再生可能エネルギー推進と排出量削減を誓う共同

情 報 報 告
シカゴ
●米国環境産業動向
○最高裁判所、クリーンパワー計画の実施を一時停止
2 月 9 日、最高裁判所は、石炭火力発電所からの炭素排出量を 2030 年までに 2005 年レベルよりも
32%削減することを目指すクリーンパワー計画の実施を、米国内29の州政府と数十社の企業からの訴
えによって、一時的に停止するよう連邦政府に命じた。連邦控訴裁判所によって審議される前に、規制
の一時停止要請が承認されるのは、極めて異例のこととされる。これに対して、ホワイトハウスは排出
量の削減に向けて引き続き意欲的に前進していく意思を表明した。
一方、地域温室効果ガスイニシアティブ(Regional Greenhouse Gas Initiative:RGGI)の炭素排出
権の価格は、最高裁判所によるクリーンパワー計画の停止命令を受けて、記録的な高価格であった 1 月
26 日の 1 トン当り$8.60 から 2 月 16 日には$4.75 へと 45%も下落し、21 ヶ月ぶりの低水準となった。
○オレゴン州下院議会、再生可能エネルギー発電 50%と石炭火力発電の撤廃法案を可決
2 月 15 日、オレゴン州の下院議会は、州の電力会社に対して、石炭火力発電を段階的に廃止し、
2040 年までに総電力の 50%以上を再生可能エネルギーから賄うことを義務付ける州法案を 39-20 で
可決し、上院議会の審議へと進めた。同法案は、2025 年までに再生可能エネルギーを 25%という現在
の目標を大きく上回るものである。州最大の電力会社パシフィックコープ(PacifiCorp)とポートラン
ド GE の試算によると、同法案の実施による顧客の電力費の増加は約 1%であり、炭素排出量を 2040
年までに 3,500 万トン削減できるという。これはオレゴン州の年間総排出量の 58%に相当する。
○17 州、再生可能エネルギー推進と排出量削減を誓う共同声明
2 月 16 日、カリフォルニア、マサチューセッツ、ミシガン、ネバダ、ニューヨーク、ペンシルバニ
ア、バージニア、ワシントンなど 17 州の州知事が、再生可能エネルギーの拡充、電力グリッドの改善、
輸送部門からの排出量削減を促進することによって米国のグリーン経済の創設を目指すという合意書に
に署名した。クリーンエネルギーへ移行し、太陽電力と風力発電をグリッドに統合することで、洪水や
山火事といった自然災害にも耐えられる安定した電力供給網を確立する。電気自動車のほか、水素や天
然ガスといった代替燃料車を作る自動車メーカーには、17 州で奨励策とインフラ拡充の手助けが提供
され、エネルギー効率性と再生可能エネルギーの基準と指針も新たに制定される予定である。
○原油価格の下落によって、石油産出州の経済へ打撃
原油価格が 13 年振りの低水準に落ち込む中で、シェールガス景気で急発展していたノースダコタ州
の経済が打撃を受けていることが 2 月 4 日に報道された。バッケン・シェールを抱える同州は、アラス
カを抜いてテキサスに次ぐ米国第 2 位の石油生産州であり、過去数年間にわたって全米で最も低い失業
率、最大の個人所得の伸び、人口の急増を誇っていた。しかし、ノースダコタ州の予算案は原油価格を
1 バレル$47~$53 と想定したもので、$28 にまで下落した現在では、州全体で 4%の支出削減と予備財
源から 5 億ドルもの補填が必要となっている。ノースダコタでは、掘ったものの稼動していない井戸が
約 1,000 本もあり、市場の回復を待っている状態である。ノースダコタ州の歳入は、石油生産への税金
のほか、水圧破砕法の機材販売やサービスからの売上税が占める割合が大きく、石油やガスが同州の経
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済に占める割合は、2004 年の 2%から 2014 年には 16%へと成長した。他にアラスカ、テキサス、ルイ
ジアナ、オクラホマ州でも、原油価格の下落から雇用率や経済成長の停滞が起きている。
○世界の新設風力発電容量、前年比 17.2%増と過去最高の伸び
2 月 10 日、世界風力エネルギー協会(World Wind Energy Association:WWEA)は、2015 年に世
界で新設された風力エネルギー発電容量は、前年比で 17.2%増の 63.7GW となり、過去最高の成長率と
なったことを報告した。国別では、ブラジル、ポーランド、中国、トルコの成長が大きかった。米国で
は、前年比 13.1%増の 8.6GW の風力発電所が新設され、2012 年以来の大きな伸びとなった。米国の風
力エネルギー発電容量は全体で 74GW となり、中国の 148GW に次いで第 2 位である。化石燃料価格
