229 Chapter 10 シュワルツシルト解 難解な数式の組に直面したとき,しばしばとる最初の行動は,最も簡単に 解ける特殊な場合を探すことである.このようなアプローチはしばしば最も 興味深く,かつ物理的に関連した状況に対する洞察が得られることが判明す る.これは数理物理学のどんな他の理論とも同じくらい一般相対論に対して も正しいことである. したがって,ここでは,一般相対論の最初の応用として,時間に独立で球 対称な場の方程式の解を考える.そのような舞台設定は例えば,太陽の外側 に見られる重力場を記述することが可能である.今考えている状況では,物 質分布の外側の場にしか関心がないため,ある質量の周辺の物質のない空間 領域に注意を制限することによって問題をさらに単純化することができる. 相対論の文脈では,これはこの問題の解を,真空方程式を使い,ストレス‐ エネルギーテンソルを無視することによって求めることができることを意味 する. こうして得られる解はシュワルツシルト解として知られる.シュワルツシ ルト解は 1916 年ドイツの物理学者カール・シュヴァルツシルトによって, 彼が第一次世界大戦の間ロシア前線に従事していた頃発見された.彼はアイ ンシュタインに彼の解を送ったのちすぐに病死した.アインシュタインはア インシュタイン方程式にそのような単純な解が得られたことに驚いた. 230 第 10 章 シュワルツシルト解 真空方程式 真空場の方程式は,質量を持つ物体の周りの空っぽの空間の計量構造を 記述する.物質やエネルギーが存在しない空っぽの空間に対する考察では, Tab = 0 と置かれる.この場合,場の方程式は, Rab = 0 (10.1) となる*1 . 静的球対称時空 球対称な物体の外側の場を表現する計量の形を得るためには,まず最初に それがとるべき形を制限することを考える.その物体から遠く離れた地点 (r が大きい地点) では,ミンコフスキー計量の形をしているものと仮定でき る.いま,球対称性を仮定しているので,ミンコフスキー計量は球座標 ds2 = dt2 − dr2 − r2 dθ2 − r2 sin2 θ dϕ2 (10.2) で表そう.大きな r で式 (10.2) に近づく時間独立な球対称計量の一般形を 得るために,まず最初に時間独立性の要求を考えよう.計量が時間独立なと き,計量に影響を与えることなく dt → −dt と変更することができるはずで ある.これは計量が dtdr, dtdθ, dtdϕ のようないかなる混合項も含まない ということを教えてくれる. この計量で許される非対角項が時間座標を含まない場合では, ds2 = gtt dt2 + gij dxi dxj *1 訳注:宇宙項が無視できる場合のアインシュタイン方程式 Rab − 12 gab R = κTab にお いて,Tab = 0 とできるなら,式全体に g ab を掛けることにより, 0 = g ab Rab − 1 ab 1 g gab R = R − δaa R = R − 2R = −R 2 2 より,R = 0 が得られるので,結局 Rab = 0 が成り立つことになる. 10.0 静的球対称時空 231 として一般形を書くことができる.更にまた,計量の成分が時間独立である という要請もする.すなわち, ∂gab =0 ∂t である.これらの条件を満たす計量を静的と呼ぶ. 次の仕事は球対称性がどのように計量の形に影響を与えるかということを 考えることである.球対称計量は空間内にどこにも特別な角度方向を持た ないものである.この意味は,計量の形を変えることなく dθ → −dθ 及び dϕ → −dϕ のように変更することができなければならないということを意 味する.時間独立性が dt を含む混合項を考慮から排除するのと同様にして, dθ → −dθ 及び dϕ → −dϕ という変更によって影響を受ける drdθ,drdϕ, dθdϕ などの混合項は持てない. このため完全に対角的な形をした計量でなければならないという到達点に 達する.ここまでで既に,計量の項からいかなる時間依存性も除かれたこと になる.動径方向の対称性を課していることより,この計量の各項は r のみ に依存する係数関数が掛けられることが可能である.(10.2) を案内役として 使うことにより,この計量は ds2 = A (r)dt2 − B (r) dr2 − C (r) r2 dθ2 − D (r) r2 sin2 θ dϕ2 (10.3) として書くことができる.球対称性は良く知られたように角度項が標準形 dΩ2 を仮定することを要求するので,C = D を採用し,これを ( ) ds2 = A (r) dt2 − B (r) dr2 − C (r) r2 dθ2 + r2 sin2 θ dϕ2 (10.4) として書く.さて,実は,C を排除するために動径を変更することによっ て,問題をより一層単純化できる.当面は新しい動径座標を ρ と置き,それ をρ= √ C(r)r を使って定義する.すると,ρ2 = Cr2 が成り立ち,計量の 角度部分はお馴染みの形 ( ) C (r) r2 dθ2 + r2 sin2 θ dϕ2 = Cr2 dθ2 + Cr2 sin2 θ dϕ2 = ρ2 dθ2 + ρ2 sin2 θ dϕ2 232 第 10 章 シュワルツシルト解 と仮定できる.定義 ρ = √ C(r)r から, 1 dρ = √ 2 C ( 1 √ = 2 C ( √ = C dC r + √ C dr ) √ dC r + C dr dr ) r dC + 1 dr 2C dr と書くことができることが分かる.両辺を 2 乗し,dr2 について解くと, 1 dr = C 2 ( )−2 r dC 1+ dρ2 2C dr と 求 ま る .そ れ で は ,Bdr2 = B ′ dρ2 を 持 つ よ う に ,係 数 関 数 B ′ = 1 C ( 1+ ) r dC −2 2C dr B を再定義してみよう.すると,これらの条件で, ( ) ds2 = A′ dt2 − B ′ dρ2 − ρ2 dθ2 + sin2 θ dϕ2 として書きかえることができる.ここで A′ は ρ の関数である.この時点ま で,動径座標が大きくなるにつれて,係数関数が 1 に向かう必要性があるこ とを除いて,それらがどんな形をしているかといういかなる要求も課されて いないので,ここまでは基本的に任意関数としてのラベルだけ使用してき た.そのため,全てのラベルを張り替えることができ,係数関数からプライ ムを落とし,ρ → r に変えることによって,線素を ( ) ds2 = Adt2 − Bdr2 − r2 dθ2 + sin2 θ dϕ2 のように書くことが許される*2 . さてここで,最後に一つの要請を課そう.大きな r で計量 (10.2) に一致 するためには,符号も保存する必要がある.これは指数関数として係数関数 *2 訳注:もちろんこの結果,r は単純に原点からの (厳密な) 距離を表しているとは言い切 れなくなる. 10.0 曲率 1 形式 233 を書くことによって行うことができる.そうすると,正の関数であることが 保証される.