2016年3 〜2016年5 - 三井住友トラスト・アセットマネジメント

2016年6月23日
アジアREIT市場の動向と今後の⾒通し
(2016年3⽉〜2016年5⽉)
足もとのアジアREIT市場 ~増加する配当金と高水準の配当利回りが継続~
アジアREIT市場は、今年に入ってから世界的に金利低下が進むなか、相対的に高い配当利回りが評価されたこ
とや、中国の景況感指標の改善を背景に中国景気に対する悲観的な見方が後退し、投資家心理が改善したことな
どから、概ね堅調に推移しています(図1参照)。一方、アジアREITの1口当たり配当金は、香港は概ね横ばい、シン
ガポールはオフィス需給の緩みにより足もとやや軟調な動きを見せています(図2参照)。
(図2)1口当たり配当金の推移
(図1)各国・地域のREIT指数の推移
(2015年5月29日~2016年5月31日、日次)
120
(2012年11月末~2016年5月末、月次)
130
米国
⾹港
110
110
⽶国
120
香港
109
100
日本
90
80
⾹港
110
シンガポール
⽇本
105
100
シンガポール
90
96
70
15/5
15/7
15/9
15/11
16/1
16/3
16/5
シンガポール
80
12/11
(年/月)
※S&PグローバルREIT指数(現地通貨ベース、配当込み)の各国・地域の
データを2015年5月29日を100として指数化
(出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのデータを基に三井住友トラスト・
アセットマネジメント作成
13/5
13/11
14/5
14/11
15/5
16/5 (年/月)
15/11
※1口当たり配当金は1口当たり実績配当金の直近12ヵ月合計、2012年11月末
を100として指数化
※香港はハンセンREIT指数、シンガポールはFTSE ST REIT指数
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
⾼⽔準が続く配当利回り
2016年5月末現在のアジアREITの配当利回りは、シンガポールで6.4%、香港で4.5%、リスクプレミアム(REIT
配当利回りと10年国債利回りの差)も依然高い水準を維持しています(図3参照)。また、PBRもシンガポールが
0.92倍、香港が0.79倍と1倍割れとなり、過去の平均と比べても割安な水準で推移しています(図4参照)。
(図4)香港・シンガポールREITのPBRの推移
(図3)各国・地域のREITと10年国債利回り比較
(2016年5月末現在)
(%)
8
REIT配当利回り
6.4
(倍)
割高 1.8
10年国債利回り
1.6
6
4.5
4
2.2
利回り差
4.1%
1.4
3.8
3.0
2
0
(2010年1月末~2016年5月末、月次)
2016年
5月末
1.2
1.8
1.3
利回り差
3.3%
利回り差
3.1%
0.8
-2
割安
香港
日本
米国
※REITの配当利回りはS&PグローバルREIT指数の各国・地域の実績配当
利回り
※データは小数点以下第2位を四捨五入しています。
(出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスおよびBloombergのデータを基に
三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
シンガポ-ル
0.92倍
1.0
利回り差
1.9%
-0.1
シンガポール
シンガポール
2010年1⽉末からの平均値1.06倍
0.6
⾹港
2010年1⽉末からの平均値0.95倍
香港0.79倍
10/1 10/11 11/9
12/7
13/5
14/3
15/1 15/11 (年/月)
※PBR(株価純資産倍率):株価(REIT価格)が1株当たり純資産の何倍かを示す指標で、
相対的に値が低いほど割安と判断されます。一般にPBRが1倍であるとき、株価が解散
価値(株主資本)と等しいとされ、それ以下だと割安として扱われます。
※香港とシンガポールのPBRは時価評価を用いて算出される為、NAV(Net Asset Value =
純資産価値)と同様の割安判断指標として掲載しています。
※S&PグローバルREIT指数の香港・シンガポールのデータ
(出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのデータを基に三井住友トラスト・アセット
マネジメント作成
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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ご参考資料
良好な不動産ファンダメンタルズ ~賃料と空室率の動向~
<香港>
商業施設は、引き続き中国からの旅行客減少による影響から宝飾品など高級品を中心に小売売上高が伸び
悩んでおり、全体的な賃料はやや頭打ちとなっています。一方、REITが保有する商業施設物件の取扱商品は
日用品の割合が多いことから、REIT各社の業績は概ね堅調です。オフィスは、金融ビジネスの中心である中環
地区の空室率が過去最低水準にあり、需給逼迫の状況から賃料は高水準で推移しています(図5参照)。
<シンガポール>
商業施設は、日用品を扱う優良ショッピングモールを保有するREITなどを中心に高稼働率を維持し、底堅い
