2016/6/27作成

*グローバル投資環境
No.1386 *
ご参考資料
髙木証券投資情報部
英国のEU離脱のインプリケーション
2016年6月27日作成
23日に英国で行われた英国がEU(欧 ▼投票結果
州連合)から離脱することの是非を問
う国民投票では、離脱支持が1,741万
742票(投票総数の51.9%)、残留支持
が1,614万1,241票(同48.1%)となっ
た。これによって、今後の英国はリス
ボン条約の第50条によって、EUからの
離脱手続きを進めてゆくことになると
思われる。
16,141,241
17,410,742
英国歳入関税庁の2014年の統計によ
(出所:BBCより髙木証券作成)
ると、英国からの輸出総額のうちEU向 ▼リスボン条約第50条(抄)
けが47.4%(ユーロ圏向けは41.7%)
1 いかなる加盟国も、その憲法上の要件
に達しており、また輸入総額ではEUか
に従い連合からの脱退を決定することが
らが52.8%(45.5%はユーロ圏から)
できる。
を占めているが、EUからの離脱によっ
2 脱退を決定した加盟国は、その意思を欧
て英国は、5億人の顧客と英国の5倍の
州首脳理事会に通知する。連合は、欧
経済規模を有する単一市場に自由にア
州首脳理事会が定める指針に照らして、
クセスするメリットを喪失することに
その国と交渉を行い、その国と連合との
なるだけではなく、EU域外の50を超え
将来的な関係の枠組みを考慮しつつ、そ
る国との通商合意を喪失することにな
の国の脱退に関する取決めを定める協
るため、これらの国と個別に通商交渉
定を締結する。この協定は、欧州連合運
を行う必要が生じると思われ、これに
営条約第218条3に従って交渉される。こ
どの程度の時間が必要かは現時点では
の協定は、欧州議会の同意を得た後
未知数である。
に、理事会によって特別多数決によって
締結される。
EUからの離脱が英国の経済にネガ
3 両条約は、脱退決定が発効した日に、ま
ティブな影響を与えることは否定しよ
たは、それが存在しない場合には、欧州
うがなく、英国財務省の基本シナリオ
首脳理事会がその加盟国と合意したう
は、EUを脱退した場合は今後の2年間で、
えでこの期間の延長を全会一致により
EUに加盟し続けた場合に比べてGDPが
決定しない限り、2に定める通知から2年
3.6%減少(より厳しいショックを想定
後に、その国への適用を終了する。
するシナリオでは6.0%減少)すること
(以下略)
を見込んでいる。但し、英国は国民投
(出所:総務省より髙木証券作成)
票の結果を受けて自動的にEUから離脱 ▼英財務省が試算する「Brexit」の影響
するわけではなく、離脱交渉は英国か
(基本シナリオ)
GDPへの影響
-3.6%
らの離脱申請によって始められ、交渉
CPI上昇率(ポイント)
+2.3
には最短でも2年を要することが前述の
失業率(ポイント)
+1.6
リスボン条約で決まっているため、髙
失業者数
+52万人
木証券ではEUからの離脱は英国経済を
平均実質賃金
-2.8%
短期的に落ち込ませるよりは、景気を
住宅価格
-10%
為替レート
-12%
中期的に抑制する要因だと考えている。
ネット公的借入
+240億ポンド
(出所:英国財務省より髙木証券作成)
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最終頁の「ご注意いただきたいこと」を必ずお読み下さい。
髙木証券投資情報部
ご参考資料
このように、英国の成長率の急激な落ち込 ▼24日の主要先進国株価騰落(%)
みが想定しにくいことを前提にすれば、EU
(ユーロ圏を含む)の景気に対する短期的な
英FT100
-3.15%
独DAX指数
-6.82%
悪影響もさほど大きくならない可能性があろ
仏CAC40
-8.04%
う。しかし、24日の欧州各国株式市場の動
スペイン25
-12.35%
きをみると、独DAX指数や、仏CAC40指数が
イタリア40
-12.48%
英FT100指数を上回る下げとなったほか、と
NYダウ
-3.39%
カナダトロント総合
-1.69%
りわけイタリアとスペインの主要株価指数は
日経平均
-7.92%
ともに12%を超える急落となっており、そ
豪ASX200
-3.17%
の背景としては、フランスにおける反EU政
(出所:Bloombergのデータより髙木証券作成)
党である国民戦線のルペン党首が英国民の選 ▼ 米国及び日本の輸出入額に占める英国向け
択に祝意を示したような、反EU運動の拡散
比率(2014年)
の、とりわけ周縁国への可能性が不透明要因
輸出
輸入
として意識されていることを示していると思
米国
3.3%
2.3%
日本
1.6%
0.8%
われる。
なお、米国の輸出額に占める英国向けの割
合は3.3%、日本についてはそれをさらに下 ▼米ドル/ポンド
回る1.6%に過ぎず、英国のEU離脱の直接的
な影響は、これらの国では限られるとともに、
世界経済を大きく下押す方向には働かないと
思われる。
ところで、英国の財務省は前述の基本シナ
リオにおいて、EU離脱の場合、英国の通貨
ポンドインデックスは約12%下落すること
を見込んでいるが、為替市場では、ポンドが
対米ドルで国民投票中の1ポンド=1.5ドル台
から1985年9月以来の安値となる1.32ドル台
へという、財務省の予想に匹敵する下げを演
じている。一方で、円が全面高となり、米ド
ルに対しても一時2013年11月以来となる1ド
ル=99円台まで買われたが、英国のEU離脱
は、ポンド及び先に述べた通り域内経済が英
国のEU離脱によってある程度ネガティブな
影響を受けるとみられるユーロの、米ドル及
び円に対する売り要因だと考えられる一方、
ドルと円の関係に対しては本質的には中立、
つまり、米ドルに対して円を買う理由にはな
らないため、1米ドル=100円を超える円高
は理屈が通らないと思われる。
(出所:JETROより髙木証券作成)
(出所:Bloombergのデータより髙木証券作成)
▼円/米ドル
(出所:Bloombergのデータより髙木証券作成)
(文責:勇崎
聡)
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