名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 103∼ 126頁 (2013) 現代青年 の思春期 の葛藤 に関す る考察 ・バイ・ミー』に触発された大学生の回想文をもとに一― ――映画Fス タンド 勤 ι ♂陶 θ″θ陶′′励 ″陶 θグ ′″ ′ η ヵ 励 舛 σ′ ′′彦 7筋 勿 ガ Υ ´ ク♭ι″ク ヽ ,x′ И″と 物ゲ ″ ″ ″ ο ″ ′ ♭ 笏彦 ο ″ル ″ ♂ チ ′ ♂ と ″ ο ″ ∫ "′ ク ″ ケ ク ♂ 密 ∫ ケ ク ル 笏 カク 肋蒻 ο 陶οクグ ♂∫ケ ′″″り 鯵 ー ー げ り √″ `,ο 一 ― "♂ 吻″ク″ο℃″ク″ 美 奈子 ッ ′ ザイン学部教養部会 (デ ) 木村 1.は じめに 最近 の若者像 を記 した言説 をみると、思春期の葛藤 を体験 しない 、 もしくは反抗期 を体 験 しな い 若者が増 えて い る、 とい う主 張 が あ る。 求 人情報誌 の 大手 であ る マ イナ ビが 2012年 に大学生 200人 を対 象 に行 った調査 で も、47%も の学生が、「 自分 には反抗期 はな かった」 と答 えた と報告 してい る。そ うした報告 の 中では、大人に反抗せず、大人の価値 観 をその まま自分の もの とし、葛藤 を抱 える ことな く成長 して い く若者 の姿が、ある種 の 危機感 をもって語 られる場合が 多 い。 一 方 で、「思 春期 の危機 を生 きる子 どもたち」像 と して、深刻化す るい じめや凶暴 な少年犯罪の増加が語 られ (尾 木 ,2006)、 少年犯罪 に対 す る厳罰化が世論 によって強 ま り、実際に司法 にお い て もその色合 い を強めてい る。 本論 は、そ うした二極化す る若者像 をふ まえなが ら、実際に思春期 の葛藤や反抗心 を体 験 した、 もしくは体験 しなかった大学生 に、当時の ことを回想 させ、そのデ ー タを分析す ることで、生の若者 の姿 を描 き出す ことを 目的 としている。その方法 として、思春期 を舞 台 に展 開す る映画 を鑑 賞 させ た上で、 い くつ かの質問 に答 えさせた。 こ うした手続 きを踏 むことによって、彼 らに時間軸の中で過去か らの連 続性 を実感 させ つつ 、今現在の 自分 を 捉 える ことを可能に した と考 える。 この デ ー タをもとに、彼 ら自身が どの よ うに思春期 を 意味付 けてい るのか を、検討 して い きたい と考 えてい る。 2.映 画 『ス タン ド・バ イ・ ミー』 を見て、 自らの思春期 を顧みることの意味 本論の元になっている学生の回想は、映画『スタンド・バ イ・ミー』 を学生 らに鑑賞さ せた後に、記述をさせたものである。 このような手法を採用 した理由は、① 『スタン ド・ バ イ・ミー』 は思春期の子 どもたちの死体探 しの冒険を通 して、豊富なエピソー ドによっ て親や社会に姑する子どもたちの葛藤が描かれていること、②ある種、通過儀礼 とも呼ベ るこの冒険 (本 田 ,1995)に よって成長 してい く主人公 らの姿が、大人になった主人公の 目を通 して描かれていること、があげられる。 ① につい て言 えば、学 生 らに単 に思春期 を思 い 出 させて、エ ピソー ドや′ と 司青を書かせ る よ り、具体的な例 を提示す ることによって、 よ り鮮明に思春期 の葛藤 を思 い 出させ る効果 V晴 を、 い くつ ものエ ピソー があると考 え られる。特 に、この 映画 は思春期 の子 どもたちの′ と 103 名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 (2013) ドの 中に丹念 に描 い ている。見 る者 は、自分 と登場人物 を重ね合 わせ、 「あの 頃」 の 閉塞感、 大 人の支配の及 ばぬ と きの高揚感 と無力感、幼 いが しか し忘れ得 ぬ友情 の甘酸 っぱ さを、 ひ しひ しと体感す ることになる。 したが ってこの映画は、学生たちの思春期 のエ ピソー ド を引 き出すだけでな く、当時 の感情 を無理な く蘇 らせ ることがで きるのではない か と考 え た。 ② につい ては、『ス タン ド・バ イ・ ミー」 は大人にな った主 人公の回想 として 、主人公 本人が思春期 の 冒険 を語 ることによって、彼 を取 り巻 く環境、す なわち親子 ・兄弟関係や 友人関係、そ して世界が どの よ うに見えてい たのかが 明確 になってい る。学生 らにもこの 主人公 と同様 に自らの思春期 を語 らせ ることによって、彼 らを取 り巻 く家族や友人 をどの よ うに捉 え、思春期の葛藤 をどう乗 り越 えて きたのか を、今現在 の彼 らの客観的な解釈 を もとに書かせ ることがで きた と思われる。 3.『 ス タン ド・バ イ・ ミー』 で描 かれていること (1)あ らす じ ここで、簡単ではあるが、『ス タン ド・バ イ・ ミー』 の あ らす じを紹介 してお く。 主人公の作 家 ゴー デ ィは、ある 日、「 クリス ・チ ャ ンバー弁護士、刺殺 される」 とい う 新聞の記事 を目に した。 クリス とは、 少年時代 の親友 である。 その事件 をきっか けに、ゴー デイの 30年 を一気 にさかのぼる少年時代 の 回想が描かれてい く。 物語 は、人口 1200人 程度 の小 さな町、アメ リカ、オ レゴン州 のキャッスルロックで展 開す る。小 学校 を卒業 し中学校 に入 学す るまでの休暇期 間であ ったゴーデ ィ、クリス、テ デ ィ、バー ンは、 いつ も四人で木の上 に建てた小屋 に集 ま り、煙草 を吸った リカー ド遊 び に興 じるな ど大人 の まね ごとを しなが ら過 ご してい た。四人は家庭環境 こそ異 なるが、少 年時代特有 の仲 間意識で結ばれてい た。そ して、彼 らはそれぞれ家庭 では、家族 との 間に 葛藤 を抱 えていて、ある種 閉塞感 の 中で生 活 してい た。 ゴーデ ィはつい先 日、両親の 自慢 で あ つた兄 を不慮の事故 で亡 くし、兄 の喪失か ら立 ち直れない両親 の冷 たい仕打 ちか ら、 死 ぬべ き者 は 自分 だったのではなかろうか と、胸 を痛めて い た。 クリスはアル コー ル 中毒 の父 とグ レた兄 を持 ち、家庭環境の悪 さか ら、自分が周囲の人た ちか ら信用 されて い ない とい う体験 を積 んでいたため、将来の 自分 につい て大 きな不安 を抱 えて い た。テデ ィは、 ノルマ ンデ ィ作戦 で大活躍 した ことを誇 りに してい るが今 では精神 に病 を抱 える父 親 に、 複雑 な感情 を抱 いてい た。 そんなある日、バー ンが兄たち不良グルー プの会話 を盗み 聞 きし、 フラワー とい う少年 が線路 を歩 い てい て電車 に弊 かれ、その遺体が発見 されて い ない とい うことを知 る。そこ で四人の少年 たちは、遺体 を発見 すれ ば町の英雄 になれると考 え、線路伝 い に遺体 を探す 旅に出かけ た。少年たちにとってこの旅 は、初めて子 どもだ けで町を出る大冒険であった。 旅 の途中、一夜 を山の 中で野宿す ることにな り、すでに眠 りについ てい るテデ ィとバ ー 104 現代青年の思春期の葛藤に関する考察 ンの傍 らで、 ゴーデ イとクリスはクリスが家か ら持 ち出 した父親の ピス トル を手 に、見張 り呑 を していた。その と きゴーデ イは、いつ も気丈で兄貴分の よ うな クリスが将 来に対す る不安 を泣 きなが ら訴 えるのを聞 き、 自分 だけでな く彼 も、溢 れそ うな不安や悲 しみ を抱 える一 人の少年である ことを知 った。それに よつて二人の仲 間 としての距離 はさらに縮 ま り、お互 いの 間に強 い絆が生 まれるのだ った。 翌朝、夜明けとともに歩 き出 した少年たちは、つい にフラワー の遺体 を発見す る。茂み の 中に横 たわる少年 の無惨 な姿 に、皆 一様 に目を見張 った後、 クリスが気 を取 り直 して遺 「な 体 を運ぶための算段 を皆 に指示 した。が、その と き、ゴーデ イは遺体 を見 つ めたまま、 ぜ死んだんだ」 とつぶや き座 り込んで しまう。彼の中ではフラワーの死 と兄の死 とが重 な り、「なぜ 兄 は死 んだのか」、「 自分が死ねば よかった」、 「父 もそれ を望 んでいたJと い う 少年に とっては抱 えきれない ほ どの思いが一気 に吹 き出 した。 クリスはそんな ゴーデ ィの 肩 を抱 き、「父 親 はお前 のことを知 らない だ け だ、 きつ とお前 はす ごい作家 になれる」 と 励 ますのだった。そんな場面が、遺体 を横 取 りしよ う とする不 良グループの年長者 たちの 出現 によって、一気 に緊迫度 を増 した。 クリスは果敢 に立 ち向か い 、 ゴーデ ィは銃 をリー ダー格 の青年に突 きつ け た。その気迫 に押 されて、年長者たちは遺体 をあ きらめ退散 して ゆ く。 結局、少年 たちは英雄 になるとい う当初 の 目的 を果たす ことな く、匿名で警察 に通報す ることに し、その場 を後 に した。少年 たちの 冒険 は終 わった。町に戻 っていった彼 らにとっ て、町はそれまで よ りも小 さ く、違 って見 えた。 その後、進学組 と就職組 に分かれて成長 していった四人は、あの 冒険以来ほ とんど集 う ことはなか った。映画 の 中では大人にな った彼 らの「今」が語 られ、中で もクリスは苦学 して弁護士 にな り、冒頭 の事件 に巻 き込 まれて死 ぬ までのい きさつ が示 される。 ゴーデ ィ はクリスの予言 どお り、作家 とな り、かつ ての 冒険 を小 説 に書 き綴 った。その文の中には、 「私 はあの 12歳 の ときに持 った友人に勝 る友人 を持 ったことがない」 と記 されて い た。 (2)大 人になるための通過儀礼 『ス タ ン ド・バ イ・ ミー』 における この 冒険旅行 は、少 年時代 の友人、そ して少 年時代 その ものへ の、 まさに決別の儀式の よ うに描かれ て い る。本田 (1995)は こ うした少年 と 大人 とをはっ きりと切 り分 け る決別 の儀式、す なわち「通過儀礼」 につい て以下 の よ うに 述べ てい る。 