Pharmacy Digest的わかりやすいがん治療 乳がん化学療法

第
2
回
Pharamacy Digest的わかりやすいがん治療
がん 学
では治療の目的が大きく異なります。図1に示すよう
と
に、手術後に根治を目指すために行う術後補助化学療
国立がん研究センターがん対策情報センターのデー
法と、症状緩和であるケアを目指す進行再発の治療と
タによると、わが国の乳がん罹患数は女性では第1位
に大きく分けることができます。また手術前に化学療
であり、年間6万8,071人が罹患(2010年)していま
法を行う術前化学療法があります。乳がんは生物学的
す。また死亡数は1万2,529人(2012年)です 。わ
分類によりホルモン受容体陽性と陰性、HER2蛋白過
が国では乳がんの罹患数は年々上昇傾向にあります。
剰発現か否かによって治療選択が変わってきます。治
罹患年齢のピークは60∼64歳が最も多く、次いで45
療選択の簡略化したものを表1に示します(ホルモン
∼49歳が多く2つのピークがあります。リスク因子
療法は次回で解説)。
1)
としては、閉経後肥満、未産、授乳経験なし、良性乳
腺疾患の既往、初産年齢が高い、乳がん家族歴、閉経
1)術前・術後化学療法3)
後ホルモン補充療法などが挙げられます2)。乳がんは
アントラサイクリン系抗がん剤とタキサン系抗がん
早期発見により根治が目指せる疾患です。早期発見の
剤がキードラッグとなります。アントラサイクリン系
ため40歳以上を対象としたマンモグラフィー検診が
抗がん剤の代表的な治療法としては、ドキソルビシン
本邦では推奨されています。
とシクロホスファミドを併用したAC療法、エピルビ
シン、フルオロウラシル、シクロホスファミドを併用
がん
したFEC療法などがあります。再発リスクによって
療
はタキサン系抗がん薬(ドセタキセル、パクリタキセ
乳がんは、手術適応のある乳がんと進行再発乳がん
ル)を用いる治療が行われています。
診断(原発性)
手 術
術前
補助
化学
療法
再発
術後補助化学療法
Cure(治癒)
1st
ライン
2nd
…
ライン
Care(ケア)
図1 乳がん治療の基本的な流れ
表1 乳がんの生物学的分類と治療のまとめ
6
ホルモン受容体陽性
ホルモン受容体陰性
HER2陰性
ホルモン療法、化学療法
化学療法
HER2陽性
抗HER2治療薬、ホルモン治療、化学療法
抗HER2治療薬、化学療法
▶▶▶日本ケミファ㈱発行[PHARMACY DIGEST]2016年 Oncology特別号
)
療法3)
表2 進行再発乳がんで使用される薬剤の主な副作用
トラスツズマブは分子標的治療薬であり、HER2蛋
白が過剰発現している乳がんに対する薬剤です。本剤
薬剤名
主な副作用
がHER2蛋白と結合することで、がん細胞の増殖を刺
カペシタビン
消化器症状、手足症候群、肝機能障害、口内炎など
エリブリン
消化器症状、骨髄抑制、口内炎、末梢神経障害など
激する信号を抑制し、免疫の働きでがん細胞が破壊さ
S-1
消化器症状、皮膚障害など
れます。1週間おきの投与方法と3週間おきの投与方
ビノレルビン
静脈炎、好中球減少、便秘など
法があり、術後補助療法の場合は1年間の投与を行い
ゲムシタビン
骨髄抑制、間質性肺炎など
ます。進行再発乳がんに用いる場合は、他の抗がん薬
イリノテカン
悪心・嘔吐、早期型下痢、遅延型下痢など
と併用することがあります。
前に服用する薬です。①は治療翌日から内服する必要
3)
のある薬剤です。
化学療法
3)
HER2陰性の進行再発乳がんでは、治療の目的が症
また、投与7∼14日には白血球が低下し感染症が
状緩和のため併用療法よりも単剤の治療が一般的です。
起こりやすい状態となります。その際、発熱が起こっ
上記、アントラサイクリン系抗がん薬やタキサン系抗
た場合に一次治療として②のような抗生物質が処方さ
がん薬が未使用の場合は使用し、二次治療では、使用
れることがあります。37.5℃以上の発熱があった場
していないタキサン系抗がん薬を用います。三次治療と
合、医療機関に連絡してもらい、医療機関からの指示
してカペシタビン、エリブリン、S-1、ビノレルビ
があれば内服を行います。その際、処方期間内に飲み
ン、ゲムシタビン、イリノテカンなどが選択薬とさ
切ることが重要であり、解熱したからといって服用を
れ、化学療法によりQOLが下がらないように選択を
やめてはいけないことを薬局で指導します。
行います。HER2陽性の進行再発乳がんの場合は、上
治療による不安や化学療法による食欲低下などで便
記の治療選択に加えてトラスツズマブの投与を行いま
秘になる人も多く、③のように緩下剤も処方されるこ
す。
とが多いです。
タキサン系抗がん薬であるパクリタキセルの代表的
な副作用としては、末梢神経障害がありますが効果十
分な治療薬はありません。またドセタキセルでの関節
アントラサイクリン系抗がん薬の治療では、図2の
ような処方がされることがあります。AC療法やFEC
痛に対してNSAIDsが処方されることもあります。
トラスツズマブは分子標的治療薬のため、細胞障害
療法の悪心・嘔吐リスク分類はハイリスクに分類され、
性抗がん薬とは異なり悪心・嘔吐や血液毒性は起こり
悪心・嘔吐が起こる前の予防内服が重要となります。
ません。しかし、投与を継続すると心筋機能が低下し、
図2にあるアプレピタントは治療開始1時間以上前に
息切れなどを起こすこともあります。投与患者さんに
内服する薬剤であり、この場合は、次回の化学療法の
そのような症状があった場合は、主治医に報告するよ
うに伝えます。
進行再発乳がんで使用される薬剤の主な副作用を表
Rp.1
アプレピタント(125)1カプセル
1回1カプセル 1日1回 朝食後 1日分
Rp.2
アプレピタント(80)1カプセル
1回1カプセル 1日1回 朝食後 2日分
Rp.3
デキサメタゾン錠(0.5)8錠
1回1錠 1日1回 朝食後 2-3日分
❶
Rp.4
シプロフロキサシン錠(200)1錠
1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
❷
Rp.5
酸化マグネシウム錠 1錠
1回1錠 1日3回 毎食後 7日分
❸
図2 AC療法時の処方例
2 に 示 し ま す。 進 行 再 発 乳 が ん で は、 治 療 効 果 と
QOLのバランスが重要であるため、副作用でつらい
場合には主治医に伝えることを話すことも保険薬局薬
剤師の役割と言えるでしょう。
参考文献
1)国立がん研究センターがん対策情報センター資料より.
2)日本乳癌学会編:科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン 4検診・診断
2008年版.金原出版.
3)日本乳癌学会編:科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン 1治療編 2013年
版.金原出版.
日本ケミファ㈱発行[PHARMACY DIGEST]2016年 Oncology特別号◀◀◀