すなわち,A = e2ν(r) 及び B = e2λ(r) と置く.これはシュワ ルツシルト解を得るために使うことができる計量を与える. ( ) ds2 = e2ν(r) dt2 − e2λ(r) dr2 − r2 dθ2 + sin2 θ dϕ2 (10.5) 曲率 1 形式 ここでは,正規直交テトラッド法を使って解を求めるために進もう.今で は,読者は,曲率 1 形式とリッチ回転係数を計算することがこの道に沿った 最初の手順であることに気付いている.そうするために,次の基底 1 形式を 定義する: ω t̂ = eν(r) dt, ω r̂ = eλ(r) dr, ω θ̂ = rdθ, ω ϕ̂ = r sin θ dϕ (10.6) したがって, dt = e−ν(r) ω t̂ , dr = e−λ(r) ω r̂ , dθ = 1 θ̂ ω , r dϕ = 1 ω ϕ̂ (10.7) r sin θ が成り立つ.各基底 1 形式の外微分は ( ) dν dν −λ(r) r̂ dω t̂ = d eν(r) dt = eν(r) dr ∧ dt = e ω ∧ ω t̂ dr dr ( ) dλ dω r̂ = d eλ(r) dr = eλ(r) dr ∧ dr = 0 dr e−λ(r) r̂ ω ∧ ω θ̂ r dω ϕ̂ = d (r sin θ dϕ) = sin θ dr ∧ dϕ + r cos θ dθ ∧ dϕ dω θ̂ = d (rdθ) = dr ∧ dθ = = e−λ(r) r̂ cot θ θ̂ ω ∧ ω ϕ̂ + ω ∧ ω ϕ̂ r r (10.8) (10.9) (10.10) (10.11) によって与えられる.再びカルタン第 1 構造方程式を思い出そう.それは今 考えている座標では次の形である: dω â = −Γâb̂ ∧ ω b̂ = −Γât̂ ∧ ω t̂ − Γâr̂ ∧ ω r̂ − Γâθ̂ ∧ ω θ̂ − Γâϕ̂ ∧ ω ϕ̂ 234 第 10 章 シュワルツシルト解 順番に各基底 1 形式をとると dω t̂ = −Γt̂t̂ ∧ ω t̂ − Γt̂r̂ ∧ ω r̂ − Γt̂θ̂ ∧ ω θ̂ − Γt̂ϕ̂ ∧ ω ϕ̂ (10.12) dω r̂ = −Γr̂t̂ ∧ ω t̂ − Γr̂r̂ ∧ ω r̂ − Γr̂θ̂ ∧ ω θ̂ − Γr̂ϕ̂ ∧ ω ϕ̂ (10.13) dω θ̂ = −Γθ̂t̂ ∧ ω t̂ − Γθ̂r̂ ∧ ω r̂ − Γθ̂θ̂ ∧ ω θ̂ − Γθ̂ϕ̂ ∧ ω ϕ̂ (10.14) dω ϕ̂ = −Γϕ̂t̂ ∧ ω t̂ − Γϕ̂r̂ ∧ ω r̂ − Γϕ̂θ̂ ∧ ω θ̂ − Γϕ̂ϕ̂ ∧ ω ϕ̂ (10.15) を与える.(10.12) と (10.8) を比較すると,(10.8) のゼロでない唯一の項は 形 ω r̂ ∧ ω t̂ をしていることに注意せよ.したがって, Γt̂t̂ = Γt̂θ̂ = Γt̂ϕ̂ = 0 and Γt̂r̂ = dν −λ(r) t̂ e ω dr と結論付けることができる.Γâ = Γâ ω ĉ を使うと,Γt̂r̂t̂ = b̂ b̂ĉ (10.16) dν −λ(r) dr e とな る.(10.9) が消え,何の直接的情報も与えないことより,(10.14) と (10.10) の比較に移ろう.ここでも,今回 ω r̂ ∧ ω θ̂ を含む単一の項のみに対して, (10.14) のゼロでない項として Γθ̂r̂ ∧ ω r̂ をとり, Γθ̂r̂ = Γθ̂t̂ = Γθ̂θ̂ = Γθ̂ϕ̂ = 0 and e−λ(r) θ̂ ω r を結論付ける.再び,Γâ = Γâ ω ĉ を使うと,Γθ̂ b̂ r̂ θ̂ b̂ĉ = e−λ(r) r (10.17) を結論付ける ことができる. 最後に,同じ手順を使い (10.15) と (10.11) を比較すると, Γϕ̂t̂ = Γϕ̂ϕ̂ = 0, ϕ̂ r̂ ϕ̂ を与える.ここで,Γ Γϕ̂r̂ = = e−λ(r) ϕ̂ ω , r e−λ(r) r and Γϕ̂θ̂ = Γϕ̂θ̂ϕ̂ = cot θ ϕ̂ ω r cot θ r (10.18) である. いま,(10.9) の場合に戻ると,それが消滅してしまうことから何の情報も 与えないことが分かる.この場合の曲率 1 形式を求めるためには,対称性の 10.0 曲率 1 形式 235 条件を使う.計量 (10.5) を見ると,この場合添字を上げ下げするために, ηâb̂ 1 0 = 0 0 0 0 −1 0 0 −1 0 0 0 0 0 −1 と定義できることが分かる.したがって,次の関係が成り立つ: Γt̂ r̂ = η t̂t̂ Γt̂r̂ = Γt̂r̂ = −Γr̂t̂ = −η r̂r̂ Γr̂ t̂ = Γr̂ t̂ Γθ̂ r̂ = η θ̂θ̂ Γθ̂r̂ = −Γθ̂r̂ = Γr̂θ̂ = ηr̂r̂ Γr̂ θ̂ = −Γr̂ θ̂ Γϕ̂ r̂ = η ϕ̂ϕ̂ Γϕ̂r̂ = −Γϕ̂r̂ = Γr̂ϕ̂ = ηr̂r̂ Γr̂ ϕ̂ = −Γr̂ ϕ̂ これより,(10.16) から, Γr̂ t̂ = Γt̂ r̂ = ⇒Γ r̂ t̂t̂ dν −λ(r) t̂ e ω dr dν −λ(r) = e dr (10.19) が結論付けられる.(10.17) を使うと, Γr̂θ̂ = −Γθ̂r̂ = − ⇒Γ r̂ θ̂ θ̂ e−λ(r) θ̂ ω r e−λ(r) =− r (10.20) と求まる.そして最後に, Γr̂ ϕ̂ = −Γϕ̂ r̂ = − ⇒Γ となる. r̂ ϕ̂ϕ̂ e−λ(r) ϕ̂ ω r e−λ(r) =− r (10.21) 236 第 10 章 シュワルツシルト解 曲率テンソルについて解く さて,いまからカルタン第 2 構造方程式を使って曲率テンソルの成分を計 ˆ 算する.すなわち,Ωâ b̂ = dΓâ b̂ + Γâ ĉ ∧ Γĉ b̂ = 21 Râ b̂ĉdˆω ĉ ∧ ω d である.ここ では,曲率 2 形式の一つのみを明白な形で計算する.Ωr̂ t̂ = dΓr̂ t̂ + Γr̂ ĉ ∧ Γĉ t̂ を考えよ.この和に対して,Γt̂ t̂ = Γr̂ r̂ = Γθ̂ t̂ = Γϕ̂ t̂ = 0 より, Γr̂ ĉ ∧ Γĉ t̂ = Γr̂ t̂ ∧ Γt̂ t̂ + Γr̂ r̂ ∧ Γr̂ t̂ + Γr̂ θ̂ ∧ Γθ̂ t̂ + Γr̂ ϕ̂ ∧ Γϕ̂ t̂ = 0 が成り立つ.結局残るのは, ( r̂ Ω dν −λ(r) t̂ e ω = dΓ t̂ = d dr ( ) dν ν(r)−λ(r) =d e dt dr ) r̂ t̂ = ( )2 dν d2 ν ν(r)−λ(r) e dr ∧ dt + eν(r)−λ(r) dr ∧ dt dr2 dr ( )( ) dν dλ ν(r)−λ(r) − e dr ∧ dt dr dr である.