少年 の 日の終 わ りに「死 と再生」 を体験す る関門が用意 され、それ を港 り抜 け ること で成 長へ の歩みが保証 される ことは、 「通過儀礼」 とよばれて、周知 の よ うに、伝統 的 社会が作 り出 した一つ の知恵 で あ った。 (中 略 )。 伝統的社会 の知恵は、非 一 人前 の者 た ちを一 人前 の成貝 として共同体 に組み入れるべ く、そのための確 固 たる道 を用意 して き 105 名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 (2013) た。子 どもたちの前 には、時 として障害 とす らみえる困難 な課題が設定 されて い るのだ が、そ して、その ことで幼 い者 たちには苦 しい修行 と努力が要請 されは したが、 しか し 課題が克服 されさえすれば、彼 らが成人社会の一員 として生 きる道が保証 されて い たわ けである。 そ して本 田 は、近 代社 会 にお ける若 者 の「 通過儀 礼 Jを 上 記 と対 立 させ て、 次 の よ うに 述 べ た。 産業化の進んだ近代社会では、それぞれの伝統集団に設定されていた通過儀礼 を消滅 させ、その代わ りに、すべ ての子 どもたちを「学校教育」 とい う単一の進路に組み込ん で しまった。 (中 略)。 子 どもたちは、階段状に設けられた学年を定められた通 りに辿 っ て用意 された課程 を修了す るなら、 「卒業」 とい うかたちで一つ の問を くぐり抜 けた と されるのである。 (中 略)。 卒業時に子 どもらが獲得 したものは、基礎学力 とい う抽象的 な基準 で画一的に判定された関門通過能力に他ならない。彼 らが外の社会に出て行 くた めには、格別の資格 も技術 も、そ して自信 さえも、身についてはいない とい うのが実情 であろ う。 本田は、現代 の若者の成長の困難 さは、こうした「通過儀礼」の変質、あるいは消滅に 起因するとい う見解に賛同 し、「この節 目らしか らぬ節 目に困惑 し、出口に立たされて戸 スタン ド・バ イ・ミー』 では、少年たちが「死」 惑 う子 どもたち」の存在に言及 している。 層 と直接的に向き合 うことによって、一つの関門をくぐり抜け、大人として歩みだす光景が 描かれていた。 しか し一方で、本田の述べ る通 り、彼 らが否応無 しに「卒業」 とい う出日 に立たされ、何の指針 もな く途方に暮れる姿 も同時に描かれている。彼 らがその後、 どの ように我が身に背魚 った条件 を受け入れ、大人になっていったかは、推測するよ り他ない。 では果 たして、現代の若者は「学校教育」 とい う関門をくぐり抜ける中で、どのような困 難に道遇 し、 どのようにそれに姑処 し、そこか ら何 を学 び取 っているのだろ うか。「通過 儀礼」の変質は、どのような点に影 を落 としているのか。このような問題 も、学生の回想 か ら読み取 りたい点 として挙げてお きたい。 4.青 年期 (思 春期 を含む)の 親子関係、友人関係 の一般的なモデル (1)青 年期 の親子関係 かつ ての青年期 の親子関係 は、親 に対す る心理 的分離や反抗、親子間の葛藤、ジェ ネ レー シ ョンギ ャップが特徴 として あげ られ、それ らを体験する青年期 を疾風怒濤 の時代 と考 え るのが一般的 で あ った (平 石 ,2006)。 親 と子 の二 つ の世代の間には、超 えがたい溝があ り、 それが青年 に強 い危機感 をもた らす 一 方 で、 自分の中に親 とは異 なる新たな価値観 を築 い lo6 現代青年の思春期の葛藤に関する考察 て い く原動力 にもなっていたので ある。 一 方、現代 の青年期 の親子関係 は、かつ て とは異 な り、 「愛着 と 自律」が重要視 されて い る点が特徴 で、特 に「愛着」 は、青年期 になって もなお、親 にとって も子 にとって も重 要 な意味合 い を持 っている (平 石 ,2006)。 例 えば深谷 (2004)は 、中学生 に対す る質問 紙調査 の結果、母子関係が中心 ではあるが、総 じて親子関係が うま くいってい る中学生が 多 く、第二反抗期的な険悪 な親子関係ではな く、仲 の良 い親子 の姿が見 えて くる と報告 し てい る。そ して、第二 反抗期の危機 を経験 しないことは、子 どもが 自立 のステ ップを踏 ん で い ないこ との表れで あ り、子 どものパ ラサイ ト化傾向 に拍 車 がかかることを危惧 してい る。確か に、現代青年 の依存 の長期化 は多 くの研究が指摘 して い る ところで ある。その要 へ 因 として、宮本 ・岩上 ・ 山田 (1997)は 、親の子 どもに対す る投 ユ 貝期間の長期化 と投資量 の増大 をあげてい る。そ して、「親 の愛情 のあか し」 とい う名 の もとに親か ら子 へ の一方 的な援助が拡大 し、子 どもの役割や責任 につい ては間 われな い 関係 に陥って い るために、 親 は子 どもに 自立 した大人 として生 きてい く力 を与 える ことがで きて い ないの ではないか、 と指摘 してい る。親 の承認 を受けな くとも、 自分 の価値観 によって決 断 した り、その責任 を負 う力 が 身 につ か ぬ まま、大人になって い る とい う ことで あろう。 また、 「子 どものた めに」 とい う長期的な援助が可能 になってい る背景 には、「子 どものためにす ることJが 親 のアイデ ンテ ィテ ィにな り、他 に生 きが いが見 つ か らない とい う心理的条件 と、親 に経 済的な余裕が で きた とい う経済的条件 の二 つが揃 つたことをあげてい る (宮 本 ・岩上 。山 田 ,1997)。 本論 では、学生 らに「親 は自分 をどう見ていたか」、また、 「 自分は親 をどう見ていたか」 を書かせることによって、上述 したような現代型親子関係が見 られるのか、その点 も確か めたいと考えている。 (2)青 年期 の友人関係 青年期 は、映画 『ス タン ド・バ イ ・ ミー』 の最後 に もあるように、一生の友 と呼べ るよ うな特別な友人関係 を形成す る時期で もある。青年期の特別 な友人関係 の形成 の意義 は、 岡田 (1992)に よると、1)青 年 自身が両親 など大人の生活や規範 に疑 間を持 ち始め、 自 分 な りのあ り方 を模索 す る時期であ り、そのため両親 よ りも同世代 の人間のい うことに共 鳴 で きるようになって くる こと、 2)身 体的成熟 と精神的未熟 のア ンバ ラ ンスか ら情緒状 態が不安定にな りやす く、友人 との深 い情緒的関係 は、不安定か ら立 ち直る意味で重要 な 役割 を果たす こと、 3)緊 密 な友人関係 を持 つ ことは、両親か らの心理的離乳、 自立 を促 す ことがあげ られてい る。 また、宮下 (1995)は 次の ような点 をあげる。 や悩み を打 ち明けることによって情緒的 な安定感 ・安心感 を得 る (「 1)自 分 の不安 自分 だ け ではない」 2)自 己 を客観的に見 つ める :友 人関係 を通 して 自分 の長所 。 短所 に気 づ き内省す る。 3)人 間関係が学べ る。 楽 しい こと嬉 しい ことだけでな く、傷 つ とい う気持 ちを もてる)。 107 名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 (2013) き、傷つけられる経験 を通 して、人間としてよいこと、悪 いこと、思いや りや配慮を学ぶ、 の三点である。 本論 では、以上の点を踏 まえ、 「友人は自分 をどう見 ていたか」 と「 自分は友人をどう 見ていたか」を書かせることによって、思春期のときの友人関係が、学生 らにどのような 意味合 いで捉えられていたのかをみる。そ して、友人関係が思春期 の葛藤に どの程度、ま たどのように影響 していたのか も検討 したい。 5.現 代 の若者像 を特徴 づ ける要因について 先 には、青年期 の親子関係 と友人関係 の一般的な発達 モ デルを提示 したが、 ここで は現 代 の若者 の 自己形成 と友人関係 に影響 を及 ぼす要因につい ての主張 を二つ あげてお く。 (1)子 どもを取 り巻 く環境の変化一消費文化世界 中西 (2001)は 、現代社会の最 も大 きな変化―親世代 と現代の若者の世代 を分ける変化 として、消費文化世界の到来をあげてい る。中西によると、消費文化世界 とは、 メディア によって多種多様な情報が大量に生産され、大量に普及 し、大量に消費される世界を指す。 現代 の若者 たちは非常に幼い頃から、パ ソコン、携帯電話等 の情報端末に触れなが ら成長 している。そ こか ら得 られる大量の情報 (不 特定多数に向けられる情報ばか りでな く、友 人同士の コ ミュニケー ションツールで もある、メール、ソー シャルネットヮー ク、ッイッ ター等 を含む)に 日々曝されている。こうした消費文化の享受が、生活の不可欠の一部 で あ り「生活必需品」になっていることを中西 は指摘する。そ して、 「 自分たちが どうみ られ、 何 と言 われてどのように扱 われるかを、 メディアを測定器 (道 具)に して測ってゆ く「生 き方」は、大人の世代が経験 したことのない新 しい事態」であ り、その ことが、大人が現 代 の若者を理解する際の障壁になっていると主張 している。この消費文化は子 どもたちに 文化的なまとま りや基準を提供するのだが、それは「消費」 と名のつ くとお り、 どんどん 変化 してい くので、自分たちを測るモノサシも子 どもにとってつかみ どころのない もの と なる。中西はこのことについて、以下 のように述べ ている。 人間関係 をつ くるとは、そうい うモノサシをよ くのみこんで、そ こか ら外れぬように 振る舞 うことを意味 してい ます。相手にある程度合わせた り、流行 を外 さない、外す場 合 には自分な りのポリシー をもってい るんだぞと周囲にわかるようにしてお く、「外見 だけで半J断 しないで」 と言 いなが ら、タト 見はしっか り流行にはまってい る 。・・ときに は矛盾するくらいのそれらの振る舞い を縛っているのは、同世代 の他者が自分 をみるさ いのこの評価体系 です。 