ひたちの大地に 36号 入四間笹目道標(PDF形式 387キロバイト)

ふるさと散歩
№ 36
H28.5.23
日立市郷土博物館
《道標シリーズ25
「入四間町
訪ね歩いてみませんか?
ひたちの道標》
笹目の「馬力神」道標」
■ 「馬力神」の道標
主に馬の供養のために建てられた石碑には、馬頭観世音の像を刻んだ
像塔がある一方、文字で表す文字塔がある等、地方によって様々なものが
あります。文字塔の「馬頭尊」
「馬頭明王」「馬暦神」「馬霊神」「馬力神」
の他、
「駒形神」
「東堂山」のように馬の神が祀られた山の名前を刻んだも
のもあります。中でも「馬力神」の碑は、県北地方では数多く残ってい
る供養塔です。
江戸時代に建てられた
「馬力神」
はほとんどありませんが、
右の土手上に小さな石塔
明治になって神道が重視される時代となると、「馬力神」の数は圧倒的
に増えたことが確認されています。
★笹目の「馬力神」道標…現在は入四間町笹目集落内を
県北東部広域農道が通っています。谷あいにある田畑を縫うように走る旧
道が集落の南部に残っており、旧道脇の土手上に本道標「馬力神」があり
ます。現在は土手上ですが、かつては旧道とふるさと散歩№15 や№14 で紹
介した中深荻町赤根集落へ向かう小道との追分に北西を向いて建っていた
と考えられるものです。
本道標は「馬力神」の併用道標です。碑は、高さ 50cm、幅 21cm の舟形で
小さなものですが、蛇紋岩(町屋石)製です。
碑文は中央に「馬力神」
、右側に「明治三十三年二月吉日」の建立年
「馬力神」の道標
が刻まれており、左側に道標と建立者名「根本茂介/立之」が刻まれ
ています。道標は「右中深/左入四間/道」とあります。
右方向へ道をとると、田畑を横切って、山道に上がります。尾根を
越え、約1km 歩けば、ふるさと散歩№15 で紹介した「馬頭観世音刻像・
右さ々目/左高原」の道標に至ります。馬頭観世音刻像道標と本道標
の間の山は、国有林で春には山菜が豊富に採れる場所を知っている方
がたくさん訪れます。
左方向は入四間です。この入四間は、御岩神社を指しています。笹
目川に沿った道を下り、現在の県道日立山方線に出て、さらに下れば、
入四間町に至ります。約2km の道のりです。
★「きららの里」は「笹目牧場」跡地
笹目集落は「奥日立きららの里」の北側に位置し、集落内から「き
らら館」が望めます。この「奥日立きららの里」の敷地は、開園以前
は「入四間共同牧場(通称:笹目牧場)
」で、たくさんの馬が放牧され
ていた時代もありました。
笹目牧場を含む中里村内の馬の飼育頭数は、明治 25 年に 329 頭、明
治 43 年に 453 頭、昭和戦前期に 400 頭代と、運搬用、農耕用、繁殖用、
さらに軍馬用として、飼育されました。現在、馬はきららの里で観光
馬力神併用道標の拓本
用のポニー馬が飼育されているのみです。
「現在、この付近の山々は杉が植林されていて、うっそうと茂っているが、放牧の盛んだったころ、
笹目牧場やその周辺の山には樹木がほとんどなく、草原状の山並みであり、遠くまで見渡せた。」とは、
古老(85 歳)の話です。
参考文献:『旧中里村之道標』
(1984)
『ひたちの野仏』第1集(1984)
『新修 日立市史』(1996)
お問い合わせ先::
日立市郷土博物館
℡(23)3231
Fax(23)3230
歴史資料調査員
綿引 逸雄