■研究開発項目 : ■研究開発テーマ : ■研究責任者 : ■共同研究グループ : 点検・モニタリング・診断技術の研究開発 振動モード解析に基づく橋梁の性能評価システムの開発 公立大学法人大阪市立大学 川合 忠雄 IMV株式会社 研究開発の目的・内容 研究開発の目的 振 幅 比 ・増水などで橋脚を支える地盤の支持剛性が低下す ると、橋梁が不安定となり、最悪の場合には倒壊する。 ・橋脚に設置した2つのセンサから得られた振動を組 み合わせて得られる振幅比より、地盤による支持剛性 を評価し「経年変化による支持剛性の低下」 や「増水 等による急激な支持剛性の低下」を監視できるモニタ リングシステムを構築する。 時間 センサ外観 (手のひらサイズ) 図1 センサ設置位置 振 幅 比 洗掘が大きいほど、 振幅比の値が小さく なることを確認済み 時間 図2 振幅比変化のイメージ 研究開発の内容 ・手法の概要 橋脚の上部と下部の2箇所にセンサを設置して振動を計測する。上部と下部が同時に振動して いるデータから橋脚の振幅比(橋脚上部と下部での振動の大きさの比)を求める。 ・検証内容 測定した振幅比によって地盤による支持剛性の違いを判別できるかを検証する。そのために、 気温変動や通過車両によるノイズの発生を抑制する手法を検討し、計測した振幅比のばらつき を少なくする。また、地盤形状の実測結果などとの比較により、技術の確からしさを確認する。な お、構築したモニタリングシステムにより、遠隔から安全に複数橋脚の状況把握が可能なものと する。 1 インフラ維持管理・更新・マネジメント技術 現状の成果① 現在、以下の成果が得られています。 1.振動の計測(計測システムの構築) 低水敷【洗掘なし】および河道内【洗掘あり】の橋脚に おいて上部と下部にセンサを設置し、無線ゲートウェイ を介してインターネット上で振動を計測できるシステムを 構築した。(図3,4) これにより現地に行くことなく、インターネット環境のあ る事務所などから、いつでもデータを取得可能とした。 a1 [gal] a2 [gal] 2.計測機器の動作確認 橋脚の振動は非常に小さく、振動数も数Hzと非常に 低いため、一般のセンサでは計測が困難だが、インフラ 用に開発したセンサにより、実際に振動を捉えることが 確認出来た。(図5) また、設置後の約半年間、正常に 稼働しており、耐候性能についても確認している。 2 1 0 -1 -2 2 1 0 -1 -2 洗掘なし 図3 センサの設置状況(低水敷【洗掘なし】 ) センサ2(上部) sencor2 sencor1 センサ1(下部) 洗掘あり (約5m) 車両通過による振動を計測した 0 10 20 30 時間 (秒) t [s] 40 50 図5 計測信号の一例(車両通行時の振動) 2 60 図4 センサの設置状況(河道内【洗掘あり】) インフラ維持管理・更新・マネジメント技術 現状の成果② 3.振幅比による有意差の確認 常時微振動(夜間など車両の通行が無いとき振動) および交通振動(車両が通行したときの振動)を橋軸 方向および橋軸直角方向について計測した。その結果、 2Hzおよび4Hz近傍で有意な値を計測できた。 特に大きな差が見られた、交通振動における橋軸直 角方向の2Hz近傍については、約1.5の差が出ており、 有意差が得られることを確認出来た。(図6) 4.今後の課題を抽出 常時微振動については、交通の無い時間帯でも計測 出来るというメリットがあるものの、振動が小さいため にノイズの影響が大きく、ノイズを低減する手法の検討 が必要であることが判明した。 交通振動については、交通があるときしか計測出来 ないものの、振動が大きいためにノイズの影響が出 にくいため精度は良くなるが、現状では車重等を計測し ていないため、今後、条件を把握した車両を用いた実 証により、交通荷重と振幅比との関係性を明らかにし ていきたい。 課題 ・ノイズ低減手法の開発 河道内 【洗掘なし】 【洗掘あり】 ※振幅比は、センサ2/センサ1にて算出 しており、洗掘により値が小さくなる。 橋脚種類 振幅比 低水敷 河道内 【洗掘なし】 【洗掘あり】 4.31 2.80 有意差を確認(約1.5) 図6 振幅比の違い ⇒ 環境条件による変動の除去 <条件:交通振動、橋軸直角方向、2Hz近傍> ・交通荷重との関係性を解明 ⇒強制加振実験による検証 低水敷 3 インフラ維持管理・更新・マネジメント技術 最終目標 本システムを利用することにより以下の1.~2.を実現する。 1.災害対応の迅速化 増水時の高水位・濁水状態においては、船舶や潜水による従来技術では、橋脚の支持状態の 変化を検知することは困難だが、本システムでは、管理者は事務所等の遠隔、安全な場所で、 散在する複数の橋梁を一括で監視することが可能となり、災害等の緊急時においてもタイムリー な対応が可能となる。 2.橋梁点検の効率化 平常時においても、管理対象となる多数の橋梁 に対して振幅比の変動傾向を計測し続けることで、 異常発生リスクの高い橋梁を絞り込み、詳細調査 の実施や、点検の優先度を高めるなど、橋梁点検 の効率化を図ることが出来る。 また、定期点検等により橋脚の支持状態に悪化 傾向が見られるなどして、要注意と判断された橋 脚を監視することで、補修工事や次回点検までの 間における異常発生に対しても常に把握し、交通 の安全を見守ることが可能。 最終目標(アウトカム) ・災害対応の迅速化 複数の橋梁における異常をタイムリーに遠隔監視 ・橋梁点検の効率化 要注意橋梁をスクリーニングして優先順位を設定 4 図7 システムの運用イメージ インフラ維持管理・更新・マネジメント技術
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