2016年5月9日号(PDF/625KB)

お客様用
2016 年 5 月 9 日
豪州主要経済指標
経済指標・イベント
豪州準備銀行 政策金利
今週の注目点
直近
前回
1.75%
2.00%
日付
経済指標・イベント
5 月 11 日 豪州 3 月 住宅ローン (前月比)
前回
市場予測
1.50%
-1.50%
金融市場・原油・為替
指数等
2016年5月6日
2016年4月29日
前週比
2015年5月6日
前年比
S&P/ASX200 指数
5,292.05
5,252.22
+0.8%
5,692.16
-7.0%
S&P/ASX200 不動産投信
1,430.50
1,400.20
+2.2%
1,270.10
+12.6%
豪州 90 日バンクビル利回り
2.00
2.15
-15bps
2.15
-15bps
豪州債券 10 年物利回り
2.29
2.52
-23bps
2.92
-63bps
78.91
80.97
-2.06
95.20
-16.29
0.74
0.76
-0.02
0.80
-0.06
62.00
63.80
-1.8
65.30
-3.3
豪ドル円
豪ドル米ドル(セント)
豪ドル TWI
先週の主な話題
株式市場は、成長に対する懸念が重くのしかかり、ボラティリティを伴った軟調な展開となりました。その結果、日本市場は 3.4%の下落、ユー
ロ圏市場は 2.6%の下落、中国市場は 0.9%の下落、米国市場は 0.4%の下落となりました。一方、豪州株式市場は、0.8%の上昇となりました。
コモディティ価格の下落や、いくつかの銀行の収益見通しの引き下げ(そのうち 1 行は減配)があったにもかかわらず、豪州準備銀行(RBA)が
政策金利引き下げに踏み切ったことや、金融政策声明(SOMP)において緩和バイアス継続を示唆したことが下支え材料となりました。世界の経
済成長に対する不安は、債券利回りを押し下げ、コモディティ価格の上値を抑制し、RBA の政策金利引き下げも加わって豪ドルは対米ドルで約
3%下落しました。とはいえ、米ドルのリバウンドは、下落トレンドの中の通常のボラティリティの範囲内にとどまっているように見えます。
ドナルド・トランプ氏が共和党予備選で勝利しています。ドナルド・トランプ氏が代議員数の過半数を獲得することはないという私の見解は、共和
党党大会での決選投票を見据えたものでしたが、クルーズ氏やケーシック氏が撤退を表明した今、罵詈雑言のオンパレードで数々の物議を醸し
出したトランプ氏が共和党候補の指名獲得を確実なものとしました。このことは、保守本流の共和党員にとって受け入れがたい事実でしょう。幸
運にも世論調査では、特に共和党、民主党どちらにも属さない中間層の間で、(民主党候補の指名獲得までに、残りの代議員数の 15%を獲得
するだけでよい)ヒラリー・クリントン氏に対する支持率がトランプ氏を上回っています。ただ厄介なのは、トランプ氏が今現在、これまでの放言を
トーンダウンさせて中道に戻り、選挙戦略の方針転換を図ろうとしていることから、6 ヶ月後の米国大統領選挙における常識的な勝利がどちらに
転ぶか確実ではないことです。
スーパーアニュエーションの大規模な変更とは別に、2016‐17 年度の連邦予算案はあまり興味を引く内容ではありませんでした。わずかばかり
の所得税減税や、長期的な経済成長への貢献という意味ではほとんど真新しい政策が見られないものでした。確かに、今後 6 年間で 500 億豪
ドルのインフラ支出を計上してはいましたが、たった 10 億豪ドル強の部分だけが新規の政策でした。中小企業に対する法人税減税については
歓迎すべきものですが、大企業に対する減税はまだまだ先のことです。今回の予算案の本当の狙いは、7 月 2 日に行われる総選挙の前に、政
府が“フェア”(つまり高所得者を狙い撃ちしたもの)であることを示すためのものであるように見受けられます。
1/3
今回のスーパーアニュエーションの変更は、退職後の安定した収入を提供するという目標設定と合致しており、他の選択肢と比較して高い税制