現代 の若者 たちは、 この よ うに曖 昧 な評価 体系 に縛 られ、 自分が「外れて」 しまわぬ よ lo8 現代青年の思春期の葛藤 に関する考察 うに、常に新 しい情報を仕入れ られるよう、神経 を研 ぎすましなが ら思春期 を過 ご してき ている。思春期の子 どもは、他者の目を通 して見た自分 を強烈に意識す ることを特徴 とす るが、現代ではさらに、消費文化に支えられた基準 をもとにして、他者か らどのように見 えているかに、子 どもたちは最大限の注意を払 うことになる。 また中西は、消費文化世界 に深 く結 びつ くものとして、 「個体化 の進行」をあげてい る。 ここでい う「個体化」 とは、一人一人が 自己の責任 において個別に行動する ことを指す。 若者 の間には、 「何 をしようと、他者に迷惑 をかけてい なければ、勝手であ り、その人個 人の問題」 とい う考え方が浸透 してい る。例えば、電車の中で人 目をはばか らず化粧 をし た り、路上に座 り込んで飲食をする若者の姿が、大人の常識に反するものとして注 目され たが、若者に とっては人に迷惑をかけてい ないのだか ら、その人の自由 とい うことになる。 そうした ことに口出しす ることは正 しくないとい う、大人 とは異なるモ ラルを持ってい る のである。個 を尊重するこうした生 き方は、一見楽な ようで、反面、 「 自由Jで あるか ら こそ、他者の承認や注 目を得ることな く、子独 に生 きる強さを必要 とす る。 しか し、思春 llヽ 期 の子 どもの 自己形成は、他者の承認なしには成立 しない。また、学校 において孤立す る ことは、自分の存在 自体が危ぶまれる「透明人間」 として生 きてい くことを意味する。 し たがって、子 どもたちは「 自分 の勝手」 と言 いなが ら、 しか し「無視 された くない、認め られたい」 とい う矛盾 した欲求を抱え、なおかつ「人に口出 し」 しない よう自分 の考えを 飲み込みなが ら友人関係を維持する とい う、涙 ぐましい努力をしていることになる。 (2)い じめを生む「優 しい関係」 この節では、さらに最近の若者の独特な友人関係に焦点を絞 って展開する。 土井 (2008)は 、最近、中学 。高校 でみ られる特徴的ない じめは、若者の友人関係 の根 底に横 たわる「優 しい関係」に起因する と主張 してい る。 「優 しい関係」 とは、他人 と積 極的に関わることで相手を傷つ けて しまうかもしれないことを危惧する「優 しさ」 と、逆 に、他人と積極的に関わることで 自分が傷 つ けられて しまうか もしれないことを危1具 す る 「優 しさ」を重視 し、成 り立ってい る関係性 を指す (大 平 ,1995)。 確かに、筆者 も学生 相談室の相談員を担当 している中で、現代 の若者が非常に傷 つ きや く、またその傷が癒え に くいと F象 を持っている。そ して、若者 の日か ら頻繁に、 「∼のせいで、私、傷 つ きましたJ とい う言葉が発せ られるのを耳 にす る。言葉にこそなってい ないが、 「 だか ら∼ をゆるさ ない」 とい う響 きがそ こにはある。 「傷つ き」 とい う言葉 はかつてないほど一般化 し、また、 他者を傷つ けることは、若者のモラルに照 らせば、 もっとも罪深 いことの ようで もある。 土井 (2008)に よると、現代 の若者 は、「優 しい関係」 を維持するために、 きわめて注 意深 く気 を遣いあいなが ら、なるべ く衝突を避け ようと慎重に人間関係 を営 んでいる。本 来、思春期における友人関係は、お互いの姑立や葛藤 を経験 しなが ら、訣別 と和解を何度 も繰 り返すなかで、だんだんと揺 るぎない関係 として創 り上げられるものであった (土 井 , 109 名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 (2013) 2004)。 「親友」 と呼べ るような友人には、自分の率直な思い をス トレー トにぶつ けること がで き、対立 しても簡単に関係性が壊れて しまうことはなかったのである。一方、「優 し い関係」に基づ く友人関係 は、対立を内に含み込みつつ も、関係 を維持することにのみ注 意が払われてい るので、きわめて表面的で希薄なものであ り、何気 ない (気 配 りのない) 一言 で簡単に壊れて しまう危険をはらんでい る。彼 らがこの人間関係にすがるのは、その 関係性 こそが彼 ら自身の 自己肯定感を支える基盤 となっているか らである (土 井 ,2008)。 この「優 しい関係」 と現代型 い じめの発生には関係がある と土井 は指摘する。現代型い じめとは、い じめのターゲッ トが固定されず、気 まぐれに転 じてい くタイプのい じめを指 す。土井 は、こうしたい じめの理由に客観的な根拠 を見いだすのは難 しく (な ぜその子 を い じめるのか、とい う理由は見当たらない)、 あ くまで「優 しい関係」 を維持することで 成 り立つ人間関係の重 さを軽 くするために、い じめが起 きていると仮定する。そ してその い じめは、熾烈 とい うよ りはあたかも遊びやゲームの延長のように展 開されることが多い。 したが って、自殺に追い込むほどのい じめであっても、教師や友人でさえもそ こにい じめ が起 きているといることを認識できなか った例 もある。以下に土井の言葉 を引用すると、 か くして「優 しい関係」 を営 む子 どもたちは、 い じめて笑 い、 い じめ られて笑 う。傍 観者 たち もまた、それを眺めて笑 う。互 い に遊 びの フレーム に乗 りきり、彼 らが「い じ りJと 呼 ぶ よ うな軽薄な人間関係 を演 出す ることで、い じめが本来的に有す る人間 関係 の車し 蝶が表面化す ることを避 け よ う とす る。そのテクニ ックは、テ レビのバ ラエ テ イ・ シ ョー な どか ら学 ばれることも多 い。互 い に「い じり」あ うことによって観客の笑 い を 取 る芸人たちの言動 は、彼 らの教 科書 として機能 してい る。 このような方略を採用す ることによって、い じめている狽Jは 、い じめているのではないと 主張 できるし、い じめ られている側 も、自分は「 い じられ (・ ・・・)て いる」 と考えるこ とで、何 とか 自尊心 を保つことがで きる。 こうして人間関係 の軋靭 はぼやかされてい く。 以上、二つの側面か ら若者 を特徴 づ け る要 因をみていったが、両者 は互 い に関連 しあ い、 現代 の若者 の生 きづ らさや安心で きる人間関係の構築 を困難 に してい ると考 えられる。 こ うした点 も踏 まえなが ら、若者 の 回想文 を分析す る。 6.方 法 対象者〉教員免許取得を目指す名古屋芸術大学音楽学部の学生 41名 (D。 学年は 1年 から 〈 (1)本 論 は、教職 を目指す学生が、中学・高校 の生徒指導 を考えるために、 自らの思春期の葛藤 を思い 出 し、記述 した回想録をもとにしている。 この回想録の作成は、教職科 目である「教育相談Jの 授 業の一環 として実施 された。 110 現代青年の思春期の葛藤に関する考察 4年 。 (手 続 き〉学生 らに映画 『ス タンド・バ イ・ ミー』 を鑑賞させ、以下の質問に答えさせた。 映画の感想 も書かせたが、これは分析 の汁象になっていない。 ① 子 どもだけで、遠 くに出かけるような冒険 をしたことがあ りますか。 ② あった らそのときの様子を描いて ください。 ③ 思春期 の頃、親から見て、自分はどんな存在だったと思 い ますか。 ④ 自分は親をどのように見ていたで しようか。 ⑤ 思春期の頃、兄弟、姉妹から見て、自分はどんな存在だったと思い ますか (兄 弟、姉 妹のいる人のみ)。 ⑥ 自分は兄弟、姉妹 をどのように見ていたで しょうか。 ⑦ 思春期の頃、友人か ら見て、自分 はどんな存在だったと思 い ますか。 ③ 自分は友人をどのように見ていたで しょうか。 ③ 思春期の頃、辛かったこと、悩 んだことを書いて ください。 ⑩ それをどのように乗 り越えてきたのか、書 いて ください。 質問は、思春期 の頃、自分は周 りの人をどのように見ていたか、のみでな く、自分は他 者か らどのように見えていたか も書かせた。そうすることによって、当時の 自分を客観的 に見つめることを促 した。 分析の指標〉 〈 (1)子 どもだけの「冒険」を通 して得 られたもの i① と② を合わせて、学生 らが子 ども 時代に「冒険」を体験 しているか、また、そのときにどのように感 じたかを分析 した。 (2)反 抗期の有無と親 との関係 :③ と④ を合わせて、思春期の頃、学生 らが親 と自分 と の関係 をどのように受け止めていたのかを分析 した。また、現時点で学生 らが自分 は反抗期を体験 したと捉えているか否かもみた。 (3)兄 弟 との関係 :思 春期の親子関係を考える場合、当然、家族の構成員である兄弟の 影響も見る必要があると考えた。これは⑤ と⑥ を合わせて分析を行 った。 (4)友 人との関係 :⑦ と① を合わせて、学生 らが思春期の頃にどのように友人を捉えて いたか、また、他者から見て自分はどのような存在だったと思っていたのかを分析 した。 (5)思 春期 の葛藤 とそれ を乗 り越 えた契機 :⑨ と⑩ を合わせ て、学生 らに とって、思春 期 の葛藤が どの よ うな ものであったのか、 また学 生 らが葛藤 を乗 り越 えるきっかけ になったのは何 と考えているのか を分析 した。 7.結 果 と考察 結果 は表 1に まとめた。 この表 は、学生 の 回想文 の要点 のみ を取 り上 げて記入 した もの 111 名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 (2013) である。 また、本人の特定が で きない ように、個人を推測 させ る記述 は除 い てある。 表 の 最初 の列 は学年 と識別場号 を「学 年一番号」 として表 した。結果 の記述 における ( )は 、 この「学年一番号」が記 してある。 (1)子 どもだけの「冒険Jを 通 して得 られたもの (質 問①、② ) 子 ども時代か ら思春期 にかけて、何 らかの「冒険」をしたと報告 してい る学生は、41 人中 35人 (85%)で あ った。