議長も総裁も動かない(28日 午後版)

Market Flash
議長も総裁も動かない
(28日 午後版)
2016年4月28日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~中古住宅:販売は復調へ~
・3月中古住宅販売成約指数は前月比+1.4%と市場予想(+0.5%)を上回り、2月の+3.4%に続いて高い
伸びを示した。この指標が実際の中古住宅販売件数に対して1-2ヶ月の先行性を有することを踏まえると、
目先的な住宅市場の見通しは明るい。これはNAHB住宅市場指数が高水準を維持していることと整合的だ。
中古住宅販売件数・販売成約指数
千
(百万)
6
販売成約指数(右)
5.5
110
5
100
4.5
・
中古住宅販売件数
90
4
80
3.5
3
70
10
11
12
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は小幅に上昇。通信機器大手の決算は嫌気されたが、原油価格、米金利低下が追い風。FOMC
声明文は株式市場でハト派と解釈された模様。WTI原油は45.33㌦(+1.29㌦)で引け。米原油在庫の増
加が嫌気されたものの、米金利低下がコモディティをサポート。
・前日のG10 通貨はAUDが最弱でそれにNZDが続いた。1Q豪CPIが前期比▲0.2%と予想外に低下、前年比も
+1.3%と15年4Qから0.4%pt減速。これを受けてAUDはオセアニア時間から一貫して下落、NZDも連れ安。
他方、JPY、EURなどマイナス金利通貨は方向感に欠ける展開。FOMCもほぼ無風通過。
・前日の米10年金利は1.851%(▲7.8bp)で引け。FOMC通過後に米債ラリー。欧州債は総じて堅調。ドイツ
10年金利が0.286%(▲1.3bp)で引けたほか、イタリア(1.519%、▲1.7bp)、スペイン(1.628%、▲
0.7bp)、ポルトガル(3.186%、▲3.7bp)も金利低下。3ヶ国加重平均の対独スプレッドは概ね横ばい。
【国内株式市場・経済指標・注目点】
・日本株は、日銀会合の結果を受けて急落。日経平均は17000を割れた。
・4月FOMCではFFレート上限を+0.5%で据え置くことが決定された。反対票(利上げ主張)はジョージ・
カンザスシティ連銀総裁のみ(2会合連続)。声明文のトーンは予想されたとおりハト派な印象で、6月
の利上げを示唆するような文言は見当たらず。昨年10月FOMCでは「次回会合での利上げが適当かどうか決
定するために」という文言が挿入され、12月の利上げ計画に関するシグナルが発せられていたが、今回は
それに該当するような表現はなかった。ただ、「世界の経済・金融情勢が引き続きリスクをもたらしてい
る(pose risk)」との文言は削除され、金融市場の混乱が実体経済の安定を脅かすことについての警戒は
解かれた。6月の利上げ確率については、今後、株価が最高値を更新し続けるなど金融市場の楽観が続け
ば情勢は変わってくるが、インフレ率が加速度的に上昇していく兆しが確認されず、実体経済についても
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
1-3月期GDPが低調な状況下では、利上げを急ぐ必要がない(市場予想:前期比年率+0.5%)。ドル
高による企業収益の圧迫も無視できないだろう。諸点に鑑みて6月の利上げ確率は低いと判断。
<午前版に追記>
・日本の3月鉱工業生産指数は前月比+3.6%と市場予想(+2.8%)を上回ったものの、2月(▲5.2%)の
落ち込みを取り戻すには至らず。出荷(+1.4%)の伸びも鈍く、在庫(+2.8%)と在庫率(+3.5%)が
上昇しておりバランスは良くない。2月と3月は、春節によるカレンダー要因、自動車工場の生産停止と
その挽回生産がそれぞれ撹乱要因となったが、均してみても「低調な生産」、「高水準の在庫」という姿
に変わりはない。生産予測指数は4月+2.6%、5月▲2.3%と均してみれば横ばいとなった。ただし、実
際の生産は予測指数対比で下振れが常態化しているほか、PMIは2ヶ月連続で50を割れている。4-6月
期の生産は横ばい圏内での着地がせいぜいか。
鉱工業生産指数
120
日本
在庫率指数
115
PMI生産・製造業生産
70
(%)
60
65
110
60
105
55
100
50
95
45
90
40
生産指数
PMI生産
20
0
-20
製造業生産
(3ヶ月前比年率、右)
-40
35
85
30
80
07
08
09
10
11
12
13
14
15
-60
08
09