の下落によって風力エネルギー部門がマイナス影響を受けることは無かった。
○2015 年の新設太陽エネルギー発電容量、前年比 17%増で天然ガスを初めて抜く
2015 年に米国で新設された太陽エネルギー発電容量は 7.3GW で、前年比で 17%増加し、新設天然ガ
ス発電容量を初めて上回ったことが太陽エネルギー工業協会(Solar Energy Industries Association:
SEIA)から 2 月 22 日に報告された。最も成長が大きかったのは住宅部門で、前年比で 66%増加し、
太陽光発電システム全体の 29%を住宅部門が占めた。州別では、昨年に引き続きカリフォルニア、ノー
スカロライナ、ネバダが上位 3 位を占めた。米国の太陽エネルギー発電容量は全体で 25GW を超え、
原子力発電量の 1/4 に相当し、5 年前の 2GW から飛躍的に成長した。先頃、太陽エネルギーへの税額
控除が延長されたことによって、少なくとも今後数年間は需要の増加が続くと予想される。
○サンディア国立研究所、折り畳みモジュール式ブレードの巨大風力タービンを開発
サンディア国立研究所(Sandia National Laboratories)は、モジュール式で折り畳み可能なブレー
ドを利用した巨大風力タービン『分節超軽量モーフィングローター(Segmented Ultralight Morphing
Rotor)』の開発計画を 1 月 28 日に発表した。モーフィングローターは、洋上風力発電の過酷な環境に
も対応できるように強風時には傘を折り畳めるような形に設計されている。現在米国では、長さ 50m
のブレードを使って 1~2MW の発電能力を持つ風力タービンが多く、最大規模の商業モデルでも、ブ
レードの長さは 80m、発電能力は 8MW である。このモーフィングローターは、これまでの 2.5 倍以上
の長さのブレードを使い、50MW の発電能力を持つ。ブレードは分節毎に製造できるため、運搬の手間
とコストを節約できる。タービンは、新設計によって一般的なタワーの風上ではなく風下に置かれる。
○エタノール生産量、2015 年に記録的増加
2015 年の米国のエタノール生産量が 148 億 1,000 万ガロンである一方で、RFS に基づいてガソリン
に混合されたエタノール量は 136 億 9,000 万ガロンであったことがエネルギー情報局(EIA)から 3 月
1 日に報告された。2015 年 12 月の 1 日当りエタノール生産量は、史上初めて 100 万バレルを超えた。
再生可能燃料基準(Renewable Fuel Standard:RFS)は、トウモロコシの不作やエタノール生産イン
フラの不足、ブレンドの壁等を理由に過去数回に渡って見直しを迫られており、2015 年には当初議会
が設定した 150 億ガロンではなく、140 億 5,000 万ガロンへと下方修正されていた。再生可能燃料協会
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(RFA)によると、エタノール業界は RFS 目標を実現できるまで十分成長しており、当初の設定値も
堅持していれば達成することが可能だったという。
○国際民間航空機関、初の飛行機からの排出量基準案
国連の国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization:ICAO)は、2020 年以降に
登場する新しい飛行機に対して燃料消費量を 2028 年までに 4%削減するよう義務付ける世界初の飛行
機の排出量基準案を 2 月 9 日に提案した。22 ヶ国の代表が 6 年にわたる協議の末に合意に至った同基
準は、今年後半に ICAO の運営評議会による承認を受けなくてはならない。小型機から大型機まで、
2020 年以降の新しい飛行機モデル全てが対象となり、世界各国の航空機関にはこの基準の遵守が義務
付けられる。昨年 12 月に温暖化対策の枠組みを決めたパリ協定の対象には航空部門は含まれていない
が、ICAO は同基準の成立を二大戦略の一つとして取り組んでいた。最新モデルのボーイング 737MAX
やエアバス A320neo などは同基準を既に上回っているが、現在生産中のボーイング 747、777 やエア
バス A380 、A330 などは、2028 年までに生産を中止するか省エネ改善を図らなければならない。
○グーグル社、初めて一部過失の自動運転車事故
カリフォルニア州マウンテンビューで 2 月 14 日に起きたグーグル社の公道試験中の自動運転車レク
サスと路線バスの接触事故で、グーグル社は、事故に対する幾分かの責任が自動運転車側にあることを
2 月 23 日に報告した。自動運転車が関係する交通事故で自動運転車側の責任を認めた初めてのケース
