コンクリート内部を可視化する後方散乱X線装置の開発(PDF:0.7MB)

■研究開発項目:点検・モニタリング・診断技術の研究開発
■研究開発テーマ:コンクリート内部を可視化する後方散乱X線装置の開発
■研究責任者:産業技術総合研究所 分析計測標準研究部門 研究グループ長 豊川弘之
■共同研究グループ:(株)BEAMX、名古屋大学
研究開発の目的・内容
背景
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日本は海岸線が長いため、塩害によるコンクリート中の鉄筋腐食が多く発生
古い橋では、プレストレストコンクリートのシース管グラウト未充填による鋼材損傷が発生
表面で見える状況では手遅れ。非破壊で内部を見なくてはならない。
高速道路床版や大型橋桁などX線透過撮影法が使えない場合も多く、新しいイメージング技術の開発が必
要とされている
研究開発の目的
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橋梁やトンネルなどの劣化・損傷に起因する大事故を未
然に防ぐため、放射線計測と電子加速器分野の最新技術
を使った検査技術を開発する。
研究開発の内容
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道路橋の床版、RC橋の鉄筋減肉、PC鋼材の破断などを非
破壊で高精細にイメージングする装置を試作し、検査の高
効率化と高精度化を実現する。
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インフラ維持管理・更新・マネジメント技術
現状の成果① 装置開発(H26~H27)
• 現場に持ち出せるテーブルトップ加速器X線源の開発に成功!
④鉄筋(透過像)撮影
①電磁界シミュレーション
③テーブルトップ加速器X線源
②加速器開発
• 後方散乱X線イメージング用のX線カメラ開発に成功!
①放射線シミュレーション
②撮像素子の開発
③後方散乱X線イメージング用X線カメラ
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インフラ維持管理・更新・マネジメント技術
現状の成果②
後方散乱イメージングの実証(H27)
本プログラムにおいて、従来の装置よりも約3倍エネルギーの高いX線源の
開発に成功しました。このX線はコンクリート深さ10 cmにある異物を反射を
使って見ることができる性能があります。X線源と合わせて本プログラムで
開発した後方散乱X線イメージング用検出器を組み合わせて、高エネル
ギー後方散乱X線画像の取得に成功しました。これは小型電子加速器技
術と先端放射線計測技術を融合して得られた世界初の成果です。
ファンビームX線を用いて撮影した鉄筋画像
CバンドX線源を用いて撮影した後方散乱X線画像
遠山, 第76回応用物理学会秋季学術講演会(H27. 9月)
豊川, 第63回応用物理学会春季学術講演会(H28. 3月)
この技術を使うと、アスファルトの下にある空洞や、土砂化している部分、
あるいはコンクリート内部で損傷している鉄筋、異物などを、従来技術より
も鮮明に画像として見ることができます。この装置を牽引車両に搭載して、
道路を走りながら道路を後方散乱X線で検査することも夢ではありません。
今はまだ解像度は深さ3 cmで数cm程度ですが、今後、X線エネルギーの
最適化や検出器の性能向上によって、10cmの深さを数mmの解像度で撮
影できる装置の開発を目指しています。
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インフラ維持管理・更新・マネジメント技術
最終目標
達成目標と達成度
実施項目
達成目標
達成度
コンクリート
内部の鉄筋
イメージング
かぶり10cm、鉄筋
直径1cmを可視化
かぶり10cm、鉄筋直径2c
mの可視化に成功
土砂化を検知できる
装置の性能を決定
アスファルト下コンクリート密
度20%低下の検知に成功
ポットホール検出
アスファルト8cm下のポット
ホール検出に成功(目標達
成)
道路床版の
劣化診断
本技術の社会実装イメージ
1 橋梁コンクリートの鉄筋劣化診断
2 PC橋梁のPC鋼線、グラウト材劣化診断
3 道路床板のコンクリート劣化診断
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上記3種の検査装置(X線発生部は共通化可能)の製品化を目
的として、平成29・30年度にプロトタイプ機の製作を行い、実
際の現場において実証試験を行う。
その後の製品化は、平成31年度から5年間を目途に、全国に
約70万ある道路橋、鉄道橋の1割を対象とした定期点検に対
応できるよう自治体、インフラ管理者またはメンテナンス関係業
者への供給を行っていく。
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インフラ維持管理・更新・マネジメント技術