優遇がある点についても引き続き残されました。一方で懸念材料としては、スーパーアニュエーションに対してさらに大きな変更が行われること
と、それらのいくつかの変更が過去にさかのぼって行われる性格のものであることが、制度に対する信頼に影響を与える可能性が見込まれるこ
とです。ウエストパック/メルボルン研究所の調査による“貯蓄の賢い方法”に関する調査において、スーパーアニュエーションに対する認識が最
低を更新する可能性は大いにあると思われます。これはすなわち豪州の経済成長を支える我慢強い長期的な資金供給に影響を与えることにな
ります。また経済のインセンティブを削ぐことになるかもしれません。なぜなら豪州の税制はすでに累進性の高いもの(上位 5%がすでに全体の
税収の 33%を占めている)となっており、それは高所得者に対する事実上の増税であるからです。その結果、ネガティブ・ギアリング(投資物件
を購入した際、その利息分を課税対象所得から控除できる節税方法)など、資金を他の選択肢に振り向けることを助長することにもなるかもしれ
ません。
貯蓄の賢い方法
回答率(%)
銀行預金もしくは債務返済
不動産
株
スーパーアニュエーション
(年)
出所:ウエストパック/メルボルン研究所 消費者調査、AMP Capital
RBA が政策金利を過去最低水準の 1.75%に引き下げましたが、さらなる引き下げがあるかもしれません。2011 年から始まった利下げサイク
ルにおいて今回の利下げは 11 回目なりますが、1‐3 月期のインフレ率が予想を大きく下回ったことを確認した後、RBA は将来におけるインフレ
見通しの引き下げについて言及しました。RBA は金融政策声明(SOMP)において、今年のインフレ率予想を 1%~2%、2017 年から 2018 年
にかけては 1.5%~2.5%に引き下げています。今回の RBA の声明においては、豪ドル安に向かわせたいという狙いも、ほぼ間違いなくあった
と言えるでしょう。一方で、3%前後の経済成長についての予想を実質的に変更しなかったことから、目標を下回るインフレ率が期待インフレ率そ
のものの水準になることで、日本が経験してきたような長引くデフレに突入することを問題視していることについても明らかです。そして、シドニー
やメルボルンでの住宅価格高騰が再発するリスクをマクロプルーデンス政策によって管理する方が、金利を高いままに放置しておくリスクよりも
好ましいとの判断が働いたということになります。RBA の超低インフレ予想は、金融政策声明が準備されていたときに市場が期待していたもう一
段の利下げに基づいたものであることから、インフレ率が目標レンジ内に戻ることが確信できるまで、政策金利がさらに低下しなければならない
(恐らく 1%)ことを示唆したものであり、RBA は強い緩和バイアスを発信しているということになります。インフレの下振れリスク、米連邦準備制
度理事会(FRB)による利上げが先延ばしになる場合の豪ドルの上昇リスク、弱い総需要の継続を想定すると、8 月、11 月にもう一段の利下げ
がある可能性が高まっています。
RBA 副総裁のフィリップ・ロウ氏が 9 月より現総裁のグレン・スティーブンス氏の後を引き継ぎ、総裁に昇格する人事が発表されましたが、これ
は予想通りで、歓迎すべきものでした。ロウ博士は、RBA で総裁職を全うするのに十分にふさわしい専門性と経験を積んできました。ロウ氏の
アプローチはスティーブンス総裁に近いことから、金融政策の運営においての大幅な変更はないでしょう。一方で、スティーブンス総裁の豪州の
マクロ経済の安定に対する多大なる功績は、評価されてしかるべきものです。RBA は、これまで金利政策においていくつかの間違いを犯してき
ましたが、それらは小さなもので、また世界金融危機(GFC)や最近の金融緩和サイクルの際など、一旦間違いを認識すると、すぐに方針を転換
してきました。さらに、スティーブンス総裁の 2008 年から 2009 年の速やかな利下げによって、豪州は他の OECD 諸国を襲ったリセッション(景
気後退)を避けることができました。同時に、RBA の金融政策は、インフレ率を目標である 2%‐3%に維持するのを助けました。幾人かの批評家