その中で、多 くの学生が、わ くわ くした高揚感 と充実感 を 味 わったことを記 してい る。 また、子 どもだけで 目的を呆た した とい う達成感や (42, 4-4,2-18)、 自分 も少 し大人に近づいたとい うような成長を実感 した学生 もいた (4_5,3-1, 3-11,1-3)。 大人の 目か ら離れたいとい う自由を渇望する様子 も見て取れた (22,2-7,2-11)。 一方、 逆に自分の無力さを実感 した り (3-8,2-8,1-4)、 親の存在 の大 きさを再認識 した (1-5) とす る報告 もあ った。 もう自分で何でもできるとい う気持ち、大人に近づいている実感を 持つ一方で、親へ の依存や自己の無力 さにも気づいているとい う、思春期特有のゆれが こ こに見て取れる。 (2)反 抗期の有無 と親 との 関係 (質 問③ 、④ ) 思春期 に反抗期 を体験 した と明確 に認識 して いた学生 は 41人 中 26人 (63%)で あ った。 これはは じめに述べ たマ イナ ビの調査 よ り、高 い比率 になってい る。 マ イナ ビの デ ー タが どの ような学生 を対 象 に してい るかが定か ではないので、簡単 に比較す ることはで きない が、本研究が、本学 の芸術家 を志す学部 の学生 を姑 象 に してい ることか ら、一般的な大 学 生 よ り、そ もそ も葛藤が強 い性質 を持 ち合 わせてい る学生が多 い ことの表れか もしれない。 実際に、本学の相談室 を訪れ るのは、大学生 となって も人間関係 に対 して強 い葛藤 を抱 え ている学生が多 く、その過毎 文さや 自己肯定感の弱 さを筆者 も学生か ら感 じ取 ることが多 い。 4(1)で は、現代 の親子 関係 における「愛着」 の重 要性 を取 り上 げたが、反抗期 を 経験 してい る学 生の中で も、親か ら愛情 を受けて い ることをひ しひ しと感 じ取 っていた学 生 もいた (2-5,2-12,2-17)。 なかったと思 う学生や 生 もお り また、過去 を振 り返 り、 自分の反抗期 の行動 につい て 申 し訳 (3-6)、 親 の 自分 に対す る配慮や、それに向けての感謝 を述 べ る学 (4■ ,3-8,2-1,2-3,2-10,2-14,2-18,1-5)、 現在 の親子関係 の良好 さを推測 させ る。 一 方、現在、親 との 間に距離がある ことを思 わせ る学生 の記述 も見 られた (4-2,21,2-9, 2-13)。 これ らの学 生 は、 4.(1)で 述 べ た「 か つ ての若者像」 を紡彿 とさせ る。 また、 「母 に頼 りたい気持 ちと母 を避 け たい気持 ち」、そ して「尊敬 し、憧 れの対 象 とし 3-2は 、 て母 を想 う気持 ち と、母 の よ うに はな りた くない とい う否定的な気持 ちJの 間でゆれる、 典型的な思春期 の親 に対す る葛藤 を記 してい る。 明確 な反抗期 を体験 しなかった学生 の 中には、子 どもの 頃は親の価値観が絶対 であると 感 じてい たが、思春期 になって、親 も一 人の人間であると気 づい たこと記述 して い る もの 112 現代青年 の思春期の葛藤に関する考察 がいた (44,3-1,2-16)。 親の価値観に対 して強い違和感を感 じ、それを徹底的に否定する 典型的な反抗期 とは異な り、彼 らか らは、親の人間的な一面 (間 違 いや欠点)を 垣間見、 それを受け入れることによって価値観 の違い も許容するような姿勢が感 じられた。 (3)兄 弟 との関係 (質 問⑤、⑥) 兄弟に関する記述の中で多かったのは、兄弟 との比較 の中で 自分 を判断 していると思わ れるものであった。それ らを分類すると、兄弟 を見下す記述 と (31,32,3-10,2-16)、 らやむ記述 (3-2,35,37,38,3-11,22,28,211,2-15,11,1-4)と 認め られている、 もしくは親にかわいが られている兄弟 う に分かれた。また、親に (自 分 だけが親か ら厳 しくされて い る)に 対するうらやみや嫉夕 万の気持ちが書かれてい るもの もあ った (4-3,3-2,3-7,38, 3-10,26,211,11)。 以前、 思春期の子 どもが「兄弟は、 存在す るだけでス トレスだ」 と言 っ てい るのを耳にしたが、まさに、彼 らにとっては、兄弟は常に比較の姑象であ り、また親 か らの愛を取 り合 うライバ ルのように感 じられ、そのことが思春期 のス トレスの一要因で あろうことが、学生たちの記述から見て取れる。 しか し、思春期の頃には兄弟に対 して負 の感情 を持 っていた学生で も、現在では良 き相談相手になっていた り (218)、 尊敬す る 汁象 となっている場合があった (38,21)。 (4)友 人との関係 (質 問⑦、③ ) ここでは まず、 4(2)で 述べ たような特別な友人関係 の形成が、学生 らの記述に見 られるかを調べ た。友人を信頼 し、助け合 った り、楽 しい時間を共有 した りな ど、 自分に とって大切な存在 として肯定的に捉えた記述 をしている学生が 41人 中 18人 (44%)い た。 「支え合 うこと、助け合 うことの大切 さ、協調性や信頼関係 を築 くことの大切 さを教 えて くれた (4-1)」 とい うように、 よ りよい人間関係 を形成するための基本的な事柄 を友人関 係か ら学 んだとい える学生や、「 自分 の存在価値 を見 いだ した (3-2)Jの ように、他者か ら信頼や承認を得ることによって、自己肯定感を見いだ したと考えられる学生 もいた。 中 には、切磋 J亦(庁 答し合 う関係 (2-13)、 (2-9)、 時にはぶつ か り合 った (2-18)、 傷 つ くこともあ った と、負の面 も乗 り越えてきた ことによって、絆が強 くなったことを記す学生 もいた。 素の 自分 を出せる存在 として友人を捉えていた学生 もいるが (2-1,2-5,2-17)、 彼 らは、そ の友人を除けば、思春期特有の息苦 しい友人関係 の中にあったことを推測 させた。 一方、友人 と距離をとってつ き合 っていた り 無理をした りな ど (4-1)、 心地 よい友人関係 を形成で きなか った学生が、41人 中 8人 (20%)ヤ ヽ た。上辺だけの付 き合いだったと記 した学生は (3-10,1-5)、 (4-3,4-5,3-7,3-8)、 なんとか友人 らに嫌われない ように と、無理 を しなが ら友人関係 を維持 していた様子が うかがわれた。 これは 5(2)で 述べ た、現代 の若者が きわめて注意深 く気遣いなが ら、なるべ く衝突を避け ようと人間関係 を営 んでい るとい う土井 (2008)の 指摘に一致 してい ると考え られる。 113 名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 (2013) (5)思 春期の葛藤 とそれを乗 り越 えた契機 思春期に幸か ったこととしては、友人関係 (質 問⑨、⑩) (学 校 での人間関係)を あげているが学生が 一番多 く、41人 中 23人 (56%)で あ った。中には、はっき りとい じめにあったと記述 し た学生 もいた (4-2,3-6,2-10,2_18,1-3)。 友人関係 の悩みの中で多か ったのは、 「悪口を言 われる」 ことであった (3-3,3-4,35,39,3-10,217,1-4)。 些細 なことから人間関係が壊れ た体験 を報告する学生 もいた (4-3,2-3)。 また、友人をめ ぐる葛藤の中には、上で も述べ た、 友人の顔色 をうかがいなが ら関係 を維持することと、 5.(1)の 中西 (2001)が 指摘 した、 「曖 昧なモノサシ」に外れない ようすることに必死になっている若者 の姿が浮かび上が って き た。例えば、23は 「人 と関わるときは顔色をうかがい、自分の ことは話 さない」 ように し、 2-5は 「 自分はなんで こんなに頑張ってい るんだろ う。友人に対 してなんでこんなに気 を 使 って生活 しなければならないんだろ う」 と思い を巡 らせた。 また、土井 (2008)が 示 し た「現代型い じめ」を報告 している み10(こ のい じめの型は 3-10も 報告 している)は 「 、あ の頃の私たちは、中学生なが らその場の空気 を必死に読 んで、 日々いろいろなことと聞 っ ていたのだと思 う」 と記述 してい る。現代型い じめが発見 されに くい理由は、 土井 (2008) の指摘す るように「い じめ」 と「 い じり」の区別がつ きに くいばか りでな く、中西 (2001) の指摘する「曖味なモノサシ」を、大人たちは見ることができないか らではないだろ うか。 若者たちの記述か らは、彼 らが大人の 日か らは見えない ところで、必死に聞っている様子 が浮かび上がって くる。 では、友人関係 の葛藤 を乗 り越えた契機 としては何があげ られているだろ うか。 まず、 友人に支えられたことをあげた者が一呑多 く (4-2,4-3,3-2,3-5,39,3-10,24,2-10,218)、 次に親によって支えられた ことをあげた者が数人いた (2-3,217,2-18)。 教員が支えとなっ たと記 した学生は 2人 のみであった (4-2,1-3)。 そうい う学生の中には、現在で も、支え て くれた人が 自分に とってかけがえのない存在 であったと感 じた り、感謝の気持ちを持つ 者 もいた (3-5,23,217,2-18)。 人に多かった思春期の葛藤 として、 親 との葛藤をあげたものが 41人 中 8人 (20%)で あっ た。その中には、親か ら承認 されていないと感 じていた者 た者 (3-7,2-9)、 親 との対立をあげ 親 との コ ミュニケーシ ョン不全 をあげた者 (4_4,3-11,28,1-1)、 親 の期待 に い 応えられな 辛 さをあげた者 (2-5)な どがいた。 これ らを乗 り越 えた契機 としては、親 (2-7)、 か ら承認 されていないと感 じていた 3-7は 、自己啓発本 を読むことで、 自分 自身を承認で きるようになった ことをあげ、291よ 親 と距離 をとることで 自分 を守 ったと感 じていた。 