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reuters、Markitにより作成
16
40
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成
・3月失業率は3.2%と2月から0.1%pt低下。就業者数が前月から▲13万人減少した反面、失業者数が▲5
万人減少。労働参加率低下を伴った失業率低下なので、見た目ほど強くはないが、それでも3.2%という水
準は労働市場の逼迫を示している。求人指標に目を向けると、有効求人倍率が1.30倍、新規求人倍率が
1.90倍とそれぞれ歴史的高水準にある。何れも分子の有効求人数、新規求人数が減少しているため、要割
引だが、企業の採用意欲が極めて旺盛であるとの見方を覆すものではない。
6
5.5
(%)
日 雇用関連統計
2.1
新規求人倍率(右)
5
(万人)
(倍)
1.8
有効求人倍率(右)
85
1.5
4.5
1.2
4
0.9
3.5
0.6
新規求人数
95
75
65
失業率
3
07
08
09
10
11
12
(備考)Thomson Reutersにより作成
13
14
15
55
45
0.3
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
16
16
・3月コアCPI(除く生産食品)は前年比▲0.3%と2月から0.3%pt低下。既往のエネルギー価格の下押
し効果に円安効果の剥落が加わり、5ヶ月ぶりにマイナス転化。そうしたなかで、やや気掛かりなのはコ
アコア物価(除く食料・エネルギー)に弱さが波及しつつあること。3月は前年比+0.7%と2月から
0.1%pt減速し、季節調整済み前月比でも▲0.2%と低下。モメンタムは明らかに下向きに転じており、3
ヶ月前比年率では±0.0%に落ち込んだ。労働市場が逼迫し、名目賃金が緩慢ながら増加している現状に鑑
みるとコアコア物価が持続的に低下する展開は描きにくいが、デフレマインドの復活を意識させる。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
2
(前年比、%)
3
日
CPI
コアコアCPI
(%)
2
2
1
コア
1
0
0
-1
-1
-2
3ヶ月前比年率
3ヶ月前比年率
(太線:3ヶ月平均)
-3
コアコア
-2
前年比
-4
-3
00
02
04
06
(備考Thomson Reutersにより作成
08
10
12
14
00
16
02
04
06
08
(備考Thomson Reutersにより作成
10
季節調整値
12
14
16
消費税調整済み
・3月家計調査によると実質消費支出は前年比▲5.3%と市場予想(▲4.1%)を下回り、うるう年効果によ
って押し上げられていた2月の+1.2%から急減。コア消費(除く贈与、自動車、住居等)は季節調整済み
前月比(うるう年調整あり)で▲0.7%と減少。コア消費の寄与度上位に大学授業料、給排水関係工事、祭
具・墓石、葬儀関係費要が常連となっていることに強い違和感を覚えるが、消費の基調が弱いのは事実だ
ろう。供給側の商業動態統計は前月比+1.4%と反発したものの、それまで4ヶ月連続で減少していた反動
に過ぎない。除くガソリンベースでも前月比+1.6%、前年比+0.3%と変わらない。
110
実質消費支出
(2010=100)
小売売上高(商業業態統計)
115
110
105
105
コア
100
100
95
95
全体
90
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
14
15
90
10
11
12
13
14
15
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:除く燃料小売
16
16
・日銀は金融政策の現状維持を決定。22日のブルームバーグの観測報道を受けて俄かに追加緩和観測が高ま
っていたため、結果的に日銀は期待を裏切る結果となった。注目の物価見通しは2016年度が+0.5%(1月
時点+0.8%)へと下方修正されたものの、2017年度は+1.7%(同+1.8%)とほぼ変化なし。物価目標の
達成時期は、これまでの「2017年度前半」から「2017年度中」へと事実上、先送りした形。筆者は引き続
き次回展望レポートが発表される7月会合での追加緩和を予想。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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