はスティーブンス総裁が住宅バブルを見過ごし、住宅取得を困難にしたことを批判していますが、これらの問題は金融政策というよりも、むしろ住
宅供給の少なさに問題があったというべきでしょう。
豪州では、ターンブル首相が正式に 7 月 2 日に総選挙を実施することを発表しました。広く予想されていたことなので、選挙を巡る不透明感は
すでに消費者信頼感や景況感、株式市場に織り込まれているものと見られます。総選挙は家計や企業の支出を遅らせる可能性はありますが、
その影響は一時的なものとなるでしょう。とはいえ、今回の選挙戦は通常のものと比較してより長期にわたることから、特に公的支出や税制、ネ
ガティブ・ギアリング問題、銀行については選挙戦の影響をより大きく受けることになるでしょう。一方で良いニュースとしては、1983 年以降のす
べての選挙を検証してみると、株式市場は選挙戦の期間中においては概ね横ばいで推移しがちでしたが、選挙後の 3 ヶ月間で平均 4.9%の上
昇を記録してきたことです。
世界経済指標
米国の経済統計は、強弱まちまちの結果となりました。4 月の ISM 製造業景況指数は弱含み、雇用統計も軟調な結果となりましたが、4 月の
ISM 非製造用景況指数は堅調な結果となり、3 月の建設支出もまずまずの結果で、貿易赤字額も縮小しました。4 月の雇用統計がコンセンサス
予想を下回る 16 万人にとどまったことは、米国の経済成長に対する先行き不安と、FRB による 6 月の政策金利引き上げの可能性を大幅に低
下させただけでなく、7 月の可能性についても後退させました。とはいえ、月次の雇用統計は通常変動の激しいもので、4 月の軟調な結果は 1‐
3 月期の温暖な気候の影響を受けたと見られます。新規失業保険申請件数は 1973 年以来の低い水準にあり、賃金や労働時間は改善傾向を
示していることから、4 月の雇用統計の軟調な結果を深読みする必要はありません。これまで 87%の米国企業が 1‐3 月期決算発表を終えまし
た。結果は総じて予想を上回るもので、発表を終えた 76%の企業が利益予想を上回り、54%が収益予想を上回る結果を出しています。一方で、
1‐3 月期利益成長についは、前年比で-9.5%の減益予想が-7.4%の減益に改善したに過ぎませんでした。
4 月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は 50 をわずかに下回りました。 PMI は、幸い最近つけた最低水準を上回ってはいますが、その
動きは非常に小さく、方向性を判断することはできません。全体的な印象としては、中国は不況には陥らないものの、回復基調でもないという状
2/3
況が続いています。一方で、住宅在庫の減少が続いており、4 月は住宅価格が再び上昇しました。数年前の「幽霊都市」の破たん騒動が収束し、
不動産市場が再び活発化してきていることは明白です。
豪州経済指標
先週の豪州では経済指標は全般的に堅調な結果となり、(傾向としては引き続き軟調ではあるものの)建築許可件数が 2 ヶ月連続で増加し、4
月の住宅価格の堅調な伸びや、新築住宅販売の反発、小売の緩やかな成長、3 月の貿易赤字の大幅な改善などが見られました。実際、サービ
ス輸出の急増とともに、資源輸出も数量ベースで急増し、純輸出は 1‐3 月期 GDP 成長率に 0.75%程度貢献しています。 よって一部で言われ
ているような不景気の状態にあると定義するのは、引き続き難しいように思えます。しかしながら 4 月の企業景況感には、わずかながらも悪化
の兆しが窺えました。
今週の注目点
米国では、消費者心理がわずかながらも改善していることや、生産者物価が引き続き低水準に抑えられていることなどから、3 月の軟調な結果
から一転して、4 月のコア小売売上高は反発が予想されます。また、中小企業楽観指数、JOLT(求人労働移動調査)求人件数が同じく発表され
る予定です。
中国では、5 月 14 日に発表される経済統計において、3 月に見られたようなモメンタムの改善が 4 月も継続して見られるかに注目が集まって