となる。幅の広い車道を走行していたグーグル社の自動運転車は、路上の砂袋を避けて時速 2 マイル以
下の低速で車線の中央に寄ったところ、後ろから時速 15 マイルで追い越しをかけてきた路線バスの側
面に接触した。怪我人はなく、自動運転車の左前バンパーや左前タイヤ、運転席側センサーが破損した。
グーグル社は、自動運転車が動かなければ接触はなかったことを認める一方、試験ドライバーは前方を
走行する自動運転車のためにバスが減速か停止すると信じたこと、十分な車間距離があったことを言明
している。同社は、今後同様の事故を予防するためにソフトウェアに改善を加えた。
○海水からオンデマンドで生成する水素新製法
フロリダ州に本社を持つ新興企業ジョイ・サイエンティフィック(Joi Scientific)社は、海水から
“自然界に起こる”工程を使って水素を生成するテクノロジーを開発したことを 2 月 16 日に発表した。
必要なときに必要な場所で“オンデマンド”で生成できるという製法によって、例えば水素を燃料とす
る船舶が周囲の海水から水素を生成して燃料を確保しながら長距離航行することが可能となる。現在の
一般的な水素製法としては、天然ガスに高温で水蒸気と触媒を加える“天然ガスの水蒸気改質”と呼ば
れるものや、水を電解槽において電気分解して水素と酸素に分ける方法があるが、どちらもエネルギー
とコストを多く必要とするため、今回の製法はコスト競争力が高い。ジョイ・サイエンティフィック社
は、このテクノロジーを燃料電池やボイラーに統合できる企業に対してライセンス供与する計画である。
○GE 社、電球型蛍光ランプの生産を 2016 年末までに中止
省エネ効果が高く比較的安価な電球型蛍光(CFL)ランプは、省エネに関心のある消費者へ人気が高
く、数年前からつい先頃まで小売店でも大きく取り上げられていた。しかし、LED(発光ダイオード)
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の光質が向上し、価格が下落するに伴って、メーカーや小売店で CFL ランプから LED への移行が進ん
でいることが 2 月 1 日に報道された。ゼネラル・エレクトリック(GE)社は、米国での CFL の生産と
販売を 2016 年末までに中止することを発表した。CFL は、米国など多くの国で政府の省エネ基準を満
たさなくなった標準的な白熱灯に変わって主流となった最初の省エネ電球であったが、明るくなるまで
に時間がかかることや、少量の水銀を含むといった短所があった。当初$30 だった LED は、2015 年に
は$5 以下にまで値下げした。一方、ヨーロッパや中南米ではいまだ CFL が大きく受け入れられている。
○カーボンファイバーを利用した 3D 印刷機
マサチューセッツ州サマービルに本社を持つマークフォージド(MarkForged)社から、航空宇宙や
自動車業界の高温環境に適したカーボンファイバー(炭素繊維)を原料とする 3D プリンター『マーク
2(Mark 2)』が 2 月 1 日に発表された。同社は、プラスティックやアルミニウム金属等の 3D 印刷の
世界に、2014 年にカーボンファイバー(炭素繊維)を初めて導入し、金属 3D 印刷の法則を塗り替えた。
効率性の向上と期間短縮という 3D 印刷のユニークな利点に、カーボンファイバー、ファイバーガラス、
ケブラーファイバーの強度と耐久性が加わった。今回のマーク 2 は、初号機のマーク 1 より 15 倍も細
かな加工性能を持つうえに、工程速度を 40%高め、手間とコストがかかるという欠点を大きく解消した。
マーク 2 は本体価格$5,499 から販売されている。
○DOE、ヒルトンとホールフーズの協力でベタービルディング・チャレンジのオンライン配信を開始
エネルギー省(DOE)は、ヒルトンホテルと食品小売店ホールフーズ・マーケット(Whole Foods
Market)の協力の下で、リアリティ・ビデオシリーズ『ベタービルディング・チャレンジ SWAP』を
開始することを 2 月 17 日に発表した。サンフランシスコにあるヒルトンホテルとホールフーズ・マー
ケットの施設で、両社のエネルギー管理チームが相手施設のエネルギー改善に取り組むリアリティ形式
のウェブシリーズである。SWAP のもとで、ヒルトンチームは既に LED 照明、ドア密閉装置の交換、
冷蔵容器内の改善といった改善策を実施している。このプロジェクトは、企業が建物内のエネルギー消
費量を減らし、その成功戦略を他企業と共有するのを助けることを目的としている。両チームの舞台裏
を含めて、ウェブサイト http://betterbuildingssolutioncenter.energy.gov/swap で見ることが出来る。
