2015 年度 物流コスト調査報告書【概要版】 １．調査の目的 物流費の低減は、マクロ的には物価の安定に寄与するとともに、ミクロ的には企業経営 の根本課題として認識され、きわめて重要な意義をもっている。しかし、物流費の全容に 関して公にされたデータは限られており、有価証券報告書に記載された支払運賃など、物 流にかかわる費用の一部を集計しただけの、不完全な資料にとどまっているのが現状であ る。また、経済のグローバル化が進展するにともない、日本経済の高コスト構造が多方面 で指摘され、物流コストが一因であるとする議論もあることから、国際比較による検証も、 かねてより懸案となっていた。 本調査は、このような状況のもと、通商産業省(現 経済産業省)の『物流コスト算定活用 マニュアル』に準拠して物流コストの実態把握を行うとともに、文献調査や国際比較など、 多面的な調査により日本の物流コストに関する総合的な基礎データを蓄積することを目的 として実施したものである。 本調査では、2015 年 10 月から 2016 年 5 月にかけて、アンケート調査、文献調査 などを実施し、その結果を整理・集計・分析した。また、調査の実施にあたり、学識経験 者および各業界の関係者により構成される委員会（中 光政委員長）を設置し、調査の方 針と内容を検討し、全体の統合と調整、最終的なとりまとめを行った。 本報告書は、これら調査の成果をとりまとめたものである。なお、本概要版では調査の 概要のみを掲載している。 図表１－１ 主な調査内容（概要版非掲載分を含む） 調査内容 概 要 ①ミクロ物流コス 荷主企業（子会社を含む）を対象としたアンケートをベースに、回答 ト（企業物流コスト） 企業の売上高物流コスト比率の平均値等を整理したもの。主として 2014年度の実績値が対象となる。 ②ミクロ物流コス 物流コスト等の動向(増えているか、減っているか)を簡易な質問項目 ト等の動向（定性 で定性調査したもの。直近（2015年度）の実績と2016年度の予測 調査） 値を把握するために実施。 ③マクロ物流コス 国民経済的観点から、我が国全体の物流コストを、マクロ統計から推 ト 計したもの。統計の公表にタイムラグがあるため、2013年度までが 対象となる。 ④海外の物流コス ミクロ物流コスト、マクロ物流コストの国際比較を行ったもの。 ト（国際比較） ⑤物流コスト削減 企業がコスト削減の具体的なアクションを起こす際に参考となるよ 策の実施状況 う、コスト削減策の実施状況をアンケートで把握したもの。 - 1 - ２．調査の要約 ２.１ ミクロ物流コスト（企業物流コスト） １）売上高物流コスト比率の推移 図表１－２は、売上高物流コスト比率の推移（全業種）を示したものである。売上 高物流コスト比率は長期的に低下傾向にあるが、近年はおおむね 5％弱の水準にある。 2015 年度調査の全業種における売上高物流コスト比率は 4.63％で、前年度から 0.07 ポイントの下落となった。2015 年度調査で対象としている 2014 年度は、好 調な内需や円安を背景として企業収益が総じて改善に向かい、燃料価格も低下傾向で 推移した結果、売上高に対する物流コスト比率が低下した可能性が考えられる。 なお、2015 年度調査の有効回答数 215 社のうち、 「２年連続回答企業」 （163 社） の売上高物流コスト比率は 4.70％で、前年度から 0.08 ポイント上昇している。今 年度については 2014 年度のみ回答した企業（37 社）と、2015 年度のみ回答した 企業（52 社）の入れ替わりが、全サンプル平均で見た場合の物流コスト比率の下落 につながっている。 また、「主要製造業」※（85 社）の売上高物流コスト比率は 5.95％で、前年度か ら 0.04 ポイント上昇しており、留意が必要である（図表１－３）。 図表１－２ 売上高物流コスト比率の推移（全業種） 10.0 （％） 8.0 6.45 5.84 6.0 6.13 5.87 5.45 5.26 5.01 5.01 4.83 5.01 4.84 4.87 4.77 4.79 4.90 4.72 4.77 4.70 4.63 4.0 2.0 0.0 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15年度 調査年： （回答数） (288) (301) (303) (286) (217) (220) (190) (194) (225) (211) (210) (201) (201) (198) (198) (185) (192) (200) (215) 図表 1－3 売上高物流コスト比率の推移（主要製造業） 10.0 (％) 8.45 8.08 8.0 8.09 7.77 