(10.7) を使って微分を基底 1 形式に反転した形で書くと,次の表式 にたどり着く: [ Ω r̂ t̂ d2 ν + = dr2 ( 今度は,表式 Ωâ b̂ = dν dr )2 ( − 1 â ĉ 2 R b̂ĉdˆω dν dr )( dλ dr )] e−2λ(r) ω r̂ ∧ ω t̂ (10.22) ˆ ∧ ω d を使って,リーマンテンソルの成分 に関して曲率 2 形式を書き出してみよう.アインシュタインの和の規約が使 われているから,ĉ 及び dˆ に関して和が取られていることを思いだそう.た だし,(10.22) には ω r̂ ∧ ω t̂ しか項がないため,ω r̂ ∧ ω t̂ 及び ω t̂ ∧ ω r̂ を含む 2 つの項のみを考慮すればよいことに注意しよう.したがって, Ωr̂ t̂ = 1 r̂ 1 1 ˆ R ˆω ĉ ∧ ω d = Rr̂ t̂r̂t̂ ω r̂ ∧ ω t̂ + Rr̂ t̂t̂r̂ ω t̂ ∧ ω r̂ 2 t̂ĉd 2 2 10.0 曲率テンソルについて解く 237 が成り立つ.いま,ω t̂ ∧ ω r̂ = −ω r̂ ∧ ω t̂ という事実を使うとこれは, ) 1 1 ( r̂ 1 r̂ R ω r̂ ∧ ω t̂ − Rr̂ t̂t̂r̂ ω r̂ ∧ ω t̂ = R t̂r̂t̂ − Rr̂ t̂t̂r̂ ω r̂ ∧ ω t̂ 2 t̂r̂t̂ 2 2 Ωr̂ t̂ = のように書ける.前の章で見てきた同様の手順を使うと,これはリーマンテ ンソルの対称性を使ってさらにより単純化できる: r̂ Rr̂ t̂t̂r̂ = η r̂r̂ Rr̂t̂t̂r̂ = −Rr̂t̂t̂r̂ = Rr̂t̂r̂t̂ = ηr̂r̂ Rr̂ t̂r̂t̂ = −Rt̂r̂ t̂ したがって, ) ) 1 ( r̂ 1 ( r̂ R t̂r̂t̂ − Rr̂ t̂t̂r̂ ω r̂ ∧ ω t̂ = R t̂r̂t̂ + Rr̂ t̂r̂t̂ ω r̂ ∧ ω t̂ 2 2 r̂ r̂ t̂ =R t̂r̂t̂ ω ∧ ω Ωr̂ t̂ = が成り立つ.これと,(10.22) との比較は [ R r̂ t̂r̂ t̂ d2 ν = + dr2 ( dν dr )2 ( − dν dr )( dλ dr )] e−2λ(r) を示す.残りの成分についても同様のことを行い,全てを一緒にすると, リーマンテンソルの 0 でない成分は, [ R r̂ t̂r̂ t̂ Rt̂ θ̂t̂θ̂ R r̂ θ̂r̂ θ̂ Rθ̂ ϕ̂θ̂ϕ̂ = d2 ν + dr2 ( dν dr = Rt̂ ϕ̂t̂ϕ̂ = − = R = r̂ ϕ̂r̂ ϕ̂ )2 ( − 1 dν −2λ e r dr dν dr )( dλ dr )] e−2λ(r) (10.23) 1 dλ −2λ = e r dr 1 − e−2λ r2 によって与えられる.その他の 0 でない成分はリーマンテンソルの対称性を 使って求めることができる. 238 第 10 章 シュワルツシルト解 真空方程式 こうしていま,真空方程式を得るためにリッチテンソルの成分を計算する ことができるようになった.これは,Râb̂ = Rĉ âĉb̂ を計算することによって 比較的簡単に行うことができる.最初の項は簡単に計算できる: Rt̂t̂ = Rt̂t̂t̂t̂ + Rr̂t̂r̂t̂ + Rθ̂t̂θ̂t̂ + Rϕ̂t̂ϕ̂t̂ [ ] ( )2 ( ) ( ) d2 ν dν dν dλ 2 dν −2λ(r) = + − e (10.24) + dr2 dr dr dr r dr Rt̂ r̂t̂r̂ = −Rr̂ t̂r̂t̂ を示すことによって, [ ] ( )2 ( ) ( ) d2 ν dν dν dλ 2 dλ −2λ(r) Rr̂r̂ = − + − − e dr2 dr dr dr r dr (10.25) となることが分かる.続けると, Rθ̂θ̂ = Rt̂ θ̂t̂θ̂ + Rr̂ θ̂r̂θ̂ + Rθ̂ θ̂θ̂θ̂ + Rϕ̂ θ̂ϕ̂θ̂ =− Rϕ̂ϕ̂ 1 dν −2λ 1 dλ −2λ 1 − e−2λ e + e + r dr r dr r2 (10.26) = Rt̂ ϕ̂t̂ϕ̂ + Rr̂ ϕ̂r̂ϕ̂ + Rθ̂ ϕ̂θ̂ϕ̂ + Rϕ̂ ϕ̂ϕ̂ϕ̂ = − 1 dν −2λ 1 dλ −2λ 1 − e−2λ e + e + r dr r dr r2 (10.27) が成り立つ.真空方程式はリッチテンソルの各成分を 0 に等しいと置くこと によって得られる.ν(r) 及び λ(r) の関数形を求めるために必要となるのは たった 2 つの真空方程式しかない.(10.24) と (10.25) を使い,それらを 0 に等しいと置くと, d2 ν + dr2 d2 ν + dr2 ( ( dν dr dν dr )2 ( − )2 ( − dν dr dν dr )( )( dλ dr dλ dr ) + 2 dν =0 r dr (10.28) − 2 dλ =0 r dr (10.29) ) 10.0 真空方程式 239 を与える.(10.28) から (10.29) を引くと次を得る: dν dλ + =0 dr dr これはこれらの関数の和が定数であることを意味する: ν + λ = 定数 = k この定数は次のような巧妙な方法で消去することができる.時間座標を t → te−k に変更する.これは,dt → dte−k , dt2 → dt2 e−2k ⇒ e2ν dt2 → e2(ν−k) dt2 を意味する.言い換えれば,ν → ν − k と変換したことになる ので, ν+λ=0 ⇒ λ = −ν が成り立つ.すると,これを使って,(10.29) の ν を −λ に置き換えると, d2 λ −2 dr2 ( dλ dr )2 + 2 dλ =0 r dr (10.30) が得られる.この方程式を解くために,re−2λ の 2 階微分を考えよう: ( (re −2λ ′′ ) = e −2λ dλ − 2r e−2λ dr )′ dλ d2 λ = −4 e−2λ − 2r 2 e−2λ + 4r dr dr ( dλ dr )2 e−2λ これが実際 (10.30) の別の表し方であることを確認するために,これを早速 0 に等しいと置こう: −4 dλ −2λ d2 λ e − 2r 2 e−2λ + 4r dr dr ( dλ dr )2 e−2λ = 0 いま,全体を e−2λ で割ると, dλ d2 λ −4 − 2r 2 + 4r dr dr ( dλ dr )2 =0 240 第 10 章 シュワルツシルト解 が得られる.次に,この全体を −2r で割ると, d2 λ −2 dr2 ( dλ dr )2 2 dλ =0 r dr ( )′′ が得られる.これは,(10.30) そのものである. re−2λ に戻ると,これが + (10.30) と等価であることより消えるので,一回積分出来て, ( −2λ )′ re = 定数 (10.31) ( −2λ )′′ ( −2λ ) −2λ ′ が得られる.さて, re = e − 2r dλ と求まったことを思 dr e いだして (10.26) に移ろう.