【2016年3月23日公開】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ ~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~ 「松崎美子」が注目テーマを一刀両断! 『英ポンド/円を考察! 円高リスクも下落要因か』 執筆者: (ロンドン在住/元為替ディーラー) ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 日本ではあまり馴染みはないが、今週金曜日(25 日)はグッド・フライデー(聖金曜日) と呼ばれるキリスト教の休日だ。この日はイエス・キリストが十字架にはりつけられ、そ の 3 日後のイースターの日に復活したとされているため、キリスト教圏の国々では金曜日 から月曜日まで(国により、日曜日までのところもある)イースター休暇となる。日本や 米国と比較すると欧州は年間を通して国民祝日が少ないため、イースター休暇はクリスマ ス以来、はじめての国民祝日となるところが多い。そのため、マーケット参加者もこの休 暇を非常に楽しみにしており、特に木曜日と来週月曜日のマーケットは流動性が薄くなる ことを覚えておきたい。 ●コモディティー価格の上昇 最近個人投資家の方から受ける質問の中で多いのが、どうして英ポンドが上昇するのか についてである。自分の中では、6 月の国民投票を巡る不透明感を嫌気した売りが年初から 続いていたが、それが一段落したためだと考えている。しかし、これで英ポンド売りが完 全に終了したとは思っておらず、ここからは新たな国民投票ネタで相場が 100〜150 ポイン トくらいの値幅で乱高下するボラティリティーの高い相場になると考えている。 しかし、この不安定要素以外の要因で英ポンドが上向きの相場展開を繰り広げている理由 は、コモディティー価格の上昇が一役買っているのではないかとも考えられる。 出展:stockcharts http://stockcharts.com/h-sc/ui 上のチャートはロイター社が発表しているコモディティー指数である CRB 指数と AUD(豪 ドル)を同時に表示したチャートである。昨年はずっと下落基調となっていたが、今年に 入り CRB 指数が二番底をつけて上昇に転じるのと歩調を合わせるかのように、AUD も上昇し ている。 下のチャートは、CRB 指数と英ポンドを同時に表示したものだ。AUD ほど相関性は高くない が、CRB 指数が二番底をつけた直後から、英ポンドも上昇しているのがわかる。英国の北海 油田は有名だが、2 年前くらいから英国は原油の輸入国となっている。しかし、それでもま だ英ポンドと CRB 指数の相関性は残っているようだ。 出展:stockcharts http://stockcharts.com/h-sc/ui ●「英ポンド/円」について 私は基本的に英ポンドは対ユーロと対米ドルで取引している。しかし、3 月に日本に一時 帰国した時に、本当に多くの個人投資家の方から「英ポンド/円」の相場観を聞かれた。そ こで、最近の「英ポンド/円」について考えてみた。まずは週足に 200 週移動平均線(SMA) を入れてみよう。 これは 1997 年末からの週足チャートであるが、200SMA に絡む動きには 3 つのパターンが見 られる。右側のピンクの丸が今回の相場であるが、200SMA を一気に上から下に抜けている ので、②のパターンではないことがわかった。 残る①または③のいずれかになると思われるが、今週の 200SMA のレベルはだいたい 163 円 台にくるため、最初の戻り高値としてそのレベルを意識したいと思う。 次にやはり週足のチャートを使い、大きな値動きを四角い枠で囲みわかりやすくしてみた。 すると、この通貨はだいたい 20 円から 25 円の値幅で動く傾向があることがわかった。ま ず、水色の枠の下値がきれいに下抜けた後、そこが今度はレジスタンスとなり紫枠の中で の値動きとなった。この時は水色枠と紫枠ともに約 25 円の値幅となっている。今回は、赤 枠の部分で約 20 円動いたが、そこを下抜けてオレンジ枠に移ってきたと思ったら、すでに 赤枠の時と同じように 20 円程度動いている。 正直、国民投票の結果がはっきりしない限り、「英ポンド/円」が赤枠の下限=オレンジ枠 の上限である 175 円付近まで戻るとは考えてはいないが、「赤枠と同じ 20 円という値幅を 達成した」という事実は忘れずにいたい。もしかしたら、今後はこのオレンジの枠の中で の動きになる可能性もあるからだ。 次に短期的な戻しの目安を考えてみるが、先ほどの週足チャートの 200SMA が 163 円台であ ったが、日足チャートを見ると黄色い線を引いた 163 円ミドルから 164 円あたりが、やは り意識されるレベルとなっているのがわかる。 最後に、 「英ポンド/円」が 163 円から 164 円台に戻らず、ここから急落するリスクを考え てみよう。もしここから一気に「英ポンド/円」が下がるのであれば、それは米ドル/円の 急落による「円高」要因となる可能性が考えらえる。今年に入ってからの「英ポンド/円」 は、 「英ポンド安」で下げてきたし、これからも 6 月 23 日の国民投票実施に向け、 「英ポン ド安」で下がることは十分にあり得る。 しかし、目先の相場については、 「円高」リスクが非常に気になっている。その理由は、下 のチャートである。これは、米ドル/円の週足に 144EMA と 169EMA を引いたものである。私 はこの 2 本の移動平均線をまとめて「ベガス・トンネル」と呼んでいる。ここではその説 明は省略するが、過去何週間にもわたり、米ドル/円の週足の終値はベガス・トンネルの上 で終わった。 しかし、もし今後数週間でトンネルの上限(黄緑のライン)を下抜けし、下限(青いライ ン)まで下げってくるようなことにでもなれば、必然的に「英ポンド/円」も下落せざるを 得ない。 そして、そのまま米ドル/円の下げが続いた場合、週足の終値が下限である青いラインをも 下回って終わるような展開にでもなれば、米ドル/円の下落は下げ足を早め、 「英ポンド/円」 の下げも加速度をつけることになりかねない。 -------------------------------------------------------------------------------【執筆者: 松崎美子氏(ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】 東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 ヶ月後に渡英決 定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991 年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。 その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、 証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。 -------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】 本レポートは松崎美子氏より発行されているレポートであり、情報提供のみを目的として おります。 本レポート中のコメントは独自の見解に基づいたものであり、松崎美子氏、およびワイジ ェイFX株式会社共にレポート中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明 示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。 また、本レポート内のコンテンツ、データに関する著作権はワイジェイFX株式会社に帰属 しております。 コンテンツ、データ等は私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめく ださい。 さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、松崎美子 氏、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。 最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。
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