高齢化と世帯人員の変化が電灯需要に及ぼす 影響

電力中央研究所報告
経
営
高齢化と世帯人員の変化が電灯需要に及ぼす
影響
-地域別・世帯形態別・住宅の建て方別世帯数の予測-
キーワード:電灯需要,世帯形態,高齢化,世帯数,住宅の建て方
背
報告書番号:Y14009
景
わが国の高齢化は、在宅時間を変化させることに加えて、単独世帯の増加等、世帯
人員の変化も伴っており、その進行が電灯需要に及ぼす影響の分析が急がれている。
目
的
年齢に加えて、世帯人員を含めた世帯形態の変化を予測し、これらの変化が全国 11
地域の電灯需要に及ぼす影響を明らかにする。
主な成果
1. 地域別・世帯形態別・住宅の建て方別世帯数の予測モデルの構築
既開発の都道府県別・男女年齢別人口予測モデルを拡張し、地域別・世帯形態別の
世帯数を予測するモデルを構築した(図 1)
。さらに、世帯形態と住宅の建て方(一戸
建て、共同住宅等)の関係を国勢調査から明らかにすることで、世帯形態別世帯数を
住宅の建て方別に分割するモデルを構築した。
2. 地域別・世帯形態別・住宅の建て方別世帯数の将来予測結果
全国では、2010 年代に 65 歳以上の高齢者単独世帯が 179 万世帯増加する一方で、世
帯主が 65 歳未満の非単独世帯等(核家族世帯や三世代世帯等を含む)が減少する。そ
の結果、世帯数は 2020 年に 5346 万世帯でピークを迎える(図 2)
。高齢者単独世帯の
比率は、2010 年における 8%(北関東、中部、沖縄)~12%(四国)の水準から、
2030 年に 13%(東北、北関東、首都圏、中部、北陸、沖縄)~18%(四国)の水準ま
で拡大する(表 1)
。一戸建てに住む世帯数は、三世代世帯が減少することや共同住宅
に住む傾向が高まること等により、全国では 2015 年をピークに減少する。2010~2030
年において、首都圏(8%増)や沖縄(13%増)で増加となる一方、東北で 14%減とな
るなど、減少する地域が多い。
3. 世帯形態の変化が世帯当たり電灯需要に及ぼす影響に関するシミュレーション
総務省 家計調査を用いた分析から、2000~2010 年の世帯当たり電灯需要が年平均で
0.68%増加する中、原単位の小さい高齢者単独世帯の比率が高まることで、世帯形態の
変化は 0.25%の減少に寄与したことを明らかにした。節電や電化率の変化等を考慮し
ないという条件の下で、世帯形態の変化が 2010~2030 年の世帯当たり電灯需要に及ぼ
す影響を試算すると、首都圏のみ 0.04%増となるが、他の 10 地域は押しなべて減少し
(0.10%減(四国)~0.03%減(沖縄)
)
、全国で年率 0.04%減となる(図 3)
。
今後の展開
高齢者の世帯属性の多様性も考慮し、電灯需要の動向を分析する。
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©CRIEPI
既開発のモデル
前期人口
-
自然減ブロック
自然増ブロック
県別・男女
別・年齢別
生残率
県別・年齢
別出生率
県別死亡数
県別出生数
死亡数
+
出生数
万世帯
6,000
地域間人口移動ブロック
県別・男女
所得の
県間
別・年齢別
転出率
格差
5,000
男女別・年齢別
県間移動者数
+
-
転入者数
4,000
転出者数
(2.5)
(2.3)
(2.3)
2020
2030
(3.0)
3,000
外生変数
2,000
内生変数
都道府県別・男女別・年齢別人口
本報告の扱う範囲
(2.7)
1,000
世帯形態
別電灯需
要 (総務省
家計調査)
都道府県別・世帯形
態別世帯主率
都道府県別・世帯形態別(世帯主の年齢
別、世帯人員別)世帯数
0
1990
世帯形態の変化が電灯
需要に及ぼす影響
2000
2010
世帯主が65歳未満の非単独世帯等
都道府県別・
世帯ー建て方パターン
世帯形態別・住
宅の建て方別
電灯需要
都道府県別・世帯形態別・住宅の建て方
別世帯数
65歳未満単独世帯
世帯形態・住宅の建て方の変
化が電灯需要に及ぼす影響
(今後の課題)
世帯主が65歳以上の親子世帯
世帯主が65歳以上の夫婦のみ世帯
<<人口・世帯数予測のためのモデル群>>
65歳以上単独世帯
電灯需要の分析への適用
(注)1. カッコ内の数値は平均世帯人員
(人口を一般世帯数で除した値)。2. 2010
年までの実績は総務省 国勢調査を基に作
成。
図 1 地域別・世帯形態別・住宅の建て方別世帯数の予測モデ
ルの概略
世帯形態と住宅の建て方の関係を用いることで、世帯形態別世
帯数を住宅の建て方別に分割している。
図 2 世帯形態別世帯数の予測結果
(全国)
表 1 単独世帯比率(%)の予測結果
%
0.06
1990 年
2010 年
2030 年
0.04
北海道
24 (4)
35 (11)
39 (17)
0.02
東北
18 (3)
27 (9)
31 (13)
0.00
北関東
18 (3)
26 (8)
31 (13)
-0.02
首都圏
28 (3)
37 (9)
40 (13)
-0.04
中部
20 (3)
28 (8)
33 (13)
-0.06
北陸
18 (4)
26 (9)
31 (13)
-0.08
関西
22 (5)
33 (11)
38 (16)
-0.10
中国
21 (5)
31 (11)
36 (16)
-0.12
四国
21 (6)
31 (12)
36 (18)
九州
22 (6)
32 (11)
36 (16)
19 (5)
29 (8)
34 (13)
全国
23 (4)
32 (10)
37 (14)
(注)括弧内は 65 歳以上の単独世帯比率。
(資料)2010 年までは総務省 国勢調査より作
成。
沖縄
0.04
-0.03
-0.04
-0.06
-0.08
-0.05
-0.06
-0.09
-0.04
-0.08
-0.08
-0.10
(注)世帯形態別の原単位は 2010 年の全国の値で一定とし、世
帯形態の変化のみの影響を考慮した結果である。所得や価格、
節電、電化率の変化等は考慮していない。
図 3 2010~2030 年における世帯当たり電灯需要の変化
(年率、%)
:世帯形態別原単位を固定し、世帯形態の変
化のみを考慮した場合
研究担当者
中野 一慶(社会経済研究所 経済・社会システム領域)
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問い合わせ先
電力中央研究所 社会経済研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 03-3201-6601(代) E-mail:[email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。
[非売品・無断転載を禁じる] © 2015 CRIEPI 平成27年4月発行
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