7.07 6.94 6.95 6.60 6.28 6.25 6.40 6.35 6.44 6.13 5.94 5.82 6.0 6.18 5.91 5.95 4.0 2.0 0.0 調査年： 97 98 99 00 01 02 (回答数) (139) (109) (118) (111) (85) (78) 03 (71) 04 05 (70) (89) 06 (77) - 2 - 07 08 (70) (71) 09 (74) 10 11 (73) (73) 12 13 (72) (71) 14 15年度 (73) (85) ※本調査における「主要製造業」とは、水産、食品(要冷)、食品(常温)、紙、プラス チック・ゴム、化学繊維、石けん・洗剤・塗料、化粧品・歯磨、その他の化学品、石油 製品・石炭製品、窯業・土石・ガラス・セメント、鉄鋼、電気機器（家電・ＡＶ）、出 版、印刷の 15 業種を指している。 ２）物流コストの構成比の推移 次ページの図表１－4 は、物流コストの構成比（物流機能別、支払形態別、領域別） の推移を示したものである。 図表１－4 物流コストの構成比の推移（全業種） ①物流機能別構成比の推移 輸送費 100 (％) 5.0 8.4 保管費 8.5 8.4 8.6 包装費 8.2 8.6 荷役費 6.2 7.1 9.0 11.7 11.1 80 10.8 5.8 17.3 19.5 6.9 21.5 9.5 12.3 10.8 12.4 13.8 6.8 6.8 21.2 60 19.7 5.4 5.0 7.5 6.8 6.3 6.2 5.3 6.3 6.3 6.4 6.2 6.1 6.0 12.0 11.7 13.1 13.0 12.7 14.7 15.2 16.3 15.4 14.9 16.2 15.5 5.7 4.8 物流管理費 5.4 5.2 6.2 5.8 5.2 5.2 4.6 5.1 6.0 5.5 5.6 18.2 18.0 17.2 17.7 16.9 17.5 16.3 16.2 16.5 15.9 15.1 15.3 15.4 15.0 16.3 40 57.9 58.4 58.5 57.4 58.2 59.1 58.2 57.4 57.7 57.7 57.5 57.2 56.6 54.7 52.1 54.2 52.7 57.5 56.0 57.0 20 0 調査年： 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 68.1 67.5 11 12 13 14 15年度 ②支払形態別構成比の推移 自家物流費 支払物流費(対物流子会社) 支払物流費（対専業者支払分他） 100 (％) 80 54.3 55.8 51.8 51.4 51.8 56.7 54.4 56.4 55.6 62.2 63.6 65.5 63.6 70.2 71.2 73.0 75.0 14.4 14.2 12.1 10.8 14.2 60 40 20.0 23.1 20.6 18.2 22.6 19.0 22.8 21.1 21.3 19.3 17.5 17.0 18.4 15.0 16.5 20 22.6 26.0 28.1 27.9 71.4 25.6 24.3 22.8 22.5 23.1 18.6 19.0 17.5 18.0 16.9 16.0 15.4 14.6 14.9 05 06 07 08 09 10 11 12 13 13.3 15.3 0 調査年： 96 97 98 99 00 01 02 03 04 - 3 - 14 15年度 ③領域別構成比の推移 販売物流費 社内物流費 調達物流費 100 (％) 80 9.7 7.7 19.7 9.1 19.0 26.7 9.5 9.8 9.9 18.4 20.0 18.7 72.1 70.2 71.4 00 01 02 13.1 7.3 9.6 9.5 8.8 16.5 17.1 17.8 73.9 73.3 73.5 74.7 03 04 05 06 18.0 8.6 20.2 7.6 7.7 7.0 7.2 7.2 5.9 5.0 5.1 18.4 19.8 20.1 18.9 18.3 19.8 20.0 21.8 74.0 72.5 72.9 73.9 74.6 74.3 75.1 73.1 08 09 10 11 12 13 20.6 60 40 72.6 71.9 66.4 63.6 71.2 20 0 調査年： 96 97 98 ３）業種大分類別 99 07 14 15年度 売上高物流コスト比率 図表１－5 は、2015 年度調査における売上高物流コスト比率を業種大分類別に示 したものである。 