います。鉱工業生産は若干の減速(対前年比 6.8%から 6.5%)、小売売上高成長率はほとんど変化しない(同 10.5%近辺)と予想される一方
で、投資は継続的な回復を見せると思われ、中国の経済指標は強弱が入り混じっており、このことは景況感(PMI)わずかながらの後退にも現れ
ています。マネーサプライと信用の伸びは引き続き堅調に推移すると考えています。 4 月の消費者物価指数(CPI)は前年比 2.3%を維持し、生
産者物価指数は引き続き下落すると思われます。
豪州では、3 月に低下した消費者信頼感指数が、直近の RBA による政策金利の引き下げと予算案で示された減税策を受けて上昇が予想さ
れる一方で、3 月の住宅ローン件数は 2 月の反動から減少することが予想されます。 RBA のマルコム・エディー総裁補佐による講演が今後の
政策金利の動向の手がかりとなるでしょう。
相場見通し
株式市場のボラティリティは短期的に高い状態が続くと見られます。5 月の相場は、広く知られている“5 月に売って、いったん市場から立ち去り、
セント・レジャー・デー(競馬のレースが行われる 9 月の第二土曜日)まで戻ってくるな”という格言にあるように、いつも神経質な展開になり、世
界の経済成長は脆弱で不透明性の高い状況が長引いています。とはいえ、短期的なボラティリティは見られるとしても、今年は年末に向けて株
式市場はさらに上昇すると見ています。その理由としては、株式のバリュエーションが債券と比べて割安であること、世界的に金融緩和が加速し
ていること、緩やかな経済成長が続いていることなどが挙げられます。
現在、債券利回りが極めて低い水準にあることから、国債投資のリターンが中期的に低調になる可能性が考えられます。しかし、不安定な経済
成長、余剰生産能力、軟調なコモディティ価格、低インフレなどの要素を併せ持つ市場環境において、債券に対して過度に弱気の見方を取るこ
とは難しいと言えます。
商業用不動産やインフラ資産は今後も、投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
豪州では、シドニーやメルボルンの住宅市場が沈静化に向かっていることから、2016 年は主要都市の住宅用不動産価格の上昇率が+3%前後
まで鈍化すると予想されます。また、パースやダーウィンでは値下がりが続く一方、ブリスベンでは上昇すると見られます。
キャッシュや銀行預金のリターンは引き続き低水準に留まり、さらに魅力が薄れています。
FRB が利上げを見送り続けた場合、豪ドルが短期的に一段と上昇するリスクがあります。とはいえ、短期的なリバウンドは限定的なものとなる
可能性が高く、長期的には再び下落基調が始まるでしょう。というのも、RBA が政策金利の引き下げを行っている一方で、FRB はいずれ利上
げを再開すると見られており、今後、金利差の縮小が見込まれることや、コモディティ価格が依然低迷していること、豪ドルがフェアバリュー(適
正価値)を下回るのも珍しいことではないためです。
3
当資料は、投資の参考となる情報の提供を目的として、AMP キャピタル・インベスターズ・リミテッド(オーストラリアにおける登録番号:
AMP キャピタル・インベスターズ株式会社
ABN 59 001 777 591; AFSL 232 497)から提供された情報をもとに AMP キャピタル・インベスターズ株式会社が作成したものであり、特定の
登録番号: 関東財務局長(金商)第 85 号
有価証券への投資を勧誘する目的で作成したものではございません。当資料は、各種の信頼できると考えられる情報に基づいて作成されており
加入協会: 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
ますが、情報の正確性、完全性が保証されているものではありません。当資料中のいかなる内容も将来の投資成果及び将来の市況環境の変動等
を保証するものではありません。当資料の記述内容、数値、グラフ等は作成時点のものであり、予告なく変更される場合があります。
3/3