時代 であった
論理の数学化 ・・・ 記号論理学
数学の論理化 ・・・ 数学基礎論
ラッセル、ホワイトヘッド、ヴィトゲンシュタイン、カルナップ、
ヒルベルト、ゲーデル、チューリング、チャーチ、コーエン etc
(ウィーナー、フォンノイマン、シャノンはいずれも論理学を最初のテーマに
選んでいる)
我国の事情
◎ 我国が近代科学技術を欧米からとり入れた幕末/明治は
第2の科学革命が巨大な成果をおさめつつあったときである。
当時の知識人には「科学」と「技術」の区別はほとんどない。
(例: 福澤諭吉)
◎ 第3の科学革命がアングロサクソンの国々で進んでいた
とき、我国とこれらの国々との間は戦争状態であった。
◎ 第3の科学革命が巨大な成果と共にその体系的な姿を
現した第2次大戦後、我国の科学技術は崩壊しており、
技術が「社会化」「システム化」される過程で生じる問題に
向き合う余裕も必要もなかった。
我国の科学技術の基調は第2の科学革命の
時代にある
(例) 技術は科学の適用である(武谷三男)
(「実学」を見下す風潮)
基礎研究=自然科学の研究(政策当局)
(数学の研究はどこに位置づけるのか?)
「モノつくり」への過度の思い入れ(産業界)
(「ソフトウェアなど誰でもやろうと思えば作れる」と広言する研究者
「深さ」への過度の思い入れ(自然科学者)
(「個別科学の発展なしに科学の発展はない」と主張する物理学
者)
技術が生み出した科学を〈科学〉として定立し、自然科学と
並んで科学としての市民権を確立すること