国民投票まで「残り 8 週間!」 世論から見た EU 残留の可能性

【2016年4月27日公開】
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~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~
「松崎美子」が注目テーマを一刀両断!
『国民投票まで「残り 8 週間!」
世論から見た EU 残留の可能性』
執筆者:(ロンドン在住/元為替ディーラー)
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今週のマーケットは、水曜日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)と翌日の日銀金融
政策決定会合、そして黒田総裁の定例記者会見が大きく注目を集めている。しかし、日本の個人
投資家さん達からいただく質問の中には、最近の英ポンド高に関するものが圧倒的に多い。
今回のコラムでは、今月に入ってから英国で起こっていることや国民投票を巡る最近の動きにス
ポットライトをあててみたい。
●パナマ文書とキャメロン首相の進退問題
今月に入り英国を騒がせたのが、パナマ文書に明記されたキャメロン首相の脱税疑惑だった。
もともとキャメロン首相の先祖には、近代英国の金融界で重きをなした人物が多く、首相のお父さ
んの代まで投資銀行「パンミュア・ゴードン」の経営に携わっていた。そしてキャメロン家は桁違い
の資産家であるため、このような疑惑が生まれやすかったのだろう。
それにしても、今回のパナマ文書発表のタイミングは最悪だった。6 月に実施される国民投票を巡
り、保守党内は EU 残留支持派と離脱支持派の真っ二つに分裂し、残留を支持するキャメロン首
相の辞任となれば、離脱派にとって有利になる。しかし、投票まで残り 8 週間となった今、首相交
代という政治劇を演じている余裕はないと悟った与党保守党は、党の団結を優先してキャメロン
続投で合意した。
●英財務省、Brexit 後の経済分析レポート
4 月 19 日、英財務省は「英国が EU から離脱した場合(Brexit)にかかるコスト」 の分析レポートを
公開した。このレポートの注目部分は、「離脱したら、英国の各世帯は今後 15 年間に渡り、毎年
平均で 4,300 ポンド貧乏になる」 という、非常に判りやすい言葉で表現された箇所であった。
(以下参照)
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/517415/treasur
y_analysis_economic_impact_of_eu_membership_web.pdf
ここでいう 「貧乏になる」 というのは、政府が各世帯から毎年 4,300 ポンドかき集めるわけでは
ない。オズボーン財務相は記者会見で、「英国が EU を離脱した場合、貿易や投資が落ち込む。貿
易の場合、どのタイプの貿易協定を結ぶかにより、その後の経済へのインパクトも変わってくる。
英財務省としては、離脱後の国内経済へのインパクトは恒久的なものになると予想し、そのサイ
ズは GDP で 6%近くの落ち込みとなるだろう。この経済規模の縮小(=国内経済の損失額)が、各
世帯に及ぼす経済的ダメージは、毎年 4,300 ポンドの損失と同じである。貿易協定のタイプによっ
ては、2030 年までに世帯あたり、毎年 6,600 ポンドの損失になることも考えられる。」と語っている。
財務相の記者会見をきちんと聞かずに、「4,300 ポンド貧乏になる」という新聞のヘッドラインだけを
見たら、離脱か残留かを決めていない国民にしてみれば、残留に傾きたくもなるだろう。
●オバマ大統領の訪英
先週 3 日間に渡り、オバマ米大統領が英国を訪問した。そこで、同大統領は、英国民に対し以
下の発言をしている。
米国でも英国でも、米英関係は特別なものと言う見方が国民の間では一般的であっただけに、
「順番が最後になって、貿易協定が実現するには、10 年近い年月がかかる。英国が EU のメンバ
ーだからこそ、米英は特別な関係だった」と真顔で語るオバマ大統領の本音を聞き、英国民は内
政干渉に対する怒りと同時に、EU 離脱後の孤立感について、あらためて考えることになった。
●EU 残留支持の増加
先ほど紹介した経済分析レポートで、「毎年 4,300 ポンド貧乏になる。」と宣言され、その次には
アメリカの大統領に、「米英関係は条件付きで特別な関係だったのだ…」と聞かされ、英国民は現
実に引き戻された感がある。その結果として、国民投票に向けた世論調査結果で EU 残留支持が
増えてきたのだ。
これは過去 1 カ月に渡る世論調査結果であるが、最近は特に 10%ほどの大きな差をつけて、残留
支持が増えてきたのが特徴だ。
これに加え、賭け屋での賭け率も、残留支持が健闘している。4 月 25 日現在の大手賭け屋の賭
け率は以下の通りである。
●ここからの「英ポンド」の予想
現在のマーケットで、私の関心が集中しているのは、他でもない「ユーロ/英ポンド」である。日
本ではこの通貨ペアを取引する方はあまり多くないかもしれないが、最近この通貨ペアは非常に
際どいレベルにきている。
そのレベルとは、0.7750 ポンド近辺のことだ。このチャートは「ユーロ/英ポンド」週足であるが、黄
色くハイライトを入れた 0.77 ポンド台ミドルから 0.80 ポンド台 High の値動きは、何度も行ったり来
たりすることが多かった。それに対し、黄緑のハイライトが入っている 0.74 ポンド台ミドルから 0.77
ポンド台ミドルは、一気に上昇/下落をしやすいゾーンであると私は認識している。そのため、週足
の終値が 0.77 ポンド台ミドルを下抜けして終わると、その後一気に「ユーロ安/英ポンド高」になる
ことも十分に可能である。
なお「英ポンド/米ドル」に関しては、今週の「FOMC」で発表される声明文内容を読んでから米ドル
の方向性を考えたいと思う。
-------------------------------------------------------------------------------【執筆者: 松崎美子氏(ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】
東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 ヶ月後に渡英決
定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991
年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。
その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、
証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。
-------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】
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