(10.26) を 0 に置くことによって,別の真空方 程式が得られる: Rθ̂θ̂ = − 1 dν −2λ 1 dλ −2λ 1 − e−2λ e + e + =0 r dr r dr r2 この全体に,r2 を掛けると, −r dν −2λ dλ e + r e−2λ + 1 − e−2λ = 0 dr dr が得られる.ここで,ν = −λ を使うと, 2r dλ −2λ e + 1 − e−2λ = 0 dr が得られる.1 を右辺に移項し,全体に −1 を掛けると, dλ −2λ e + e−2λ = 1 dr ( )′ が成り立つ.ここでいま,左辺は re−2λ 以外の何物でもない.したがっ ( )′ て, re−2λ = 1 となることが求まった.この方程式を積分すると, −2r re−2λ = r − 2m と求まる.ここで −2m は,値が不明の積分定数である.積分定数としてこ のような奇妙な指定をしたのは,のちに見るように,この項が質量と関係し ているからである.この全体を r で割ると, e−2λ = 1 − 2m r 10.0 積分定数の意味 241 と求まる.ここで,この計量の元々の形を思い出すと, ( ) ds2 = e2ν(r) dt2 − e2λ(r) dr2 − r2 dθ2 + sin2 θ dϕ2 であったので,ν = −λ を使うと,今まで探していたこの計量の係数として, e2ν = 1 − 2m r ( and e2λ = 1− 2m r )−1 (10.32) が得られる. 積分定数の意味 ニュートン理論と一般相対論の間の対応を調べることによってこの線素に 現れる定数を求めよう.のちに,弱重力場制限を議論し,Φ をニュートン理 論における重力ポテンシャルとするとき (さしあたり,基本定数を明白な形 で表すと), 2Φ c2 gtt ≈ 1 + が成り立つなら,相対論がニュートン理論に単純化されることを導く.原点 に位置する質点に対して, Φ = −G M r が成り立ち,したがって, gtt ≈ 1 − 2 GM c2 r が成り立つ.これを (10.32) と比較すると, m= GM c2 と置けばよいことが分かる.ここで M はキログラムで表した物体の質量で ある (あるいはどんな単位を使ってもよい).この項を見てみると,この計量 に現れる m の単位は長さの単位を持つことが分かる.この定数 m は物体の 幾何質量 (geometric mass) と呼ばれる. 242 第 10 章 シュワルツシルト解 シュワルツシルト計量 これらの結果をもとに,(10.5) をシュワルツシルト線素の良く知られた形 に書き換えることができる: ( ds2 = 1− 2m r ) dt2 − ( ) ( 2 dr2 2 ) dθ + sin2 θ dϕ2 2m − r 1− r (10.33) この計量を見てみると,r が大きくなるにつれて,計量は (10.2) の平坦空間 の計量に近づいてゆくことが分かる. 時間座標 (10.33) のシュワルツシルト計量と平坦空間の計量の間の対応関係は,こ こで使われている時間座標 t が原点から遠く離れた観測者によって測定され る時間であることを教えてくれる. シュワルツシルト半径 (10.33) で定義される計量は r = 2m の点で特異点を持つ (つまり,発散 する).この値はシュワルツシルト半径として知られている.重力場の源と しての物体の質量に関して,シュワルツシルト半径は, rs = 2GM c2 (10.34) によって与えられる. 通常の星の場合,シュワルツシルト半径は星の内部の奥深くにある.した がって,(10.33) によって与えられる計量は平均的な星の外側の領域を記述 するために,自信をもって使うことができる.例として,太陽のシュワルツ シルト半径は,(10.34) 式に太陽質量 1.989 × 1030 kg を代入することによっ 10.0 シュワルツシルト時空の測地線 243 て使うことができ,それは rs ≃ 3 km と求まる.これまでの結果は真空方 程式を解くことから始めたことを思いだそう.この点が物質の存在する太陽 の内部にあるために,前節で得た解はこの領域では使えない.計量は半径一 定の値で発散するということに注意しなければならない.しかしながら,こ れが本当の物理的特異点であるかどうかを決定するためには,より一層の調 査が必要となる.これは,時空の曲率が無限大になるか,あるいは,単に使 われている座標系のみの問題であるかを調べることを意味する.それは明ら かであるように思えるが,線素が座標に関して書かれているということに注 意することが重要である. 何か別の座標に変換することによって,計量を異なる方法で書けることが 判明するかも知れない.時空の挙動のより良い考えを得るための最良の行動 は,不変量,すなわちスカラーを調べることである.スカラー量に存在する 特異点を求めることができるなら,それは全ての座標系で存在する特異点で あることが分かり,したがって何か物理的に意味のあることを表している. 今の場合,リッチテンソルの成分が消えるので,リッチスカラーも同様に消 える.その代わりに,リーマンテンソルを使って次のスカラーを構成する: Rabcd Rabcd = 48m2 r6 (10.35) この量は r = 0 の点で発散する.これがスカラーであることより,全ての座 標系でこのことは成り立つので,点 r = 0 は真性特異点であると結論付けら れる. シュワルツシルト時空の測地線 いま,計量が分かっているので,この時空で質点や光線が進む経路がどう なるか決定することができる.導く必要があるものを見つけ出すために,各 座標での測地線方程式を解こう. これはオイラー‐ラグランジュ方程式を導くことによって,かなり簡単に 行える.本書ではラグランジュの方法を詳しく解説しない.代わりにここで 244 第 10 章 シュワルツシルト解 は,簡単にこの方法を実演する (興味のある読者は参考文献を参照せよ).測 地線方程式を求めるために,次の変分をとる*3 : ∫ δ ] ) ∫ [( 2m 2 1 ) ṙ2 − r2 θ̇2 − r2 sin2 θ ϕ̇2 ds = 0 ds = δ 1− ṫ − ( r 1 − 2m r ここで今次のように置く: ( ) 2m 2 1 ) ṙ2 − r2 θ̇2 − r2 sin2 θϕ̇2 F = 1− ṫ − ( r 1 − 2m r すると上の変分から得られるオイラー‐ラグランジュ方程式は d ds ( ∂F ∂ ẋa ) − ∂F =0 ∂xa (10.36) となる.時間座標から始めると, ( ) ∂F 2m =2 1− ṫ r ∂ ṫ ( ) [ ( )] d ∂F d 2m ṫ ⇒ = 2 1− ds ∂ ṫ ds r ( [ ( )] ) 2m d 2m ṫ + 2 1 − ẗ = 2 1− ds r r ( ) 4m 2m = 2 ṙṫ + 2 1 − ẗ r r が成り立つ. F の中には t を含む項が存在しいないから,F の t での微分は 0 である. したがって,最初の測地線方程式は次のようになる: ẗ + *3 1= 訳注: ds2 = ds2 2m ṙṫ = 0 r (r − 2m) (10.37) ) ( )2 ( )2 ( )2 ( ) ( 2m dt 1 dr dθ dϕ 2 2 2 2 ) 1− −( − r − r sin θ r ds ds ds ds 1 − 2m r に注意せよ.