Title 移植歯胚の発育萠出機序に関する知見補遺( Abstract_要旨

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移植歯胚の発育萠出機序に関する知見補遺( Abstract_要旨
)
森本, 二郎
Kyoto University (京都大学)
1966-11-24
http://hdl.handle.net/2433/212021
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
朋士
本
郎
森
二 じ博
氏)
もり
もと
学 位 の 種 類
医
学
学 位 記 番 号
論
学位授与 の 目付
昭 和 41 年 11 月 24 日
学位授与 の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位論文題 目
移植 歯 膝 の発育 前 出機序 に関す る知見 補 遺
論文 調査 委員
教 授 堀 井五 十 雄
医
博
第 324 号
(主 査)
論
文
教 授 西 村 秀 雄
内
容
の
要
教 授 岡 本 道 雄
旨
著者 は生後 2.5月 ~4 月 の幼犬 を実験 動物 に選 び , その歯 肱 を摘 出 して これを種 々な条 件 の もとに移再
植実験 を行 な い , 歯腔 の発育状況 と移植床 との関連 につ いて検 索 を進 め , 現在 なお解 明 されて いな い歯 肱
の蘭 出機序 につ いて研究 を行 な い , つ ぎの事実 を知 る ことがで きた.
1 ) 歯 胚 を正常位 置 に移再植 して もそのエ ナ メル器 は変性 を蒙 るが , 歯 乳頭組織 お よびへル トウイ ッ ヒ
の上皮草削ま固有構造 を保有 し, 移植後 において も歯 根 の形成 を継続す る とと もに歯小 嚢組織 は歯 根膜 組織
に発育 して歯 肱 は爾 出 し頃合機能 に関与す る ことが可能 で あ る。
2 ) ま た歯 肱 を形態 の類 似す る歯腔摘 出甫 内に移植す れ ば , その位 置を頬舌 的 に反 転 して も歯 胚 は速や
か に生者 して組織 的結合 を営 み , 歯 根部 の形成 を継 続 し, 発育雨 出す る ことが可能 で あ る。
3 ) しか し移再植歯 肱 の唆頭頂 を雨 出方 向に向けない場合 , 歯 胚 の発育 は漸次停止す る
。
このよ うな機
転 はエ ナ メル器 ことに上皮鞘 の変性 , 歯乳頭 組織 の著 明な線維 化現象 によ る もので , 移再植歯胚 は遂 に吸
収 され る運命 を たど るので あ る。
4 ) 石灰化 が進展 し歯牡 の大部分 が形成 され た ものを切 断 して再植す れ ば , 歯 肝 は吸収 を蒙 るがなお一
部 においては象 牙質 の新 生 が認 め られ , 歯 月
引ま前 出を継続す る。
5 ) このよ うな現象 はあ くまで 口腔 内に向か って繭 出せ ん とす る生物学的態度 を保持 してい る ことがわ
か る。
6 ) 歯 腔 を幼犬 の腰骨骨髄 内お よび成 犬顎骨 内に異所 移植す れ ば , 歯 腔構成 組織 は変性 にお ちい り漸次
吸収 され る。
しか し石灰化 お よび発 育旺盛 な幼犬 の管状骨骨髄 内に移植 した場合 は生者 し, わず かで はあ るが発育 を
継 続す る ことが可能 で あ り, 移植歯 胚 の生者 発育 と床母体 の石灰 化程度 と年令 との問 に重大 な関連性 があ
る ことがわ か る0
7 ) 歯 肱 を移再植 した場合 , その生者 発育機転 に最 も重要 な影響 を 与 え る もの は 血管 の再生状況 で あ
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る。
移植床 よ り再生血管 が遠かに進入 し, 豊富な分布を招来すれば歯腔は発育を継続す るが, 再生状況が不
完全 な場合 には循環障害を きた し, 歯乳頭および歯小嚢組織 は線維化 して歯肱の発育は停止 し, 遂 に吸収
され る運命 をたどる。
8 ) 以上の結果 よ り移再植歯腔の爾 出を左右す るものは血管 の再生 と- ル トウイッヒ上皮鞘の発達であ
り, 幸 いにこの両者 が保有 されれば象牙芽細胞 の分化をきた し, 歯根部 の象牙質 は形成 され , その発育 に
応 じて歯小嚢 は歯根膜組織 にまで成長 し, さらに移植床 周壁 は吸収添加等 の改造 を受 けて歯槽苗の形態を
整 え , 加 うるに歯腔 自体 の有す る臓器 の本能 ともい うべ き強力な筋 出機能 が相乗的 に関連 し, ここに爾出
現象 が発揮 され るもの と推考す る。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
著者 は歯旺移再植 に関す る従来の実験成績 に吟味考察 を加 えると同時 に新 たに20例の助成犬 についての
実験 を加 えて , 移植歯肝 の発育爾 出機序 に周到 な考察 を試みて, つ ぎのよ うな結論 をえた。
歯旺移植実験 の うち, 歯牡 が発育を継続 して雨 出に至 る場合の条件は, 摘 出歯肱 を もとの摘 出嵩に再植
す るばあいで も, 他の類似の摘 出嵩に移植す るばあいで も, その歯腔 の爾 出方 向を 自然 の爾 出方 向に一致
せ しめたばあいであ り, たとえ移再植方 向を頬舌方 向に反転 して も, また歯旺 その ものが幼弱な ものでな
く相 当石灰化の進んだ ものに切断を加 えたよ うな極端 なばあいで も縦軸方 向が同一であ り移植床が幼弱な
もののばあいはほぼ同様の程度 に成功を収め ることが明 らかにされた。
これ らのばあい, 移再植 に対 してエナメル器 は一般 に抵抗が弱 く多 くのばあい早期 に変性 に陥 って しま
うが , 歯乳頭組織 は抵抗強 く象牙質の形成 を継続 し, 歯小嚢組織 も同様で歯根膜 を形成 し発育を継続 して
歯旺 は前 出に至 るものである。 このよ うな移再植成功の条件 と して最 も大切な ことは歯肝 の側か ら言えば
ヘル トウィッヒ上皮鞘 の生機保持であ り, 移植床 の側か ら言 えば, 移植嵩か ら起 こる血管再生機転である
といえる。 この両者が適合すれば移植歯旺 峠発育を継続 し蘭 出に至 ることが証せ られた。
本論文 は学術上有益 に して医学博士 の学位論文 と して価値 ある もの と認定す る。
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