横浜市における下水処理施設等の計画的な 修繕・改築への取り組み

講演ダイジェスト
第337回 技術サロン
横浜市における下水処理施設等の計画的な
修繕・改築への取り組み
井深 清
長谷川輝彦
横浜市環境創造局下水道施設整備課長 下水道設備課長 第337回サロンでは土木施設に関する更新・長寿命化業務に携わっておられる横浜市環境創造局の井深課
長,水再生センター長としての豊富な現場経験を持つ長谷川課長に,水再生センター等の概要をはじめ,計
画的な改築・長寿命化やその具体事例,耐震対策や津波対策の考え方についてご説明いただきました。
横浜市の浸水対策の歴史と現状
横浜市では昭和41年に下水道条例を策定し,本格的
な下水道整備が始まりました。なかでも55年から平成
6年までは1年あたり1000億円を超える整備を行って
います。現在の普及率は99.8%に達していますが,一
時期に集中した投資を行ったことから,各水再生セン
ター等の機械・電気設備はすべての施設で,土木・建
築施設でも50年の標準耐用年数を超える施設もある状
況です。特に機械・電気設備の事業費は,直近7年間
で総事業費に対する更新事業費の割合が80%を超え,
平成25年度の更新事業費が100億円を超えており,耐
用年数の延長のため,長寿命化対策の実施が求められ
ているところです。今後,更新事業を平準化して進め
備の長寿命化および更新に対する支援は「下水道長寿
ていこうと考えています。
命化計画」に基づくものに限定しています。また,
計画的な改築・長寿命化
LCC(ライフサイクルコスト)評価については①更新
シナリオ②長寿命化シナリオの2つのケースを想定し
土木・建築整備事業の約7割が長寿命化工事関係で
て健全度を予測,それぞれLCCを算出して年平均費用
す。汚泥系施設で想定を超えるような劣化が確認され
で比較することとしています。
る場合が増えており,事前の点検調査が非常に重要に
更新事業は今後も増加するものと見られ,計画的な
なっています。現物を見ずに正確な設計をすることは
更新・長寿命化を行っていく必要があります。また,
不可能で,長寿命化計画の精度低下にもつながること
耐震化,耐津波化など,既存施設の改良も必要になっ
から,本市では基本スケジュールとして防食工事の2
てくるでしょう。継続的な下水道サービスを維持する
年前に点検調査,1年前に詳細設計を行うこととして
ために,ヒト・モノ・カネの確保が重要です。限られ
います。蓄積されたデータは劣化予測等にも利用可能
た経営資源を用いて下水道事業を効率的に運営するた
で効果的です。
め,各自治体やコンサルタントとの交流により,より
一方で機械・電気については計画的な設備の更新も
一層の知見の集積や技術の研鑽をはかっていきたいと
基幹事業の交付対象となるため,平成25年度以降,設
考えています。
8 ̶̶ 下水道機構情報
Vol.10 No.21