カキ`蜂屋`成木樹で隔年結果を防止するせん定・結実管理法

東北農業研究 (Tohoku Agrlc Res)58,139-14Kl("05)
カ キ `蜂 屋 '成 木 樹 で 隔 年 結 果 を 防 止 す る せ ん 定 。結 実 管 理 法
池田裕章・ 菊地秀喜
(官 城県 農 業・ 園 芸総 合研 究 所 )
Method of Pruning and Pruiting to Prevent Alternate Vear Bearing on the Matured Tree
of Japanese Persimmon `Hachiva'
Hiroaki lKEDA and Hideki KlKUCHI
Miyagi Prefectural Agricul:ure and Horticulture Research Cellter)
〈
3
1
は じめに
宮城県 のカキ栽培 は,栽 培者 の高齢化 ,高 樹高化 に伴
う作業効率 の悪化 ,結 果開始年齢が遅 い ことによる収益
性 の悪化 ,干 し柿用果実 として収穫時 に結果枝を同時 に
剪除するため翌年 の花芽が確保できず ,豊 凶 の差が激 し
いことな ど大きな問題 を抱えて いる。また ,県 内 の主 力
.蜂
屋 'は もともと生理落果が多い性質も持
品種である
っている。そ こで ,本 研究では,年 による豊凶の差を極
力少な くし,毎 年安定 した収量を確保す るためのせん定
法 と結実管理法を検討 し,カ キ栽培 の生産性向上を目指
す ことを 目的 とした。
2
試験方法
(1)供 試品種
品種は「蜂屋 (2004年 で 26年 生)」 ,台 木 は共台を用 い
樹形は変則主幹形 とした。
(2)試 験区
以下 の 4区 の異なるせん定・ 結実法 の試験区を設定 し
た。
A区 :樹 交 互着 果区 :樹 単位 に不着果樹 (A_a区 )
と着果樹 (A_b区 )を 配置 し, 1年 毎 に交換す る。
B区 :主 枝交互着果区 :1樹 4本 主校 の うち, 2本 ず
つ着果主枝 と不着果主枝 を配置 し, 1年 毎 に交換す る。
C区 :予 備枝利用区 :結 果母枝確保 のために予備枝 を
設ける。予備枝は冬季せん定時 に主枝 上の 1年 枝 の先端
か ら数芽 の花芽 を剪除 し,葉 芽部分 まで切 り返 して配置
す る。切 り返 し部分 の花芽 と葉芽 の区別が判然 とせず
予備枝上か ら発生 した校 に菅 が着生 した場合は全て摘薔
または摘果する。予備 校 の配置以外は通常栽培 (対 照区
と同様)と する。
D区 (対 照区):常 法 どお りせん定 し,無 摘薔 ,無 摘果
とする。
なお,各 区の着果部は無せん定 ,無 摘首 ,無 摘果 とし
不着果部は冬季 せ ん定時に 1年 枝 の葉芽の位 置 で切 り返
す。不着果部に曹が着生 した場合 は全て摘薔 または摘果
する。
植栽距離 は列 間 5.4× 樹 間 5.4mと し各区 2樹 供試 し
た。
(3)調 査 項 目
予備枝 上か ら発生する新 梢数 ,長 さ,予 備校 の切 り返
し程度 の比較 (2000,2001年 ),累 積落果率 (2002年 ),
収量及び 1果 重 (連 年)を 調査 した。
,
,
,
試験結果及 び考察
(1)表 1に 2000年 に調査 した予備枝 の形質 と発 生新梢
との相 関関係 を示 した。1予 備枝 当た りの発生新梢数は
予備枝径 ,予 備枝長 と高 い相関があ り,予 備枝径が太 い
ほど,ま た,予 備枝長が長 いほど,新 梢発 生本数が多 く
なった。
(2)表 2に は2001年 に調査 した予備枝 の形質 と発生新
梢 ,着 薔 との相関関係 を示 した。発 生新梢数 は,予 備枝