親 と対立 していた 2-7は 、不満 を親にぶつ けることで区切 りをつ けたと感 じたが、 自分 の 好 きなことに出会ったことで、2-9と 同様に親 と距離 をとることがで きたのか もしれない。 親 との コ ミュニケーション不全 をあげた 44、 3-11、 1-1は 、親に助けられている 自分を発 見す るなど、 自己理解が進むことによって、親 と歩み寄れるようになったことを報告 して 114 現代青年の思春期の葛藤に関する考察 いる。一 方、2-8は 、祖母か ら親の子 ども時代 を聞 き、親 を理解す ることによって 自分 と の共通点 を見 い だ した ことをあげてい る。 これ らの若者 たちの記述か らは、親 との葛藤 を 乗 り越 えるために友人な どの外部 の力 を支 えとす るよ りは、 自己理解、 もしくは親理解 を 深 めることによって、両者 の距離 を縮 めた り、逆 に距離 をあけた りしなが ら調整 してい る 姿 が浮かんで くる。 親 に対する葛藤 を報告 した学生 と同数 の学生が、 自己につい ての悩み を思春期の葛藤 と してあげてい た。 これ らの報告 は、自己 の性格や気持 ちに関わる問題 をあげてい る者 (46, 3-7,2-2,2-11,213,214)、 自己 の存在価値や 「本当 の 自分」 といったアイデ ンテ ィティに 関 わる問題 をあげてい る者 (3-2,3-5,1-2)と に分かれた。 自己にまつ わる思春期 の悩み は、 かつ ての若者 も、現代の若者 も全 く変 わっていない ようである。そ して、その乗 り越 え方 も、今 もかつ て と変 わ りな く、周 囲の人た ちの承認 と支 えによって乗 り越 え られてい るこ とが 、学生 たちの 回想文か ら読 み 取 れた。周 囲 の人たち とは、 例 えば、友人であ った り (3-2,35)、 2-2)、 教 師 で あ った り (4-6,1-2)、 人生 の 先 輩 (祖 父母 を含 む )で あ った り (37, また人生の先輩 ともいえる人々によって記 されて い る書物や メデ ィアをあげてい る 学生 もいた (3-7,2-13,2-14)。 以上 をまとめると、現代 では、親や大人 に対す る明確 な反抗心がすべ ての若者 にあるわ けではないが、多 くの若者が、自分や友人や親 に対す る葛藤 を抱 え、悩みなが ら大人 になっ てい くことがわかる。そ して、かつ て と変 わ りな く、周 囲の人々に支 え られなが ら、 自己 を形成 してい く姿が見 て取れ る。 115 名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 (2013) 表 1 大学生の回想文 ド:よ 、よく育ててくれ てい0な 。 画館 へ 。 良い子 。 疇 町 ま で 目転 軍 正直で素直。人に影響されや すい危なつかしい子ども。思 春期は、あまり反抗しない、頭 のいい子。 た。自分たちで 目標 を 決めて行動すること に、充実感と達成感を 感じた。 甲 3の とき、友 人 らと東 京 へ 。 。 'こ 出来のいい弟。 lス 。 期があった。父を軽 蔑 し、母を 霞れる存在。 分かり合えない人間 と思い込 んでいた。両親 へ の思いは冷 めていた。 新鮮 。 師。 令静 な 目で見 ていた 。 何を言つても反抗 ばか りで、 が楽だ。 親はうんざり。今となつては、 自分のために言つていたと思 うと感謝 。 い とこの 家 に 妹 l禾 と。 落ち着 いた子 ども。 て 、目的 地 ヽ たときは、安心 が乗る電車を間違えたとき、母 よく褒 め られ る 自分 を嫉 も間違えるんだと気づいた。 妬。小 心 者 。 感。大人に近づいた達 I手 に反 ,几 はな か つた 。 楽 器 の 練 習 が 嫌 いで 、母 は 少 ヽ ′ も とした瞬闘、自分はなぜこの 人の子どもなのか、考えた。母 仲のよい年下 の友だち。 に。 なった気が した。 廃墟 へ 。 タ ヒ があるかヽ しれな 反子 〕 几期 の認講なし。 いという、どきどき感。 親は 自分よりも弟に一生懸命 表 には出 友だちの奇妙な表情。 であった。 さなかった。友だちの家庭 との し手を焼いたかもしれない。 は他人だけど他人でない、よく わからない存在。 14ヽ 口 が 選 者 な師 い存 在 。 違いに動揺 した。 原子 几剛 や や 巧再日 少し自分が成長 した気 分になつた。 自分 が住んでいる町 子どもらしい子ども ` う 小さく 見えた。 「思春期だなJと 冷静 に見てい たのでは。自立 したいけどした の欠点を見つけることが嫌 よ時期 。完肇な人間だと思つて 后頼 していたので、勝 手に裏 切られた気持ちに。 今は親 の欠 点も受 け入れ られ る。親も大問 。 l兄 を避けたい。 あこがれ くない。必要以上に干渉され ると喧嘩に発展。母に辛い思 いをさせてしまった。 いとこと電車 I三 乗つて、5つ 先の 駅まで。 よい場所へ行く 好きだつた。 ヽ ことに没頭する やりたし とても楽しかった。 まだまだ子ども。兄弟の仲で よ頼れ る方。 ヽ ′ た。しかし、高校 のとき部活 の大会を遠いの に見 に来てく れたとき、愛情 を感 じた。 母親 にかわいが られ ている 自分を惜 らしい。喧嘩 ばか り。 兄 、夕 市。 面 倒 くさが りで 、意 地 つ張 り な性格。 ず、強い反抗心を抱いていた。兄にはやつあたりされた。 弟はかまって欲しいと思つ ていたのでは。 ')が 屎 よ しく思 つた ことは な い 。 卜 ヽ。 小さな子ども。 色路 で少し衝 突。 兄 。 喧嘩 。ストレスの はけ 口。 獅市 、弗ム。 どうしようもない子 。母に反 辰り返つて後悔 。 発。ひね くれていて、友達をい うめて、先生から呼び出され に。母の悲しそうな顔 。今で よ、母 、先生 、友達 に申し訳ち ヽ 夕 とRう ^ 116 自己中心 的。 現代青年の思春期の葛藤に関する考察 た。 あつたり、同じパートで自分よりうま 目標 に向けて努 力。 い人がいると辛かった。 存在。支え合うこと、助 け合うこ 邸活と勉 強の両立。 との大切さ、協調性 や信頼 関 係を築くことの大切さを教えてく れた。 みんなのはけ口。 れていると思つていたので、 り、 節,に 八つ当たり。 高校のときは、一番はじめにできた 友達が急に話してくれなくなつた。 にいなかつたこと。 人の 目が気になつた。マイナス思 考。心が芯か ら安 らぐ時 はなかつ た。今ではあまり悩まなくなった。 れない存在 。 に。 思春期を境 によい意 味で一 存在 。 番身近な他 入となつた気が する。 ψたかったが、実際には距離 を 途半端 に思えて辛 かつた。将来が 置いていた。周 りで起 こるいじ 不安 。 めや喧嘩 によって、友だち関係 ん` 怖くなった。 なし と思われる。 観しくない人からはキャラ がつかめない。 はなく他 の友 人に相 談していた。 ‖禾 の患い,し を見下す。男 感惰 の 浮 き況 み が 療 しい 。 自分 を騨 つてくれ る灰 人 が で というだけで祖 父母か らか 友 人 に助 けられ た ことは き、自分 が 強 くなれ た 気 が し わいがられていた兄を憎く 思うと同時にうらやましく 思 多 々あ る。 姉 はよき理解者。兄は遊び 相手。 良い友達 からは、いつも楽 今 は真面 目な話もし、前 より しそうだが、何 を考えてい に つ た 好き な 。 るかわ からない。 中学 では勉強仲間 。 高校 では馬の合う仲間。 教 員に支えられ た。 に合うかどうかを頭で考えてか 喧嘩し、それ以来、ほとんど話さなくみを抱えている子にすべてを打ち明け た。 らつき合った。 なつた。 ぐに口にするので、 うじうじ いる。 していると思われたことも。 次女を見下す―今は 申し訳 れた。親友の支えと自分の頑張り。 げ出すことも。それでもしなくてはならな いことができないと、病療。母は一緒に 解決法を探してくれた。 母や友人には感謝している。 めようと思つた。心が前向きになり落ち 着けた。 か けでやる気が出た。 ` たのだと解釈 。 目分 の 子在 l山 1直 。フ ■の こと。矢 恋 。 浅い「 友 人 関係 。 時には叱つてくれ ることもあった。友 人か た。 ら必要とされることで自分の存在価値を 見いだした。 友達 が 自分 と同じ物を持つと、 部活の副部長をやつていて、コン ール間近に部員に厳しく したら、 自分 の個性 が消えてしようと ク 思つた。今では、外見ばかりに 「う ざいJと 言われた。だんだん一人 つ い つ に て く よ だ た とらわれていたと思う。 な う 。 高校 はみんなを見返す気持ちで、部活 の盛んなところへ行 つた。今 、教職 を目 指して、あの頃 の 自分の何 か行けなかっ たのかがわ か りはじめた。 た。自分 の 存 在 価 値 を見 いだ し せたので、感謝 していた。 を読んでいた。それでもからかわ 友 人が れ、悪口を言われた。自分がこんな できたことで乗 り越 えられた。 人間だから仕方がないと思つてい 大学 は今までの 人生 の中で一番楽 し 「おはよう」と声をか けてもらえる い。朝 、 た。 「 みんな」の 中に 自分も含まれ て 幸せ 、 いる幸 せ は 、中学の 頃の辛 い経験 が ヽ う 分からない。ものすごく うつとうしい。 ヽ いればいい」 ′ と言われる一み らしく る方が楽しい。すごく助けら 「出しゃばつている」 。ふっきれる。自分を んなの前に出るのをやめ、本当の 隠さずにいるようと思う。 れた。 「目 弓 違ったことを 言つても正してく れる。かけがえのない 自分が分からなくなつた。 存在。 自分にないものをたくさん 男の子 にチヤホヤされ ている 1手 つていて、 うらやましく思つ 友人を独 り占めしい。他 の 友達 をうらやましく思つた。いつ に。 茂達の 悪 口を言つて、友 人 も 明るい友人を見てはうらやま こ不快 な思いをさせた。今 し かつた。 では反省 。 事字 1文 でいじめにあつた。 葛校 受験 で努 力したが 、成績が伸 びなかった。志望校 のランクを―つ 落とした。 自分ヽ小学校 のときにいじめていたの で、自分の過去 の過ちを反省 した。 葛校 の レベルを落 としたことで、辛くは らったが 、入学 した高校の 良い面を見 て,劣 等感を乗 り越 えた。 