なお,ここでは,ドット『·』は s での微分である. 10.0 シュワルツシルト時空の測地線 245 さて次に,動径座標を考えよう.まず, ∂F 2 ) ṙ = −( 2m ∂ ṙ 1− r d ⇒ ds ( ∂F ∂ ṙ ) = −( 2 4m 2 ) r̈ + (ṙ) 2m (r − 2m)2 1− r が成り立つ.F は r に従属するから, ( )−2 ∂F 2m 2 2m 2m 2 = 2 ṫ + 1 − ṙ − 2rθ̇2 − 2r sin2 θ ϕ̇2 ∂r r r r2 と計算される.(10.36) を使ってこれらの結果を一緒にすると,2 番目の測 地線方程式が得られる: r̈ + ( ) m m 2 2 2 2 2 ṙ − (r − 2m) θ̇ + sin θ ϕ̇ =0 (r − 2m) ṫ − r3 r (r − 2m) (10.38) さらに, ) ( d ∂F ∂F = −2r2 θ̇ ⇒ = −4rṙθ̇ − 2r2 θ̈ ds ∂ θ̇ ∂ θ̇ ∂F = −2r2 sin θ cos θ ϕ̇2 ∂θ と求まるので,θ に対する測地線方程式は, 2 θ̈ + ṙθ̇ − sin θ cos θϕ̇2 = 0 r (10.39) によって与えられる.最後に ϕ 座標に対しては, ∂F = −2r2 sin2 θ ϕ̇ ∂ ϕ̇ ) ( d ∂F ⇒ = −4rṙ sin2 θϕ̇ − 4r2 sin θ cos θθ̇ϕ̇ − 2r2 sin2 θϕ̈ ds ∂ θ̇ ∂F =0 ∂ϕ 246 第 10 章 シュワルツシルト解 となる.したがって, 2 ϕ̈ + 2 cot θ θ̇ϕ̇ + ṙϕ̇ = 0 r (10.40) である. シュワルツシルト時空での質点の軌道 前節ではシュワルツシルト時空における測地線の微分方程式の組を得た. しかしながら,これらの方程式は非常に気が重くなるもので,直接それらを 解くのは時間の浪費のように思えるかもしれない.シュワルツシルト時空に おける質点の運動や光線の軌道について学ぶことができる異なるアプローチ が利用できて,それはキリングベクトルの使用に基づく.計量の各対称性は キリングベクトルに対応することを思いだそう.質点の運動に関係する保存 量はその質点の 4 元速度でキリングベクトルの内積を構成することによって 求めることができる. それらの成分に関するベクトルが,座標の順序 (t, r, θ, ϕ) を使って,定義 される.シュワルツシルト時空における質点の 4 元速度は ( ⃗u = dt dr dθ dϕ , , , dτ dτ dτ dτ ) (10.41) によって与えられる.ここで τ は固有時である.4 元速度は次を満たす: ⃗u · ⃗u = gab ua ub = 1 (10.42) 座標基底では,(10.33) から読み取れる計量テンソルの成分は, ) ( 2m , gtt = 1 − r grr = − ( 1 ), 1 − 2m r gθθ = −r2 , gϕϕ = −r2 sin2 θ (10.43) 10.0 シュワルツシルト時空での質点の軌道 247 である.(10.41) を使うと,(10.42) は ⃗u · ⃗u = gab ua ub ( ) ( )2 ( )−1 ( )2 ( )2 dr 2m dt 2m dθ 2 = 1− − 1− −r r dτ r dτ dτ ( )2 dϕ − r2 sin2 θ =1 (10.44) dτ を与えることが分かる.この方程式は軌道を求めるために使える基底を構成 する.一般相対論では,古典力学と同様,中心力場内の物体の軌道は平面内 に横たわることが示せる.したがって,座標として,θ = π/2 かつ dθ dτ =0 と置くことができる. この方程式をさらに解析する前に,シュワルツシルト時空に対する 2 つの キリングベクトルを定義し,それらを使って保存量を構成しよう.これは実 際かなり易しい.シュワルツシルト計量の形を導いたとき,2 つの重要な基 準を示した:この計量は時間独立かつ球対称であると. シュワルツシルト計量 ( ds2 = 1− 2m r ) dt2 − ( ( 2 ) dr2 2 ) dθ + sin2 θ dϕ2 2m − r 1− r を見ると,時間 t と角度変数 ϕ に依存する項が存在しないことが分かる.し たがって,次のようにキリングベクトルを定義できる*4 .計量の t に対する 独立性に対応するキリングベクトルは ξ = (1, 0, 0, 0) (10.45) である.時間からの計量の独立性はエネルギーの保存と関連付けられる. *4 µ 訳注:ds2 = gµν dxµ dxν であり,全ての計量 gµν が xκ と独立なら,K µ = δκ はキリ ングベクトルである.証明は次のように計量のリー微分がゼロになることを言えば良い: c + gacX LK gab = K c ∂c gab + gcb ∂a K ∂b K ∂κ g X X Xc = K κX X ab = 0. 248 第 10 章 シュワルツシルト解 シュワルツシルト計量の ϕ に対する独立性に対応する別のキリングベク トルを構成することができる.これは, η = (0, 0, 0, 1) (10.46) である.ϕ に関する計量の独立性は角運動量の保存に関連する. これらのキリングベクトルに関係する保存量は 4 元ベクトルで各ベクト ルの内積をとることによって求められる.単位静止質量当たりの保存エネル ギーは e = ξ⃗ · ⃗u = gab ξ a ub = ( ) 2m dt 1− r dτ (10.47) によって与えられる.単位静止質量当たりの保存角運動量は l = −⃗η · ⃗u = −gab η a ub = r2 sin2 θ dϕ dϕ = r2 dτ dτ (for θ = π ) 2 (10.48) として定義される.これらの定義と θ = π/2 と置くことによって,(10.44) は, ( )−1 ( )−1 ( )2 2m 2m dr l2 1− e2 − 1 − − 2 =1 r r dτ r のように単純化される.この全体に 1 − 2m r (10.49) を掛けてから,2 で割ってみよ う.結果は, e2 1 − 2 2 ( dr dτ )2 1 l2 − 2 r2 ( 2m 1− r ) = 1 m − 2 r となる.さていま,単位質量当たりのエネルギーの項を分離すると, e2 − 1 1 = 2 2 ( dr dτ )2 l2 + 2 2r ( ) 2m m 1− − r r を与える.ここで有効ポテンシャルを Veff l2 = 2 2r ( ) 2m m 1− − r r 10.0 シュワルツシルト時空での質点の軌道 と定義し,E = e2 −1 2 249 と置くと,V によって記述されるポテンシャルの中を 運動する単位質量を持つ質点のエネルギー E を記述する古典力学 E= 1 2 ṙ + Veff 2 に対応する表式が得られる.