2016 年度前期 有機化学演習 第5回 脂肪族求核置換反応 (SN1, SN2) 1. 以下の化合物を、ハロゲン化アルキルを使った SN1, SN2 反応で合成する方法 をそれぞれ提案しなさい。 CH3 OCH3 SN1 CH3 CH3 CH3OH OCH3 Cl SN2 CH3 CH3 CH3Br OCH3 ONa 2. 次の2つの反応では、下の方が速い。理由を説明しなさい。 CH3 CH3 CH3OH Cl CH3 H3CO OCH3 CH3OH CH3 H3CO OCH3 Cl この反応は SN1 で、カルボカチオン中間体を経由する。メトキシ基がついてい る方は、下の共鳴によってカルボカチオンが安定化されるため、反応が加速さ れる。 CH3 H3CO CH3 CH3 H3CO H3CO 3. 次の (1)(2) の機構を説明しなさい。(1) (S)-1-Phenylethanol を希硫酸中で放 置するとラセミ化した。 (2) (S)-1-bromo-1-phenylethane を DMSO 中 NaBr で処理するとラセミ化した。 (1) H OH (2) H Br (1) SN1 で、平面型のカルボカチオン中間体を通る。求核剤の H2O がカルボ カチオンと反応するとき、カルボカチオン平面のどちら側から反応するかに よって (S), (R)が決定されるが、これらは同じ確率で起きるため、ラセミ化が 進行する。 (1) – H2O + H+ H OH – H+ H OH + H2O + H2O 2 – H2O H2O H H – H+ + H+ HO H (2) SN2 で、背面攻撃により立体反転したものとの平衡になる。 (2) Brδ– H Br Br H H Brδ– 4. ジアゾメタン CH2N2 はカルボン酸と反応して、メチルエステルと窒素を生成 する。 CH3COOCH3 + N2 CH2N2 + CH3COOH (1) この反応は、プロトン化されたジアゾメタン CH3N2+ が中間に生成してい ると考えられている。CH3N2+ のケクレ式を書きなさい(注:C, N, N はこの 順に直線上に並んでいる。ケクレ式は2つ以上の案が出て来るかもしれない – 酢酸の共役塩基) が、それらは共鳴混成体である。)(2) CH3N2+ と CH3COO( が SN2 反応を起こして CH3COOCH3 が生成する。反応機構を巻き矢印で図示 しなさい。(3) (2)の反応は極めて速い。このことから、脱離基としての N2 に ついてどういうことが言えるか。また、それはなぜか。 (1) (2) CH3 N N H3C O O CH3 N N + CH3 N N H3C O O CH3 + N N (3) 非常によい脱離基である。N2 が無極性の中性分子で、極めて塩基性が弱い ため。 5. 下のハロゲン化アルキルは、SN1 反応も SN2 反応もしない。なぜか。 Br 三級でかつ Br の背面がブロックされているため SN2 反応は起きない。また、Br が脱離してカルボカチオンが生成すると角ひずみが非常に大きくなるため、カ ルボカチオンが生成しにくく、従って SN1 反応も起きない。
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