117 名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 (2013) 目転 隼 でどこへ でも行 ヨヘ 自転車で。 ける気 が した 。 翼llの 記述なし。) こだわりや我が強く、言うこと 部活であまり家にいなかった をあまりきかない子。 ので、親 の記憶 に残っていな ` 自分で1可 でも決めるので楽な フ だろう。 (ら t航 反面 、扱いが難 しい子。 こと山へ。 興味を持 つていなかっただ ろう。邪魔 な存在 だったか もしれない。 肘釆の不要をあおつて辺強し いことを心配 した親 に 母よりも父に対して。両親とも なさいという言われると、うつと lす は下のこと を考えて、進 発見された。怖くて、山 自分を子ども扱い。帰りが遅 うしく思つた。一方で、自分より 落を決めていたので、ねた がトラウマになった。 いと心配して涙まで流す親に 早く 起きて朝食を作つてくれる む気持ちもあったのでは。 対して、自分は二人にとって 母に感謝。 大切な存在なんだと思うことも あつた。 相談相手 。 ■会 申― の 1子 の ス 見学 言の矛盾が気 になった。 税なしで電票 に素るこ :。 Я とが衝撃 的。 小さい頃 は大 入しくもの静 か、 今の職 業に就 いたいきさつを 喧嘩で力でねじ伏せられ た 何とも言えない高 揚 何でもできる。 聞いた。親が流れ に身を任せ 「もう 坊 缶 ちゃんには負ける 感。 思春期 は親 に反論 、言うこと て、何 となく今があるとわか り、 気が しない」 ―ショック。 を聞かない、無視 。後で部屋 観を見下すように一今 はそこで しかし弟も自分に対してコ で泣〈。落ち込んでいると話を しつかり働いてπ 貫張つているこ ンプレックスがあつたのだと 聞きにくる一親 は 自分のこと とを理解できる。 気づく。弟にとつては疎まし で悩んていなかったのでは。 い存在。 わくわくした。 反手 几翔あり。 大人に少 し近づいた。 小3、 4頃 から高校まで扱いの 在。顔を合わせ るのもいや。 なぜ自分が反抗しているの 難しい子。 自分が何を言つても,里 解 してく か、わからないだろうな。 父に対して反抗―父も悩んだ れない。 のではないか。 反 F几 刑 あ り。 中 三 か ら高 三 まで迷 惑 ば か まで自転車。 現在 は 、親 は子 どもが一番大 うざい存在―よく喧嘩 ても同じことをするだろう。 は大人になつたと思う リーいつかは思返ししたい。 切だと分かる。自分 が親 になっ 今では 自分から譲 る一少し 貌の言いなりになるこ とに嫌気―少し離れた かった。 挑戦することを知った 良い経験 。 自分と親 が喧嘩 している。 Wこ く い迷惑な存在。 扱し 学校では話しても、家では語 さない。 「家でも楽しそうにしてよJと 母 親にいわれた。 行く。 118 自分よりも,ス を大切にしてい 親は怒らないので、良い子で る。 いなけれ ば―家族 とは全く話 さなくなる。 攪 か ら禁 止 され ていた 、自転 車 で の外 出 。 とてヽ ,条 しかつた。 悪いことをしていると 親の考えていたことを想像す いう気持ちも。 るのは難しい。 好奇心旺盛のため。 おそらく反抗期だから仕方が ないと思われていた。 友だちと四人で。 た。 たたうるさい符在 。 自分のことを嫌いなんだ一 自 分のためだというのを認識 した とき、今まで親 に対 して抱いて きた気持ちが間違いだと気づ く 。 小学校低学年位から親に言わ れたことでイライラ。 次第にイライラしても怒ったり 反発しなくなった。うっとうしい 炭,几 剰あり。 へりくつばかり言う子。 部活や勉強のことを言われた あれこれ口出しする面偶く 親に言い返したり、情緒不安 ので、言われたくなtヽ から、言 さい姉。 定な日々。 われないように行動。 l龍 いと 思ったことはなく、むしろ 尊敬し、大好きだった。 現代青年の思春期の葛藤に関する考察 自己唇発本。文句ばかり言つて、失敗を 恐れていた自分に気づく。親に認めても らいたいと思う前に、自分を認めることか 目に 出 て 、 できていなかった。自分を良く知ることに 人に 自 つなお` った。 分の性格や行動のせいで迷 惑をか バイトの店長との出会い。失敗を恐れ けてきたことに気づき、申し訳なく思 ず、言い訳せず、挑戦する姿勢を示して い、辛 かった。 く れた。 完壁主義だつたが、 「しょうがない」こと と、諦めることの違いがわかり、くよくよし 唾路のこと。親の里んでいる大字に とでも伸良く しようとしてい えてくれる。 行きたくなかった。母に日記や携帯 別何かがあったわけではないが、 すっき たので、調子のいい子とも 高校でできた友達は、悪いとこ を勝手に見られて叱られ、逃げ場 りした。 ` 思われていた。 ろも受け入れアドァヽ イスをくれ 心 なかった。 た一親友になつた。一緒にいる だけで落ち着き、楽しく、幸せを 感じた。 らやましかった。言いたいこ 会役 員をやっていた。 とをいい、細かいことを気に しない。母も自分より姉と話 す方が楽しそう。 節とよく比 べ られたので、 「自分はだめなんだJと 思う ことがよくあった。姉がうらや ましく、やきもちもやいた。姉 が受験のとき、周りからのプ レッシャー に応えて頑号 長つて いるのを見て、姉を誇 りに思 うようになつた。 まだ子 ども。 け継ぎ弟は悪いところを受 けいたと両親から言われて いた一弟を見下す。 だね、と言われた。 ヽ 夕 て冷めた感 じで見ていた。 の性格の裏まで読んで接して いた。 恐 回の 保 的 にされ た ,え 、1中 の 艮 全 力 で愚 痴 を聞 いてくれ た 友 人 の 存 在 つた 友 人 まで、そ の 仲 間 に入 つて 心ヽ しまつた。それから人を観察するよ うになった^ 字激 委 員 や 生 征 会 役 員 。 まじめ な優 等 生 。実 際 に は 学 力 が 低 くて 、友 だちか ら 明るいグループに入り無理矢 れた。 理会わせた。り まわれたくない。 高校では同じグループ内で一人ず 意外だと言われて辛かつ 同りの人を自分のために利用 つ仲 間はずれ 。 よくできる自分にだけ厳しい た。 し,こ 。 親―弟を槽む。 何でもだいたいできたし、 高校では上辺だけではなく なつ ′ ヽ方美人なので、裏でこそ た。 甲字で1よ 巨子 女話し合い、その時は解深 したようだったが、結局また悪口を言わ れた。 高校では、自分の意志を曲げずに自分 の味方になつてくれた友人がいた一今で も大切な人。 こそ言われた。 うらやましい。 なせそんなに親に旗菰して 税 と伸 の 艮 い 友 人 が 不 思 議 。│ 親 に 厳 しくこれ た の で 他 人 や 親 に 言 え ら いるのか。 らやましい。 見て、辛くなる。 れないと想っていた。 反抗できる自分は大人、反抗 観と普通に接するにはどうしたらい 大人と対抗できるの が大 入。 できない友人は子ども。 いのかわからず悩む。 それでも親 や大人に助 けてもらう。自分 一 人では生きて行 けない。頼 つたり甘え てもよいのだ。親 へ の反抗心が薄れ る。 大切な友人一相談に来つてあ 勉強 、恋蟄 、友人関係 、将 来のこ げたい。 と。 自分をさらけ出せる。 かった。 今では社会人で尊敬。大 入つばい ―六 しい。 いので、仲の良い家族と思 ボジティブな性格の妹をうら われていた。 やましい。 り 額んだらやってくれるだろ いの 艮い子 には壁もなく詰せ る。苦手な子 は避 ける。 1可 1こ 自分ですべて抱え込まず、友だちと遊ん でリラックス。 対 してもイライラ。 自分の考えがまとまらず、でも相手 親も自分と同じような思春期があり、 には対立してしよう自分が嫌い。周 l且 'こ 父母も困つ ていたと聞き、安心。完壁 りの人が全部敵に見え、心の中は な両親の前では、良い子でなければなら 真つ暗 。自分の悩みを自分も理解 ないと勝手に思つていた。自分は自分ら できないので相 :夫 もできなかった。 ッくていい。祖父母との話から親を理解 できるように。 この時期悩んだからこそ、今を楽しく過 目分の 一 言で友人関係が壊れ る経 験をした。言 葉は凶器 になる。 唇心地がよい。家族の存在の大きさをむ 無視されるようになり学校生活 が,兼 めて知る。 に。人と関わる時は顔色をうかが 自分の味方。 い、自分のことは話さない、自分を 守るように。 わがよよ。 中学 の頃 は八方美 人。 自分が友人に対して思つてい マイナス思考 なので面倒だ たことを友人も自分に対して と思う友 人もいただろう。 思つていただろう。 らないでと拒否。 今ではかわいい妹。 甲 子 で は 封I満 で 人 間 関 係 の T凶 み 部活の上下関係。 誰にも嫌われたくない。 言つていることがハチヤメ チャな子。よく、頼りになる 反感を買わないように生活 。 んだろう。 とかしつかりしていると言方 観友と呼 ぶ子 にはいろいろ話 し 友人に対してなんでこんなに気を れていたが、自分ではそう たし、感情もすべ て出した。 使つて生活しなければならないんだ 思つていなか った 。 ろう。 なんで親の期待や言うことに応えな ヽ る。 らは良し 119 名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 (2013) つてはいけな いと言われてい た川や森に、友 連と。 lτ 8獅 心よリドキドキ、 ワクワク。 叉航 翔 あ り。 才つこい。同じことで1可 度も起 自分 で は 記 憶 にない が 、母 に こる。 た。 た 言わ れ 憎 らしい子 ども。 岳間 と14ヽ 力 を浪 質 した 睫 F九 利 あ り。 「どこに出しても恥ずかし だけだつたが 、走 って 続は いるときは 幸 せ だつ く ない人間に育てるJと いう方 た。今思うと、自由に 戻 人 らと 環 町 の ショッピングモー 父 !千 き勝手していたので、 ヽ だつた。 らゃんとした人間としてみら にてなかったと思う。 針。 】 盛甲 で迷 子 にな り、友 人 が 泣 き出 し、親 に迎 えにきてもらった 。 怖い。よく喧嘩をした。 と 思つてい た。 子どもだけで不安な気 持ちと、もう中学生な のだからと大文夫とい 海に。 気持ちになった。何か その後 はいい子 。 大切なものお` あつた。 反 F几 期 あ り。 