○テトラパック社、米国で初めて 100%再生可能原料から作った飲料カートンを発売
世界有数の食品加工・包装機械メーカーであるテトラパック(Tetra Pack)社は、米国で初めて
100%再生可能原料から作られた飲料包装カートン『テトラパック・ゲーブルトップ・バイオベースト
(Tetra Pak® Gable Top Bio-based)』の販売を開始したことを 2 月 8 日に発表した。板紙とサトウキ
ビ由来のプラスティックから作られたこの革新的な新カートンは、2015 年 1 月にヨーロッパで『テト
ラ・レックス・バイオベースト』の名で発売された後に、米国向けに開発された。テトラパック社の標
準半ガロン(1.9 リットル)カートンを利用する顧客は、既存の充填機を変更すること無くそのまま新
しいバイオベーストのカートンに移行できる。バイオベースト製品は、国際的な関心を集めて包装業界
の 7 つの賞を受賞しており、テトラパック社は 2016 年に世界で 1 億個以上の売上げを期待している。
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○米国の飲料容器リサイクル率 60%を達成するために閉ループのリサイクルインフラ計画
ドクターペッパー・スナップル(Dr. Pepper Snapple)社は、2030 年までに米国の飲料容器リサイ
クル率 60%という目標達成を助けるために、政府や業界パートナーと協力して 2 つのイニシアティブを
実施する計画を 2 月 12 日に発表した。まず、今後 10 年間で閉ループ基金(Closed Loop Fund)に
500 万ドルを投じて、消費後リサイクルのインフラを整える。また、非営利団体 Keep America
Beautiful(アメリカを美しく保とう)との関係を拡大して、公園の空ビンリサイクル運動に 3 年間で
100 万ドルを投じるとしている。2014 年に設立された閉ループ基金には既に 10 社が参加しており、市
町村や企業が収益性の高いリサイクルインフラを確立するために、今後 10 年間で全体で 1 億ドルが融
資される。
○カリフォルニア最大のリサイクル業者、1/3 以上のリサイクルセンターを閉鎖
カリフォルニア州最大のリサイクル業者リプラネット(rePlanet)社は、州内の 191 のリサイクルセ
ンターを閉鎖し、278 人の従業員を一時解雇したことを 1 月 31 日に発表した。2016 年 1 月に州による
リサイクル業者への補助金が減額されたことに加えて、12 ヶ月間にわたりアルミニウムや PET プラス
ティックの価格が大きく値下がりしたこと、最低賃金の上昇や従業員への医療保険の負担増などが重な
ったことが原因だという。同社は、現在の経済状況に変化が無ければ、残る 350 のリサイクルセンター
と 800 人の従業員は維持する計画だという。
○フォード社、北米の工場と全本社施設で埋立て廃棄物ゼロを達成
フォード社は、北米にある本社施設全 3 ヶ所で埋立て廃棄物ゼロを達成し、これまで埋立て処分して
いた 24 万ポンド以上の廃棄物をコンポストや発電所の燃料にするなどして埋立て以外の処分法に変え
たことを 2 月 10 日に発表した。フォード社は、カナダとメキシコの全工場を含めて世界の 95 工場で既
に埋立て廃棄物ゼロを達成しており、自動車 1 台当りの埋立て廃棄物の量は過去 5 年間で半減した。昨
年からは、ミシガン州ディアボーン、カナダ、メキシコの本社施設の食堂や事務所にまで取り組みが拡
大した。またフォード社は、2009 年から 2013 年にかけて世界的に 1 台当りの水使用量を 30%削減し
たほか、2011 年からエネルギー消費量の 25%削減を目指し、目標達成に向けて順調に進んでいる。
○米国とカナダ、エリー湖の水質改善のためにリンを 40%削減
米国の環境保護庁(EPA)とカナダの環境気候変動省は、両国からエリー湖に流れ込むリンの量を
40%削減するという目標を 2 月 22 日に発表した。これによって、エリー湖の中央部分の低酸素部分で
ある“デッドゾーン”の範囲を最小限に押さえ、藻類の成長をエコシステムや人々の健康に脅威となら
ないレベルに維持することを目指す。両国は、2012 年に五大湖水質協定(Great Lakes Water Quality
Agreement)を結び、エリー湖の有害な藻類の成長を防止し、リン量削減目標を 2016 年 2 月までに設
定することで合意した。米国とカナダは、この目標値を達成するために 2018 年 2 月までに国内の行動
計画を策定する予定である。エリー湖では 1990 年代からリンが急増し、2015 年は今世紀最高の水準と
なった。
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