の径 ,切 り返 し前 の予備枝 の全 長 〈
以下,予 備前全長),
切 り返 し後 の予備枝 の長 さ (以 下 ,予 備枝残長)と 高 い
正の相関がみ られた。 一方 ,予 備校 の切返 し程度 とは高
い負 の相関が見 られた。また,着 書数 は,予 備校 の径
予備前全長,予 備枝残長,発 生新 梢数 と高 い正の相関が
予備枝 の 切 り返 し程度 とはやや高 い負 の相 関 がみ られ
た。
(3)予 備枝 上の収穫果実 が全収穫数 に 占める貢献度 は
2004年 で 22%で あ り (表 3),毎 年 同様 の傾向がみ られ
た (デ ー タ略)。
(4)せ ん定 ,着 果管理法の違 いによる累積落果率はD
区で低 くなつた。 これは,も ともとD区 が隔年結果 で着
果数が非常 に少な か った ことが 原 因で ある と考 え られ
た。 A_b区 と B区 ,C区 を比較す ると,開 花か ら開花
約 lヶ 月後 の 7月 26日 にか けて A.b区 ,B区 ,C区 の
順 で累積落果率が高かった。いずれの区 も 7月 26日 時点
で60%以 上の落果率を示 した。その後は落果が緩慢 とな
り,最 終的 には,A_b区 が 80%を 超え たが ,B区 ,C
区は80%を 下回つた (図 1)。 この傾向 は他 の年 も同様
であった (デ ー タ略 )。 これ は,A区 の着果樹が 1樹 当
た りの着果数が他 の区よ り多 く養分競合 のため生理 落果
を助長 したものと考え られた。
(5)累 積収量 は,C区 が最 も多 く,つ いで B区 が多か
った。 これ らの区では,累 積落果率が他の区よ り少な い
ことが収量増 につながっていると考え られた。 A区 とD
区 はほぼ同等 の収量 となったが,毎 年 の収量の安定性か
ら見るとD区 よ りA区 の方が安定 して いた (図 2)。
(6)D区 以外では平均 1果 重は 1樹 あた り収量が多い
区ほ ど小 さくなったが ,全 ての区で 200gを 超 えた。 D
区は着果がほとん ど無かったにもかかわ らず 1果 重 も ご
く小 さくなつた (表 4)。 この傾向は毎年同様であった
(デ ー タ略 )。
,
,
4
まとめ
以上の結果よ り,カ キ ・蜂屋 '成 木樹 で,隔 年結果 を
防止 し,収 量 の安定確保 が可能なせん定 。結実管理法 と
して,主 枝毎 に交互結実 をさせる方法 と通常の栽培方法
-139-
東 北 農 業 研 究
58号
第
(21X15)
(対照区と同様)で 予備枝を配置する方法が累積収量の
増加 と毎年の収量を安定 させる方法 として有効 であつ
た。
2
1
予備枝長 0668樹
発生新梢数 0.689料 0.736料
新梢総長 0912料 0795料
o=107
z:料 は 1%水 準で有意差有り
表2
1
0791料
1
予備校 の形 質 と発生新梢
予備前全長
切返し程度
予備枝残長
発生新梢数
0“ 願ぼ
t076
Q677替
Q7“ 林
1
2
0807キ ホ
0.744**
抑
1
‐ 633*ホ
■ 397**
1
0781ホ *
料
zⅢ 196,ネ は596水 準で有意差有り
表3
予備枝上の収穫果実が全収穫数 に占める貢献度 (2004年 )
250
200
SII
50
0
図 1 せん定 。結実管理 法 の違 いによる累積落
果率の推移 (2002年 )
表4
Att
Btt
4
0
2
7
9
551
4
5
2
31.2
9
9
2
97.1
B区
C区
D区
D区
図 2 累積収量 の比較
注 )数 字 はそれぞれの区の供 試樹 の平均値
せん定 。結実管理法の違いが 1樹 収量及び 1果 重に及ぼす影響 (2004年 )
A― b区
Ctt
0.2
-140-