賃料推移となっています。一方オフィスは、2016年後半以降に大型物件の供給が見込まれるなか、賃料が下落
しています。市場全体では当面賃料下落が続く見通しですが、主要なREIT各社は供給増を見据え、大半の契
約について前倒しで更新を終えており、賃料下落による業績への影響は限定的と見られます(図6参照)。
(図5)香港賃料の推移
(図6)シンガポール賃料の推移
(2000年10-12月期~2016年1-3月期、四半期)
300
250
(2000年10-12月期~2016年1-3月期、四半期)
250
オフィス
商業施設
200
200
オフィス
商業施設
150
150
100
100
50
50
0
00/12 02/12 04/12 06/12 08/12 10/12 12/12 14/12
(年/月)
※オフィスは上環地区~中環地区、商業は公表元の選定基準に基づくエリア、
2000年10-12月期を100として指数化
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
0
00/12 02/12 04/12 06/12 08/12 10/12 12/12 14/12
(年/月)
※オフィス・商業は中央地区の全エリア、2000年10-12月期を100として指数化
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
シンガポールの空室率はオフィスは低下、
商業施設は概ね横ばい
<オフィス>
(図7)シンガポールのオフィスおよび
商業施設の空室率の推移
(2010年1-3月期~2016年1-3月期、四半期)
(%)
15
2016年第1四半期のオフィス空室率は、新規契約面
積が新規物件供給量を上回ったことから、4四半期連
続で低下しました(図7参照)。なお、2016年後半から
2017年にかけてオフィスの供給増が見込まれることが
先行きの空室率上昇の懸念材料となっています。
オフィス
商業施設
12
9
6
<商業施設>
2016年第1四半期の商業施設の空室率は前期から
小幅上昇となりました。ビザ発給要件の緩和などを背
景に中国からの旅行客は回復の兆しが見られていま
すが、小売売上高は軟調に推移しています。小売市況
の回復にはしばらく時間を要すると見られるものの、
REIT各社が保有する商業施設については立地条件に
おける優位性などから概ね高水準の稼働率を維持す
る見通しです。
3
0
10/3
10/12
11/9
12/6
13/3
13/12
14/9
15/6
16/3
(年/月)
※オフィス・商業は中央地区の全エリア
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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ご参考資料
アジアREITの今後の見通し ~先行きの金利上昇による業績への影響は限定的~
(図8)各国・地域のREIT時価総額の推移
⾼利回りを求める動きから、アジアREIT市場
(2008年10月末~2016年5月末、月次)
(億米ドル)
の時価総額は増加基調
700
S&PグローバルREIT指数におけるアジアREIT市場
(日本、韓国除く)の時価総額は、今年に入ってから
増加傾向にあります(図8参照)。主な要因の1つは、
世界的な金利低下の進行です。2016年1月以降、日
本やユーロ圏、中国など多くの国・地域で相次いで追
加金融緩和が実施されたことなどを受けて、世界的
に金利低下が進むなか、アジアREITの配当利回りの
高さや国債との利回り格差があらためて評価された
ことが考えられます。また、中国の景況感指標の落ち
着きなどを背景に先行きの中国景気に対する悲観的
な見方が後退し、投資家によるリスク選好の動きが強
まったことも、アジアREIT市場のサポート材料となっ
ています。
タイ
台湾
マレーシア
香港
シンガポール
600
500
400
300
200
100
0
08/10
⾦利上昇に対する備えから、REIT各社の
債務の固定⾦利⽐率は概ね⾼⽔準
世界的な景気の先行きに対する不透明感の高まり
や、米国を除く主要国の金融緩和による影響などか
ら、世界的な低金利環境が長期にわたって続いてい
ます。一方で、米国では緩やかな景気回復を受けて
今後も利上げが見込まれることなどから、アジア各国
の金利上昇圧力は徐々に高まる見通しです。ただ、
多くのREIT各社は、先行きの金利上昇への備えか
ら、銀行からの借入や債券発行などを通じて資金調
達を行う際に固定金利の比率を高めており(図10参
照)、先行きの金利上昇によるアジアREIT各社の業
績への影響は概ね限定的と見られます。
10/8
11/7
12/6
13/5
14/4
15/3
16/2 (年/月)
※タイの時価総額は2012年9月末から算出開始、2009年9月~2010年8月のマレー
シアの時価総額はS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスよりデータ発表がないため
掲載しておりません。
(出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのデータを基に三井住友トラスト・アセット
マネジメント作成
REIT各社の財務体質は概ね健全
シンガポールと香港のREITは、各々の国の規制も
