ふるさと散歩 № 46 H28.7.19 日立市郷土博物館 《道標シリーズ33 訪ねてみませんか? ひたちの道標》 ゆ が さ き 「下深荻町 油ヶ崎の馬頭観世音道標」 ■油ヶ崎、T字路の道標…国道 349 号と県道 36 号線とが接続する辺りは、下深荻町の油ヶ崎です。コンビニの北西 方向に油ヶ崎集落があります。水田に囲まれた小道を徐々に上って 行くと、集落中央にあるT字路に至ります。そこにコンクリートで 固定された本碑が東面して建っています。昭和 56 年に集落内の道を 改修したことを記念して、本来の設置場所に固定されました。 ★道標として確認された馬頭観世音…本 碑は、板状の花崗岩で、高さ 117cm、最大幅 70cm あり、正面から見 油ヶ崎の集落に守られた石仏 ると三角形を呈しています。近くを流れる入四間川から採取 したと思われる自然石の石仏です。花崗岩がもつ凸凹の多い性質と激しい 風化のため、文字は中央の「馬頭観世音」以外はよく読めませんでした。 『ひたちの野仏』第1集(1984)の基になる台帳では、 「02-027」として 整理されていますが、「馬頭観世音」の文字以外は、判読不明となってい ました。しかし、一部の人は道標を兼ねることを知っていたようです。 今回、拓本を採取し、詳しく調べた結果、道標のついた馬頭観世音であ ることが確認できました。刻まれた文字は、中央に「馬頭観世音」、建立 年は左右に「文政三年/二月吉日」 、その下に「右 呉坪/左 上渕」、そ して、建立者の「村中」とあります。 T字路を右方向へ進めば、大平山の中腹を通って、ふるさと散歩№11 で紹介した「呉坪の道標」の脇に行けます。約1km の道のりです。 道標は今まで未確認でした また、左に進めば、稲荷神社が建つ小山の裾を廻って棚倉街道(小里街道)の東上淵宿に行けます。約 600mの道のりです。東上淵宿は屋号のある民家が並んだ集落で、日立市と合併するまでは、村役場、 銀行、郵便局、旅籠などのあった中里村の中心地でした。 ★棚田…油ヶ崎集落は、棚田の奥にあります。棚 田は山里の傾斜地に作られた水田のことで、段々になっ た棚のように見えるので、その名があります。農水省の 定義では、傾斜度が 20 分の 1(水平距離を 20m進んで 1m高くなる傾斜)以上の水田を棚田として認定してい ます。ここの水田の水は、呉坪川から取り入れられ、道 標の示す道とは違いますが同じようなルートで大平山 の山腹を流れ下ってきます。ここ油ヶ崎の棚田は、近く に梅林となっている丸い小さな山があり、そこに稲荷神 社の朱色の鳥居があることや秋にはヒガンバナが咲き ほこることから、田植えや刈取りの時期には写真愛好家 の撮影スポットになっています。 ★不思議な松の大木?…本碑から左に 向えば、稲荷神社に着きます。その西側の山裾に松の大 木があります。真っ直ぐな木です。一見を・!(笑えます。) 参考文献: 『ひたちの野仏』 (1984) 日立の文化財めぐり』 (2008) 道標拓本(右~、左~の文字が確認できますか) 『日立の民間信仰』2(1991) お問い合わせ先: 日立市郷土博物館 ℡(23)3231 Fax(23)3230 歴史資料調査員 綿引 逸雄
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