ひたちの大地に 46号 下深荻町油ヶ崎の道標(PDF形式 395

ふるさと散歩
№ 46
H28.7.19
日立市郷土博物館
《道標シリーズ33 訪ねてみませんか?
ひたちの道標》
ゆ が さ き
「下深荻町
油ヶ崎の馬頭観世音道標」
■油ヶ崎、T字路の道標…国道 349 号と県道 36
号線とが接続する辺りは、下深荻町の油ヶ崎です。コンビニの北西
方向に油ヶ崎集落があります。水田に囲まれた小道を徐々に上って
行くと、集落中央にあるT字路に至ります。そこにコンクリートで
固定された本碑が東面して建っています。昭和 56 年に集落内の道を
改修したことを記念して、本来の設置場所に固定されました。
★道標として確認された馬頭観世音…本
碑は、板状の花崗岩で、高さ 117cm、最大幅 70cm あり、正面から見
油ヶ崎の集落に守られた石仏
ると三角形を呈しています。近くを流れる入四間川から採取
したと思われる自然石の石仏です。花崗岩がもつ凸凹の多い性質と激しい
風化のため、文字は中央の「馬頭観世音」以外はよく読めませんでした。
『ひたちの野仏』第1集(1984)の基になる台帳では、
「02-027」として
整理されていますが、「馬頭観世音」の文字以外は、判読不明となってい
ました。しかし、一部の人は道標を兼ねることを知っていたようです。
今回、拓本を採取し、詳しく調べた結果、道標のついた馬頭観世音であ
ることが確認できました。刻まれた文字は、中央に「馬頭観世音」、建立
年は左右に「文政三年/二月吉日」
、その下に「右
呉坪/左
上渕」、そ
して、建立者の「村中」とあります。
T字路を右方向へ進めば、大平山の中腹を通って、ふるさと散歩№11
で紹介した「呉坪の道標」の脇に行けます。約1km の道のりです。
道標は今まで未確認でした
また、左に進めば、稲荷神社が建つ小山の裾を廻って棚倉街道(小里街道)の東上淵宿に行けます。約
600mの道のりです。東上淵宿は屋号のある民家が並んだ集落で、日立市と合併するまでは、村役場、
銀行、郵便局、旅籠などのあった中里村の中心地でした。
★棚田…油ヶ崎集落は、棚田の奥にあります。棚
田は山里の傾斜地に作られた水田のことで、段々になっ
た棚のように見えるので、その名があります。農水省の
定義では、傾斜度が 20 分の 1(水平距離を 20m進んで
1m高くなる傾斜)以上の水田を棚田として認定してい
ます。ここの水田の水は、呉坪川から取り入れられ、道
標の示す道とは違いますが同じようなルートで大平山
の山腹を流れ下ってきます。ここ油ヶ崎の棚田は、近く
に梅林となっている丸い小さな山があり、そこに稲荷神
社の朱色の鳥居があることや秋にはヒガンバナが咲き
ほこることから、田植えや刈取りの時期には写真愛好家
の撮影スポットになっています。
★不思議な松の大木?…本碑から左に
向えば、稲荷神社に着きます。その西側の山裾に松の大
木があります。真っ直ぐな木です。一見を・!(笑えます。)
参考文献:
『ひたちの野仏』
(1984) 日立の文化財めぐり』
(2008)
道標拓本(右~、左~の文字が確認できますか)
『日立の民間信仰』2(1991)
お問い合わせ先:
日立市郷土博物館
℡(23)3231
Fax(23)3230
歴史資料調査員
綿引 逸雄