図表１－5 売上高物流コスト比率（業種大分類別） 8.0 （％） 6.0 4.63 4.62 4.66 4.70 4.75 3.96 4.0 2.0 0.0 全業種 製造業 非製造業 卸売業 小売業 その他 （N=215）（N=154） （N=61） （N=35） （N=21） （N=5） 業種大分類別の売上高物流コスト比率を前年度と比較すると、製造業が 0.05 ポイ ント、卸売業が 0.17 ポイント、小売業が 0.05 ポイントそれぞれ下落し、その他（建 設業、外食など上記以外の産業）のみ 0.29 ポイントの上昇となっている。 - 4 - ２.２ 物流コストの日米比較 １）ミクロ物流コストの日米比較 図表１－6 は、日本とアメリカの売上高物流コスト比率を比較したものである。それぞ れ、対象企業や物流コストの範囲などの状況が相違するので、厳密な比較はむずかしいが、 大勢を観察することはできる。 日本の数値は、 「物流コスト実態調査」の全業種における売上高物流コスト比率を採用し て い る 。 一 方 、 ア メ リ カ は エ ス タ ブ リ ッ シ ュ 社 (Establish,Inc.) が 公 表 し て い る 「Logistics Cost and Service」を参照しており、この報告にある「Total Logistics Costs」の数値を採用してきたが、2015 年については同レポートの刊行が見送られたた め、2014 年の数値を再掲した。 日本とアメリカの売上高物流コスト比率を比較すると、1994 年以降、アメリカが日本 より高く推移している。 図表１－6 日米における売上高物流コスト比率の推移 11.0 （％） 10.16 日本（主要製造業） 10.0 9.74 9.44 9.34 9.02 9.06 8.85 9.0 8.95 8.84 9.28 9.17 9.34 8.69 8.62 8.57 8.79 9.01 8.45 8.69 8.37 8.55 8.56 7.98 8.0 8.01 7.93 7.87 8.35 7.97 8.01 7.76 7.56 7.50 7.65 8.08 7.87 7.77 7.72 7.52 7.53 7.77 7.51 7.07 7.34 アメリカ(全業種) 7.20 7.0 8.28 7.94 7.46 7.74 8.41 8.48 8.09 6.95 6.94 6.58 6.60 6.45 6.35 6.28 6.40 6.44 6.18 6.13 6.10 6.0 5.95 6.25 6.13 5.87 6.13 5.94 5.84 日本（全業種） 5.91 5.82 5.45 5.26 5.01 5.01 5.0 4.87 4.90 4.77 5.01 4.83 4.84 4.77 4.79 4.72 4.7 4.63 4.0 '65 '75 '76 '77 '78 '79 '80 '81 '82 '83 '84 '85 '86 '87 '88 '89 '90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 注１ ：アメリカは Logistics Cost and Service(Establish,Inc.)のデータより作成している（2015 年は前年の値を再掲）。 注２ ：年次は、日本は調査年（年度）、アメリカは報告年を示している。 - 5 - ２）マクロ物流コストの日米比較 マクロ物流コストは、公的な統計データをもとに、国全体としての物流コストの総 額を国民経済的な視点で推計したものである。2013 年度のマクロ物流コストは 44 兆 3,109 億円と推計された（図表１－7）。ＧＤＰ（名目値）に対するマクロ物流コ スト比率は 9.17％で、前年度から 0.05 ポイント下落している。 一方、アメリカのマクロ物流コストは約 1 兆 3,850 億ドルである。日米ともに 08 年度後半に起きたリーマンショックにより大きく低下したが、いずれもリーマンショ ック前の水準に回復しつつある。 図表１－7 日米のマクロ物流コストの推移（上図：日本、下図：アメリカ） 単位：兆円 55 50 45 40 輸送コスト (47.4) (47.7) 2.1 2.1 2.2 (46.2) 2.1 (46.1) (44.5) (44.5) (43.7) 2.0 (41.7) (40.9) 1.9 14.1 管理コスト (48.2) 2.0 13.6 在庫コスト 14.6 14.3 35 1.8 (40.6) (42.1)(42.1) 1.7 1.9 1.8 (44.9) (43.6) 1.8 (41.2) (40.5) 1.4 (38.6) 1.5 1.8 1.7 1.5 (44.3) 1.6 1.6 13.2 12.4 12.3 11.8 11.5 11.6 15.6 