あり、負債比率が他国と比べて相対的に低く、金利上
昇による影響を受けにくい特徴があります(図9参
照)。また、実際の負債比率は各国の規制で定めら
れた上限に対してある程度の余裕があり、新規物件
を取得する余力を有しています。一部のアジアREIT
は国内外を問わず高い利回りが見込まれる物件への
投資を行っており、近年では欧米やオーストラリアな
ど国外の物件を積極的に取得する動きも見られてい
ます。
09/9
(図9)各国・地域REITの負債比率
(%)
70
60
50
(2016年5月末現在)
財務健全性は
良好
55.0
49.0
49.7
財
務
の
健
全
性
38.0
40
27.3
30
低
20
10
0
シンガポール
香港
米国
日本
先進国
高
※シンガポールはFTSE ST REIT指数、その他は各国・地域のS&Pグローバル
REIT指数
※負債比率は各国・地域の資産総額に占める負債総額の割合を三井住友トラ
スト・アセットマネジメントが算出
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
(図10)シンガポールおよび香港主要各社の
債務の固定金利比率
(%)
100
80
シンガポール
60
40
20
⾹港
シンガポールは高水準を維持、
香港は年々増加傾向
0
前々期末
前期末
直近期末
※上記は2016年5月末現在のデータ取得可能な各国時価総額上位(香港:3社、
シンガポール:7社)の直近期末から過去2期分(公表ベース)の有利子負債総
額に占める固定金利負債の割合を単純平均したもの
(出所)各社公表資料およびヒアリング資料を基に三井住友トラスト・アセット
マネジメント作成
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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ご参考資料
中国本土のREIT物件 ~広州・北京~
アジア各国でREIT制度が整備されるなか、近年では、香港やシンガポールに上場されているREIT各社による
中国本土に保有資産を持つ動きがみられています。その特徴として①一等都市と呼ばれる大都市の物件が多
いこと、②オフィスや商業施設を中心に好立地の有名物件が含まれることが挙げられます。
また今年3月に、弊社は広州、北京を往訪し、REIT各社とのミーティングおよび物件調査を行いました。広州で
は主にREIT物件はCBD地区(Central Business District:セントラルビジネス地区)に集中しており、2005年12月
に中国本土に資産を保有する第一号REITとして香港市場に上場したYUEXIU(ユエシュウ)REITが保有している
市内のランドマーク「広州IFC」は、年間賃料総額が初の10億元台となるなどCBD地区のなかでも優良物件と言
われています。また、2011年4月に初の人民元建てREITとして香港市場に上場したHUI XIAN(フイシェン)REITが
保有している「北京オリエンタルプラザ」は、ホテル・オフィス・商業施設が集まる大型複合施設で、天安門広場か
ら徒歩圏内ということもあり、稼働率も高く、賃料も下がりにくい傾向があるなど、それぞれ特徴のある物件が多
く見られました。
中国本土のREIT物件は事業環境が配備された大都市に集中している特徴があることから、世界第2位である
経済大国の首都機能を担うとして不動産市場の潜在的な拡大余地が期待されています。
1
YUEXIU(ユエシュウ)REIT
<企業概要>
2005年12月、中国本土に資産を保
有する第一号REITとして香港市場
に上場。中国本土大手のYUEXIU
(ユエシュウ)グループ傘下で、主
にオフィス・商業施設・ホテルなど
複合施設を保有。
<広州・北京の主なREIT物件>
広州IFC(複合施設)
約46万平方メートルの敷地に2棟か
らなる広州を象徴とするランドマーク
物件。地上103階建てのメインビル
ディングにはオフィス、ホテル(フォー
シーズンズホテル広州)、ショッピン
グモールなどがある。
<企業概要>
2011年4月に初の人民元建てREITと
して香港市場に上場。広州市最大の
デベロッパーで、オフィス・商業施設・
ホテルなど複合施設を保有。
2 北京
1 広州
2 HUI XIAN(フイシェン)REIT
⾹港
ビクトリープラザ(商業施設)
約14万平方メートルの敷地で広州
CBD地区で最も中心的な場所に位
置し、2棟からなるオフィス、ショッ
ピングモールがある。タワーAは52
階建て、タワーBは36階建てで、ユ
ニクロやアディダスが入居。
北京オリエンタルプラザ
(オフィス・商業施設)
天安門からほど近い北京中心部に位
置したランドマーク的複合大型施設。
約10万平方メートルの敷地に8棟のオ
フィス、ホテル(グランドハイアット北
京)、ショッピングモールなどがある。
※写真出所:三井住友トラスト・アセットマネジメント撮影
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証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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ご参考資料
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