けんさの豆知識

2010 年 9 月
けんさの豆知識
[35]
~白血球について
血液検査についての豆知識です。前回(2009年2月
した。今回は各論の顆粒球について説明します。
顆粒球
白血球
単球
50~60%
好中球
好酸球
3%
好塩基球 1%
5%
リンパ球
臨床検査部発行
その②~
第40号)は白血球の成熟過程について説明しま
白血球中で一番多い細胞は顆粒球になります。
さらに顆粒球は大きく3つの細胞に分けることが出来ます。
30~40%
白血球の分画
<顆粒球の種類>
顆粒球は、メイギムザ染色による顆粒の染まり具合によって、好中球・好酸球・好塩基球に分けられます。
えている
好酸球
好中球
好酸球
好塩基球
好中球
好中球は血管内に循環プールと辺縁プールの二つの集団を持ちます。
循環プール:血管の中心を血流にのって早く移動する好中球の集団で、異物に対して最初に向かっていく、
パトロール隊の様な集団です。
辺縁プール:血管壁に沿ってゆっくり移動する好中球の集団で、循環プールの好中球が少なくなったときに
動き出す、後援部隊の様な集団です。
・ 辺縁プールと循環プールは、食事や運動、ストレスなどのわずかな体の変化で容易にお互いを移行しています。
・ 循環プールの好中球数と辺縁プールの好中球数は1:1で、血液検査での好中球数は循環プールの好中球数を
いいます。
・ 好中球の血管内での寿命は1日以内
概ね 10~12 時間とされています。
【役割】
異物
血管外
好中球は、異物、特に細菌などの病原体を処理します。
① 遊走能
好中球は活発なアメーバ運動をしていて毛細血管の隙間を通過する
循環プール
血管内
ことが出来ます。血管から出た好中球は異物に向かって進みます。
② 貪食能
辺縁プール
異物に近づき好中球内に取り込みます。
③ 殺菌能
①遊走能
血管壁
細胞質に取り込まれた異物は好中球内の脱顆粒した顆粒と融合し、
脱顆粒
活性酸素(次亜塩素酸など)によって殺菌され、酵素によって分解されます。
顆粒
異物を取り込んだ好中球はやがて死滅し、死骸は膿になって体外に放出されるか、
③殺菌能
組織内のマクロファージなどにより処理されます。
核
②貪食能
【好中球の増加・減少する疾患】
好中球
増加
減少
急性(細菌)感染症
血液疾患(再生不良性貧血など)
悪性腫瘍
放射線照射
炎症
抗癌剤投与
血液疾患(白血病など)
ウィルス感染
腸チフス・パラチフス*1(細菌感染ですが例外 2 例)
※1
発症 1~2 週間以降で好中球が減少する
好酸球
【役割】
好中球のように遊走能・貪食能・殺菌能がありますが、これら防御反応は寄生虫に対して発揮されます。
またアレルギー反応を引き起こしたり抑制したりします。
好酸球が持つヒスタミナーゼは、ヒスタミンを分解することでアレルギー反応を緩和し、プロスタグランジンを放出
することで好塩基球の脱顆粒を抑制しています。しかし、気管支上皮細胞など正常な組織も障害することが知られて
います。寿命はまだ不明な点が多いですが約 1 日とされています。
【好酸球の増加・減少する疾患】
増加
減少
アレルギー疾患
腸チフス
寄生虫感染
麻疹
血液疾患(白血病など)
好塩基球
【役割】
生体内でアレルギー反応の中心的な役割を果たします。細胞表面に IgE レセプターがあり、アレルゲンが付着すると
脱顆粒し、ヒスタミンなどを放出しアナフィラキシー反応を起こします。寿命は不明です。
【好塩基球の増加・減少する疾患】
増加
減少
血液疾患(CML など)
内分泌疾患
潰瘍性大腸炎
慢性副鼻腔炎
マメマメちしき
~~ 気管支喘息と可哀想な好酸球 ~~
気管支喘息には、即時反応と遅延反応の二つがあり、好塩基球は即時反応に、好酸球は遅延反応に
関与しています。好塩基球から出されるヒスタミンによって即時反応が起こり(15~30 分)、その後、
好酸球などの細胞が気管支上皮細胞に湿潤・傷害して、炎症反応を起こします。これが遅延反応と
いって 4~12 時間後に起こります。
さらに悪いことに、活性化した好酸球の組織障害性が増して、気管支上皮細胞を剥離してしまいま
す。そうすると求心性神経がむき出しになってしまい、気道の反応性が増してしまいます。つまり、
冷たい空気を吸っただけで喘息発作が起きてしまうのです。
冷たい空気を吸っただけで喘息発作が起こるほど、喘息を酷くしたのは好酸球のせいなのですが、
悪気があってしたわけではないのです。はじめは好塩基球から出されたヒスタミンを不活化しよう
と善意の気持ちでいっぱいだったのですが、いつのまにか組織障害性という悪い一面が前面に出て
しまい、気付いたら悪の親玉になっていたという可哀想な細胞なのです。好酸球が話すことが出来
るなら、きっとこう言うはずです。「悪いのは好塩基球だ!!!」と・・・。こんな哀れな好酸球を温かい
目で見守って下さい。