14.4 15.6 13.5 13.5 13.0 12.9 14.4 12.6 30 25 20 15 31.7 31.5 31.4 29.9 29.3 29.3 27.5 27.3 27.4 28.7 26.8 28.3 05 06 28.5 27.5 24.8 24.4 09 10 26.8 28.5 29.8 10 5 0 対象年： 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 07 08 11 12 13 年度 単位：100億ドル 150 輸送コスト 在庫コスト (139.7) 5.4 (134.4) 管理コスト (130.6) 5.2 5.0 (121.1) 4.9 (118.0) 120 4.7 4.6 48.7 90 60 (102.8) (100.6) 3.9 3.9 (96.6) (94.4) (92.2) 3.7 (91.7) 39.5 (88.4) 3.5 3.6 (85.0) 3.4 3.5 (80.1) 3.3 (77.3) 3.1 33.7 3.0 37.4 32.0 30.0 30.0 33.3 32.1 31.4 30.3 30.2 73.9 30 44.1 0 (138.5) (133.1) 5.3 (128.2) 5.1 対象年： 95 46.7 96 50.3 52.9 55.4 97 98 99 59.4 60.9 58.2 60.7 00 01 02 03 (109.5) 42.0 05 43.4 46.9 41.8 39.6 35.7 80.9 85.6 87.2 76.9 86.2 81.6 84.6 11 12 13年 69.7 65.2 04 4.2 44.7 06 07 08 09 10 注１：アメリカのグラフは、Council of Supply Chain Management Professionals (CSCMP）の「Annual State of Logistics Report」をもとに作成 - 6 - ２.３ 指数でみた物流コスト等の動向（２０１５年度の直近の動き） 本調査では、前項で紹介した売上高物流コスト比率に加えて、物流コスト等の動向 （増えているか、減っているか）についての定性的な調査も行っている。この「動向 調査」では、大まかな傾向しか分からないが、直近（2015 年度）の状況を把握でき る。なお、当調査では実績値に加えて 2016 年度の予測値についても調査している。 調査を行ったのは、①売上高、②物流量（重量）、③物流コスト（総額）、④物流単 価（重量あたりの物流コスト） の４項目である。それぞれについて、増加／横ばい ／減少／不明の４つの選択肢から１つを選んで頂いている。 2015 年度の物流コスト等の指数（製造・卸・小売業計）は、売上高が 23、物流量 が 13、物流コストが 24、物流単価が 20 で、いずれもプラス圏内で推移したが、売 上高、物流コスト、物流量のプラス幅は縮小している。 物流単価については、前年度にプラスに転じた後、2015 年度もプラス幅を拡大し、 次年度（2016 年度）についてもプラス幅の拡大が予想されている。 図表１－８ 物流コスト等の指数（製造・卸・小売業計） 60 太字＝前回 調査の予測値 売上 物流量 コスト 38 38 38 物流単価 37 34 33 28 32 28 28 27 20 16 24 7 8 23 20 28 22 18 14 15 5 33 20 36 33 25 23 1 39 34 35 13 13 13 6 7 0 0 -4 -5 -8 -9 -14 -20 -16 -8 -12 -23 -43 -37 ←予測値→ -45 -45 製造・卸・小売計 対象年： -60 04年度 05年度 06年度 07年度 08年度 09年度 10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 注：指数は以下の算式によって算出している。なおここで言う「増加」とは増加と回答した回答数である。 指数＝（増加－減少）÷（増加＋不変＋減少） 本報告書の詳細版は、有名書店 ※ ・政府刊行物センター等で販売いたします(2016年6月 刊行予定)。 ※amazon、紀伊国屋、ジュンク堂、丸善等。ただし一部店舗を除く。 - 7 - 2015 年度 物流コスト調査報告書【概要版】 ２０１６年５月発行 公益社団法人 日本ロジスティクスシステム協会 〒105-0022 東京都港区海岸 1-15-1 電話 スズエベイディアム 03-3436-3191 ホームページ 禁無断転載 - 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