しかし,有効ポテンシャルに対するより綿密な 観察をしてみると,主要項を展開して Veff = − m l2 l2 m + 2− 3 r 2r r (10.50) が成り立つ.この最初の 2 項はニュートン的な場合に期待されるもの以外の 何物でもない.特に最初の項は,重力ポテンシャルに関係づけられており, 2 番目の項は古典軌道力学によって有名な角運動量項である.この表式の最 後の項は一般相対論で発生するポテンシャルの修正項である. 通常の方法で r がとり得る最小及び最大値を求める.1 階微分は, dVeff d = dr dr ( ) m l2 l2 m m l2 3l2 m − + 2− 3 = 2− 3+ 4 r 2r r r r r である.つぎにこれを 0 に等しいと置こう: m l2 3l2 m − + =0 r2 r3 r4 ⇒ mr2 − l2 r + 3l2 m = 0 2 次方程式の解の公式を適用すると,r の最大値と最小値が ( ) √ √ m2 l2 l2 ± l4 − 12 l2 m2 1 ± 1 − 12 2 = r1,2 = 2m 2m l (10.51) で与えられることが分かる.これらの値は円軌道に対応する.平方根に 2 項 展開を使うと r1,2 l2 = 2m ( √ 1± m2 1 − 12 2 l ) [ ( )] l2 m2 ∼ 1± 1−6 2 = 2m l 250 第 10 章 シュワルツシルト解 の様に書き換えることができる.この 2 つの値は,それぞれ安定及び不安定 な円軌道に対応する.安定な円軌道は, r1 ≈ l2 m となるものである.一方,不安定な円軌道に対しては,マイナス符号をとり, [ ( )] ( 2) l2 m2 l2 m r2 ∼ = 1 − 1 − 6 6 2 = 3m = 2m l2 2m l を得る.m = GM c2 を使うと,軌道は r2 = 3 GM c2 によって与えられる.太陽 に対してはこの値は, ( r2sun =3 6.67 × 10−11 m3 s2 /kg )( 1.989 × 1030 kg (3 × 108 m/s) 2 ) = 4422 km となる.太陽の赤道半径は 695,000km であるので,不安定な円軌道は太陽 内部に含まれてしまうことが分かる.(10.50) を見ると,異なる値の r に対 する軌道の挙動から学べることがあることが分かる.まず,r = 2m,すな わちシュワルツシルト半径における場合を考えよう.この場合 Veff (r = 2m) = − l2 l2 m 1 l2 l2 m 1 m + − = − + − =− 2 3 2 3 2m 2 (2m) 2 8m 8m 2 (2m) が成り立つ.大きな r に対して,このポテンシャルはニュートン的ポテン シャル Veff (r) ≈ − m r に近づく. (10.51) を再び見ると,角運動量 l2 が 12m2 より小さくなると,平方根の 中の項は負になることに注意しよう.すると,半径が複素数であるという非 物理的結果を得ることになる.これはこの場合安定な円軌道が存在できない ことを意味する.物理的にいえば,l2 が 12m2 より小さい場合,軌道に乗っ ている物体は星の表面に衝突することを示す.物体がこれらの条件の下で, 10.0 シュワルツシルト時空での質点の軌道 251 ブラックホールに接近しているなら,それは単にブラックホールに飲み込ま れてしまう. これらの結果は図 10.1 及び 10.2 に描いた.2 つの図の曲線を比較するこ とにより,r が大きくなるにつれてニュートン的な場合と相対論的な場合が 近づいてゆくことが分かる.小さな r では違いは劇的である.これは太陽系 で相対論的効果を確かめる最良の場所は太陽の近くであることを意味する. これがアインシュタインが水星の軌道の歳差運動を考察したとき行ったこと である. V r 図 10.1 一般相対論における有効ポテンシャルのプロット.簡単のため 3 つの異なる値の l の場合のプロットを生成するために単位質量を採用し た.r が小さい場合の挙動は重要である;この比較は,この領域でニュー トン的な場合とは著しく異なることを示している.これは 1/r 3 項の結果 である. 252 第 10 章 シュワルツシルト解 V r 図 10.2 上と同じ値の l に対するニュートン的な場合.大きな r で,これ らの軌道は直前のプロットに一致する.小さな r では挙動は全く異なる. 光線の湾曲 太陽系内で適用される一般相対論の 4 つの標準的または “古典的” テスト が存在する.これらは,水星の近日点の歳差運動,太陽付近を通過する光の 湾曲,シュワルツシルト場内の光の移動時間,及び重力赤方偏移である.こ れらの現象は全ての主要な教科書に記載されている.ここでは光が関与する 2 つのテストを考慮し,光線の軌跡に対する方程式の導出を考察することか ら始める (図 10.3 を参照).この導出は幾つかの小さな違いを除けば前節の ものに従う. 再び,この運動は θ = π/2 に置かれた平面内をとると仮定できる.また, 特殊相対論から光線の経路は光錐上にあり,したがって ds2 = 0 の場合に よって記述することができることが分かる.これらの考慮点は (10.44) に従 10.0 光線の湾曲 253 う方程式が ( 2m 1− r ) ( 2m ṫ − 1 − r )−1 ṙ2 − r2 ϕ̇2 = 0 2 (10.52) になることを意味する.質点に対してこれまで行ってきたように,定義 (10.47) と (10.48) を使って (微分は固有時 τ に関するものではなく,その代 わりに λ で表すあるパラメータに関する微分をとるという違いで) e2 = ( )2 2m ṫ2 1− r and l2 = r4 ϕ̇2 と書かれる.ここでドットは λ に関する微分を表す.すると,(10.52) は, ( 2m 1− r )−1 ( )−1 2m l2 e − 1− ṙ2 − 2 = 0 r r 2 (10.53) となる. 軌跡を求めるために,r = r (ϕ) に対する表式を得ることが重要である. ここでは ϕ に関する微分をプライム『′ 』を使って表すことにする.これを 心に留めておいて ṙ を次のように書き換えてみよう: ṙ = dr dr dϕ = = r′ ϕ̇ dλ dϕ dλ いま,r2 ϕ̇ = l を使うと, ṙ = r′ ϕ̇ = r′ l r2 と書ける.この方程式をより便利な形で書くために,新しい変数 u = 1/r を 導入しよう.ここで, u′ = に注意すると, ṙ = ( )′ 1 1 = − 2 r′ r r r′ l ( 2 ′ ) l = −r u = −lu′ r2 r2 254 第 10 章 シュワルツシルト解 と書くことができる.(10.53) に戻って,全体に (1 − 2m/r) を掛けて, u = 1/r と置くと, e2 − l2 u′2 − l2 u2 (1 − 2mu) = 0 が得られる.光線の軌跡の方程式を得るために,ϕ に関する 2 度目の微分を 行い,定数 e2 を取り除く.これは ( ) u′ u′′ + u − 3mu2 = 0 を与える.