自分 の ことを話 してくれ な い 、 心 配 な子 。内 気 、目立 つ の が きらい 。 6の とき、友人 よじめて子 どもだけで ′ ヾ スに乗つて スに乗つて不安 に 生′` プー′ 明 よつたが 、自由な気持 =。 らも味わった。 Jヽ 司校 のときは他 県まで行つたが、 きちんと計画を立 て、冒険という感 じではなかつた。 小学校 の頃 `友 人と自転車 で行 けるとこるまで 行つた 。 I几 期 な し。 なくなってから、反抗しなくなつ た。 母親はうるさい。いちt` ち口出 しされるのがいや。干渉された くない。心配なのはわかるが。 現在は、進学させてくれた親に 感謝。 手のかからない子。親の言う ことをよく きいた。 ヽ ′ てくれていたので、偉いと 思つていた。 自分 の考 えを親 に言つていた ので、自分のことをわかってし たと思う。 ヽ ′ う大人にはなりたくない。 年が離れていたので、自分 言つていることは矛盾している のことをよく見て心配してく し、知つたかかぶり。他の親と れていた。 「他の子はもっと親に 七 ヒベて、 してもらつているのに」。 反面、父の仕事に対する熱心 さを尊敬し、母親の子どもに対 する愛情をとても感じていた。 よく面倒 をみてくれる。 夏チ 几期 あり。 何度も同じことで怒 られ る学 習能 力のない子 。仕事 や父親 てくる。父親のだらしない姿に の愚痴 や相談 ができる子 。父 も腹が立つた。冷たく接してい はただ甘いので、自分をどう た。 考えているのかわ からない。 とても興 霞した。すごく 遠くに行つたと思つて 大きな反抗 はしなかったが ヽ いたが 、実 際には学 区 わ なり扱しЧこくい存在。母は 聞くと、親 の決 めた通 りに生き ているような気 がして、親 の言 から少し離れたところ 「頭ごなしに叱りつけたりする うことと反対の ことをしていた。 だった。 と,き つとあなたはもっとひどく 反抗してきそうだから、あくま で対等な立場で注意すべきこ とはしたんだよ。」 と言つてい る。大切にしてくれていたと思 えて、高速バスに 乗つてしまい、弟 と遠くまでいって しまつた。 子どもだけで泊ま 時に寂 しいとか怖いと る場所があつた。いう感情 はなかつた。 120 反 甘や かされている。 自分勝手 。 1甲 進路を決めるときに親の反対 にあった。 は 艮 か つた 。専 敵 して いる。 第。 ヽ 良い子 。時 々 とつての世界 そのもの ているかわからな うらやましがられ ていた。 しつかりしている自分を見 て、落ち込んでいた。 現代青年の思春期の葛藤 に関する考察 戻 達 とは 1甲 が よ か つた が 、相 諌 はしなかった。 親 が弟だけに優 しくみ えた。 字 薇 で 同 轍 主 と。 古せ るの は ,_& 費慢をして、しつかりしなけ ればと思つていた。 ヽ つも正しし フ しかった。 亜ひた いの に条 器 の 練 習 が 子 か つ 計 画 を立 た。 り越 え 父親 へ の lヌ 感 。子 ども敬 の 非 力さ。 父親 に対 して不 涌 が 一 気 に爆 発 。親 と 虚無 感 。中学 の とき 、何 をしても満 の間のイ 可かに区切りをつけた。 たされ なく感 じた 。 自分の好きなことをやり始めたら虚無感 ヾ わ 薄れた。 明 るくて フE気 。 えば頑国で日が悪い。 旧談しやすい。 見をIい じつてJく る友達をよく 友達と梁しいE子 間を過ごすことで親 思わなかつた。中2か ら仲間意 を裏切つた気持ちになつた。自分は は。父親も自分と同じような育ち方だつ 「いじつて」 歳が強くなり、 きた友 勉強もせず、遊んでばかりいたが、 たが、中学時代の悪友のおかげで、今 遵も自分を助けてくれた。進学 親はイ 可も言わなかつた。そのことが は立派に子どもを育てていている、今を て悩んでいたときも、友達の一 辛かつたし申し訳なかった。 楽しく生きなさいと言つた。 言で救われた。 l卜 泣いたりできる存在。お互 かできない」と言われ 、失望 と悲し ヽ 夕 切磋琢磨 しあいながら育つて み。親の前 か ら消えたい。 )、 ところからものを見るよう きた。親とは違う視点から、自 分を見てくれる。 ヽ ると 無視されるいじめを体験。何の理由 ループに。そこでの友達 は親 友と呼 ベ 「あの頃の私たちは、中学 る 。 もない。 生ながらその場の空気を必死に読 んで、日々いるいるなことと闘つて いたのだと思う。」 駐が働いていたので自分が 面倒を見なければ。かわい らない人と思われてしヽ たか がたい人。途中でいろいるあつ ついていた。 いと思つていた。親にかわい も。 たんミ 。 がられる妹を時々うらやまし く思つた。 かないので、一人でふとんにくるよつて 寝ていた。 とにかく輿張ることと,要 領よ観 駄がな ヽ ′ ようにすることを心がけた。同じような 境遇の友達の存在。 ,そ の決断 力や行動力をすごい と覆思つていた。姉を見て、 ,ヽ い子。 間。友情を熱く感じた。居心地 がよく、とても大切な存在。 人生そんなに甘く ないと感じ ることもあつた。親からのプ レッシャーは自分の方が強 いと感じていたので、姉は気 楽ていいなと思つた。 自己中fb的 。よき相談相 大切 。友人の 一 言に傷つくこと 後から悩むことがよくある。親に叱 手。反面、出かけるのが嫌 もあったが、その一言に目が覚 られたときも自分はどうしてこんな いなので、ノリの悪い面倒 めたり、自分の悪いところに気 にだめな人間なんだろうと思う。 づいたりした。悩んでいるとき な存在。 は友人と話すだけで気が晴れ た。 ヽ でき 琢 朦 よりも偏 瀬 でき、賢 ′ し 生とうまくいかなかった分、 る存 在 。思 春 期 の 頃 の 大 きな 友達との結束は強かった。 支 え 。 何でも友達と話して相談し て一緒に支えあっていた存 在。 うらやましかつた。 分が楽器を始めるきつかけを 与えてくれて、感謝している。 弱なやつ 。 のちに、 それぞれのペース があると思うように。 高な の とき、1しヽ 医 、心 をゆ るせ る友 人 と出 会 う。 ヽ ない。ただ、 て 対 してもイライラしてしよう自分 蔚栗 や 本 を読 ん だ 。思 春 期 にと と 1会 つた の気持ちに悩 んだ。 詩集 に涙 が 自然 に あ 心、 れ 、読 み 終 わ っ 急に孤独感を感 じることも。 たとき心が軽くなつたと感じた。どの作品 I可 1こ にもその瞬間に自分に響く言葉があつ て、それが支えとなつた。 しつかりしなく てはと思つた。 それ 以釆 、 病 院 に通 う。今 も通 つているが 、今 より もつとよく なると信じて頑張る。 121 名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 (2013) 印字 の とき、友 達 不安もあつたが 、ワク と東 京 へ 。 ワク。少 し大人になつ 心配 した の では 。 た気分。 すぐ喧嘩。 しかし母は辛いときは気づい てくれて,話 を聞いてくれたの で、頼りにしていた。一番の理 解者^あ りおミ 士み井熊 ス^ 懸 りつ Iま い 。 1ニ あてもなく 走り なつた気分。 素つ気ない態度。 '米 i買 回 つた。 。 れ る存在 。 てく れて 反 期あり。 。 扱いづらい存在。反発。口を に不れ 兄弟との扱いの差を きかない。 ひどく感じていた。 友 人 と海 へ 。 人らと探検 。 ,,と この よよ ,Hら ない場 Fオ 反 ″ 几刷 あ り。 こ行 つて 、違 う人 生 を 良 い子 の ときと屁 理 属 を言 つ 歩む の だと友 達 と話 し てあげ足を取ると きも。 に。 目転車で知らな いところを走るの 辛 舟しい発見 、関心。成 無邪 気。好奇 心旺盛。 が好きだった。 長した感じがした。 もなく 走る。 よつたとき、大人に助 ナてもらう一一人で何 でもできる気になって ヽ ′ た頃だつたが,自 分 ,)非 力さと人のありが 佐みを感じる良い機会 は 特 に lalも 言 わ な い 。 勝と タ ス。 (妹 からどうみられ ている かは記述 なし) 哩不尽で審 りつぼく、日′ 刀` のこ 生意気で扱いづらい子。へりく とを理解 してくれない。 生意気で理解しがたい。友 つをこねて困らせる。友だちも 況に育ててもらっている状態が 人がいないことをよくから いない社交性の薄い自分を心 態で早 く自立 したいと考 える。 かわれた。 配していただろう。 罠面 、絶対的な価値基準 はお て友人と東京 へ 。 れなかった。当日は母 中学進学後 、なじむことができ ヽ 心 らのメールに安心し ず、親 にあたった。心配 してい に気持ちになった。 に。 122 廠気 。親 にあたる。 やにあつた一親 の言つたことは 世間一般 の基準だと考 える。 硯の。 吉すことにいちいち反,几 し に。父とはほとんど口をきかな バカにされていた。よく喧 ヽ る った。暴言を吐いたり、物に l事 をした。 らたつたり、迷惑をかけた。 現代青年の思春期の葛藤に関する考察 が好きだつた。嬉しいこと、悲 言われた。伸直りするのに時間が しいことを共有し、励ましあっ かかり、辛かった。 た、かけがえのない存在。今も 勉強では努力が実らなかった。 続いている。 かつたので、嫌でしょうがな I菫 かつた。 いたときもあった。 戻人関係の個み は累力 兵が貢 えに。 勉強のことでは友 人が助 けてくれた。一 緒に勉 強 したり、わか らないところを教 え てもらつたり。地 道に頑張ることを教 えて もらった。 目分 目1目 がなく て1よ つき 晴しいことや平いことを共石で 字″ 大の とき 、い じめ られ て い た こ ころがあると言われて、 りしない自分に、イライラし き、時にはぶ つかることもあつ と。 何の解決にもな たが、本気で話 し合つて仲 が深 らなかった。 1こ 高校くらいから相談しあった ていたのでは。 り、励ましあったり。 1ヽ よつた。尊敬できる存在 。 中学 になつてからは良い友達ができて、 支 えられ た。 周 りの人 に支えられ て、多くのことを乗 り 越 えてこられた。これ から恩返 しをした E踏 選 頼され ていた。うらやまし かつた。嫌 しЧこ1ま ならず 、む しろ尊散 していた。 ラックスした振る舞いがキラキ ラして見えた。 1,、 の とき 、思 春 刃lの 思 情 が 目分 の 1厳 る舞 い が わ か るようになつて 、 邪魔をして、親と話せなかつた。