全体を u′ で割ると,最終的な結果 u′′ + u = 3mu2 (10.54) が得られる.この方程式を解く通常の手続きは摂動法を使うものである.ま ず,ε = 3m と置き, ( ) u = u0 + εu1 + O ε2 (10.55) という形の解を試す.高次の項を無視すると, u′ = u′0 + εu′1 u′′ = u′′0 + εu′′1 が成り立つ.さて,2 次以上の項を無視すると,3mu2 = εu2 ≈ εu20 が成り 立つ.これらの結果を (10.54) に挿入すると, u′′0 + εu′′1 + u0 + εu1 = εu20 が得られる.ここで今,ε のオーダー別にこれらの項を等号で結べることを 利用する.まず最初に, u′′0 + u0 = 0 から始める.この方程式の解は,u0 = A sin ϕ + B cos ϕ によって与えられ る.一般性を失うことなく,B = 0 及び u0 = A sin ϕ という初期条件を選 10.0 光線の湾曲 255 ぶことができる*5 .この方程式は r = 1/u であり y = r sin ϕ を極座標で使 うことにより,1/A = r sin ϕ = y と書けることから直線運動を表す.した がって,定数 r0 ≡ 1/A は原点から最も近くなる点を表す. y r0 = 1/A r = 1/u ϕ x O 図 10.3 最低次数のオーダーの光線の軌跡.光線は点線で表された直線 の経路に従う.距離 r0 は原点に最も近くなる距離である. 次に,ε の 1 次のオーダーの項で等式を作る: u′′1 + u1 = u20 = A2 sin2 ϕ これの斉次方程式方はその前に求めたのと一緒の u′′1 + u1 = 0 なので,解 uH 1 = B sin ϕ + C cos ϕ を持つ.前と同様に一般性を失うことな く,B = 0 ととることができる.また,元の非斉次微分方程式の特解として *5 訳注:cos ϕ0 = √ 2A A +B 2 A sin ϕ + B cos ϕ = , sin ϕ0 = √ ( √ A2 + B 2 √ B A2 +B 2 A A2 B2 と置けば, sin ϕ + √ B A2 B2 ) cos ϕ + + √ √ A2 + B 2 (cosϕ0 sin ϕ + sin ϕ0 cos ϕ) = A2 + B 2 sin(ϕ + ϕ0 ) √ となるので,改めて任意定数及び角度を A′ = A2 + B 2 , ϕ′ = ϕ + ϕ0 と置けばよい. = 256 第 10 章 シュワルツシルト解 up1 = D sin2 ϕ + E cos2 ϕ がとれる.したがって,これを微分して, up1 ′ = 2D sin ϕ cos ϕ − 2E cos ϕ sin ϕ up1 ′′ = 2D cos2 ϕ − 2D sin2 ϕ − 2E cos2 ϕ + 2E sin2 ϕ が成り立つので, up1 ′′ + up1 = 2D cos2 ϕ − 2D sin2 ϕ − 2E cos2 ϕ + 2E sin2 ϕ +D sin2 ϕ + E cos2 ϕ = 2D cos2 ϕ − D sin2 ϕ − E cos2 ϕ + 2E sin2 ϕ が成り立つ.いま,特解は u1 ′′ + u1 = A2 sin2 ϕ を満たさねばならず,これ p p は,2D − E = 0 のときのみ正しい.これは次を残す: −D sin2 ϕ + 4D sin2 ϕ = 3D sin2 ϕ up1 ′′ + up1 = A2 sin2 ϕ を使うと,D = A2 /3 を結論付けられる.したがっ て,特解は up1 = D sin2 ϕ + E cos2 ϕ = A2 A2 sin2 ϕ + 2 cos2 ϕ 3 3 ) A2 ( A2 1 − cos2 ϕ + 2 cos2 ϕ 3 3 A2 A2 = + cos2 ϕ 3 3 = になる.すると,完成した一次のオーダーの解は u1 = ) A2 ( 1 + K cos ϕ + cos2 ϕ 3 (10.56) となる.ここで K は別の積分定数である.全てを一緒にして,ε = 3m を 使うと,光線の軌跡の完全な解 (それは近似解であるが) は, ( ) u = u0 + εu1 = A sin ϕ + mA2 1 + K cos ϕ + cos2 ϕ となる.mA2 は直線経路からの軌跡の湾曲を引き起こす. (10.57) 10.0 光線の湾曲 257 天体物理学の状況では,漸近直線に沿って太陽に近づく遠くの星から発す る光線は,太陽の重力場によってごくわずかな量だけ湾曲され,そののち別 の漸近直線に沿って進路を変更して離れてゆく.漸近線は図 10.4 において u = 0 に対応し,かつ ϕ = ∆ + π に対応する入射光のものと,u = 0 に対応 し,かつ ϕ = 0 に対応する直線である x 軸に平行な出射光のものの 2 つあ る.このうち,後者の条件 u = 0 かつ ϕ = 0 を (10.57) に代入すると, 0 = u = A sin 0 + mA2 (1 + K cos 0 + cos2 0) = mA2 (2 + K) より積分定数は K = −2 となる.すると完成した光線の湾曲の公式は ( ) u = A sin ϕ + mA2 1 − 2 cos ϕ + cos2 ϕ となるので全湾曲量 ∆ はこの式に u = 0 と ϕ = ∆ + π を代入して, ( ) 0 =u = A sin(∆ + π) + mA2 1 − 2 cos(∆ + π) + cos2 (∆ + π) = − A sin ∆ + mA2 (1 + 2 cos ∆ + cos2 ∆) となる.いま,太陽程度の重力場では,屈折角が大変小さいことが想定され るので,小さな角度近似 sin ∆ ≈ ∆, cos ∆ ≈ 1 を使うと, 0 = u ≈ −A∆ + 4mA2 として書くことができる.定数 A が上で求めた直線との距離の逆数である ことを思い出すと,全湾曲量は ∆= によって与えられる. 4m r0 258 第 10 章 シュワルツシルト解 y r0 = 1/A ϕ r = 1/u ∆ 図 10.4 O x 太陽によって湾曲される光線 太陽の場合,1.75 秒角の湾曲が予想された.興味のある読者は観測的課題 とこの現象を測定しようと試みた結果がうまくいったことについて学ぶこと ができるであろう. 時間の遅れ シュワルツシルト幾何学それ自身を体現する最後の現象が,2 点の間を光 が進むのに要する時間の移動である.太陽のような質量のある物体を囲む時 空によって引き起こされる曲率は平坦な空間の場合に比べて光線の移動時間 が増加する. 再び,θ = π/2 と置き,ds2 = 0 を使うと, 0= ) ( )−1 ( 2m 2m dt2 − 1 − dr2 − r2 dϕ2 1− r r が成り立つ.光線に対する以前の結果を使うと,dr に関する最後のピース 10.0 時間の遅れ 259 を書くことができ,次の結果を得る: dt2 = ( ) dr2 1 − 2mr02 /r3 2 (1 − r02 /r2 ) (1 − 2m/r) 平方根をとって,一次のオーダーで展開し,便利な単位を採用すると (その ため t のところに ct を置いた), dr cdt = √ 1 − r02 /r2 ( 1+ 2m mr02 − 3 r r ) が得られる.