嫌 観との 会 話 が 増 えた 。買 い物 や 外 出 に も な気分が続 き、キ かつた。親 に対す l責 極 的 につ い て行 つた 。会 話 の 幅 も広 ` 心 った。 る態度を変えたかったが 、解 決策 が見つからず 、悩んでいた。 兄弟や友人からもアドバイスや助け舟を 出してもらった。自分も歩み寄らなけれ ばと。歩み寄ると、親は応えてくれた。 にくい存在。親友は理解し しい。,軍 いて見えた。 てくれていた。 l口 任の,E生 のサボート 。その先生のお 保健室で過ごすことも多かつた。今 かげで今がある。とても感謝しているの では、悪い方に考えることが′ 戌っ で,大 学生活を頑張つていることを伝え た。少しずつだが前進している。 たい。 気 の 合 う友 達 。自 分 は 語 を 気 の 合 う友 達 。 親 の 仕 事 で 、転 オ 棄が 多 か つた 。い じ 思つたが、失敗ばかり。兄と 合わせるのが解意なので。 してのプライド。 一人で逓ふことが多かつた。友人か ら見て、自分 は唯 ― 人とのつき合い方がわから 無二の 存在ではなかつた。 観 、好み 、考 え方が全く違 つ ない。 た。新鮮でもあり、理解しがた 友人の多い姉に憧れ。模範 いものでもあった。世の中には 的な行動しかできない自分 様々な考え方や暗好があると から見て、姉の自由な行動 教えてくれた。 力がうらやましかった。 めにあったり、成績がたびたび上下 した。 普通 に会話していたクラスメートが 実は 自分のことを嫌つていた。 こ対 して、傷 しさ 原な思いをしても、怒らす 力の強い界「 ヒ怒りが込み上 げた。 に友達と接した。何を言つ ,)顔 をいつも気にしていた。一 なかなかできなかつた。ストレスを ても怒らないので、優しい 人になるのが恐くて、学校 では 家で発散 していた。 子と見られていたのでは。 言いたいことも言えず、 友達と 自分 らしさを失い、つい人の 目を気 思つたことを何も言わない よ上辺だけの付き合いだつた。にしたりしていた。学校でも家でも ので、信用されていなかつ 毎 日不安だった。 考えるように。正しいことだけしているつ もりでも、違う方 向から見れ ば 、間違 い になり得る。 犬と過ごすことで心 自分 たかもしれない。友達も少 123 名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 (2013) 8.結 語 本論 では、現代 の若者 の生の姿 を描 くことを目的に、思春期 の葛藤 をテ ーマ に した映画 を鑑 賞 させ た上で書かせた学生の 回想文 を分析 した。学生の感想 の 中には、映画 を見 るこ とで、あの 頃の 自分 を思 い 出す ことがで きた と書 いてある ものが多 くあ り、 また、学 生の 回想文が非常 に豊かであったことを振 り返 ると、 この手法 には効果があ った と考 え られる。 入に見 つ めた上 学生 らの回想文 を見ると、親、兄弟、友人 と思春期 の 自分 との 関係 を真 華 手 で、思春期 の葛藤 を乗 り越 えたサバ イバー としての 自分が語 られていた。そ こには、過去 の 自分 を客観視 し、今現在 の 自分 と結 びつ け ることで、 当時 の体験 を肯 定的に意味付 ける 若者像が描 き出されてい た。言 い換 えれば、思春期 の暗 い時代 をポジティブに捉 え、だか らこそ、今 を楽 しく生 きられると解釈 してい る学生が 多 くみ られたので ある。 これについ ては、 もちろん、現在の大 学生活が楽 しい とい うことが 、前提条件か もしれない。例 えば、 221よ 「大学 は今 までの人生の中で一番楽 しい。朝、『おはよ う』 と声 をかけて もらえる幸 せ、 Fみ んな』 の 中に自分 も含 まれてい る幸 せ は、 中学 の 頃 の幸 い経験があ ったか らこそ 感 じられる と思 う」 と述べ てい る。今 回、回想文 を書 い た学生 は教職科 目を履 4少 してい る 学生で、おそ らく一 般の学生 よ り目的意識があ り、現在、強 い不適応 を感 じて い ない学生 であると仮定 で きよう。 これについ ては今後、検討 してい く必要がある。 いずれに して も、今回の回想文の全体 を通 して、多 くの学生が、家族や友人に支 え られ て、 困難 を乗 り越 えて きた ことを実感 してい ることが伝 わって くる。そ こには、周 りの人 たちへ の感謝が い くつ も綴 られてい た。 時代や環境 の変化 は激 しく、若者 を取 り巻 く事情 は確 かに変化 して きて いると考 えられるが、それで も周 りの人た ちに支 えられて葛藤 を乗 り越 える姿 は、いつ の時代 も変わ らない。 では、何が変化 して い るのか。 それは、 この 回想文か らだけでは、推測す ることが難 し いが、む しろか つ ての若者世代 よ りも早 い段 階で、親 に対 す る葛藤が消失 し、世 代 間 の ギャップが埋 まって しまうことでは なかろうか。 もしくはギ ャップその ものが存在 しない のか もしれない。 つ まり現代の若者 は、親 の愛情 をひ しひ しと感 じる中で、親 との価値観 の違 い を突 き詰める ことな く、 したが って、確 固 たる 自分 の価値観 を形成す る機会 もな く、 大人にな って しまっているのではない だろ うか。 これに関 しては、3.(2)の 「通過儀礼」 の変質、あるい は消失 と、 5(1)の 消費文化世界 の到来 の 関係か ら考察 してみたい。 伝統社会 における通過儀礼 はその社会 の基礎 を成す 一つの価値観か ら生み出され成立 し ていた。そ こでの若者たちは、何 の迷い もな く親 の価値観 を受け継 ぎ、そ してそれ を次世 代 に受け渡 して い くことが彼 らに とって最 も重要 な ことで あ った。 一 方、その 次 の世代、 産業化 の進んだ近代 を生 きる親の世代 は、親 との対立 の 中で、親の価値観 を否定す ること によって 自らの価値観 を築 き、それを礎 に して生 きて きた。親 とは異 なる自分の価値観 を 築 き上げる ことこそが、 この世代 の「通過儀礼」 として考 え られるのではないだろ うか。 この「通過儀礼」 を「通過 す る」 ことによって得 られたのは、非常 に自由な生 き方であ っ 124 現代青年 の思春期の葛藤 に関する考察 た。 自由であるためには、お互 い の価値観 を許容 し、尊重す る必要があ った と考 え られる。 そ して現代、消費文化社会の到来によって、価値観 は多様化 の一 途 をた どることになった。 親 の価値観 のみでな く、あ りとあ らゆる価値観 にさらされる若者 たちは、 自らの力 で、そ の雑多 な中か ら自分の価値観 を選び とらなけれ ばな らないの だ。選択肢 は無 限にある。 し か し、選びとる ことの困難 さは選択肢の多 さのせ い ばか りではない。近代の親世代 は、絶 対的価値観 を持 つ親 と強 く衝突する ことによって、姑立点が明確であ ったが、他者の価値 観 を尊重す ることを旨 とす る近代 の親 は、 自由に生 きる子 どもた ちに非常 に寛容であるの で、親子 の間に生 まれる姑立は小 さい。姑立は小 さければ小 さい ほ ど、子 どもは何 の疑問 もな く親 の価値観 を受 け入れ るか、 もしくは何が正 しいのか全 くわか らず、 いつ まで もア イデ ンテ イテイが定 まらぬ まま、生 きる ことになるのではないだろ うか。そ の よ うに考え ると、現代では、消費文化世界 に上手 に適応 し、その時 々に応 じてい ろい ろな価値観 を選 び とってい く能力 を身につ ける ことこそが、あ たか も思春期 における通過儀礼 の よ うで も ある。「通過儀礼」 は消失 したわけではな く、明確 な一つだ けの基 準 をもたない 、暖 日 未模 糊 とした ものに変質 したと考 えられる。そ して、価値観 を選び とる能力 を育 むには、長期 にわたる学校教育 が必 要 となろ う。 現代 の若者 の親へ の依存 の長期化 は、 こ うしたことも原因の一 つ になって い ると推測 さ れる。 しか し、価値 観 を選び とる能力は教育 によつて 身につ くとして も、価値観 を作 る必 要性がない ところでは、 これ も機能 しない。価値観 を最 も必要 とす る と きは、おそ らく子 どもが 自立 を迫 られた ときであろう。その よ うに考 えると、物わか りの よす ぎる親 は結局 の ところ、子 どもの 自立に とっては障壁 なのか もしれない。逆 を言 えば、 自分 の価値観 を 強行 に押 し付 けて くる親 の煩 わ しさこそ、子 どもが巣立 つ ためには重 要 な要素 となるので はなかろ うか。居心地 の よい関係 は、 いつ まで も子 どもを親 の元 に引 き止める要 因 となる。 青年期 の子 どもがいる家庭 には、道度 な「 い らだち」が必要 なのか もしれない。 文献 大平健 1995や さしさの精神病理 岩波書店 岡田努 1992友 人とかかわる 松井豊 (編 )対 人心理学の最前線 サイエ ンス社 22-26 尾木直樹 2006思 春期 の危機 をどう見るか 岩波書店 土井隆義 2004「 個性」を煽 られる子 どもたち―親密圏の変容を考える 岩波書店 土井隆義 2008友 だち地獄―「空気 を読む」世代のサバ イバル ちくま新書 中西新太郎 2001思 春期 の危機 を生 きる子 どもたち はるか書房 、 と 理学 白石利明編 ミネルヴァ書房 平石賢二 2006よ くわかる青年′ 深谷昌志 2004中 学生にとっての家族―依存 と自立の間で モノグラフ・中学生の世界 vo1 77ベ ネッセ 未来教育セ ンター 本田和子 1995映 像 の子 どもたち 人文書院 125 名古屋芸術大学研究紀要第 34巻 (2013) 宮下一博 1995青 年期 の同世代関係 落合良行・楠見孝 (編 )講 座 生涯発達心理学 4「 自己へ の問い直 し 青年期」 金子書房 155-184 昏化社会 の親子関係―お金 と愛情にみるかぞ くのゆ くえ 有斐閣 宮本みち子・岩上真珠・山田昌弘 1997未 女 126
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