この結果は積分できる.地球から太陽を挟んで太陽系の別の惑 星の間を光が移動する時間を考えるには,rp をその惑星までの太陽からの 半径,re を太陽から地球までの半径とするとき,r0 から rp と r0 から re の 間を積分すればよい.結果は, (√ ) (√ ) √ √ rp2 − r02 + rp re2 − r02 + re ct = rp2 − r02 + re2 − r02 + 2m ln r02 √ √ rp2 − r02 re2 − r02 −m + rp re となる. √ √ rp2 − r02 + re2 − r02 地球とその星の通常の平坦空間の距離は最初の項, によって与えられる.残りの項は時空の曲率 (すなわち,太陽の重力場に よって) によって引き起こされる距離の増加を示している.これらの項は太 陽系で測定可能な時間の遅れを引き起こす.例えば,金星へのレーダー反射 は 200 µs だけ遅れる. 限られた空間であるため,ここでのシュワルツシルト解の調査範囲は不完 全である.読者はより広い取り扱いのために,本書の最後に記載されている 参考文献を参照することが望ましい. 260 第 10 章 シュワルツシルト解 章末問題 1. 例 4.10 で記述される変分法を使うと,シュワルツシルト計量 (10.5) の 0 でないクリストッフェル記号は次のいずれか? (a) Γt rt = dν dr dλ dν r , Γ rr = , dr dr Γr θθ = −r e−2λ , Γr ϕϕ = −r e−2λ sin2 θ, 1 Γθ rθ = , Γθ ϕϕ = − sin θ cos θ, r 1 ϕ Γ rϕ = , Γϕ θϕ = cot θ r Γr tt = e2(ν−λ) (b) Γt rt = dν , dr dν r dλ , Γ rr = , dr dr Γr θθ = re−2λ , Γr ϕϕ = −re−2λ sin2 θ, 1 Γθ rθ = , Γθ ϕϕ = sin θ cos θ, r 1 ϕ Γ rϕ = − , Γϕ θϕ = − cot θ, r Γr tt = e2(ν−λ) (c) dν r dλ , Γ rr = − , dr dr Γr θθ = −re−2λ , Γr ϕϕ = re−2λ cos2 θ, 1 Γθ rθ = , Γθ ϕϕ = − sin θ cos θ, r 1 ϕ Γ rϕ = , Γϕ θϕ = cot θ, r Γr tt = 10.0 章末問題 261 2. 仮に時間独立性の条件を落として線素を ( ) ds2 = e2ν(r,t) dt2 − e2λ(r,t) dr2 − r2 dθ2 + sin2 θ dϕ2 と書くとき,リッチテンソルの Rrt は次のどれによって与えられ るか? (a)Rrt = (b)Rrt = (c)Rrt = 1 r 1 r dν dt dλ dt − r12 dλ dt 以下の問いでは,0 でない宇宙定数を持つシュワルツシルト計量を考 える.次の定義を置くことにする: f (r) = 1 − 2m 1 2 − Λr r 3 線素は次のように書く: ds2 = −f (r) dt2 + 1 dr2 + r2 dθ2 + r2 sin2 θ dϕ2 f (r) 3. リッチ回転係数を計算すると次のうちどれが得られるか? (a)Γr̂ t̂t̂ = (b)Γr̂ t̂t̂ = (c)Γr̂ t̂t̂ = −Λr 3 9r−18m−3 Λr 3 3 √ 3m−Λr 9r−18m−3 Λr 3 3m−Λr 3 √ 9r−18m √ 4. リッチテンソルの成分を計算すると次のうちどれが得られるか? (a)−Rt̂t̂ = Rr̂r̂ = Rθ̂θ̂ = Rϕ̂ϕ̂ = Λ (b)−Rt̂t̂ = Rr̂r̂ = Rθ̂θ̂ = Rϕ̂ϕ̂ = Λr3 (c)−Rt̂t̂ = Rr̂r̂ = Rθ̂θ̂ = Rϕ̂ϕ̂ = 0 5. シュワルツシルト時空のペトロフ型は次のうちどれか? (a)type O (b)type I (c)type III (d)type D 263 Chapter 11 ブラックホール ブラックホールは,光でさえ逃れられないほど重力が強い時空の領域であ る.自然界では,ブラックホールは大質量星が燃え尽きてその一生をつぶれ て崩壊を迎えるとき,星の寿命の終わりに形成されると考えられている.こ こではシュワルツシルト解を詳しく見ることによってブラックホールの学習 を始めよう.ここでこれから見るように,(量子化されていない) 古典的な一 般相対論に従う限り,ブラックホールは完全に丁度わずか 3 つのパラメータ によって特徴付けられる.それらは, • 質量 • 電荷 • 角運動量 である.この特徴付けは研究されている 3 つの一般的な種類のブラックホー ルを結果として生む: • シュワルツシルト解によって記述される電荷を持たない静的なブラッ クホール • ライスナー‐ノルドシュトロム解によって記述される電荷を持つブ ラックホール 264 第 11 章 ブラックホール • カー解によって記述される回転するブラックホール 本章では,シュワルツシルトブラックホールとカーブラックホールの 2 つ の場合を考察する.始めるにあたって,座標特異点の問題を検討し,シュワ ルツシルト計量からどのようにしてその特異点を取り除くかについて見てみ よう. 重力赤方偏移 ブラックホールを学習する際には,しばしば無限赤方偏移が議論されてい るのを見るであろう.重力場内で上向きに放出された光に何が起こるか見て いこう.すなわちある内側の半径 ri に位置する観測者からある外側の半径 ro に位置する観測者に向かって光を放出するものとする. この光に何が起こるかを見るカギは,各々の観測者に対してどのように時 間が経過するかを見ることである.言い換えれば,今関心があるのは,各観 測者によって観測される光波の周期である.ここで,固有時 τ が観測者自 身の時計で測定した時刻であることを思いだそう.シュワルツシルト計量で は,静止した観測者の固有時は,関係式 √ dτ = 1− 2m dt r を経由して離れた観測者によって測定される時刻と関係する. r の 2 つの異なる値に位置する観測者たちに対する固有時を比較すること によって,赤方偏移因子を計算するのは簡単なことである.これは例を見た ほうが早いだろう. 例 11.1 シュワルツシルトブラックホールの近くに位置する 2 人の固定された観 測者を考えよう.r1 = 3m に位置する第 1 の観測者が紫外光のパルス波を r2 = 8m に位置する第 2 の観測者に放出したものとする.第 2 の観測者が その光がオレンジ色に赤方偏移したことを観測することを示せ. 11.0 重力赤方偏移 265 解 11.1 赤方偏移因子を求めるためには,単に dτ2 /dτ1 を計算すればよい.ここで √ dτi = である. 1− 2m dt ri
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